[場所1E103(水曜日4限)]
HPに行く.
今日は、
HPに行く.
今日は、
- シュミットの直交化と
- 双対空間
でした.
シュミットの直交化
シュミットの直交化とは、内積を持つ空間 $V,(\cdot,\cdot)$ に対して一次独立なベクトル ${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ があったときに、それを変形して、そのベクトルが張るベクトル空間 $\langle {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n\rangle$ は変えずに、正規直交ベクトル ${\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_n$ を与える方法です.つまり、
${\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_n$ は正規直交、つまり、$({\bf e}_i,{\bf e}_j)=\delta_{ij}$ であり、
$$\langle {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n\rangle=\langle {\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_n\rangle$$
が成り立ちます.ここで、$\delta_{ij}=\begin{cases}1&i=j\\0&i\neq j\end{cases}$
です.
まず、
$${\bf e}_1=\frac{{\bf v}_1}{||{\bf v}_1||}$$
とします.
次に、
${\bf v}_2-({\bf v}_2,{\bf e}_1){\bf e}_1$ を計算し、その長さで割ります.このとき、
$${\bf e}_2=\frac{{\bf v}_2-({\bf v}_2,{\bf e}_1){\bf e}_1}{||{\bf v}_2-({\bf v}_2,{\bf e}_1){\bf e}_1||}$$
とおきます.
このとき、${\bf e}_2$ は長さが 1 で、かつ ${\bf e}_1$ と内積が 0 つまり直交します.
$({\bf v}_2-({\bf v}_2,{\bf e}_1){\bf e}_1,{\bf e}_1)=({\bf v}_2,{\bf e}_1)-({\bf v}_2,{\bf e}_1)({\bf e}_1,{\bf e}_1)=0$
となります.
${\bf e}_2$ を作るときに何をしたかというと、${\bf v}_2$ から、${\bf e}_1$ の成分(つまり、${\bf v}_2$ の ${\bf e}$ の直交射影)を抜き出しているのです.${\bf v}_2$ から、${\bf e}_1$ の部分だか抜き出しているので、それらは直交するということになるのです.
次に、${\bf e}_3$ を作るときは、${\bf v}_3$ から、${\bf e}_1,{\bf e}_2$ の成分を抜き出すと、それらに直交するベクトルが得られます.
つまり、
${\bf v}_3-({\bf v}_3,{\bf e}_1){\bf e}_1-({\bf v}_3,{\bf e}_2){\bf e}_2$ とすると、このベクトルは、${\bf e}_1$ とも、${\bf e}_2$ とも直交するベクトルとなります.これを長さで割ることで、
$${\bf e}_3=\frac{{\bf v}_3-({\bf v}_3,{\bf e}_1){\bf e}_1-({\bf v}_3,{\bf e}_2){\bf e}_2}{||{\bf v}_3-({\bf v}_3,{\bf e}_1){\bf e}_1-({\bf v}_3,{\bf e}_2){\bf e}_2||}$$
とおきます.よって、${\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3$ はお互いに直交する、長さが $1$ のベクトルで、作り方から、$\langle {\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3\rangle =\langle {\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3\rangle$ となります.
これを帰納的に続けることで、正規直交ベクトル $\{{\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_n\}$ が得られます.
この方法をシュミットの直交化といいます.
このようにすることで、任意の内積空間において、正規直交ベクトルを作ることができます.元の一次独立なベクトルが基底の場合には、シュミットの直交化によって、正規直交基底が得られます.
複素内積の場合も同じように構成することができます.
双対空間
線形写像全体は、ベクトル空間になリます.
最初に注意するべきこととして、写像 $f,g:V\to W$ が同じということは、
任意の ${\bf v}\in V$ に対して、$f({\bf v})=g({\bf v})$ がなりたつということです.
線形写像全体がベクトル空間になるのは、行列全体がベクトル空間になるので当然です.
ベクトル空間 $V$ から $W$ への線形写像 $f:V\to W$ の全体の空間を $\text{Hom}(V,W)$ とかきます.
$W=\mathbb{C}$ のとき、線形写像の空間は $\text{Hom}(V,\mathbb{C})$ となり、$V^\ast$ とかきます.
このような線形写像を、$V^\ast$ とかき、双対空間といいます.
$V^\ast$ もベクトル空間となります.
$V^\ast$ は平たくいえば、ある特殊な関数の空間ということですが、足し算は、関数の足し算、スカラー倍は関数のスカラー倍ということになります.
${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_n$ を基底とすると、$V^\ast$ において ${\bf f}_1,\cdots,{\bf f}_n$ を $f_i({\bf v}_j)=\delta_{ij}$ として基底が定義されます.このような基底のことを双対基底といいます.
双対基底は $V$ の基底を一つ選ぶと、一つ定まります.
宿題には、$V^\ast$ の幾つかの元が一次独立であることを示す問題を挙げておきました.
一次独立を示す方法は、基本的には普通のベクトル空間と同じで、
${\bf f}_1,\cdots,{\bf f}_n$ が一次独立であることを示すには、$c_1{\bf f}_1+c_2{\bf f}_2+\cdots+c_n{\bf f}_n={\bf 0}$ ならば、$c_1=\cdots=c_n=0$ を示せばよいです.
ただし、この右辺の ${\bf 0}$ は $V^\ast$ での $0$ ベクトルであり、つまり、$V$ 上の関数です.
言い換えれば、任意の ${\bf v}\in V$ において ${\bf 0}({\bf v})=0$ を満たす関数です.
数ベクトル空間上の双対空間は、ある横ベクトルと同一視することができます.
つまり、$\text{Hom}(\mathbb{C}^n,\mathbb{C})=\mathbb{C}^n$ です.
横ベクトルは、縦ベクトルと同一視できるので、それを通して再び、$\mathbb{C}^n$ となるのです.
どういうことかというと、双対空間の元 $f\in V^\ast$ は、
$f({}^t(x_1,x_2,\cdots,x_n))=a_1x_1+a_2x_2+\cdots+a_nx_n$ のように、あるスカラー $a_i\in\mathbb{C}$ を使ってその一次結合として書くことができます.
つまりこの右辺は、
$$(a_1,a_2,\cdots,a_n)\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\v_n\end{pmatrix}$$
となり、$f$ 自身は、あるベクトル $(a_1,a_2,\cdots,a_n)$ を左から掛ける写像ということになります.
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