[場所1E103(水曜日4限)]
HPに行く.
後半の問題です.
問題15-4
この問題は比較的できていたのではないかと思います.
ただ、
固有多項式が重解をもつので、対角化できるための十分条件を満たさないので、対角化不可能と書いている人がおり、十分条件の意味が分かっていないのか?対角化のための条件は何か分かっていないのでしょうか?
つまり、正しいのは、
固有多項式の根が重解を持たない、つまり、行列のサイズが $n$ とすれば、固有値として $n$ この相異なるものが取れるとき、
行列は対角化可能
です.
また、一般にこの逆は成り立ちません.固有多項式に重根があるからといって対角化不可能とは限りません.
もっとも単純な例が単位行列です.単位行列 $E$ の固有多項式は、$(t-1)^n$ ですが、単位行列なわけなので、自明に対角化されています.どんな正則行列 $P$ を持ってきても、$P^{-1}EP=E$ となり、対角化されます.
これは、固有値 $1$ の固有空間 $W_1$ が ${\mathbb R}^n$ 全体となるからです.
つまり、$\dim W_1=n$ となり対角化可能条件を満たします.
また、最小多項式は当然のことながら $t-1$ となります.
また、答案の中には、$\dim A$ というものを書いている人がおり、行列に次元は意味はありません.それに、行列 $A$ をなぜか簡約化して、ランクを計算している人もいましたが、これも対角化とは関係ありません.$E$ はフルランクで、対角化可能であるのに対して、零行列 $O$ はランクゼロなのに対角化可能です.
問題はヒントに出したように、 サイズが $2$ の行列で示せば十分であり、例えば、$A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ としておけば、$\Phi_A(t)=(t-1)^2$ であり、
固有空間を求めると、$\langle \begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}\rangle$ となり、
$\dim W_1=1<2$ となり対角化可能条件に合いません.
よって対角化不可能となるのです.
問題15-5
この問題もかなりできが悪かったです.フィボナッチ数列を使えばよいというところまで合っている人ががいましたが、最後、一次独立性が示せないで終わってしまった人も多かったです.
問題文が少し変だと気づいた人がいたかもしれませんが、本当はもう少し誘導があったのですが、そうすると余りにこの問題に配点が高くなってしまうことを恐れて、ノーヒントでさらりと挑ませました.
ごちゃごちゃ言わず、ひとまず答えを書いてみます.
$a_n$ を初項が $a_0=1,a_1=0,a_2=1$ となるフィボナッチ数列とする.
つまり、漸化式 $a_i=a_{i-1}+a_{i-2}$ を満たす数列である.
$${\bf v}_i=a_{i-1}{\bf v}_1+a_{i}{\bf v}_2\ \ \ \ (*)$$
であることを数学的帰納法により証明する.
${\bf v}_1=1\cdot {\bf v}_1+0\cdot{\bf v}_2$
${\bf v}_2=0\cdot {\bf v}_1+1\cdot{\bf v}_2$ となり正しい.
ここで、${\bf v}_i$ ($i=1,2,\cdots,n$) まで(*)が正しいとする.
このとき、${\bf v}_{n+1}={\bf v}_n+{\bf v}_{n-1}=a_{n-1}{\bf v}_1+a_n{\bf v}_2+a_{n-2}{\bf v}_1+a_{n-1}{\bf v}_2=(a_{n-1}+a_{n-2}){\bf v}_1+(a_n+a_{n-1}){\bf v}_2=a_n{\bf v}_1+a_{n+1}{\bf v}_2$
となり、$i=n+1$ のときも成り立つ.
ゆえに、一般に、${\bf v}_i=a_{i-1}{\bf v}_1+a_{i}{\bf v}_2$ が成り立つ.
よって、$V$ の元は全て ${\bf v}_1,{\bf v}_2$ の元の一次結合でかけ、${\bf v}_1,{\bf v}_2$ は一次独立なので、 $\dim V=2$ となる.
よって、${\bf v}_i$ を数ベクトルで表示すると、
$${\bf v}_i=({\bf v}_1,{\bf v}_2)\begin{pmatrix}a_{i-1}\\a_i\end{pmatrix}$$
となる.
${\bf v}_i,{\bf v}_j$ が一次独立かどうかは、
$$({\bf v}_i,{\bf v}_j)=({\bf v}_1,{\bf v}_2)\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}$$
と書いたとき、
$\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}$ が正則かどうかに帰着する.
$i<j$ としておくと、この行列は、
$\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_{i-1}+a_{i-2}&a_{j-1}+a_{j-2}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a_{i-2}&a_{j-2}\\a_{i-1}&a_{j-1}\end{pmatrix}$
$=\cdots=\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}^{i-1}\begin{pmatrix}a_{0}&a_{j-i}\\a_{1}&a_{j-i+1}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}^{i-1}\begin{pmatrix}1&a_{j-i}\\0&a_{j-i+1}\end{pmatrix}$
となり、この行列の行列式をとると、
$$\det\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}^{i-1}\begin{pmatrix}1&a_{j-i}\\0&a_{j-i+1}\end{pmatrix}=(-1)^{i-1}\det\begin{pmatrix}1&a_{j-i}\\0&a_{j-i+1}\end{pmatrix}=(-1)^{i-1}a_{j-i+1}$$
となる.ここで、$j-i+1> 1$ なので、フィボナッチ数列 $a_n$ は、$n>1$ のとき正の整数であることから、特に、$\det\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}\neq 0$ が成り立つ.
ゆえに、${\bf v}_i,{\bf v}_j$ は一次独立である.
よって、$\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots\}$ の中でどの2つをとっても一次独立であることがわかる.
おまけ問題15-6
この問題は、15-5を考えているときにとっさに思いついたものですので、難易度は適当でした.気づいた人はできたという感じです.ボーナスポイントといったところでしょうか?
${\bf v}_3={\bf v}_1+{\bf v}_2$
${\bf v}_4={\bf v}_1+{\bf v}_2+{\bf v}_3=2{\bf v}_1+2{\bf v}_2$
ですので、${\bf v}_4=2{\bf v}_3$ となり、${\bf v}_3$ と ${\bf v}_4$ の間には一次関係が存在し、一次独立ではない.
この場合は15-5と同じ主張は成り立たない.
総括
試験を終えてみて、分かることは、ベクトル空間の扱いに不慣れな人がまだ多いということです.試験は、少し応用という点を念頭に作りました.授業で扱った部分をどれほど自分の中で納得して習得されているかを確認するつもりで出したのです.
なので、少し言い回しを変えたりして、問題で何を問われているのか自分で考えるようなところもあったと思います.
「どのようなベクトル空間か?」とは何を言っているのか?など.
例えば、${\mathbb R}[x]$ など多項式をベクトル空間と思うときに、ベクトル空間のイコールがその多項式の恒等式であることが十分理解されていなかったという点があります.このことは授業中に積極的には述べなかったかもしれません.
例えば、
多項式をベクトル空間としたときに $ax^2+bx+c=0$ を満たすベクトルはどのようなベクトルか?
という問題を出したとすると、普通に $a=b=c=0$ となる多項式という答えなのに、
この2次方程式を解いてしまうという誤解答を作ってしまうかもしれないということです.
その2つの区別ははっきりついていますか?
また、2次以下の多項式において、$f(x)=f(1-x)$ を満たすものを求めよ.という問題では、
これを線形写像と勘違いする人は、${\mathbb R}[x]_2$ の元と線形写像の区別がついていないようです.
できなった人は関係式 $f(x)=f(1-x)$ に属する線形性に気づけなかったということでしょうか?
これは、線形代数IIを習う前は5パーセント以下の理解率(クラスで理解している率)かもしれませんが、習ったあとは100パーセントの理解率であって欲しいところです.
線形性とは、和とスカラー倍が保たれる.ということです.
この問題の場合、$f(x)=f(1-x)$ かつ $g(x)=g(1-x)$ なる多項式があったときに、$(f+g)(x)=(f+g)(1-x)$ のような式が成り立つということです.このようなところに線形性があるとは中々気づかないわけです.それをこの学期を通して身につけて欲しいというわけなのです.
商空間や双対空間などもやりましたが、どれもベクトル空間の例なわけですが、こんなところにも線形性が、あんなところにも線形性があると、いろんなところに線形性が落ちてますよということが言いたかったわけです.
この線形代数の目的は、まとめると、
さまざまな場所に潜む線形性
と
その計算方法
となります.
つまり、線形性が見つけ、それを抽出して、どのような式で書けるのか?またその式を解いたときに現れるベクトル空間はどのようなベクトルで生成されているのか?
ということを半期通じてやっていたわけです.
ベクトル空間に親しめたでしょうか?
私も反省点はあり、宿題として、少し凝ったものが多かったかなというところです.
もう少し基本的な、線形写像を構成することや、線形写像や、線形関係式をといていくつかのベクトルで表示するなどの基本的な問題が少なかったと思われます.
宿題や発表を通して線形性とは何かについて考えて欲しかったというところがあります.
線形代数で行う計算問題は以下のような形が基本的です.
線形写像 $F:V\to W$ がある.
線形関係式 $F({\bf v})=0$ (数ベクトル空間で言えば、連立一次方程式)がある.
この方程式の解全体を解け(表せ).
つまり、$\text{Ker}(F)$ を求めなさいということです.
抽象的ですが、計算自体は連立一次方程式を求めなさいというわけだから中学生でも分かる内容です.
線形代数は数学の中ではどこでも登場します.以上の点をおさえておくことが今後数学の勉強をしていく上で大変重要です.もし、自分の中で線形代数において引っかかっているところがあれば、本やインターネットなどで理解を進めておくとよいです.授業から少し離れた視点に立ってみると、すっきりと腑に落ちるということがあると思います.今は、図書館に行かなくても、ネット環境があればどこでも勉強ができてしまう手軽さがあります.このような環境を使わない手はありません.
しかもこの授業はブログにも対応していますので、授業内容のおさらいとしてブログを使っていただくとよいと思います.また、ブログの内容は残しておきますので、活用してみてください.また、去年行った授業の内容も全てのこしてあります.
物事の理解というのは、誰かに強制されて無理やりというのものではなく、(意識的にも、無意識的にも)思考し続けて、ふと、何気ない場所で進む場合がありますので、最後まであきらめないで勉強を続けてください.
HPに行く.
後半の問題です.
問題15-4
この問題は比較的できていたのではないかと思います.
ただ、
固有多項式が重解をもつので、対角化できるための十分条件を満たさないので、対角化不可能と書いている人がおり、十分条件の意味が分かっていないのか?対角化のための条件は何か分かっていないのでしょうか?
つまり、正しいのは、
固有多項式の根が重解を持たない、つまり、行列のサイズが $n$ とすれば、固有値として $n$ この相異なるものが取れるとき、
行列は対角化可能
です.
また、一般にこの逆は成り立ちません.固有多項式に重根があるからといって対角化不可能とは限りません.
もっとも単純な例が単位行列です.単位行列 $E$ の固有多項式は、$(t-1)^n$ ですが、単位行列なわけなので、自明に対角化されています.どんな正則行列 $P$ を持ってきても、$P^{-1}EP=E$ となり、対角化されます.
これは、固有値 $1$ の固有空間 $W_1$ が ${\mathbb R}^n$ 全体となるからです.
つまり、$\dim W_1=n$ となり対角化可能条件を満たします.
また、最小多項式は当然のことながら $t-1$ となります.
また、答案の中には、$\dim A$ というものを書いている人がおり、行列に次元は意味はありません.それに、行列 $A$ をなぜか簡約化して、ランクを計算している人もいましたが、これも対角化とは関係ありません.$E$ はフルランクで、対角化可能であるのに対して、零行列 $O$ はランクゼロなのに対角化可能です.
問題はヒントに出したように、 サイズが $2$ の行列で示せば十分であり、例えば、$A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ としておけば、$\Phi_A(t)=(t-1)^2$ であり、
固有空間を求めると、$\langle \begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}\rangle$ となり、
$\dim W_1=1<2$ となり対角化可能条件に合いません.
よって対角化不可能となるのです.
問題15-5
この問題もかなりできが悪かったです.フィボナッチ数列を使えばよいというところまで合っている人ががいましたが、最後、一次独立性が示せないで終わってしまった人も多かったです.
問題文が少し変だと気づいた人がいたかもしれませんが、本当はもう少し誘導があったのですが、そうすると余りにこの問題に配点が高くなってしまうことを恐れて、ノーヒントでさらりと挑ませました.
ごちゃごちゃ言わず、ひとまず答えを書いてみます.
$a_n$ を初項が $a_0=1,a_1=0,a_2=1$ となるフィボナッチ数列とする.
つまり、漸化式 $a_i=a_{i-1}+a_{i-2}$ を満たす数列である.
$${\bf v}_i=a_{i-1}{\bf v}_1+a_{i}{\bf v}_2\ \ \ \ (*)$$
であることを数学的帰納法により証明する.
${\bf v}_1=1\cdot {\bf v}_1+0\cdot{\bf v}_2$
${\bf v}_2=0\cdot {\bf v}_1+1\cdot{\bf v}_2$ となり正しい.
ここで、${\bf v}_i$ ($i=1,2,\cdots,n$) まで(*)が正しいとする.
このとき、${\bf v}_{n+1}={\bf v}_n+{\bf v}_{n-1}=a_{n-1}{\bf v}_1+a_n{\bf v}_2+a_{n-2}{\bf v}_1+a_{n-1}{\bf v}_2=(a_{n-1}+a_{n-2}){\bf v}_1+(a_n+a_{n-1}){\bf v}_2=a_n{\bf v}_1+a_{n+1}{\bf v}_2$
となり、$i=n+1$ のときも成り立つ.
ゆえに、一般に、${\bf v}_i=a_{i-1}{\bf v}_1+a_{i}{\bf v}_2$ が成り立つ.
よって、$V$ の元は全て ${\bf v}_1,{\bf v}_2$ の元の一次結合でかけ、${\bf v}_1,{\bf v}_2$ は一次独立なので、 $\dim V=2$ となる.
よって、${\bf v}_i$ を数ベクトルで表示すると、
$${\bf v}_i=({\bf v}_1,{\bf v}_2)\begin{pmatrix}a_{i-1}\\a_i\end{pmatrix}$$
となる.
${\bf v}_i,{\bf v}_j$ が一次独立かどうかは、
$$({\bf v}_i,{\bf v}_j)=({\bf v}_1,{\bf v}_2)\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}$$
と書いたとき、
$\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}$ が正則かどうかに帰着する.
$i<j$ としておくと、この行列は、
$\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_{i-1}+a_{i-2}&a_{j-1}+a_{j-2}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a_{i-2}&a_{j-2}\\a_{i-1}&a_{j-1}\end{pmatrix}$
$=\cdots=\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}^{i-1}\begin{pmatrix}a_{0}&a_{j-i}\\a_{1}&a_{j-i+1}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}^{i-1}\begin{pmatrix}1&a_{j-i}\\0&a_{j-i+1}\end{pmatrix}$
となり、この行列の行列式をとると、
$$\det\begin{pmatrix}0&1\\1&1\end{pmatrix}^{i-1}\begin{pmatrix}1&a_{j-i}\\0&a_{j-i+1}\end{pmatrix}=(-1)^{i-1}\det\begin{pmatrix}1&a_{j-i}\\0&a_{j-i+1}\end{pmatrix}=(-1)^{i-1}a_{j-i+1}$$
となる.ここで、$j-i+1> 1$ なので、フィボナッチ数列 $a_n$ は、$n>1$ のとき正の整数であることから、特に、$\det\begin{pmatrix}a_{i-1}&a_{j-1}\\a_i&a_j\end{pmatrix}\neq 0$ が成り立つ.
ゆえに、${\bf v}_i,{\bf v}_j$ は一次独立である.
よって、$\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots\}$ の中でどの2つをとっても一次独立であることがわかる.
おまけ問題15-6
この問題は、15-5を考えているときにとっさに思いついたものですので、難易度は適当でした.気づいた人はできたという感じです.ボーナスポイントといったところでしょうか?
${\bf v}_3={\bf v}_1+{\bf v}_2$
${\bf v}_4={\bf v}_1+{\bf v}_2+{\bf v}_3=2{\bf v}_1+2{\bf v}_2$
ですので、${\bf v}_4=2{\bf v}_3$ となり、${\bf v}_3$ と ${\bf v}_4$ の間には一次関係が存在し、一次独立ではない.
この場合は15-5と同じ主張は成り立たない.
総括
試験を終えてみて、分かることは、ベクトル空間の扱いに不慣れな人がまだ多いということです.試験は、少し応用という点を念頭に作りました.授業で扱った部分をどれほど自分の中で納得して習得されているかを確認するつもりで出したのです.
なので、少し言い回しを変えたりして、問題で何を問われているのか自分で考えるようなところもあったと思います.
「どのようなベクトル空間か?」とは何を言っているのか?など.
例えば、${\mathbb R}[x]$ など多項式をベクトル空間と思うときに、ベクトル空間のイコールがその多項式の恒等式であることが十分理解されていなかったという点があります.このことは授業中に積極的には述べなかったかもしれません.
例えば、
多項式をベクトル空間としたときに $ax^2+bx+c=0$ を満たすベクトルはどのようなベクトルか?
という問題を出したとすると、普通に $a=b=c=0$ となる多項式という答えなのに、
この2次方程式を解いてしまうという誤解答を作ってしまうかもしれないということです.
その2つの区別ははっきりついていますか?
また、2次以下の多項式において、$f(x)=f(1-x)$ を満たすものを求めよ.という問題では、
これを線形写像と勘違いする人は、${\mathbb R}[x]_2$ の元と線形写像の区別がついていないようです.
できなった人は関係式 $f(x)=f(1-x)$ に属する線形性に気づけなかったということでしょうか?
これは、線形代数IIを習う前は5パーセント以下の理解率(クラスで理解している率)かもしれませんが、習ったあとは100パーセントの理解率であって欲しいところです.
線形性とは、和とスカラー倍が保たれる.ということです.
この問題の場合、$f(x)=f(1-x)$ かつ $g(x)=g(1-x)$ なる多項式があったときに、$(f+g)(x)=(f+g)(1-x)$ のような式が成り立つということです.このようなところに線形性があるとは中々気づかないわけです.それをこの学期を通して身につけて欲しいというわけなのです.
商空間や双対空間などもやりましたが、どれもベクトル空間の例なわけですが、こんなところにも線形性が、あんなところにも線形性があると、いろんなところに線形性が落ちてますよということが言いたかったわけです.
この線形代数の目的は、まとめると、
さまざまな場所に潜む線形性
と
その計算方法
となります.
つまり、線形性が見つけ、それを抽出して、どのような式で書けるのか?またその式を解いたときに現れるベクトル空間はどのようなベクトルで生成されているのか?
ということを半期通じてやっていたわけです.
ベクトル空間に親しめたでしょうか?
私も反省点はあり、宿題として、少し凝ったものが多かったかなというところです.
もう少し基本的な、線形写像を構成することや、線形写像や、線形関係式をといていくつかのベクトルで表示するなどの基本的な問題が少なかったと思われます.
宿題や発表を通して線形性とは何かについて考えて欲しかったというところがあります.
線形代数で行う計算問題は以下のような形が基本的です.
線形写像 $F:V\to W$ がある.
線形関係式 $F({\bf v})=0$ (数ベクトル空間で言えば、連立一次方程式)がある.
この方程式の解全体を解け(表せ).
つまり、$\text{Ker}(F)$ を求めなさいということです.
抽象的ですが、計算自体は連立一次方程式を求めなさいというわけだから中学生でも分かる内容です.
線形代数は数学の中ではどこでも登場します.以上の点をおさえておくことが今後数学の勉強をしていく上で大変重要です.もし、自分の中で線形代数において引っかかっているところがあれば、本やインターネットなどで理解を進めておくとよいです.授業から少し離れた視点に立ってみると、すっきりと腑に落ちるということがあると思います.今は、図書館に行かなくても、ネット環境があればどこでも勉強ができてしまう手軽さがあります.このような環境を使わない手はありません.
しかもこの授業はブログにも対応していますので、授業内容のおさらいとしてブログを使っていただくとよいと思います.また、ブログの内容は残しておきますので、活用してみてください.また、去年行った授業の内容も全てのこしてあります.
物事の理解というのは、誰かに強制されて無理やりというのものではなく、(意識的にも、無意識的にも)思考し続けて、ふと、何気ない場所で進む場合がありますので、最後まであきらめないで勉強を続けてください.