[場所1E103(水曜日4限)]
HPに行く.
今日は試験を行い、採点を行いました.
各問題における得点率は下のようになりました.
80点満点+10
受験者:19人
平均点:51.5点
最高得点:79点
60点以上:4人
問題ごとの得点率です.
以下問題の解説と解答です.
問題15-1
商空間に対して説明します.$V$ をベクトル空間として $W$ を $V$ の部分ベクトル空間とする.このとき、$V$ の元 ${\bf v}$ と ${\bf v}'$ が ${\bf v}-{\bf v}'\in W$ を満たすとき、このベクトル ${\bf v}$ と ${\bf v}'$ を同一視することで、$V$ 全体を幾つかの同値類に分ける.
このとき、できるクラス全体を $V/W$ とかく.この $V/W$ は以下のようにしてベクトル空間となる.${\bf v}\in V$ に属するクラスを $[{\bf v}]$ と書くことにすれば、
$[{\bf v}]+[{\bf w}]=[{\bf v}+{\bf w}]$
$\lambda[{\bf v}]=[\lambda{\bf v}]$
として和とスカラー倍を定義する.
この定義は、一見、${\bf v}$ や ${\bf w}$ に依存して定義されるように見えるが、それらの代表元を取り替えて計算しても計算されるクラスは同じものになる.(Well-defined性)
(このWell-defined性についても確かめてもよいです)
また、$V/W$ の別の見方として、$[{\bf v}]\in V/W$ を ${\bf v}$ を通る $W$ に平行な空間としてみる見方である.このとき、上の和は、${\bf v}$ を通る $W$ と平行な空間と ${\bf w}$ を通る $W$ に平行な空間全体の足し算を ${\bf v}+{\bf w}$ を通る $W$ と平行な空間として定義したことになる.
(コメント)
商空間がどういうものかということをなんとなく書いている人が多かったです.
なかには、整数全体がベクトル空間になり、商空間として、${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ をあげている人がいましたが、これはベクトル空間の商空間ではありません.
${\mathbb Z}$ がベクトル空間だと言っている人は、半期何を聞いていたのでしょうか?
商空間を構成したとき、それがベクトル空間になるということが重要ですので、
とりあえず、和とスカラー倍くらいは定義してください.
問題15-2
$$\{1+2x,-1+x-x^2,3+3x+x^2,1+x^2,-3+4x-4x^2\}$$
のうち一次独立なベクトルを最大数選べという問題でしたが、大部分の人は、基底をとって、
$$(1,x,x^2)\begin{pmatrix}1&-1&3&1&-3\\2&1&3&0&4\\0&-1&1&1&-4\end{pmatrix}$$
としていました.しかし、この簡約化が正しくできなかった人が多かったです.
簡約化すると、
\begin{pmatrix}1&0&2&0&1\\0&1&-1&0&2\\0&0&0&1&-2\end{pmatrix}
この簡約化に頼らずやっている人も多く、せっかく簡約化をしたのにその使い方がわかっていない人が多かったです.
この簡約化を見ることで、標準ベクトルになっている列が1列目、2列目、4列目とあります.よって、元のベクトルにおいても、一次独立なベクトルとして、1つ目、2つ目、4つ目となり、つまり多項式で言えば、それぞれ、$1+2x, -1+x-x^2, 1+x^2$ となります.
また、他の2つのベクトルがその一次独立なベクトルのどのような一次結合かも、この簡約化でわかります.つまり、3つ目、5つ目のベクトル$\begin{pmatrix}2\\-1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\2\\-2\end{pmatrix}$
の係数を読むことで、この係数通り、
$3+3x+x^2=2(1+2x)-(-1+x+x^2)$
$-3+4x-4x^2=1+2x+2(-1+x-x^2)-2(1+x^2)$
となることもわかります.
問題15-3
この3番の問題が意外にもできが悪かったです.
まず、問題の出し方を少し今までと変えてみました.
今までは、${\mathbb R}[x]_2$ のことをわざわざ言葉で、2次以下の多項式と言っている点です.これは同じことを言っていることがわからず、2次のもの、1次のもの、定数のものと分けて議論を始めている人がいました.これでは、結果はベクトル空間になりませんね。
どのようなベクトル空間か?という問いも初めてかもしれませんが、どのようなベクトルで生成されるベクトル空間か?という問いだと解釈しても構いません.
また、いつも通り、数ベクトルで答えを書いている人がおり、問題で言われているどのようなベクトル空間かという問いの答えになっていないのは明らかです.
また、$f(x)=f(1-x)$ という形も見慣れないのかもしれませんが、$f(x)=f(1-x)$ を満たす多項式全体ということは、線形写像 $F:{\mathbb R}[x]_2\to {\mathbb R}[x]_2$ で、 $F(f(x))=f(x)-f(1-x)$ なるものの核を求めればよいという解釈ができるかどうか.
つまり、$\text{Ker}(F)=\{f(x)\in {\mathbb R}[x]_2|f(x)-f(1-x)=0\}$ です.
そうでなくても、$f(x)=a+bx+cx^2$ として、$a,b,c$ の連立方程式を導けばよいはずです.
ただ、代入して整理することで
$(b+c)-2(b+c)x=0$ という方程式が得られます.
この後、因数分解をして、$(b+c)(1-2x)=0$ とすることで、$b+c=0$ であるときと、
$b+c\neq 0$ と場合わけをして、後者は、$x=\frac{1}{2}$ を導いている人がいました.
$y=f(x)$ と $y=f(1-x)$ の交点を求めているわけではありません.
この場合は $f(x)=f(1-x)$ は $x$ の方程式と成ってしまいます.
ここでの $f(x)=f(1-x)$ なる方程式は、それを満たす $f(x)$ を求めること、つまり、この関数等式を恒等式として満たすような $f(x)$ の全体を求めよということがわかっていなかったと思われます.
つまり、$(b+c)(1-2x)=0$ を $x$ がどんな値でも満たすようにしなさいということだから、$b+c=0$ となるのです.また、この式で、$a$ は何でもよいわけだから、独立な変数となります.
つまり、$f(x)=ax^2+bx+c$ のうち恒等式として $f(x)=f(1-x)$ を満たすような多項式は、
$1$ と $x-x^2$ の線形和、式で書くと、$\langle 1,x-x^2\rangle$ と書いてあったものはマルにしました.
関数等式というのは、関数としての等式なので、方程式ではありません.
恒等式ということです.
また、何を勘違いしたのか、$f(x)\mapsto f(1-x)$ という線形写像だと思った人もいました.
さらに、なぜか、表現行列を求めようとした人がいました.そのような解答は支離滅裂でもう読めません.
この問題は、$x$ と $1-x$ を入れ替えても同じ多項式を求めなさいというわけなので、
$t_1=x$ と $t_2=1-x$ の対称式と考えても構いません.
$t_1,t_2$ の対称式だから、定数項、$t_1+t_2,t_1t_2,....$ となり、2次以下の多項式だから(この定理は対称式に関する深い定理です)、$1,t_1+t_2,t_1t_2$ で生成されるはずです.
$t_1+t_2$ は定数になってしまうので、結局、$1,t_1t_2$ で生成されたということになるのです.
HPに行く.
今日は試験を行い、採点を行いました.
各問題における得点率は下のようになりました.
80点満点+10
受験者:19人
平均点:51.5点
最高得点:79点
60点以上:4人
問題ごとの得点率です.
問題 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
得点率(%) | 49.1 | 88.7 | 56.3 | 91.5 | 29.2 | 10.5 |
以下問題の解説と解答です.
問題15-1
商空間に対して説明します.$V$ をベクトル空間として $W$ を $V$ の部分ベクトル空間とする.このとき、$V$ の元 ${\bf v}$ と ${\bf v}'$ が ${\bf v}-{\bf v}'\in W$ を満たすとき、このベクトル ${\bf v}$ と ${\bf v}'$ を同一視することで、$V$ 全体を幾つかの同値類に分ける.
このとき、できるクラス全体を $V/W$ とかく.この $V/W$ は以下のようにしてベクトル空間となる.${\bf v}\in V$ に属するクラスを $[{\bf v}]$ と書くことにすれば、
$[{\bf v}]+[{\bf w}]=[{\bf v}+{\bf w}]$
$\lambda[{\bf v}]=[\lambda{\bf v}]$
として和とスカラー倍を定義する.
この定義は、一見、${\bf v}$ や ${\bf w}$ に依存して定義されるように見えるが、それらの代表元を取り替えて計算しても計算されるクラスは同じものになる.(Well-defined性)
(このWell-defined性についても確かめてもよいです)
また、$V/W$ の別の見方として、$[{\bf v}]\in V/W$ を ${\bf v}$ を通る $W$ に平行な空間としてみる見方である.このとき、上の和は、${\bf v}$ を通る $W$ と平行な空間と ${\bf w}$ を通る $W$ に平行な空間全体の足し算を ${\bf v}+{\bf w}$ を通る $W$ と平行な空間として定義したことになる.
(コメント)
商空間がどういうものかということをなんとなく書いている人が多かったです.
なかには、整数全体がベクトル空間になり、商空間として、${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ をあげている人がいましたが、これはベクトル空間の商空間ではありません.
${\mathbb Z}$ がベクトル空間だと言っている人は、半期何を聞いていたのでしょうか?
商空間を構成したとき、それがベクトル空間になるということが重要ですので、
とりあえず、和とスカラー倍くらいは定義してください.
問題15-2
$$\{1+2x,-1+x-x^2,3+3x+x^2,1+x^2,-3+4x-4x^2\}$$
のうち一次独立なベクトルを最大数選べという問題でしたが、大部分の人は、基底をとって、
$$(1,x,x^2)\begin{pmatrix}1&-1&3&1&-3\\2&1&3&0&4\\0&-1&1&1&-4\end{pmatrix}$$
としていました.しかし、この簡約化が正しくできなかった人が多かったです.
簡約化すると、
\begin{pmatrix}1&0&2&0&1\\0&1&-1&0&2\\0&0&0&1&-2\end{pmatrix}
この簡約化に頼らずやっている人も多く、せっかく簡約化をしたのにその使い方がわかっていない人が多かったです.
この簡約化を見ることで、標準ベクトルになっている列が1列目、2列目、4列目とあります.よって、元のベクトルにおいても、一次独立なベクトルとして、1つ目、2つ目、4つ目となり、つまり多項式で言えば、それぞれ、$1+2x, -1+x-x^2, 1+x^2$ となります.
また、他の2つのベクトルがその一次独立なベクトルのどのような一次結合かも、この簡約化でわかります.つまり、3つ目、5つ目のベクトル$\begin{pmatrix}2\\-1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\2\\-2\end{pmatrix}$
の係数を読むことで、この係数通り、
$3+3x+x^2=2(1+2x)-(-1+x+x^2)$
$-3+4x-4x^2=1+2x+2(-1+x-x^2)-2(1+x^2)$
となることもわかります.
問題15-3
この3番の問題が意外にもできが悪かったです.
まず、問題の出し方を少し今までと変えてみました.
今までは、${\mathbb R}[x]_2$ のことをわざわざ言葉で、2次以下の多項式と言っている点です.これは同じことを言っていることがわからず、2次のもの、1次のもの、定数のものと分けて議論を始めている人がいました.これでは、結果はベクトル空間になりませんね。
どのようなベクトル空間か?という問いも初めてかもしれませんが、どのようなベクトルで生成されるベクトル空間か?という問いだと解釈しても構いません.
また、いつも通り、数ベクトルで答えを書いている人がおり、問題で言われているどのようなベクトル空間かという問いの答えになっていないのは明らかです.
また、$f(x)=f(1-x)$ という形も見慣れないのかもしれませんが、$f(x)=f(1-x)$ を満たす多項式全体ということは、線形写像 $F:{\mathbb R}[x]_2\to {\mathbb R}[x]_2$ で、 $F(f(x))=f(x)-f(1-x)$ なるものの核を求めればよいという解釈ができるかどうか.
つまり、$\text{Ker}(F)=\{f(x)\in {\mathbb R}[x]_2|f(x)-f(1-x)=0\}$ です.
そうでなくても、$f(x)=a+bx+cx^2$ として、$a,b,c$ の連立方程式を導けばよいはずです.
ただ、代入して整理することで
$(b+c)-2(b+c)x=0$ という方程式が得られます.
この後、因数分解をして、$(b+c)(1-2x)=0$ とすることで、$b+c=0$ であるときと、
$b+c\neq 0$ と場合わけをして、後者は、$x=\frac{1}{2}$ を導いている人がいました.
$y=f(x)$ と $y=f(1-x)$ の交点を求めているわけではありません.
この場合は $f(x)=f(1-x)$ は $x$ の方程式と成ってしまいます.
ここでの $f(x)=f(1-x)$ なる方程式は、それを満たす $f(x)$ を求めること、つまり、この関数等式を恒等式として満たすような $f(x)$ の全体を求めよということがわかっていなかったと思われます.
つまり、$(b+c)(1-2x)=0$ を $x$ がどんな値でも満たすようにしなさいということだから、$b+c=0$ となるのです.また、この式で、$a$ は何でもよいわけだから、独立な変数となります.
つまり、$f(x)=ax^2+bx+c$ のうち恒等式として $f(x)=f(1-x)$ を満たすような多項式は、
$1$ と $x-x^2$ の線形和、式で書くと、$\langle 1,x-x^2\rangle$ と書いてあったものはマルにしました.
関数等式というのは、関数としての等式なので、方程式ではありません.
恒等式ということです.
また、何を勘違いしたのか、$f(x)\mapsto f(1-x)$ という線形写像だと思った人もいました.
さらに、なぜか、表現行列を求めようとした人がいました.そのような解答は支離滅裂でもう読めません.
この問題は、$x$ と $1-x$ を入れ替えても同じ多項式を求めなさいというわけなので、
$t_1=x$ と $t_2=1-x$ の対称式と考えても構いません.
$t_1,t_2$ の対称式だから、定数項、$t_1+t_2,t_1t_2,....$ となり、2次以下の多項式だから(この定理は対称式に関する深い定理です)、$1,t_1+t_2,t_1t_2$ で生成されるはずです.
$t_1+t_2$ は定数になってしまうので、結局、$1,t_1t_2$ で生成されたということになるのです.
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