[場所1E103(金曜日5限)]
今日は
ダランベールの方法を用いれば、$\sqrt{\frac{\frac{1}{(n+1)!}}{\frac{1}{n!}}}=\sqrt{\frac{1}{n+1}}\to 0$
$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{\sqrt[n]{n!}}\ge \sum_{n=1}^\infty\frac{1}{\sqrt[n]{n^n}}=\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}=\infty $ となり、この右辺が発散するので、$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{\sqrt[n]{n!}}$ も発散することになります.
宿題にも一問級数の判定についての問題を出しました.
おそらく、コーシーの判定法やダランベールの判定法など使えないと思いますので、
がんばって優級数法により示してください.
- 級数の収束について
- べき級数展開、収束半径
について行いました.
これは、前半です.後半は次のblog(←リンク)です.
級数の収束について
絶対収束と条件収束について
級数の収束については、結構微妙なことが多く難しいのですが、
ここでは一般的によく使う方法についてまとめておきます.
級数とは、ある数列 $a_n$ の全ての総和のことであり、つまり
レポートなどを見ているとよく分かっていない人のために少し書きます.
$$\sum_{n=1}^\infty a_n=\lim_{N\to \infty}\sum_{n=1}^Na_n$$
のことです.この極限が収束するかということが問題となります.
また、出てくる数列は全て正のものが多いです.
というのも、数列が、正負のものがどちらも無限個出てくるとすると、事態は難しくなります.
正負どちらも無限個出るとしても、絶対収束するもの、
つまり、絶対値を取った級数 $\sum_{n=1}^\infty|a_n|$ が収束するような級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ だけ考えます.
絶対収束しないような収束のことを条件収束といいます.
よくある条件収束は、$\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^{n-1}}{n}$ です.
これは、$\log (1+x)$ のテイラー展開に 1 を代入したものなので、値も分かり、$\log 2$ です.
条件収束のよくないところは、和のとり方の順番を替えると値が変わることです.
例えば、上の例で、和の順番を替えてやると次のように計算されます.
$$\sum_{n=1}^\infty \left(\frac{(-1)^{4n-2}}{4n-1}+\frac{(-1)^{4n}}{4n+1}+\frac{(-1)^{2n-1}}{2n}\right)=1-\frac{3}{2}\log 2$$
このようなことは、少々議論が大変なので、これ以降級数の項は全て正の数としておきます.
コーシーの方法
級数$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が正項級数であり、$\sqrt[n]{a_n}\le r<1$ となるなら、
$\sum_{n=1}^\infty a_n$ は収束する.
この方法は級数が収束するための十分条件を与えており、決して必要条件ではありません.
また、$r$ に収束するか、または有限個の $n$ を除いてこの条件が成り立つとしても収束性は変わりません.
また、この $r$ のことを全く無視して $\sqrt[n]{a_n}<1$ だからといって収束するとは限りません.
証明は $\sum_{n=1}^\infty a_n\le \sum_{n=1}^\infty r^n=\frac{r}{1-r}$ となり、右辺は有界だから、
$\sum_{n=1}^N a_n$ の増大もどこかでとまる.つまりこの級数が収束するということになります.
ダランベールの方法
級数$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が正項級数であり、$\frac{a_{n+1}}{a_n}\le r<1$ となるなら、
$\sum_{n=1}^\infty a_n$ は収束する.
これは、前半です.後半は次のblog(←リンク)です.
級数の収束について
絶対収束と条件収束について
級数の収束については、結構微妙なことが多く難しいのですが、
ここでは一般的によく使う方法についてまとめておきます.
級数とは、ある数列 $a_n$ の全ての総和のことであり、つまり
レポートなどを見ているとよく分かっていない人のために少し書きます.
$$\sum_{n=1}^\infty a_n=\lim_{N\to \infty}\sum_{n=1}^Na_n$$
のことです.この極限が収束するかということが問題となります.
また、出てくる数列は全て正のものが多いです.
というのも、数列が、正負のものがどちらも無限個出てくるとすると、事態は難しくなります.
正負どちらも無限個出るとしても、絶対収束するもの、
つまり、絶対値を取った級数 $\sum_{n=1}^\infty|a_n|$ が収束するような級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ だけ考えます.
絶対収束しないような収束のことを条件収束といいます.
よくある条件収束は、$\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^{n-1}}{n}$ です.
これは、$\log (1+x)$ のテイラー展開に 1 を代入したものなので、値も分かり、$\log 2$ です.
条件収束のよくないところは、和のとり方の順番を替えると値が変わることです.
例えば、上の例で、和の順番を替えてやると次のように計算されます.
$$\sum_{n=1}^\infty \left(\frac{(-1)^{4n-2}}{4n-1}+\frac{(-1)^{4n}}{4n+1}+\frac{(-1)^{2n-1}}{2n}\right)=1-\frac{3}{2}\log 2$$
このようなことは、少々議論が大変なので、これ以降級数の項は全て正の数としておきます.
コーシーの方法
級数$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が正項級数であり、$\sqrt[n]{a_n}\le r<1$ となるなら、
$\sum_{n=1}^\infty a_n$ は収束する.
この方法は級数が収束するための十分条件を与えており、決して必要条件ではありません.
また、$r$ に収束するか、または有限個の $n$ を除いてこの条件が成り立つとしても収束性は変わりません.
また、この $r$ のことを全く無視して $\sqrt[n]{a_n}<1$ だからといって収束するとは限りません.
証明は $\sum_{n=1}^\infty a_n\le \sum_{n=1}^\infty r^n=\frac{r}{1-r}$ となり、右辺は有界だから、
$\sum_{n=1}^N a_n$ の増大もどこかでとまる.つまりこの級数が収束するということになります.
ダランベールの方法
級数$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が正項級数であり、$\frac{a_{n+1}}{a_n}\le r<1$ となるなら、
$\sum_{n=1}^\infty a_n$ は収束する.
この方法もコーシーの方法と同じで、収束するための十分条件であり、$r$ がきちんと $1$ より下でとれなければ意味がありません.
また、$r$ に収束するか、または有限個の $n$ を除いてこの条件が成り立つとしても収束性は変わりません.
また、$\frac{a_{n+1}}{a_n}<1$ となるような状況だけだと、収束することも発散することも分かりません.しかし、それが $1$ より少しでも小さい値で抑えられる場合は、収束が言えます.
今回の宿題にあったように $\sum_{n=1}^\infty n\sin(\frac{\pi}{2^n})$ なる級数だと、ダランベールの方法を用いて
$\frac{(n+1)\sin\frac{\pi}{2^{n+1}}}{n\sin\frac{\pi}{2^n}}=\frac{n+1}{n}\frac{\sin\frac{\pi}{2^{n+1}}}{2\sin\frac{\pi}{2^{n+1}}\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}}=\frac{n+1}{n}\frac{1}{2\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}}
\to \frac{1}{2}$
\to \frac{1}{2}$
であり、ダランベールの条件が成り立ちます.条件を満たす $r$ は$\frac{1}{2}$より少しでも大きい数であれば、必ず有限個の $n$ を除いて $\frac{a_{n+1}}{a_n}\le r$ が成り立ちます.
優級数法
優級数法というのもあり、これは収束性の証明の中で一番よく使われるものです.
数列が $a_n\le M_n$ を満たし、$\sum_{n=1}^\infty M_n$ が収束するなら、$\sum_{n=1}^\infty a_n$ も収束します.
また、
数列が $a_n\ge M_n>0$ を満たし、$\sum_{n=1}^\infty M_n$ が発散するなら、$\sum_{n=1}^\infty a_n$ も発散します.
例えば、優級数法を使えば、
問題
問題
$\sum_{n=1}^\infty \frac{n!}{n^n}$ の収束については、以下のように行います.
$2^{n}n^2(n-1)^2\cdots 2^2\cdot 1^2\le n^{2n} $
を数学的帰納法で証明します.
$n=1$ のとき、$2^1\cdot 1=2\le 1^{2\cdot1}=1$ となり成り立ちます.
$2^{n}n^2(n-1)^2\cdots 2^2\cdot 1^2\le n^{2n}$
が成り立つとすると、
$2^{n+1}(n+1)^2n^2\cdots 2^2\cdot 1^2\le 2(n+1)^2n^{2n}$
となり、
$\frac{2(n+1)^2n^{2n}}{(n+1)^{2(n+1)}}=\frac{2n^{2n}}{(n+1)^{2n}}\le 1$
を示します.2項定理から、
$(n+1)^{2n}\ge n^{2n}+2nn^{2n-1}=n^{2n}+2n^{2n}=3n^{2n}\ge 2n^{2n}$
となり、
$\frac{2n^{2n}}{(n+1)^{2n}}\le 1$ が成り立ちます.
よって、
$2^{n+1}(n+1)^2n^2\cdots 2^2\cdot 1^2\le (n+1)^{2(n+1)}$
が成り立ちます.
よって、任意の $n$ に対して、
$2^{n}n^2(n-1)^2\cdots 2^2\cdot 1^2\le n^{2n}$ が成り立ちます.
よって、$\frac{n!}{n^n}\le \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{n}{2}}=\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^n$ が成り立ちます.
ゆえに、
$\sum_{n=1}^{\infty }\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^n$ が収束すれば、優級数法から
$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n!}{n^n}$ も収束します.
$\sum_{n=1}^{\infty }\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^n=\frac{1}{\sqrt{2}-1}=\sqrt{2}+1$
ですので、収束します.
よって、
$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n!}{n^n}$
も収束します.ただ、どのような値になるかはよく分かりません.計算ソフトを用いると、大体1.87985....
くらいです.
また、ダランベールの方法を使ったとしても、
$\frac{\frac{(n+1)!}{(n+1)^{n+1}}}{\frac{n!}{n^n}}=\frac{n^n}{(n+1)^n}=\left(1-\frac{1}{n+1}\right)^n$ となり
$1/e<1$ に収束します.
ゆえに、この級数も収束するということになります.
こちらの方がいくらか簡単でしょうか.
また、ダランベールの方法を使ったとしても、
$\frac{\frac{(n+1)!}{(n+1)^{n+1}}}{\frac{n!}{n^n}}=\frac{n^n}{(n+1)^n}=\left(1-\frac{1}{n+1}\right)^n$ となり
$1/e<1$ に収束します.
ゆえに、この級数も収束するということになります.
こちらの方がいくらか簡単でしょうか.
問題
$\sum_{n=1}^{\infty }\frac{1}{\sqrt{n!}}$ が収束するかどうか判定せよ.
も、授業中で途中でやめた問題です.
$\sum_{n=1}^{\infty }\frac{1}{\sqrt{n!}}$ が収束するかどうか判定せよ.
も、授業中で途中でやめた問題です.
ダランベールの方法を用いれば、$\sqrt{\frac{\frac{1}{(n+1)!}}{\frac{1}{n!}}}=\sqrt{\frac{1}{n+1}}\to 0$
なので、収束します.また、
問題
問題
$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{\sqrt[n]{n!}}$ が収束するかどうか判定せよ.
は、優級数法を用いれば、
は、優級数法を用いれば、
$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{\sqrt[n]{n!}}\ge \sum_{n=1}^\infty\frac{1}{\sqrt[n]{n^n}}=\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}=\infty $ となり、この右辺が発散するので、$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{\sqrt[n]{n!}}$ も発散することになります.
宿題にも一問級数の判定についての問題を出しました.
おそらく、コーシーの判定法やダランベールの判定法など使えないと思いますので、
がんばって優級数法により示してください.