2017年6月29日木曜日

数学外書輪講I(第9回)

[場所1E501(月曜日5限)]

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今日はLangの線形代数の続きを読みました。
いくつか話がありましたが、

  • 以下の定理について証明がありました。
定理
ベクトル空間 $V$ に対してその基底を $\{v_1,\cdots, v_m\}$ であるとする。
このとき、$\{w_1,\cdots, w_n\}$ が $V$ のベクトルとする。
もし、$n>m$ であれば、$\{w_1,\cdots, w_n\}$ は一次従属である。


このような定理は線形代数の中で幾度となく出てきます。
この定理の内容が証明を込みで理解し、
いつでも証明ができたり、使えたりすることは大変重要なことです。

この証明については、今月のブログ
一次独立と一次従属(リンク)
にも書きましたが、
このときは、行列の言葉に直してから、その行列のどこかに、
ベクトルのが一次従属になるように係数が作れるという具体的
な連立一次方程式の解法に沿った内容でした。
ラングの証明は少し違います。

今回の授業では、この定理の証明を紹介してもらいました。



(ラングの証明)
$\{w_1,\cdots, w_n\}$ は一次独立であると仮定する。

仮定から、$V=\langle v_1,\cdots, v_m\rangle$ であるので、
$w_1=a_1v_1+\cdots+a_mv_m$ である。
ここで、$w_1\neq{\bf 0}$ であるので、この係数 $a_1,\cdots, a_m$ のどれかは$0$ ではない。

$v_1,\cdots, v_m$ を並び替えることによって、
$a_1\neq 0$ としてよい。

このとき、$v_1=\frac{1}{a_1}w_1-\frac{a_2}{a_1}v_2-\cdots -\frac{a_m}{a_1}v_m$ となるので、$v_1$ は $w_1,v_2,\cdots, v_m$ の線形和によってかける。
つまり、$V$ は $w_1,v_2,\cdots, v_m$ によって生成されます。
$\langle v_1,\cdots, v_m\rangle=\langle w_1,v_2,\cdots, v_m\rangle$
となります。

$$V=\langle w_1,\cdots, w_k,v_{k+1},\cdots, v_m\rangle$$
であるとします。
このとき、$w_{k+1}=a_1w_1+\cdots+a_kw_k+a_{k+1}v_{k+1}+\cdots +a_mv_m$
となる係数 $a_1,\cdots, a_m$ が存在します。
$a_{k+1},\cdots, a_m$ が全て $0$ であるとすると、

$w_{k+1}=a_1w_1+\cdots+a_kw_k$ となるので、$w_1,\cdots w_k$ が一次独立で
あることに反する。

ゆえに、 $a_{k+1},\cdots, a_m$ のうちゼロでないものが存在します。
ベクトルを並び替えて、そのような係数を $a_{k+1}$ とすることができます。

よって、
$$v_{k+1}=\frac{-a_1}{a_{k+1}}w_1+\cdots+\frac{-a_k}{a_{k+1}}w_k+\frac{1}{a_{k+1}}w_{k+1}+\frac{-a_{k+2}}{a_{k+1}}v_{k+2}+\cdots +\frac{-a_m}{a_{k+1}}v_m $$
となります。

よって、$v_{k+1}\in \langle w_1,\cdots, w_{k+1},v_{k+2},\cdots, v_m\rangle$
となり、これを続けることで、
$V=\langle w_1,\cdots, w_m\rangle $とすることができます。

このとき、$w_n\in V$ であるので、$w_n$ が $w_1,\cdots, w_m$ の一次結合で書くことが
でき、これは $w_1,\cdots, w_n$ が一次独立であることに反する。

ゆえに、 $w_1,\cdots, w_n$ は一次従属ということになります。


他に、基底であることの必要充分条件で、以下のものもあります。


定理
$\{v_1,\cdots, v_n\}$ が基底であることは、それらが、一次独立なベクトルの
集合の中で極大集合であることである。


$\{v_1,\cdots, v_n\}$ が一次独立な極大集合であるとは、それらがまず、一次独立であり、
任意の $v\in V$ に対して、$\{v,v_1,\cdots, v_n\}$ が $V$ が一次従属であること。

です。

(証明)
$V$ の基底であることは、$\{v_1,\cdots, v_n\}$ が一次独立であり、任意の $v\in V$ が
それらの一次結合でかけることですが、

もし、$\{v_1,\cdots, v_n\}$ が一次独立は極大集合であれば、
$c_0v+c_1v_1+\cdots+c_nv_n=0$ が成り立つが、
$c_0$ はゼロではない。もしゼロなら、$v_1,\cdots, v_n$ が一次独立であることから、
$\forall i$ に対して、$c_i=0$ であるから、$c_i=0$ ($i=0,1,\cdots,n$)
であるので、$\{v_1,\cdots, v_n\}$ が一次独立な極大集合であることに反する。
よって、$c_0\neq 0$ である。
ゆえに、$c_0$ で割って整理すると、$v$ は$v_1,\cdots, v_n$ の一次結合でかける。
つまり、$\{v_1,\cdots, v_n\}$ は $V$ の基底。

また、$\{v_1,\cdots, v_n\}$ が$V$ の基底であるとすると、
$\{v_1,\cdots, v_n\}$ は一次独立であり、$\forall v\in V$ に対して、
$v=c_1v_1+\cdots+c_nv_n$ とかけるが、これは、
$\{v,v_1,\cdots, v_n\}$ が一次従属であることを示している。

微積分I演習(物理学類)(第10回)

[場所1E103(金曜日5限)]

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今回は、

  • 無理関数の積分
  • 広義積分の定義
無理関数の積分
無理関数とは、ルートを含むものだけを扱います。
また、ルートの中が2次式以下のものを扱います。

$\sqrt{ax+b}$ の変換の仕方
この場合は、$t=\sqrt{ax+b}$ とすればよいです。

例えば、

$\int \frac{1}{1+\sqrt{1+2x}}dx$ とすると、$t=\sqrt{1+2x}$ とすると、
$x=\frac{t^2-1}{2}$ であり、$dx=tdt$ であり、
$$\int \frac{1}{1+\sqrt{1+2x}}dx=\int\frac{t}{1+t}dt=\int\left(1-\frac{1}{1+t}\right)dt$$
$$=t-\log(1+t)+C=\sqrt{1+2x}-\log(1+\sqrt{1+2t})+C$$


$\sqrt{ax^2+bx+c}$ の変換の仕方
この場合、この2次式が実数解を持つ場合、虚数解を持つ場合で分けます。

実数解 $\alpha,\beta$ を持つ場合

$t=\sqrt{\frac{a(x-\beta)}{x-\alpha}}$ とおく。

$x=\frac{\alpha t^2-a\beta}{t^2-a}$ であり、$dx=\frac{2a(\alpha-\beta)t}{(t^2-a)^2}dt$ と計算できる。
$x-\alpha=\frac{\alpha t^2-a\beta}{t^2-a}-\alpha=\frac{\alpha t^2-a\beta-\alpha(t^2-a)}{t^2-a}=\frac{a(\alpha-\beta)}{t^2-a}$
$\sqrt{ax^2+bx+c}=t(x-\alpha)=\frac{a(\alpha-\beta)t}{t^2-a}$ であり、このように、
全て $t$ の有理式(有理関数の式)になります。

よって、$x,\sqrt{ax^2+bx+c}$ の有理式の積分は、$t$ の有理式の積分になります。


虚数解を持つ場合。($b^2-4ac<0$)

$\sqrt{ax^2+bx+c}=t-\sqrt{a}x$ 
とします。ここで、$a>0$ であることは仮定されます。というのも、$ax^2+bx+c=0$ 虚数解を持つので、
任意の $x$ に対して、$ax^2+bx+c$ は正の数もしくは負の数であり、今は、
実数値関数なので、$a>0$ となります。

このとき、$ax^2+bx+c=t^2-2\sqrt{a}tx+ax^2$ となります。
よって、
$$x=\frac{t^2-c}{2\sqrt{a}t+b},\ \ \frac{dx}{dt}=\frac{2 t(\sqrt{a} t+b)}{(2 \sqrt{a} t+b)^2}$$
$$t-x=\frac{t(\sqrt{a} t+b)}{2 \sqrt{a} t+b}$$
となります。これにより、
$$x,\sqrt{ax^2+bx+c}, \frac{dx}{dt}$$
はすべて $t$ の有理関数となります。

例えば、不定積分 $\int\frac{x^2}{\sqrt{1+x+x^2}}dx$ は、
$\sqrt{1+x+x^2}=t-x$ とおくと、
$x=\frac{t^2-1}{2t+1}$ で、$\frac{dx}{dt}=\frac{2(t^2+t+1)}{(2 t+1)^2}$ かつ $t-x=\frac{t^2+t+1}{2 t+1}$となりますので、
$$\int\frac{(\frac{t^2-1}{2t+1})^2}{\frac{t^2+t+1}{2t+1}}\cdot \frac{2(t^2+t+1)}{(2t+1)^2}dt=2\int\frac{(t^2-1)^2}{(2t+1)^3}dt$$
$$=\int\left(\frac{t}{4}-\frac{1}{4 (2 t+1)}+\frac{3}{2 (2 t+1)^2}+\frac{9}{8 (2 t+1)^3}-\frac{3}{8}\right)dt$$
$$=-\frac{3}{8}t+\frac{t^2}{8}-\frac{1}{8}\log(2t+1)-\frac{3}{2}\frac{1}{2t+1}-\frac{9}{16}\frac{1}{(2t+1)^2}+C$$
$$=\frac{2 t^4-4 t^3-9 t^2-11 t-5}{4(2 t+1)^2}-\frac{1}{8}\log(2t+1)+C$$
$$=\frac{(t^2+t+1)(2t^2-6t-5)}{4(2t+1)^2}-\frac{1}{8}\log(2t+1)+C$$
よって、この $t$ に $x+\sqrt{1+x+x^2}$ を代入すればよいということになります。

$$\log(2t+1)=\log(2x+1+2\sqrt{1+x+x^2})=\text{Arcsinh}\frac{2x+1}{\sqrt{3}}-\text{Arcsinh}\frac{1}{\sqrt{3}}+\log 3$$
です。
また、
$$\frac{1}{2t+1}=\frac{-1}{3}\left(2 \left(x-\sqrt{x^2+x+1}\right)+1\right)$$
となり、

$$\frac{(t^2+t+1)(2t^2-6t-5)}{4(2t+1)^2}$$
に$t=x+\sqrt{1+x+x^2}$ をいれて、$\log$ の部分と加えて整理してやると、

$$\frac{4x-6}{8}\sqrt{1+x+x^2}-\frac{1}{8}\text{Arcsinh}(\frac{1+2x}{\sqrt{3}})+C$$
となります。


広義積分の定義

広義積分は証明はせず、定義のみ行いました。
つまり、$f(x)$ が定義されていないような値が定積分の端点がくる場合の
計算を広義積分といい、例えば、$f(x)$ が $[a,b)$ で定義されており、
$b$ において定義されていないとします。
そのとき、
$$\int_a^bf(x)dx$$
の計算は、
$$\lim_{c\to b}\int_a^cf(x)dx$$
として行います。例えば無限区間の場合がその場合です。


$$\int_0^\infty\frac{1}{e^x+1}dx=\lim_{b\to \infty}\int_1^{e^b}\frac{1}{(t+1)t}dt$$
$$=\lim_{b\to \infty}\int_1^{e^b}\left(\frac{1}{t}-\frac{1}{t+1}\right)dt=\lim_{b\to 0}\left[\log t-\log(t+1)\right]_1^{e^b}=\lim_{b\to \infty}(\log\frac{e^b}{1+e^b}-\log\frac{1}{2})=\log 2$$
となります。

2017年6月28日水曜日

微積分I演習(数学類)(第9回)

[場所1E103(水曜日4限)]

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今回は

  • 有理関数の積分
  • 剰余項とその収束
についてやりました。

有理関数の積分

有理関数の積分は以前、

2017年微積分I演習(物理学類)(第9回)(リンク)
2016年微積分I演習(数学類)(第10回)(リンク)
2016年微積分I演習(数学類)(第9回)(リンク)
2016年微積分I演習(数学類)(第8回)(リンク)(部分分数展開)

剰余項とその収束について

剰余項はあまりやるつもりではありませんでしたが、少しだけ扱います。

剰余項は、以前

2016年微積分I演習(数学類)(第6回)(リンク)
で扱いました。

$f(x)$ が無限回微分可能であるとします。このとき、テイラー展開は、
$$f(x)=f(a)+f’(a)(x-a)+\frac{f’’(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots +\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n+R_{n+1}(x)$$
となります。
ここで、
$$R_{n+1}(x)=\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)}(x-a)^{n+1}$$
となります。
ここで、$c$ $x$, $a$ の間の数です。$c$ は、$x,a,n$ によります。


$x$を固定して、
$$R_{n+1}(x)\to 0$$

であることを示されれば、このテイラー展開は、無限級数展開できることになり、


$$f(x)=f(a)+f’(a)(x-a)+\frac{f’’(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots +\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n+\cdots=\sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n$$

となる等式が成り立ちます。

例えば、$f(x)=\frac{1}{1-x}$ であるときに、

$f^{(n)}(x)=\frac{n!}{(1-x)^{n+1}}$ であるので、
$f^{(n)}(0)=n!$ であるので、

$x=0$ でのテイラー展開は、
$$\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots+x^n+\frac1{(1-c)^{n+2}}x^{n+1}$$
ただし、$|c|<|x|<1$ である。
$$R_{n+1}(x)=\frac1{(1-c)^{n+2}}x^{n+1}$$
とおく。

ここで、$r<1$ を定数とします。$|x|<\frac{r}{r+1}$ であるとすると、
$|c|<|x|$ なる任意の $c$ に対して、
$|c|<|x|<1-\frac{|x|}{r}$ がなりたち。とくに、
$c<1-\frac{x}{r}$ かつ $c<1+\frac{x}{r}$ が成り立ちます。

よって、変形して、$|\frac{x}{1-c}|<r$ が成り立ちます。剰余項は、
ゆえに、そのような $x$ に対して、
$$|\frac1{(1-c)^{n+2}}x^{n+1}|<\frac{1}{1-c}|\frac{x}{1-c}|^{n+1}<\frac{1}{1-c}r^{n+1}\to 0$$
よって、$R_{n+1}(x)\to 0$  $n\to \infty$ が成り立つ。

2017年6月22日木曜日

数学外書輪講I(第8回)

[場所1E501(月曜日5限)]

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今回は

  • ハミングの誤り訂正符号理論についてののこり
  • 奇数町のクラブ(Miniature 3)
  • 線形代数
について発表してもらいました。

生成行列とパリティチェック行列

ここで、文字(アルファベット)の集合を位数2 の有限体 $S={\mathbb F}_2$ としておきます。
メッセージをコード化するとするとき、
その元のメッセージにチェックディジットをいくらか付け加えることで
行います。線形コードを作るとき、その操作をある線形写像
$$c:{\mathbb F}_2^k\to {\mathbb F}_2^n$$
となるように行います。このとき、$c$ の像がコード全体の集合 $C$ となるのです。
送られた後元のメッセージとして戻さなければならいので、 $c$ は当然、単射です。

このとき、線形写像を行列によって表すと、
$$G=[E_k|A]$$
のようなブロック行列として表示されます。
ここで、$E_k$ は $k$ 次単位行列で、$A$ は何らかの $k\times (n-k)$ 行列です。

この行列 $G$ の $i$ 行は、$e_i$ をコード化したものものと見なせます。
ここで、$e_i$ は $k$ 次元の基本ベクトルで、$i$ 番目の成分だけ1 でそのほかが0 となる
ベクトルです。

この行列のことを生成行列と言います。教科書では、
$$G=\begin{pmatrix}1&0&0&0&1&1&1\\0&1&0&0&1&1&0\\0&0&1&0&1&0&1\\0&0&0&1&0&1&1\end{pmatrix}$$
のような $4\times 7$ 行列を取っています。
この4つの行ベクトル ${\bf w}_1$, ${\bf w}_2$, ${\bf w}_3$, ${\bf w}_4$
が $\text{Im}(c)$ の基底となります。($c$ が単射であったことを思い出してください。)

また、パリティチェック行列とは $C$ を解空間にもつ連立一次方程式を定める
行列をいいます。

$$P=[-A^T|E_{n-k}]$$
とおきます。ここで、$T$ は転置行列を表します。例えば今の場合、
$$P=\begin{pmatrix}1&1&1&0&1&0&0\\1&1&0&1&0&1&0\\1&0&1&1&0&0&1\end{pmatrix}$$

となります。

実は、この行列 $P$ は $PG^T=O$ となる行列になっています。
どうしてかというと、
$$PG^T=[-A^T|E_{n-k}]\cdot[E_k|A]^T=-A^TE_k+E_{n-k}A^T=-A^T+A^T=O$$
となるからです。

線形空間
$$\langle G^T{\bf e}_i|i=1,\cdots, k\rangle $$
$$\langle {\bf v}|P{\bf v}={\bf 0}\}$$
が一致することを確かめます。前者を$V_G$ とし、後者を $V_P$ とします。
$V_G$ の任意の元 ${\bf v}$ は $G^T{\bf a}$ として書き表されます。
ここで、${\bf a}\in {\mathbb F}_2^k$ なる数ベクトル空間です。

上記の示したことから、$PG^T{\bf a}=P{\bf v}={\bf 0}$ となります。
ですので、$V_G$ の任意のベクトルは、$V_P$ のベクトルだということがわかります。
集合の言葉を使えば、
$$V_G\subset V_P$$
ということになります。あとは、$V_P\subset V_G$ であることがわかれば、$V_G=V_P$
が言えます。
ここで、次元を数えることにすると、$\dim V_G=k$ であることは $G$ のランクを計算すれば
わかります。
また、$\dim V_P=\dim(\ker{P})=n-\text{rank}(P)=n-(n-k)=k$
となり、$V_G\subset V_P$ であることから、$V_P=V_G$ であることがわかりました。
つまり、$V_P=V_G=C$ であるのです。

問題は生成行列の作り方ですが、実は、チェックディジットを作るために、
$P$ として ${\mathbb F}_2^{n-k}$ の単位行列以外のベクトルを全て並べたものにしていました。

こうすると、最後に書かれているように、どこかで、一箇所転送ミスをしてしまうと、
そのミスがどこにあるかチェックすることがでます。

つまり、${\bf v}\in {\mathbb F}_2^n$ を送って $v’\in {\mathbb F}_2^n$ が届いたとします。
また、そのベクトルが せいぜい1 個以下の間違いが含まれるとします。

このとき、$P{\bf v}’$ を調べたとき、もしゼロベクトルではないものが得られたとすると、それが間違いコードであることが判明し、さらに、そのベクトルが $P$ の縦ベクトルの $i$ 番目に一致したとします。このとき、${\bf v}’$ の第 $i$ 成分が違うということがわかります。つまりそのベクトルを $1\to 0$ もしくは $0\to 1$ となおせば正しい ${\bf v}$ が得られることになるのです。

ハミングの原論文は 
  • R.W. Hamming, Error-detecting and error correcting codes, Bell System Tech. J. 29 (1950), 147--160
ですが、あまり読む方法もなさそうですので、マトウセクも挙げている以下の文献
(FOCSの学会の予稿)を挙げておきます。マデュー・スーダンは著名なcomputer scientist
  • M. Sudan, Coding theory: Tutorial & Survey, in Proc. 42nd Annual Symposium on FOCS 2001, 36-53
    http://people.csail.mit.edu/madhu/papers/2001/focs01-tut.pdf

奇数町のクラブ

次に Miniature 3を読んでもらいました。

この話に関連して、とりあえず、文献を挙げておくと、

  • L. Babai, P. Frankl, Linear algebra methods in combinatorics with applications to Geometry and Computer Science

です。(P. Franklとは、日本人にも馴染み深いピーターフランクルのことですが....。)この文献の最初に
奇数町(文献には、偶数町も登場する)の話が出てきます。
この文献は、Babai, Frankl を検索すると出てきます。

話の内容は、こうです。


$n$ 人の市民がいる。市民はクラブ(集まりのこと)を許されているが、次のような規則がある。

  • 各クラブに入る人数は奇数人である。
  • ある2つのクラブに対して、共通して入っている人の数は偶数人でる。

このような規則があるとき、必ず、
クラブの数 $\le$ 市民の数
がいえる。



この定理を奇数町定理といいます。

これは${\mathbb F}_2$ 上の線形代数を使ってごく簡単に証明できます。


面白いことは、クラブの数を特に制限しているわけでもないのに、いつの間にか、
市民の数よりは多いクラブを作ることができなくなっている点です。

上のババイとフランクルの本を見るともっと面白い定理が沢山あるので
読んで見ると面白いと思います。

微積分I演習(物理学類)(第9回)

[場所1E103(金曜日5限)]

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今回は、

  • 有理関数の積分
についてやりました。

有理関数の積分

有理関数とは、多項式 $f(x), g(x)\neq 0$ を使って、
$$\frac{f(x)}{g(x)}$$
として書かれる関数です。

今、多項式は、実数係数とします。

$g(x)$ は、実数係数をもつ多項式は、実数の範囲で、必ず

$$a(x-\alpha_1)^{r_1}\cdots (x-\alpha_k)^{r_k}(x^2+c_1x+d_1)^{s_1}\cdots (x^2+c_lx+d_l)^{s_l}$$

のように因数分解できます。ここで、2次式は必ず虚数解をもちます。


また、有理関数 $\frac{f(x)}{g(x)}$ は部分分数として、

$$\frac{A}{(x-\alpha_i)^t}\text{ や }\frac{Cx+D}{(x^2+c_jx+d_j)^u}$$
の和に分解できることを以下のようにして見ることができます。

ここで、以下の事実が成り立ちます。



定理
既約な多項式 $g_1(x),g_2(x)$ に対して、
定数多項式 $1$ に対して、
$1=a(x)g_1(x)+b(x)g_2(x)$ なる係数多項式 $a(x),b(x)$ が存在する。
$g_1(x)$, $g_2(x)$ が実数係数多項式であれば、$a(x),b(x)$ も実数係数多項式である。

$g_1(x), g_2(x)$ が $n$ 次多項式かつ、$m$ 次多項式であれば
$a(x)$ と $b(x)$ は $m$ 次, $n$ 次多項式とできる。
$a(x), b(x)$ の係数は実は、ある行列式(終結式を含む)によって書くことができる。



とくに、任意の $h(x)$ に対して、 $h(x)=h_1(x)g_2(x)+h_2(x)g_1(x)$ を満たすようにして
$h_1,h_2$ が作れるからです。
これを用いることで、

$$\frac{h(x)}{g_1(x)g_2(x)}=\frac{h_1(x)}{g_1(x)}+\frac{h_1(x)}{g_2(x)}$$
となる分解を作ることができます。
$h_1(x)=h(x)a(x)$ で、$h_2(x)=h(x)b(x)$ とすればよいわけです。

よって、これを繰り返して、それ以上分解できない成分ごとにまとめておきます。


その成分が $\frac{p(x)}{(x-\alpha_i)^{r_i}}$ であるとすると、
$p(x)$ の次数は $r_i$ より小さくなります。さらに、

$$p(x)=e_0+e_1(x-\alpha_i)+e_2(x-\alpha_i)^2+\cdots e_{r_i}(x-\alpha_i)^{r_{i}}$$
として展開することで、

$$\frac{p(x)}{(x-\alpha_i)^{r_i}}=\frac{e_0+e_1(x-\alpha_i)+e_2(x-\alpha_i)^2+\cdots e_{r_i-1}(x-\alpha_i)^{r_{i}-1}}{(x-\alpha_i)^{r_i}}$$
$$=\frac{e_0}{(x-\alpha_i)^{r_i}}+\frac{e_1}{(x-\alpha_i)^{r_i-1}}+\cdots+\frac{e_{r_i-1}}{x-\alpha_i}$$
となります。

$$\frac{q(x)}{(x^2+c_jx+d_j)^{s_j}}$$
の場合も同じ理由で、

$$\frac{f_jx+g_j}{(x^2+c_jx+d_j)^{u}}$$
となる多項式の和に分解できます。
つまり、分子はそれぞれ、定数か1次式とできることがわかりました。


ここで、$u$ を正の整数とします。このとき、その成分を求めてみると
$$\int\frac{dx}{(x-a)^u}=\begin{cases}\log (x-a)&u=1\\\frac{1}{-u+1}\frac{1}{(x-a)^{u-1}}&u\neq 1\end{cases}+C$$
$$\int\frac{Cx+D}{(x^2+cx+d)^u}dx=\frac{C}{2}\int\frac{2x+c}{(x^2+cx+d)^u}dx+\int\frac{D-\frac{cC}{2}}{(x^2+cx+d)^u}dx$$
$$=\frac{C}{2}\int\frac{1}{t^u}dt+(D-\frac{cC}{2})\int\frac{1}{(x^2+cx+d)^u}dx$$
ここで、
前半は、対数関数もしくはベキ関数となり、
後半部分、は以下のようになります。

$$\int\frac{1}{(x^2+cx+d)^u}dx$$
を計算します。
まず、分母の中身、$x^2+cx+d$ を平方完成すると、
$x^2+cx+d=\frac{\Delta^2}{4}(X^2+1)$ とすることができます。
ここで、$\Delta=\sqrt{4d-c^2}\in {\mathbb R}$ かつ、
$X=\frac{2}{\Delta}\left(x+\frac{c}{2}\right)$ となります。

よって、$dX=\frac{2}{\Delta}dx$

$$\int\frac{1}{(x^2+cx+d)^u}dx=\frac{1}{2}\int\frac{\Delta}{\frac{\Delta^{2u}}{2^{2u}}(X^2+1)^u}dX$$
$$=\left(\frac{2}{\Delta}\right)^{2u-1}\int\frac{dX}{(X^2+1)^u}$$

ゆえに、あとは、$\int\frac{dX}{(X^2+1)^u}$ を積分できればよいですが、
$X=\tan \theta$ とすれば、
$$\int\frac{dX}{(1+X^2)^u}=\int\cos^{2u-2}\theta d\theta$$
として三角関数の積分に帰着されます。

2017年6月19日月曜日

微積分I演習(数学類)(第8回)

[場所1E103(水曜日4限)]

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今回は、

  • べき級数展開について
  • ニュートン法
  • 三角関数の積分
についてやりました。

最初に
ニュートン法
についてですが、

まず、配ったプリントで、肝心なところがまちがって
いましたので訂正しておきます。正しくは、
$$c_{n+1}=c_n-\frac{f(c_n)}{f'(c_{n})}$$
です。

ニュートン法とはある方程式 $f(x)=0$ の近似解を求める方法です。
もちろん、近似解なので、直接求める方法があれば、それを取るに越したことはありません。

ある数列で、 $f(\alpha)=0$ なる解 $\alpha$ に近づくものを以下のように考えます。

まず、$f(a)<0$ かつ、$f(b)>0$ となるようなよくわかっている数値 $a,b$ をとります。
また、$a\le x\le b$ において、$f’(x)>0$ が成り立つとします。
このとき、$a<x<b$ においてただ一つの解を持つのですが、さらに、$a\le x\le b$ において、$f’’(x)>0$ も成り立つとします。このとき、関数 $y=f(x)$ はこの範囲で、下に凸である
と分かります。

今回の宿題は、ニュートン法によってどのように、解 $\alpha$ の近似解を
得るのか?を説明してもらうことにしました。

その際、始めるのは、$x=b$ という解ではない値から $\alpha$ に近づいていきます。
$b=c_1$ とします。方法は以下のようです。

$c_1$ を使って、$\alpha$ により近い $c_2$ という値を次のようにして求めます。 
宿題は、関数の大体のグラフを書きながら説明をするとよいと思います。

まず、$x=c_1$ での関数の接線 $l_1$ をとります。
このとき、$l_1$ と $x$ 軸と交わったところを $c_2$ とするのです。

このとき、説明して欲しいことは、
  • $\alpha<c_2<c_1$ であること
  • $c_2=c_1-\frac{f(c_1)}{f’(c_1)}$ であること
です。さらに、$c_2$ を先ほどの $c_1$ の役目とすることで、接線 $l_2$ をとりその
$x$ 軸との交点 $x=c_3$ を求めます。このとき、同じように、
$\alpha<c_3<c_2<c_1$ となりますのでそれを説明してください。
そのとき、鍵になる言葉は、$f(x)$ がこの範囲で下に凸であるということです。

このとき、$c_1,c_2,c_3....$ は $\alpha$ に近づき、その収束先が $\alpha$ であること
を説明してください。

べき級数展開

これまで、ランダウの記号を用いて関数をマクローリン展開してきました。
(一部テイラー展開も)

このとき、そのあまりの $o(x^n)$ の項は、$x\to 0$ のとき、かなり速いスピードで $0$ になります。

しかし、$n\to \infty$ としたときもその項がゼロに向かうかどうかはよく分かりません。
つまり、十分小さい $x$ において、その余りの項がゼロに向かうとき、

そのような、$x$ において、
$$f(x)=f(0)+f’(0)x+\frac{f’’(0)}{2!}x^2+\frac{f^{(3)}(0)}{3!}x^3+\cdots $$
なる無限和を計算するような等式が成り立ちます。
この右辺のことをべき級数といい、このような展開式のことを
べき級数展開といいます。

この等式が成り立つのはどのような条件のときか?を考える必要があります。
実は、マクローリン展開(もしくはテイラー展開)の余りの項は、剰余項と言われ、
$$R_{n+1}(x)=\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}$$
とかかれます。$a=0$ の場合がマクローリン展開です。今、

$$f(x)=f(a)+f’(a)x+\frac{f’’(a)}{2!}(x-a)^2+\frac{f^{(3)}(a)}{3!}(x-a)^3+\cdots +\frac{f^{n}(a)}{n!}(x-a)^{n}+R_{n+1}(x)$$
であり、$c$ は $a$ と $x$ の間のある実数です。
条件は、$a$ の近くの $x$ において $|R_{n+1}(x)|\to 0$ であるなら、
この関数 $f(x)$ は $x=a$ の近くにおいてべき級数展開できることになります。

例えば、$f(x)=e^x$ として、$a=0$ とします。
このとき、$R_{n+1}(x)=\frac{e^c}{(n+1)!}x^{n+1}$ となります。
よって、$N$ をある整数とし、$x$ をある$|x|<N$ となる任意の実数とし、
$n$ を $n>N$ なる十分大きい自然数とする。このとき、
$$|R_{n+1}(x)|\le \frac{e^c}{(n+1)!}|x|^{n+1}\le \frac{e^{N}N^{n+1}}{(n+1)!}<e^{N}N^{N+1}\frac{N^{n-N}}{(n+1)\cdots (N+2)(N+1)}<e^{|N|}N^N\left(\frac{N}{N+1}\right)^{n-N}\to 0$$

よって、$N$ は任意の十分大きい自然数をとればよいので、
$f(x)=e^x$ は $x=0$ でべき級数展開をすることができ、
$$e^x=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots=\sum_{k=0}^\infty \frac{x^n}{n!}$$
なる等式が成り立ちます。上で書いたように、この等式は、任意の実数で成り立ちます。

このとき、当然 $x=0$ を入れても成り立つから、
$$e=1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+....=\sum_{k=0}^\infty \frac{1}{n!}$$
となります。

このように剰余項が収束するような $x$ に対して、値を代入することで
上のような無限級数の和の等式をいくつか求めてもらいました。

三角関数の不定積分

三角関数 $\sin x $ と $\cos x$ の不定積分は、
$$\int\sin xdx=-\cos x+C,\ \ \ \int\cos xdx=\sin x+C$$
と計算できます。

また、$\int\sin^nxdx$, $\int\cos^nxdx$, $\int \tan^nxdx$ の不定積分を
$2\le n\le 4$, $-4\le n\le -1$ まで計算してもらいました。

2017年6月18日日曜日

数学外書輪講I(第7回)

[場所1E501(月曜日5限)]

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今回もハミングの誤り訂正符号の話をしてもらいました。

$S$ をアルファベットの集合とします。
$S^n$ の元のことを $n$ 文字のメッセージということにします。

$C\subset S^n$ を符号とします。符号とはメッセージ全体のある部分集合のことを
いうのでした。

$d$ をハミング距離とします。
(これが本当に距離であることは先週確かめてもらいました。)

このとき、$d(C)=\min\{d(x,y)|x, y\in C\text{かつ}x\neq y\}$ と定義します。

また、$C$ が $t$ 個の誤りを直す ($C$ corrects $t$ errors)とは、
任意の $v\in C$ に対して、$d(u,v)\le t$ となる $u\in C$ はたかだか一つである。

ことと定義します。

今日解説してもらったところは、

$C$ が $t$ 個の誤りを直すことと $d(C)\ge 2t+1$ であることは同値

の部分です。
筆者によれば、「この証明は簡単にチェックできる」とのことですので、
やってもらいました。


数学の本で、簡単にチェックできると書いてあるところは、
証明することはもちろん簡単にできるので、読者が埋めて読みなさい
ということです。一から全て書いてあるようなきっちりとした教科書でしたら
全て書いてありますが、今回のような本は、基礎を目的とした本ではないので、
証明を書いてしまいますと、本題になかなか入れず、だらだらしてしまいます。

証明は、もちろん、イメージだけで証明するのではなく、定義にあるもののみを
用いて証明を作ります。

(証明)

(必要性)
$C$ が $t$ 個の誤りを直すとします。
そのとき、$d(C)\le 2t$ と仮定します。
$u,v\in C$ で、$d(u,v)=s\le 2t$ であるものをとります。
このとき、$u$ と $v$ の違うDigit のうち、$\left\lfloor\frac{s}{2}\right\rfloor$ を直し
たメッセージを $w$ とします。$s-\left\lfloor\frac{s}{2}\right\rfloor$ は間違えたままです。
よって、$d(u,w)=\left\lfloor\frac{s}{2}\right\rfloor\le \frac{s}{2}\le t$ であり、
$d(w,v)=s-\left\lfloor\frac{s}{2}\right\rfloor\le s-\frac{s+1}{2}=\frac{s-1}{2}< t$
となります。

しかし、$C$ が $t$ 個の誤りを直すはずなのに、$w\in S^n$ は $d(w,v),d(w,u)\le t$
となってしまい、矛盾。よって、背理法から $d(C)\ge 2t+1$ が成り立つ。

(十分性)
$d(C)\ge 2t+1$ であるとします。
そのとき、$C$ が $t$ 個の誤りを直さないと仮定します。
このとき、ある $u\in S^n$ に対して、$v,w\in C$ ($u\neq w$)が存在して、
$d(u,v)\le t$ かつ $d(u,w)\le t$ が成り立つ。
このとき、距離空間の三角不等式を用いて、$d(v,w)\le d(v,u)+d(u,w)\le t+t=2t$ となります。
よって、$d(C)$ の定義から、$d(C)\le 2t$ となり矛盾。
よって、背理法から $C$ は $t$ 個の誤りを直すということになります。


これにより、命題が証明されたことになります。

また、$C$ が線形コードである場合には、

$$d(C)=\min\{d(0,w)|w\neq 0\}$$

であることも証明してもらいました。


また、ハミングの線形コードに入る前に、
線形代数の重要な話が書いてありました。

ベクトル空間 $V$ に対して、その部分ベクトル空間 $W$ を表す方法は
2通りあり、それは、
  • 一次独立なベクトル ${\bf v}_1\cdots,{\bf v}_n\in V$ で生成される線形空間として、 $W$ を表す。
  • $A{\bf x}={\bf 0}$ なる連立一次方程式の解全体として $W$ を表す。
線形代数において、連立一次方程式 $A{\bf x}={\bf 0}$ を解けという問題は、
そのような ${\bf x}$ をいくつかのベクトルの線形和の形に表すことを意味します。
つまり、部分ベクトル空間の元を

方程式による表示を基底による生成表示に変えなさい。

という表示の変換問題だということになります。
なので、反対に、生成表示からベクトル全体を解にもつ方程式表示に変えなさい。
という問題もあります。そのような問題は、双対空間の基底を求める問題となるので
一年生の線形代数ではあまりやられていないような気がします。



33-Miniatures のこれ以降のハミングの理論の内容に入っていくのですが、
例題を通して理解していきましょう。

2017年6月15日木曜日

微積分I演習(物理学類)(第7,8回)

[場所1E103(金曜日5限)]

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第7回はレポートだけなので、それの解説と8回の内容を書きます。

第7回は
  • マクローリン展開を用いた不定形の極限
第8回は

  • 商、対数、ベキ乗関数のマクローリン展開
  • 三角関数の積分

をやってもらいました。


マクローリン展開を用いた不定形の極限

レポートで多くの人はできていたので、この部分は問題はないと思います。

今年の隣のクラスでも同じ内容のblogを書きましたのでここでリンクしておきす。
2017年度微積分I演習(数学類)第7回(リンク)



商のマクローリン展開を先にやっておきます。

商のマクローリン展開
これはどういうことかというと、
$\frac{1}{1-f(x)}$ のマクローリン展開のことです。
分子も何か関数 $g(x)$ があってもいいのですが、結局は、分母を展開した後、
かければいいので、$\frac{1}{1-f(x)}$ のマクローリン展開を考えます。

いま、$\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots +x^n+o(x^n)$ $(x\to 0)$ が成り立ちます。
また、$f(x)$ のマクローリン展開が 可能で、$f(0)=0$ であるとします。
このとき、$f(x)=f’(0)x+\frac{f’’(0}{2}x^2+\cdots$ と展開できます。

このとき、
$$\frac{1}{1-f(x)}=1+f(x)+f(x)^2+f(x)^3+\cdots +f(x)^n+o(f(x)^n)$$
が成り立ちます。
$o(f(x)^n)$ は $o(x^n)$ と書き換えられます。
なぜかというと、$h(x)=o((f(x))^n)$ であるとすると、
$$\frac{h(x)}{x^n}=\frac{h(x)}{f(x)^n}\frac{f(x)^n}{x^n}=\frac{h(x)}{f(x)^n}\left(\frac{f(x)}{x}\right)^n\to 0$$
なります。よって、$h(x)=o(x^n)$ が成り立ちます。

ゆえに、

$$\frac{1}{1-f(x)}=1+f(x)+f(x)^2+f(x)^3+\cdots +f(x)^n+o(x^n)$$
$$=1+\left(f’(0)x+\frac{f’’(0)}{2}x^2+\cdots\right)+\left(f’(0)x+\frac{f’’(0)}{2}x^2+\cdots\right)^2$$
$$+\cdots+\left(f’(0)x+\frac{f’’(0)}{2}x^2+\cdots\right)^n+o(x^n)$$
となり、展開して整理すれば、
$\frac{1}{1-f(x)}$ のマクローリン展開ができます。


例として、第7回のレポートを書いておきます。
問題は次の関数
$$f(x)=\frac{x}{\tan x}$$
のマクローリン展開でした。
もちろん、$f(0)=1$, $f'(0)=0$, $f''(0)=-\frac{2}{3}$, $f'''(0)=0$ $f^{(4)}(0)=-\frac{8}{15}$ 
とすれば、
$$f(x)=f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f''(0)}{3!}x^3+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+o(x^4)$$
$$=1-\frac{x^2}{3}-\frac{x^4}{45}+o(x^4)$$

と計算できます。しかし、ここでは、下にもあるように、もう少しやさしくやる方法を
考えます。つまり、上の4回微分までの値をさらっと書いてありますが、まぁまぁ
大変です。
その代わり、$\tan x$ の微分ならそれほど苦になりません。
つまり、
$$\tan x=x+\frac{x^3}3+\frac{2x^5}{15}+o(x^5)$$
がすぐに成り立ちます。奇関数であることから、奇数の項しかでてきません。

これを使うと、

$$\frac{x}{\tan x}=\frac{1}{1+\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)}$$
であることがわかります。

また、$\frac{1}{1+x}=1-x+x^2-x^3+\cdots +(-1)^{n-1}x^n+o(x^n)$
において $x$ の場所に $\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)$ を代入します。
このとき、$h(x)=o(x^4)$ なる関数として、

$\frac{\left(\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+h(x)\right)^4}{x^4}=\left(\frac{x}{3}+\frac{2x^3}{15}+\frac{h(x)}{x}\right)^4\to 0\ \ \ \ (x\to 0)$
が成り立ちます。よって、
$$o\left(\left(\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+h(x)\right)^4\right)=o(x^4)$$
となります。これを使って、
$$\frac{1}{1+\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)}=1-\left(\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)\right)+\left(\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)\right)^2-\left(\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)\right)^3$$
$$+\left(\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)\right)^4+o\left((\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4))^4\right)$$
$$=1-\left(\frac{x^2}{3}+\frac{2x^4}{15}+o(x^4)\right)+\left(\frac{x^4}{9}+o(x^6)\right)+o(x^6)+o(x^7)+o(x^4)$$
$$=1-\frac{x^2}{3}-\frac{x^4}{45}+o(x^4)$$
となります。

対数関数の合成のマクローリン展開

$$\frac{-f’(x)}{1-f(x)}=-f’(x)\left(1+f(x)+f(x)^2+f(x)^3+\cdots +f(x)^n+o(x^n)\right)$$
$$=a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots+a_nx^n+o(x^n)$$
と展開するとき、積分することで、
$$\log(1-f(x))=a_0x+a_1\frac{x^2}{2}+a_2\frac{x^3}{3}+\cdots+a_n\frac{x^{n+1}}{n+1}+o(x^{n+1})$$
となります。

$\int_0^x o(x^n)dx=o(x^{n+1})$ であることを示します。
$h(x)=o(x^n)$ であるとします。
$\int_0^x h(x)dx=H(x)$ であるとします。
$$\lim_{x\to 0}\frac{H(x)}{x^{n+1}}$$
を求めます。ロピタルの定理を用いると、
$$\lim_{x\to 0}\frac{\left(\int_0^x h(x)dx\right)’}{(n+1)x^n}=\lim_{x\to 0}\frac{h(x)}{(n+1)x^n}=0$$
となるので、
$\lim_{x\to 0}\frac{H(x)}{x^{n+1}}=0$ となります。
よって、$\int_0^x o(x^n)dx=o(x^{n+1})$ がいえます。

対数関数の合成のマクローリン展開は、次のようにして求めることができます。
$$\log(1-x)=x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+\cdots+\frac{x^n}{n}+o(x^n)$$
であるから、$f(x)=a_1x+a_2x^2+\cdots$ の展開を持つとすると、
$$\log(1-f(x))=f(x)+\frac{f(x)^2}{2}+\frac{f(x)^3}{3}+\cdots+\frac{f(x)^n}{n}+o(x^n)$$
とすることができます。

一次独立と一次従属

昨日手習い塾に行きましたら、とある先生のテスト返しが始まり、
多くの人が問題ありとのことで居残りにさせられていました。

その課題というのが、

一次独立と一次従属について

でした。

見た所、行列、数ベクトル空間、ランク、行列式などは学習しており、
一次独立、一次従属、線形結合など授業で既に習っており、そのテストだった模様です。

学生に、
「一次独立って知ってる?」と聞いてみると、

「はい、知っています。習いました。」との答え。

(なるほど。知っているんだな。感心、感心。)
と思って、さらに、

「じゃあ一次独立の定義は知っている?」とさらに聞いてみると、

「一次結合で表したら、その係数がゼロになる」

「何を表すの?」と問うと、

「だからベクトル....」

「どういうベクトル?」

だんだんしどろもどろになってきて、こちらも訳が分からなくなって来たので、
教科書か自分のノートを見返してもらうと、

ベクトル ${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ が
$c_1{\bf v}_1+\cdots +c_n{\bf v}_n={\bf 0}$なら$c_1=c_2=\cdots =c_n=0$

と書いてある文章を指差して、
「これです。」とのことで、そのまま読んでくれました。

しかし、その意味は?と言っても、やはり理解はしていないようです。
つまり、定義がわかるようになるのはただ文章を読むだけではダメなのです。



一次独立であるとはこういうことです。

いくつかのベクトル ${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_n$ があったとする。
次のような線形関係式
$$c_1{\bf v}_1+\cdots +c_n{\bf v}_n={\bf 0}$$
を考える。この関係式を満たす係数(スカラーともいう) $c_1,c_2,\cdots, c_n$ が
全てゼロの場合しかないとき、これらのベクトル ${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_n$ は
一次独立という。

また一次独立でないとき、それらのベクトルは一次従属という。


まず、最初に理解すべきことは、係数を全てゼロにしてしまえば
この線形関係式はいつでもなりたつということです。
というのも、一般に、ベクトル ${\bf v}$ に対して、$0{\bf v}={\bf 0}$ なので、
$$0{\bf v}_1+0{\bf v}_2+\cdots+0{\bf v}_n={\bf 0}+{\bf 0}+\cdots+{\bf 0}={\bf 0}$$
となり、この場合、上の線形関係式はいつでも成り立ちます。
このような関係のことを自明な関係式といいます。

しかし、それ以外に関係式を満たすような係数 $c_1,c_2,\cdots c_n$ があるのか?
つまりそのような自明な関係の他に関係があるか?ということを問題にしているのです。

つまり、ベクトル ${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_n$ が一次独立であるとは、
そのような自明でない関係が全く見つからないことをいうのです。

(例1)
$n=1$ とし、${\bf v}_1={\bf 0}$ とします。このとき、係数として $c_1=1$ などととって
おけば、$1\cdot {\bf 0}={\bf 0}$ となり、
$$c_1{\bf v}_1={\bf 0}$$
だが、$c_1\neq 0$ を満たすようにとれる。
だから、ゼロベクトルは一次独立でいられないので、いつでも一次従属となります。

しかし、${\bf v}_1\neq {\bf 0}$ であるとします。このとき、$c_1{\bf v}_1={\bf 0}$ を満たす
$c_1\neq 0$ を探します。もしあるとすると、
$\frac{1}{c_1}$ をこのベクトルにかけてやって、
$$\frac{1}{c_1}c_1{\bf v}_1={\bf v}_1={\bf 0}$$
となります。しかし、前提として ${\bf v}_1\neq {\bf 0}$ であったので、矛盾します。
ゆえに、そのような $c_1$ は存在しないということになります。
つまり、ゼロベクトルでないベクトル ${\bf v}_1$ は一つのベクトルとして
一次独立であることがわかります。

(例2)
$n=2$ とし、${\mathbb R}^2$ において ${\bf v}_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$ かつ ${\bf v}_2=\begin{pmatrix}-1\\0\end{pmatrix}$ とします。
このとき、${\bf v}_1+{\bf v}_2={\bf 0}$ となります。
つまり、$c_1=c_2=1$ として、$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2={\bf 0}$ となるような
例が作れました。
よって、この2つのベクトル ${\bf v}_1,{\bf v}_2$ は一次従属となります。
さらにいえば、どちらもゼロベクトルではありません。

一般に、2つのベクトル ${\bf v}_1,{\bf v}_2$ が平行であるとき、つまり、
あるスカラー $c$ があって、${\bf v}_2=c{\bf v}_1$ であるなら、それらのベクトルは
一次従属です。
なぜなら、$c{\bf v}_1-{\bf v}_2={\bf 0}$ という線形関係式が作れて、係数 $c,-1$ は当然
どちらもゼロになってない。

一方、${\bf v}_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$ かつ ${\bf v}_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$ としてみます。このとき、
$$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2={\bf 0}$$
なる線形関係式に $(c_1,c_2)=(0,0)$ 以外の解があるかどうかを考えてみます。
上の式を整理すると、
$$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\end{pmatrix}$$
となるので、$c_1=c_2=0$ となります。
つまり、この関係式から、どちらもゼロという条件が出てしまいます。

これは、自明な関係式以外に関係がないということを表しているのです。

また、2つのベクトルが一次独立であれば、必ず平行にはなりません。
もしそうだとすると、上で書いたように一次従属になってしまうからです。
つまり、

2つのベクトルが一次従属であるとは、
その2つのベクトルが平行であるか、もしくは一方がゼロベクトルであること。

となります。式で書けば、2つのベクトルの線形関係式に全てゼロでない係数をもつものが存在することと言っても同じことなのです。つまり、一次独立であるとは、2つのベクトルが平行でない、全く関係のない方向に向いているということです。平面上の直線のイメージで言えば、一点で交わるものとどこまでいっても交わらないもの(直線として一致しているものも含む)として区別されます。

そして、3つ以上のベクトルが一次独立であるということも、同じように、${\mathbb R}^3$ の元を用いて考えることができます。そのとき、

3つのベクトルが一次従属であるとは
その3つのベクトルが同一平面上にあるか、もしくはその一つがゼロベクトルであること。

となります。

3つの一次独立なベクトルは、例えば、たてよこたかさの3つの全く違う方向を向いたベクトル同士をイメージします。

これでひとまず、一次独立の定義に関する説明は終わります。
定義を知っているというと、教科書の記述を指差すだけではなく、
ここまでの説明を一人でできるようになることを意味します。
そのためには、自分で例を考えたり、いくつか問題を解いてみないといけません。


この先生のテストで出ていた問題の一つをここで解説しておきます。


問題
次の命題は正しいか?
${\bf v}_1, {\bf v}_2,\cdots {\bf v}_n\in {\mathbb R}^m$ が一次独立なら、
$n\le m$ である。


一次独立というベクトルの線形関係式に関する性質のどこからこの不等式が来るのか?
初めてみた人は甚だ疑問に思うかもしれません。

もし分からなければ対偶をとってみます。すると、

$m<n$ ならば、${\bf v}_1, {\bf v}_2,\cdots {\bf v}_n\in {\mathbb R}^m$ は一次従属である。

となります。つまり、空間の次元より多くベクトルを取ってやるといつのまにか
一次従属になってしまうということです。

一次従属のさっきの感覚があれば、例えば、${\mathbb R}$ において、ベクトルとは、原点を通る直線(もしくはゼロ)なので、直線のむかう先は無限の方向、2個以上とると、
どうしたって平行になってしまう。つまり一次従属になってしまいます。

また、平面の場合でも、3個以上取ってしまうと、2個までが平行でなくても、
3つのベクトルが同一平面上にあるわけだから一次従属なってしまう。

どうやらこの命題は正しそうです。

しかし、一般にどうやって証明をするのか?
もちろん、使えるのは一次独立などの定義や、ベクトルの演算のみ。

${\bf e}_i$ を ${\mathbb R}^m$ の元で、$i$ 番目が $1$ で、他が $0$ となる基本ベクトル
とします。つまり、${\bf e}_1,\cdots, {\bf e}_m$ だけあります。

このとき、${\bf v}_j=\sum_{k=1}^ma_{kj}{\bf e}_k$ のように書くことができます。
$a_{kj}$ は ${\bf v}_j$ の第 $k$ 成分ということです。

そうすると、上の関係式は、
$$c_1{\bf v}_1+\cdots +c_n{\bf v}_n=c_1\sum_{k=1}^ma_{k1}{\bf e}_k+\cdots +c_n\sum_{k=1}^ma_{kn}{\bf e}_k$$
$$=\sum_{i=1}^m\left(\sum_{j=1}^nc_ja_{ij}\right){\bf e}_i={\bf 0}$$
となり、$A=(a_{ij})$ とすると、
$$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_n\end{pmatrix}={\bf 0}\ \ \ (\ast)$$
となります。
ここで、$A$ は $ij$ 成分が $a_{ij}$ となる行列です。

このとき、問題は、この連立一次方程式に自明な解 $\begin{pmatrix}0\\0\\\vdots\\0\end{pmatrix}$ 以外に解を持つか?
という問題を考えます。(今はそれ以外に解をもつことを示したい。)

条件は、$m<n$ なのでこの行列が横長であることです。

つまり、連立一次方程式 $(\ast)$ を解けばよいのです。

連立一次方程式の解き方は、係数行列 $A$ に行列の(行の)基本変形をしていき、
階段行列にしたあと、パラメータのある部分とそうでない部分に分けられ
完全に解を与えるというものです。
このブログでも何回か書いてきました。
例えば、

2016年線形代数続論演習第1回(リンク)
2014年線形代数II演習第5回(リンク)
です。(よくみたら、最近3年は線形代数Iの方の授業はしていませんでした。)


つまり、係数行列 $A$ を基本変形をして、下のような階段行列 $B$ をえることができます。
$B$ を縦ベクトルの集まりとして、
$$B=({\bf b}_1{\bf b}_2\cdots {\bf b}_n)$$
として書いた時に。そのいくつか $\{{\bf b}_{i_1},\cdots, {\bf b}_{i_r}\}$ が
${\mathbb R}^m$ の基本ベクトルになっており、それ以外の縦ベクトルは、
その基本ベクトルの一次結合で書ける。

そのような行列 $B$ まで基本変形で変形していけるのです。

${\mathbb R}^m$ には基本ベクトルはたかだか $m$ 個しかありませんので、
必然的に、$r\le m$ です。

今、$m<n$ であるとすると、特に、$r<n$ であり、縦ベクトルは全部で
$n$ 個あるので、それ以外の基本ベクトルの一次結合でかけるようなベクトル
${\bf b}_k$ が存在します。

つまり、${\bf b}_k=c_{i_1}{\bf b}_{i_1}+\cdots +c_{i_r}{\bf b}_{i_r}$ となります。
よって、$\{{\bf b}_k,{\bf b}_{i_1},\cdots, {\bf b}_{i_r}\}$ は一次従属だということになります。

よって、$\{{\bf b}_1,{\bf b}_2,\cdots, {\bf b}_m\}$ も一次従属となり、
$c_1{\bf b}_1+c_2{\bf b}_2+\cdots+ c_m{\bf b}_m={\bf 0}$ なる全てゼロでない係数
$c_1,\cdots, c_n$ が存在します。
よって、$B\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_n\end{pmatrix}={\bf 0}$ に自明でない解が
存在し、とくに、$(\ast)$ にも自明でない解が存在することになります。

これは、元に戻って ${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots ,{\bf v}_n$ が一次従属であることが証明されました。

つまり、$m<n$ ならば、${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots ,{\bf v}_n$ が一次従属であることになり、元の命題に直せば、
${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots ,{\bf v}_n$ が一次独立ならば、$n\le m$ が成り立つ。

よって命題は正しい。

2017年6月14日水曜日

微積分I演習(数学類)(第7回)

[場所1E103(水曜日4限)]

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今回は
  • マクローリン展開を用いた不定形の極限
  • 商のマクローリン展開
です。

マクローリン展開を用いて不定形の極限を求める方法

この方法は、不定形の極限を求める時、一番直接的で確実な方法です。
実は、問題を作るときは、いつものこの方法で、関数を展開してみて
からやっています。

もちろん、1,2回のロピタルの方法で求められる場合は、その方が便利な場合もあります。

まず、$f(x),g(x)\to 0 (x\to 0)$ であるとします。
また、$f(x),g(x)$はある程度微分可能であるとします。
このとき、$f(x),g(x)$ は $x=0$ でマクローリン展開可能で、
$f(x)=a_nx^n+a_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)$
かつ
$g(x)=b_mx^m+b_{m+1}x^{m+1}+\cdots +o(x^k)$
であるとします。ただし、$a_n\neq 0$ かつ $b_m\neq 0$ であるとします。
このとき、最初の $f(x), g(x)$ の条件から、$n,m>0$ となります。

このとき、もし、$n=m$ であれば、
$$\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{a_n}{b_n}$$
が成り立ちます。

というのも、
$$\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to 0}\frac{a_nx^n+a_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)}{b_nx^n+b_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)}=\lim_{x\to 0}\frac{a_n+a_{n+1}x+\cdots +o(x^{k-n})}{b_n+b_{n+1}x+\cdots+o(x^{k-n})}=\frac{a_n}{b_n}$$
となるからです。
最後の等式は、$a_{n+1}$ や $b_{n+1}$ 以降の項に $x\to 0$ とすれば、
すべて $0$ に収束するので成り立ちます。
つまり、この場合、トップの項以外は計算する必要はありません。

$n<m$ であるとすると、極限は、

$$\lim_{x\to }\frac{a_n+a_{n+1}x+\cdots +o(x^{k-n})}{b_mx^{m-n}+b_{m+1}x^{m-n+1}+\cdots +o(x^{k-n})}$$

であるので、分母が $0$ に向かい、分子が有限の値に向かうので、この不定形の極限は $\infty$ ということになります。

逆に、$m<n$ であるとすると、極限は、

$$\lim_{x\to }\frac{a_nx^{n-m}+a_{n+1}x^{n-m}+\cdots +o(x^{k-m})}{b_m+b_{m+1}x+\cdots +o(x^{k-m})}$$

であるので、分子が $0$ に向かい、分母が有限の値に向かうので、
この不定形の極限は $0$ に収束します。

例えば、

$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x-\tan x}{(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)}$ を求めるとすると、
ロピタルの定理を用いると、まぁまぁめんどくさそうです。

しかし、関数のそれぞれの展開を知っていれば、

$\sin x=x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)$ 、$\tan x=x+\frac{x^3}{3}+o(x^3)$ 、
$$(1-e^x)^2=(x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+(x^3))^2=(x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6})^2+o(x^3)$$
$$=x^2+x^3+o(x^3)$$
$$\text{arcsin}(x)=x+\frac{x^3}{6}+o(x^3)$$
となるので、
$$\sin x-\tan x=-\frac{1}{2}x^3+o(x^3)$$
$$(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)=(x^2+x^3+o(x^3))\left(x+\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)=x^3+o(x^3)$$
よって、
$$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x-\tan x}{(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)}=\lim_{x\to 0}\frac{-\frac{1}{2}x^3+o(x^3)}{x^3+o(x^3)}=-\frac{1}{2}$$
だとわかります。

この場合、ロピタルを使うと、だいたい3回くらいは微分をしないと
求められないです(一回微分すると次数が一つ落ちるので)。
そういうわけで、意地が悪い問題(ロピタルの定理を何回か適用しないと求められない問題)
を作ろうとすれば、分母分子の展開の非ゼロ係数の次数が高いものを
分母と分子に選んでもってこればよいということになります。


商のマクローリン展開について

マクローリン展開したものをかけたものの求め方はよくやっているので
どこかで、割ったものはどうするのか?についてやろうと思っていました。

今回の授業のように、$\frac{f(x)}{g(x)}$ のマクローリン展開を求めるのに、
ただひたすら商の微分法を用いて展開している人がいました。

もちろんそれでも求まりますが、商の微分法をあまり使いたくありません。

それに、基本的な公式さえ押さえていれば、微分も使わななくても
マクローリン展開を求めることだってできます。

いくつかのマクローリン展開を組み合わせればよいということです。

例えば、高校の頃にならった等比級数の和の公式は、今や、関数 $\frac{1}{1-x}$ の
マクローリン展開だと思えます。

$$\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots+x^n+o(x^n)$$

この公式を使えば、分母の $1+x$ は下に降りて分数関数ではなくなっています。

そうすると、例えば、
$\frac{\cos x}{1-\sin x}$ などの展開は、
$$\cos x(1+\sin x+\sin^2x+\cdots \sin^nx+o((\sin x)^n))$$
となり、$\cos x=1-\frac{x^2}{2}+o(x^3)$ や $\sin x=x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)$ などを代入すれば、
$$\left(1-\frac{x^2}{2}+o(x^3)\right)\left(1+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^2+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^3+o(x^3)\right)$$
これを展開して整理すれば、
$$1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+o(x^3)$$
と計算できます。

さらに、$o((\sin x)^n)=o(x^n)$ を示す必要がありますが、
$f(x)=o((\sin x)^n)$ である関数を任意に $f(x)$ とおくと、

$$\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{x^n}=\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{\sin^n x}\frac{\sin^nx}{x^n}=0$$
となるので、$f(x)=o(x^n)$ が成り立ち、$o((\sin x)^n)=o(x^n)$ が成り立ちます。

また、プリントにも書きましたが、

$\log(1+f(x))$ のマクローリン展開についても同じようできます。

これは、そもそも、一回微分して、$\frac{f’(x)}{1+f(x)}$ としてから今の商のマクローリン展開の方法を用い、もう一度積分して元に戻すということでも求められます。

同じ考えのもと、直接 $\log(1+x)$ のマクローリン展開

$$\log(1+x)=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}3+\cdots +(-1)^{n-1}\frac{x^n}{n}+o(x^n)$$
を用いて、
$$\log(1+f(x))=f(x)-\frac{f(x)^2}{2}+\frac{f(x)^3}3+\cdots +(-1)^{n-1}\frac{f(x)^n}{n}+o(f(x)^n)$$
としても構いません。
また、$f(0)=0$ である関数であれば、上と同じように、$o(f(x)^n)=o(x^n)$ 
と直せることがわかります。

今回の宿題では、

$f(x)=o(1)$ なる関数の
$$\sqrt{1+f(x)}$$ の展開についての問題を出しました。

2017年6月12日月曜日

数学外書輪講I(第6回)


[場所1E501(月曜日5限)]

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今回は、宿題に出した Matousek のMiniature 5の発表でした。

内容として理解できるか心配でしたが、その点、大丈夫だったようです。
ただ、多くの人がそうだったように、途中で言っていることがわからなかったところが
いくつかあったようです。

ハミングの誤り訂正符号の理論

この説明をしてもらいました。
目標は、この理論を説明とその理論的な裏付け、そして例の説明をするということ
です。

この理論について全く知らない人向けた発表を意識してみると良いと思います。

以下、説明して欲しい項目です。
  • 符号とは何か?
  • 誤りを訂正するとはどういうことか?
  • そのとき、ハミングはどのような方法をとったのか?
の、理論のアウトラインと、
  • ハミング距離の定義
  • その性質(ハミング距離とエラー訂正に関する関係(不等式))
に関する理論的な説明です。


誤り訂正をすることをなんとなく説明もすることはできますが、
数学を使って説明をすることもできます。

その説明のために、
  • 符号とはなにか?
  • そもそもメッセージとはなにか?
についての基礎理論から入る必要があります。


符号についての基礎理論

メッセージとは、アルファベット(文字)の集合 $S$ に対して、その $S$ を一列に
並べた集合 $S^n=\{(s_1,s_2,\cdots,s_n)|s_n\in S\} $ を $n$ 文字のメッセージ
(もしくは $n$ 文字のワード)といいます。

まず、メッセージとはそうした$n$ 文字のワードのことです。
あるメッセージを伝達するということは、$S^n$ の元 ${\bf v}$ のコピーを
離れた相手にことを伝えることをいいます。伝送すること自体は数学的には
何も意味はありません。

このとき、${\bf v}\in S^n$ を伝える時に、その情報のコピーではなく、それが
一部誤りを持って伝わったとします。
このとき、${\bf v}$ に対して ${\bf v}’\in S^n$ を受信する場合があります。

このとき、いかに、${\bf v}’$ から正しい ${\bf v}$ を復元できるか?
ということを考えることに意味があり、
それを誤り訂正符号理論(error-correcting code theory)です。

この英語の名前を見るとわかるように、error-correcting(誤りを訂正できるような)
という形容詞です。つまり、codeに誤りを訂正できるようなシステムが存在する、
つまり、コードは単なるメッセージを表す以外に、訂正する仕組みも
導入されています。

どのようにしてコードが誤りを訂正できるか?というと、
オリジナルのメッセージ(伝えたいメッセージ)と送るメッセージの間に
ギャップをつけることです。このことは、前回のblog(リンク)にも書きました。
オリジナルのメッセージの集合を $S^k$ (この部分集合かもしれない)としたら、

送信するメッセージは、$S^n$ の元となります。(一般に、$k<n$ となります。

つまり、単射な写像

$$S^k\to C\subset S^n$$

なる写像と見なせます。$S^n$ は送信するメッセージの集合となります。
単射である理由は、送った後に、再びオリジナルのメッセージが復元できないといけないからです。つまり送った像から、$S^k$ のもとの元に戻る操作が存在しなければ
ならないからです。

このとき、このメッセージの部分集合 $C\subset S^n$ をコードと言います。
よって、コードとは、メッセージの集合の部分集合となります。

$S^n$ を線形空間とし、$C$ をその線形部分空間としたときに、そのようなコードを
線形コード(linear code)といいます。

例えば、$S$ を2元体 ${\mathbb F}_2$ とする場合が一般的です。

例えば、メッセージを送った時に、$C$ から外れてしまったメッセージを受信側で
受け取ったとすると、その時点でエラーが発生しているとわかります。
もちろん、$C$ から外れていなくてもエラーがないとは言えませんが、
この場合、外れたものは少なくとも修正ができるということです。

このとき、さらに、外れたコードから正しいと推定されるコードを
ただ一つ見つけることができます(正しくはそのようなコードを作ることができます)。

ハミングの考えは、外れたものから最短のものをみつけることでそれを行うことができる
ということです。

ハミング距離とは、エラーをしている部分を数えることで定義されます。

つまり、ハミング距離とは、

${\bf v}=(k_1,\cdots,k_n)$ ${\bf w}=(l_1,\cdots,l_n)$ とするときに、
$$d({\bf v},{\bf w})=|\{i\in\{1,2,\cdots,n\}|k_i\neq l_i\}|$$
とすることでそのハミング距離とします。

今回の授業では、このハミング距離が、一般的な距離空間の距離として定義されている
ということを示してもらいました。ちなみに、この絶対値は集合の要素の数です。

${\bf v}$ をおくったのに、外れてしまった ${\bf v}’$ に対して、ハミング距離が最短の
$C$ の元 ${\bf w}$ をみつけてやれば、コードの元として正しいと推定される元を
みつけることができますが....

コード $C\subset S^n$ を指定した時に、そのコードにかなり高確率で修正することができる
距離が存在します。それが、correct $t$ error とよばれる $t$ です。
$C$ から、$t$ なる距離は、$d(C)\ge 2t+1$ となります。$d(C)$ は $C$ に含まれる相異なる2元の最小距離です。つまり、${\bf w}$ と ${\bf v}’$ の距離が $t$ 以下であれば、
そのような ${\bf w}$ はただ一つ $C$ の中に存在し、${\bf v}$ と ${\bf w}$ かなりの
確率で同じメッセージといえます。