2016年1月29日金曜日

微積分II演習(第12回)

[場所1E103(金曜日5限)]


今日は
  • 広義重積分
  • 積分表示された関数の微分
  • 級数の判定条件
についてやりました.

広義重積分

広義重積分とは、積分をする領域が非有界であること、また、被積分関数が領域において非有界であることの2つがあります.

積分 $\int\int_Df(x,y)dxdy$ が広義積分可能であるとは、$D$ を覆うような任意の増大列
$$D_0\subset D_1\subset D_2\subset \cdots\subset D$$
で、$D=\cup_{n=0}^\infty D_n$ かつ、任意の有界閉集合が$D_n$ のどれかに含まれるような
ものを取り、その領域上の積分の極限
$$\lim_{n\to \infty}\int\int_{D_n}f(x,y)dxdy$$
が同じ値に収束するときにいいます.

広義重積分が収束するかどうかを判定するのは、かなり難しい問題ですが、
被積分関数が $f(x,y)\ge 0$ を満たし、上のような条件を満たすある特定の増大列が収束することがわかれば、広義重積分は収束することが知られています.

問題として出すには、この仮定がすべて満たされているものに限ります.

今日やってもらった問題は、
$$\int\int_D\frac{dxdy}{\sqrt{x^2+y^2}}$$
とその類題
$$\int\int_{D}\frac{xydxdy}{(x^2+y^2)^3}$$
です.

ここで、最初の $D$ は$[0,1]\times [0,1]$ なる有限領域で、2個目の $D$ は $x\ge 1,y\ge 1$ となる無限領域です.

最初の積分だけやってみます.
$(0,0)$ の近くで、被積分関数は発散します.また、被積分関数はいつでも正の関数なので、ある領域の増大列について収束することがわかれば、大丈夫です.

積分区間の形から、$\int_0^1\int_0^1$ と積分すれば良いような気がしますが、ここで、は極座標表示を用います.$D_n=D\cap \{(x,y)|x^2+y^2\ge 1/n^2\}$ として求めてみます.

また、$y\ge x$ と $y\le x$ では関数は対称的ですから、
$$\int\int_{D_n}\frac{dxdy}{\sqrt{x^2+y^2}}=2\int_{0}^{\pi/4}\int_{1/n}^{1/\cos\theta}\frac{rdrd\theta}{r}=2\int_0^{\pi/4}[r]_{1/n}^{1/\cos\theta}d\theta$$
$$=2\int_{0}^{\pi/4}\left(\frac{1}{\cos\theta}-\frac{1}{n}\right)d\theta=2\int_{0}^{\pi/4}\frac{\cos\theta}{1-\sin^2\theta}d\theta-\frac{\pi}{2n}$$
$$=2\int_{0}^{1/\sqrt{2}}\frac{dt}{1-t^2}-\frac{\pi}{2n}=2\left[\log\frac{1+t}{1-t}\right]_{0}^{1/\sqrt{2}}-\frac{\pi}{2n}$$
$$=\log(3+2\sqrt{2})-\frac{\pi}{2n}$$
ここで、$\lim_{n\to \infty}$ をとると、この極限は $\log(3+2\sqrt{2})$ に収束します.

よって、この広義積分は収束することになります.
また、この値は、$\log(3+2\sqrt{2})=2\log(1+\sqrt{2})=2\text{Arcsinh}(1)$ となります.

同じように2つめの方の積分(提出してもらった方)は$\frac{1}{16}$ となります.

積分表示された関数の微分

積分において、$F(y)=\int_{a}^bf(x,y)dx$ は $y$ の関数ですが、この積分の $y$ による微分は、ある条件の元、微分作用素は、内部に偏微分としてはいります.つまり、
$$\frac{d}{dy}\int_a^bf(x,y)dy=\int_a^b\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}dx$$
となります.

しかし、この微分は、$a,b$ が $y$ によらない定数である場合に成り立ちます.
$a,b$ が $y$ による関数である場合はこの微分は異なります.

その場合、$a,b$ を変数として、$\int_{u}^vf(x,y)dx=Z(u,v,y)$ のような独立な3変数関数と考えればよいです.

この場合、$Z(u,v,y)$ の $u,v$ に $y$ に依存する関数として $Z(a(y),b(y),y)$ として考えれば、$a,b$ が $y$ の関数としたときの元の関数 $F(y)$ が得られます.

$F(y)$ での $y$ での微分は、$Z(a(y),b(y),y)$ の $y$ の微分となるわけで、合成関数の微分法を使うことで、
$$\frac{d}{dy}F(y)=\frac{d}{dy}Z(a(y),b(y),y)=Z_u(a(y),b(y),y)a'(y)+Z_v(a(y),b(y),y)b'(y)+Z_y(a(y),b(b),y)$$
となります.
ここで、$Z_u(u,v,y)$ と $Z_v(u,v,y)$ を求めておくと、これらは、$v,y$ を$u$ とは違う定数と見ていることに注意します.

よって、

$Z_u(u,v,y)=\frac{d}{du}\int_{u}^vf(x,y)dx=-f(u,y)$
$Z_v(u,v,y)=\frac{d}{dv}\int_{u}^vf(x,y)dx=f(v,y)$
となります.

これらは例えば $\frac{\partial G(x,y)}{\partial x}=f(x,y)$ とすると、
$Z_u(u,v,y)=\frac{d}{du}[G(x,y)]_u^v=\frac{d}{du}(G(v,y)-G(u,y))=-\frac{\partial }{\partial u}G(u,y)=-f(u,y)$ となります.
$Z_v(u,v,y)$ についても同じです.

よって、
$$\frac{d}{dy}\int_a^bf(x,y)dx=-f(a,y)a'(y)+f(b,y)b'(y)+\int_{a}^b\frac{\partial f}{\partial y}dx$$
となります.

級数の収束

級数とは、数列 $a_n\ \ n=1,2,\cdots$ の全ての和
$$\sum_{n=0}^\infty a_n$$
のことです.この無限和がいつ収束するかという問題を考えます.

この和がいつ収束するかというのは一般的には結構難しいです.
しかし、よく知られている方法で、簡単にわかる場合もあります.

コーシーの方法と
ダランベールの方法

また、発展形として、

ガウスの方法があります.

授業では前2つについてやりました.

これらの判定法ついては、去年の授業のブログ(←こちら)
をみてください。

判定法だけ書いておきます.
まず、全ての項が正の級数だけです.


ダランベールの方法
正項級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ に対してある $r<1$ が存在して有限個の $n$ を除いて $\frac{a_{n+1}}{a_n}\le r<1$ を満たす.


コーシーの方法
正項級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ に対してある $r<1$ が存在して有限個の $n$ を除いて $\sqrt[n]{a_n}\le r<1$ を満たす.


これらが満たされれば、$\sum_{n=1}^\infty a_n$ は収束する.

これらの判定法が使える級数として、

$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n!}$ や $\sum_{n=1}^\infty\left(\frac{n-1}{n}\right)^{n^2}$ 
があります.


また、ダランベールの方法やコーシーの方法に当てはまらないからといって収束しないとも限りません.

第13回の宿題に出したように
$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$ はダランベールの方法やコーシーの方法において、
$r=1$ のパターンですが、発散します.

一方

$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2}$ はダランベールの方法やコーシーの方法において、
$r=1$ のパターンですが、収束します.

$r<1$ の場合は確実にこの正項級数は収束し、$r=1$ の場合は、収束することもあるし、発散することもあります.
なので、収束するかどうかは別の議論をする必要があります.

また、コーシー方法やダランベールの方法で、隣同士の商や、$n$乗根の極限が $r>1$ になる場合は、級数は発散します.


次にガウスの判定法です.
正項級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ がある正の数 $\alpha$ が存在して、
$\frac{a_n}{a_{n+1}}=1+\frac{\alpha}{n}+O(\frac{1}{n^2})$
が成り立つとき、$\alpha>1$ なら収束し、$\alpha\le 1$ なら発散する.


これはあまり使わないかもしれませんが、覚えていて、使う局面に出くわしてうまく使えるといいですね.超幾何級数などの収束をいうのにこの判定法を使うことがあります.ガウスもそのためにこの判定法を考え出したのです.

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