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2016年2月8日月曜日

トポロジー入門演習(第14回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

位相空間の連結性のまとめはこちらに書きました.
以下、引用している定理番号はそちらのページのものです.

定義9(連結成分)
位相空間 x\in X として、その連結成分 C(x)x を含む最大の連結集合のこととする.

x の連結成分 C(x) は閉集合です.そのためにまずは、下の定理を証明します.

定理10
A\subset X を連結集合とすると、A\subset B\subset \text{Cl}(A) となる任意の集合 B は連結である.

この定理の証明は以下のようにします.

(証明) B=C\cup D なる C,D を離れた集合とします.このとき、定理7から、A\subset C もしくは、A\subset D となります.ここで、A\subset C が成り立つとします.閉包をとると、
\text{Cl}(A)\subset \text{Cl}(C) となり、C,D は離れた集合であることから、\text{Cl}(A)\cap D=\emptyset となるので D\cap \text{Cl}(A)=\emptyset となり、D が空集合ではなければ仮定に反する.
よって、B は定理7から連結となります.(証明終了)


よって次が分かります.

系10
連結成分 C(x) は閉集合である.

各連結成分は閉集合にはなるが、一般に開集合にはなりません.そのすぐ分かる例は通常の距理位相おける {\mathbb Q}\subset {\mathbb R} です.各 r\in {\mathbb Q} の連結成分は r 自身つまり、C_{\mathbb Q}(r)=\{r\} であるが、\{r\} は開集合にはなりません.

連結性において大事な定理が次です.

定理11
連結空間の連続像は連結である.

(注)連続像とは、連続な写像の像のことです.

(略証) f:X\to Y を連続写像として、U\subset f(X)f(X) においてclopenな集合とします.このとき、f^{-1}(U)X でclopenであるので空集合か、X に一致します.空集合であるとすると、もちろん U も空集合になり、f^{-1}(U)=X となるとすると、f(X)=U となります.ゆえに、f(X) は連結となります.(証明終了)

定義12(弧状連結)
位相空間 X が弧状連結であるとは、任意の p,q\in X に対して、I=[0,1] からの連続写像 \varphi:I\to X が存在して、\varphi(0)=p かつ \varphi(1)=q とできるときにいいます.

ここで、連結性と弧状連結性の間に次のような関係が成り立ちます.

定義13
弧状連結なら連結である.

(証明) X を弧状連結な位相空間とします.p,q\in X を任意の2点とします.このとき、X は弧状連結なので、p,q を含む区間 I からの連続像が存在します.定理11からこの像は連結であり、p,q を含むので、定理5から X は連結となります.(証明終了)


この主張の逆は成り立ちません.トポロジストのサインカーブとして有名な例があります.教科書の例17.2.

定義14(局所連結)
位相空間 X の任意の x\in Xx の任意の近傍 x\in U\subset X に対してある連結な x の近傍 x\in V が存在して、V\subset U となるとき、X を局所連結という.

局所連結は、各点において、いくらでも小さい連結な近傍が存在することとを意味しており、この性質は連結な開集合からなる開基が存在することと同値です.

局所連結の定義を用いて次の定理を証明します.

定理15
次の(1) (2) は同値である.
(1) X が局所連結である.
(2) X の任意の開集合において、その開集合の各連結成分もまた開集合である.

(証明) (1) を仮定つまり、(X,\mathcal{O}) が局所連結であるとします.このとき、G\in \mathcal{O} とします.このとき、DG の中での連結成分とします.x\in G のとき、Gx の近傍なので、ある連結近傍 U(x) が存在して、x\in U(x)\subset G となります.ここで、Dx を含む連結な集合の最大のものだから、x\in U(x)\subset D となります.よって、これは D\in \mathcal{O} であることを意味しています.

(2) を仮定します.このとき、x\in X かつ x\in U(x) をその任意の開近傍とします.このとき、U(x) の連結成分を D つまり、C_{U(x)}(x)=D とします.このとき、条件から、D\in \mathcal{O} となるので、x\in D\subset U(x) となる連結な近傍が存在するので、X は局所連結である.(証明終了)


事実として、局所連結であるからといって連結は成り立ちませんし、連結であるからといって局所連結とも限りません.

トポロジストのサインカーブは局所連結ではないが、連結となる例です.

最後に、証明はしませんが、以下の定理を出しておきます.

定理16(Hahn-Mazurkiewiczの定理)
X を距離空間とする.このとき、以下は同値である.
(1) I=[0,1]\to X なる連続な全射が存在する.
(2) X はコンパクト、連結、局所連結である.

この定理は少し奇妙なことを言っています.(1) から (2) はいろいろな定理を鑑みれば明らかですが、(2) から (1) は全く明らかではなく、本当にそうなのか疑ってしまいます.例えば、I\to I\times I なる連続全射も存在することを主張しています.これを初めて発見したのはペアノ(1890)でした.行き先は I\times I に限らず、 I\times I\times II\times I\times I\cdots I でも I\times I\times I\cdots =I^{\mathbb N} でもかまいません.

このような、ある意味病的な例は、ペアノが最初に提出して、その当時の数学界を驚かせたといいます.

そのことに因んで、コンパクト、連結、局所連結な距離空間のことをペアノ連続体といいます.

一般に、コンパクト、連結な距離空間のことを連続体といい、現在でも盛んに研究されており、筑波大の加藤先生は連続体についての第一線の研究者の一人です.連続体に関して、まだまだ分からないことだらけで、研究するには豊富な分野ではないかと思います.、

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