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2016年1月19日火曜日

トポロジー入門演習(第10回) (ヒント集5)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

A{\mathbb R} の部分集合のとき、A\times (0,1] の辞書式順序によって定義される順序位相によって得られる位相空間についての問題がありました.

Lynn Arthur Steen & J. Arthur Seebach, Jr のCounterexamples in Topology には

[0,1]\times [0,1] に辞書式順序(lexicographic ordering)を入れたもの
の順序位相について書いて有りますのでそちらを参考にしてください.

順序位相について

集合 X 上の順序位相とは
任意の点 x の近傍を x\in (a,b) となる a,b\in X をとります.
ここで、 (a,b)=\{y\in X|a<y<b\} なる部分集合のこととします.
ここで、a,bX に入らない理想元 \infty もしくは -\infty をとってもよいです.
ただし、\infty X の任意の元よい大きい元とし、-\inftyX の任意の元より小さい元とする.

例えば、{\mathbb R} に普通の実数の順序を入れた位相は、通常の {\mathbb R} 上の距離位相と同値になります.



第8回で残っている問題

問題79
つぎの条件は同値であることを示せ.
(1) X\to Y は連続である.
(2) 任意の B\subset Y に対して f^{-1}(\text{Int}(B))\subset\text{Int}(f^{-1}(B))
(3) 任意の B\subset Y に対して f^{-1}(\text{Cl}(B))\supset\text{Cl}(f^{-1}(B))

(略解答)
(1)から(2)
f^{-1}(\text{Int}(B))\subset(f^{-1}(B))
は開集合であり、\text{Int}(f^{-1}(B))f^{-1}(B) の中の最大の開集合であること.

(2)から(3) f^{-1}(\text{Int}(Y-B))\subset\text{Int}(f^{-1}(Y-B)) より、
f^{-1}(X-\text{Cl}(B))\subset \text{Int}(X-f^{-1}(B))=X-\text{Cl}(B) となる.

(3)から(1) 閉集合の逆像が閉集合であることを示せ.

問題82

f : X \to Y が連続ならば、X の任意の収束点列 \{x_n\} に対し、\{f(x_n)\}Y の収束点列となることを証 明せよ. 

問題83
Xを非可算集合とする.
x_0\in  Xに対して、x_0の近傍をx_0\in UとなるU\subset Xであり、
X-Uが可算集合となるものだけを考える.
また、x\neq x_0なるx\in Xにおいては、\{x\}だけを近傍とする.

このような近傍系をとると、X上に位相を定義できることを示せ.

(ヒント)
位相の条件を満足することを示せ.


問題84
上のような位相空間Xにおいて、A=X-\{x_0\}x_0の集積点であるが、

x_0とは異なる点よりなる点列\{a_n\}は決してx_0に収束しないことを示せ.

(ヒント)
点列 \{a_n\}a に収束すると は、a の任意の近傍に対して、ある N が存在して、点列 \{a_n\}\{a_n|n>n\} がすべて含まれることをいう.
x_0 の近傍で、x_0 とは違う点列 \{a_n\} が一つも含まれないものを構成することで示される.

問題85
Xを上のように定義された位相空間とする.YX上に離散位相を与えた位相空間とする.f:X\to Yを恒等写像とする.

このfは、この3つ前の問題の逆は成り立っているといえるか?


(略解答)
X 上のすべての収束点列は、離散位相の収束点列と同じであることを証明せよ.また、恒等写像が連続でないことを示せ.

問題87
f:X\to Y が閉写像であるためには、X の任意の開集合Uに対し、\{y\in Y|f^{-1}(y)\subset U\}Y の開集合となることが必要十分であることを証明せよ.

(ヒント)
\{y\in Y|f^{-1}(y)\subset U\}f(X-U) と一致することを示せ.

問題88
f:X\to Yは全射、\varphi:X\to I=[0,1] を連続写像とする.写像 \psi:Y\to I\psi(y)=\text{inf}\{\varphi(x)|x\in f^{-1}(y)\} で定めると、
fが開写像ならば、\psi^{-1}([0,r))Yの開集合.

を示せ.

(ヒント)
\psi^{-1}([0,r))f(\varphi^{-1}([0,r))) を示せ.


問題89
f:X\to Yは全射、\varphi:X\to I=[0,1] を連続写像とする.写像\psi:Y\to I\psi(y)=\text{inf}\{\varphi(x)|x\in f^{-1}(y)\}で定めると、
fが閉写像ならば、\psi^{-1}((r,1])Yの開集合.
を示せ.


問題90
f:X\to Yは全射、\varphi:X\to I=[0,1]は連続写像とする.写像\psi:Y\to I\psi(y)=\text{inf}\{\varphi(x)|x\in f^{-1}(y)\}で定めると、
fが開写像かつ閉写像ならば、\psiは連続.
を示せ.

(略解答)
問題89と90と119を使え.

問題91
写像f:(X,\rho)\to (Y,\rho')が、\rho'(f(x),f(x'))=\rho(x,x')x,x'\in X)を満たすならば、fは埋蔵写像となることを示せ.

(略解答)
距離空間の連続性の定義を使って f の連続性を示す.
この性質から単射であることはすぐに導かれる.
また、X\to f(X) が連続かつ開写像であることを示す必要がある.


問題92
a\in Iに対し、f_a\in C(I)f_a(t)=a\ (t\in I)と定めたとき、\varphi:I\to (C(I),d);\varphi:a\mapsto f_aは埋蔵となることを示せ.

(ヒント)
定数関数全体が C(I) において I と同相であることを示す問題.
単射連続であることはすぐわかる.I\to \varphi(I) が同相であることを示す.

10 件のコメント:

  1. 連続写像の近傍を用いた定義に関する質問です.
    よろしくお願い致します.

    位相空間での写像 f:X→Y において,xの近傍をU,近傍系を N(x),f(x)の近傍をV,近傍系を N(f(x))とする.
    このとき,次の(1)で示した定義は(2),(3)で示された論理式と同値であるとして認められるでしょうか?
     (1)∀x,∀V,∃U:f(U)⊂V 
     (2)∀x,∃U∈N(x):f(U)∈N(f(x))  
     (3)∀x,∃U∈N(x)⇒ f(U)∈N(f(x))

    なお,次の定義が上の(1)と同値関係であることは,いくつかの基本的な解説書で記載を確認できました.(勘違いがあるかもしれません)
     ① ∀x,∀V,∃U:U⊂f^(-1)(V) 
     ② ∀x,∀V∈N(f(x)):f^(-1)(V)∈N(x)   
     ③ ∀x,∀V∈N(f(x))⇒ f^(-1)(V)∈N(x)

    ちなみに,近傍系の逆像として f(U)∈N(a) の同値式として U∈ f^(-1)(N(f(a))) のような表記を用いることは可能でしょうか.

    先生の数多の生徒の一人として(出来の悪い生徒で恐縮ですが),末席に加えさせて頂ければ幸いです.
    お手が空いたときにでも,ご回答のご面倒を頂ければ有り難く,嬉しく存じます.

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    1. (2), (3) は同じことを言っていそうですが、(1) と同じではないです.

      連続の定義では、(2) は x の近傍の像も近傍になることは言っていません.
      例えば、実数から平面への写像で、x\mapsto (x,0) とします.
      これは、x\in{\mathbb R} の近傍は、平面上のある線分となり、平面上の近傍に必ずなりません.

      連続の定義では、 f(x) の任意の近傍の中に x の近傍の像が含まれるようにできることを言っているだけです.

      ①が連続の定義で、(1)と同値であり、
      ②、③の違いがよくわかりませんが、①と同じ主張です.

      また、
      f(U)∈N(a) の同値式として U∈ f^(-1)(N(f(a)))
      は、上で書いたように、違う事柄です.
      近傍の f の像自身が再び近傍になることと、f(a) の近傍の逆像が近傍になることは同値なことではありません.

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  2. お忙しい中,ご回答のご面倒,誠に有り難うございました.

    近傍の像が再び近傍になることは,連続写像の定義として認められないということを確認させて頂きました.
    また,「:」と「⇒」の用い方は,単なる記法の違いにあると理解しました.

    なお,下から2行目の「f(U) ∈N(x)」のうち,N(x)は N(f(x))とすべきでした.
    先生のご説明に影響を及ぼすものではないと思いますが,お許し下さい.

    また,厚かましいとは存じますが,先生のご温情に甘え,新たな質問をさせて頂きます.

    位相空間と写像f:X→Y について次のような例を考えてみました.
    X={a,b,c},(X, O(X))={φ, {a}, {a,b}, X}.
     Y={1,2,3},(Y, O(Y))={φ, {2}, {1,2}, {2,3}, Y}.
    f(a)=1,f(b)=2,f(c)=2.

    定義を次のように定めました.∀x,∀V(f(x)),∃U(x):f(U(x))⊂V(f(x)).
    このとき,点aについての連続を確認するとき,次の①,②のうちどちらの考え方が正しいのでしょうか?

    ① ∃U(a)={a} のとき,f({a})={1}⊂∀V(f(a))
    ② ∃U(a)={a} のとき,f({a})=1⊂∀V(f(a))
    (つまり,f({a})={1}とする場合と,f({a})=1とする場合です)

    ちなみに,xの近傍をU(x),xの近傍をN(x) とするとき,次の同値は正しいでしょうか?
       ∀U(x) ⇔ {U(x)} ⇔ N(x)

    ご指導のお時間をいただければ幸甚です.

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    1. > ① ∃U(a)={a} のとき,f({a})={1}⊂∀V(f(a))
      > ② ∃U(a)={a} のとき,f({a})=1⊂∀V(f(a))
      > (つまり,f({a})={1}とする場合と,f({a})=1とする場合です)

      とありますが、この書き方は良くないと思います.
      連続が分かっていないというわけではなさそうですが、誤解を招く書き方です.
      つまり、どちらの場合も、最初に、U(a) を持ってきているので、 V(f(a))
      に関係なく U(a) が何か取れるということになってしまい、
      結果として非常に強い条件になっています.

      正しくは、
      任意の V(f(a)) に対して、U(a) が存在して f(U(a))\subset V(f(a))
      とできるということです.

      そして、質問の核心である、f(\{a\})=\{1\} であるか、f(\{a\})=1 であるか?
      ということですが、集合の像なので、集合で書けばよいのではないかと思います.


      > ちなみに,xの近傍をU(x),xの近傍をN(x) とするとき,次の同値は正しいでしょうか?
      >    ∀U(x) ⇔ {U(x)} ⇔ N(x)

      との質問ですが、質問の内容がよくわかりませんでした.
      3つの条件は同値な条件になるか?という意図の質問だと思うのですが、
      条件とは、何の、どのような性質であるかということをはっきりと書きますが、
      この質問の場合、それが書かれていません.

      \forall U(x) とは、何のどのような条件を表しているのか?
      また、\{U(x)\} は、何のどのような条件を表しているのか?
      N(x) についても同じです.

      上の方の用語から推察するに、N(x)x の近傍ではなくて、x の近傍全体の集合のことでしょうか?

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  5. お忙しい中,ご回答のお手数を有り難うございました.
    質問の不備,不足をご指摘いただいたおかげで理解を進めることができました.
    また,集合の像は集合であることにより,f({a}) は {a} と定めるのが好ましいということも確認させていただきました.

    追加の質問については,定義や表記が不十分で不正確なため,先生に無用なご面倒,お手間を取らしてしまったことをお詫び申し上げます.
    質問を下記のように加筆,修正させていただきました.

    位相空間Xの点 x に対する任意の近傍を U(x) とする.また,U(x) の集合を{U(x)} とし,x の近傍全体((全)近傍系)を N (x) とする.このとき,次の同値が成り立つ.
     ∀U(x) ⇔ {U(x)} ⇔ N(x)

    なお,まだ自信がありません,不備,不足についてご指摘いただければ幸いです.

    ついで申し訳ありませんが,次の2つの事項について,理解がおぼつかないので質問させていただきたいと思います.

    1.近傍をすべて集めた集合である(全)近傍系は,最大の基本近傍系と一致する.
    2,近傍を開,閉により類別すると,開近傍,閉近傍,開かつ閉近傍の3つになる.

    1 の例として,下記のような場合を考えました,
    位相空間 (X, O) について,X = {a, b, c, d},O={φ, {b, c}, {a, b, c}, X} とする.
    また,X の点 b の近傍系を N(b) とし,点 b の基本近傍系を N*(b) とする.

    このとき,N(b) = {{b, c}, {a, b, c}, X}.
    N*(b) = {{b, c}},{{b, c}, {a, b, c}},{{b, c}, X},{{b, c}, {a, b, c}, X},
    これより,(全)近傍系は,最大の基本近傍系と一致することが示される.

    誠に基本的なことで申し訳ありません.
    先生にはご繁忙の中,寸暇をいただきご教示いただければ幸いです.

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    1. 位相空間Xの点 x に対する任意の近傍を U(x) とする.また,U(x) の集合を{U(x)} とし,x の近傍全体((全)近傍系)を N (x) とする.このとき,次の同値が成り立つ.
       ∀U(x) ⇔ {U(x)} ⇔ N(x)

      の最後の書き方はよくわかりません.
      N(x)=\{U(x)|U(x):\text{$x$の近傍}\}
      ということでしょうか?

      質問1. は正しいと思います.近傍系は基本近傍基になり得ますし、基本近傍基は近傍系の部分集合であるからです.

      質問2.は違います.近傍は、開近傍、閉近傍、開近傍でも閉近傍でもない近傍の3つに分けられます。
      開かつ閉近傍は開近傍と閉近傍のどちらにも含まれる近傍です。

      例についてですが、
      N(b)=\{\{b,c\},\{a,b,c\},X\} で正しく、
      N^*(b)=\{\{b,c\}\} で十分ですね.上で書いた通り、N^*(b)\subset N(b) ですので.N^*(b) をちょうど N(b) を取ったときも基本近傍基となります.

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  6. お忙しい中ご回答のご面倒,誠に有り難うございました.
    お礼の言葉申し遅れ,お詫び申し上げます.

    質問1については,理解に誤りがなかったこと,安堵しております.
    質問2については,誤りを訂正いただき,基本的な理解不足を痛感いたしました.

    なお,質問2に関し,近傍ではなく,集合の場合は,開集合,閉集合,開かつ閉集合の3タイプのいずれかになり,開集合でも閉集合でもない集合は存在しないと考えてよろしいでしょうか.

    ∀U(x) ⇔ {U(x)} ⇔ N(x) の同値性については,先生のお示しの通り,N(x)={U(x)|{U(x)}:xの近傍} を意味するつもりでした.
    つまり,∀U(x) も {U(x)} も N(x) も,近傍全体((全)近傍系)を示す表記となりうると理解していますが正しいでしょうか.

    また,基本近傍系(=基本近傍基)については,すべて挙げれば,前回記したとおり下記のように,
    N*(b)={{b, c}},{{b, c}, {a,b, c}},{{b, c}, X},{{b, c}, {a,b, c}, X},
    ですが,最小(すべての基本近傍系に共通する)の基本近傍系(=基本近傍基)は,先生のお示しした {{b, c}} である,という理解でよろしいでしょうか.

    恐縮ですが,また新たに質問をさせていただきたいと存じます.
    分離公理に関するものです.T3空間の例です.下記のように考えてみました.正しいでしょうか.
    (勝手ながら,先生が分離公理について解説されているWebページではなく,こちらに記させていただきます)

    位相空間を (X, O)とし,X={a,b,c}のとき,O を次のように定める.
      O ={φ, {a},{b,c}, X}.
    このとき,(X, O)の閉集合はX, {b,c}, {a}, φ である.
    まず,{a}が閉集合のとき,b, c{a}.
    このとき,閉集合{a}の近傍に{a},点b,cの近傍にいずれも{b,c}とがとれ,{a}∩{b,c}=φ.
    つぎに,{b,c}が閉集合のとき,a{b,c}.
    このとき,閉集合{b,c}の近傍に{b,c},点aの近傍に{a}がとれ,{a}∩{b,c}=φ.
    以上より,(X, O)はT3空間である.

    お忙しい中,恐れ入りますが,ご回答のご面倒をいただければ幸甚です.
    よろしくお願い申し上げます.

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    1. > なお,質問2に関し,近傍ではなく,集合の場合は,開集合,閉集合,開かつ閉集合の3タイプのいずれかになり,開集合でも閉集合でもない集合は存在しないと考えてよろしいでしょうか.

      近傍も集合です.ですので、近傍でそのような例があるなら、
      集合でもそのような例があるということになります.
      つまり、開集合でも閉集合でもない近傍は
      開集合でも閉集合でもない集合です.
      もちろん、近傍でなく、開集合でも閉集合でもない集合はあります.

      > ∀U(x) ⇔ {U(x)} ⇔ N(x) の同値性については,先生のお示しの通り,N(x)={U(x)|{U(x)}:xの近傍} を意味するつもりでした.
      > つまり,∀U(x) も {U(x)} も N(x) も,近傍全体((全)近傍系)を示す表記となりうると理解していますが正しいでしょうか.

      少し質問の意図がわかりませんが、
      N(x)={U(x)|{U(x)}:xの近傍} と定義するのであれば、N(x) は近傍全体を
      意味します.

      ∀U(x) も {U(x)} も N(x)

      とありますが、U(x) が何をいみするのか?{U(x)} は、どのような全体をとっているのか指定すれば、求める.
      当然ですが、突然、∀U(x) だけ取り出しても、近傍を意味しません
      近傍をそう書くというのならそうするだけです.
      例えば、
      ∀U(x) (任意の x の近傍)
      と書いてあれば、U(x) として、x の任意の近傍をとったということがわかります.
      このように、証明の一部だけ取り出して、正しいか正しくないかを
      問うのはあまり意味がありません.
      また、記号に関しては一般論があるもの(実数はRとか)も
      あれば、そうでないものもあります.

      > 先生のお示しした {{b, c}} である,という理解でよろしいでしょうか.
      そう思います.

      最後のT3空間の例、正しい理解でよいと思います.

      また、数学の細かい証明などの可否をこのコメント欄で長々とやりとりするのは
      結構大変です.メールにてご対応ください.
      アドレスは、数学類のホームページにあります.

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