[場所1E501(月曜日5限)]
HPに行く
今回は、誰も発表者がいなかったので、線形代数の復習をしました。
(7) 3つのベクトル $v_1$, $v_3$ $v_3$ のうちどの2つをとっても一次独立であるとき、これらは一次 独立か?
これは、ダメです。
${\mathbb R}^2$ の場合を考えてみます。
$v_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$, $v_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$, $v_3=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}$ としてみれば、
どの2つも平行ではないので、1次独立になりますが、
3つの間には、$v_3=v_1+v_2$ が成り立つのでこれらの間では一次独立ではありません。
(10) $2\times 2$ 正方行列で対角化できない行列の例をあげよ。
ですが、1年生の授業では、対角化可能条件はやらなかったそうです。
ここでは、対角化可能条件について、まとめておきます。
$A$ を $n$ 次正方行列とします。$\lambda_1,\lambda_2,\cdots, \lambda_r$ を
$A$ の固有値全体とします。また、$W_{\lambda_i}$ を固有値 $\lambda_i$ の
固有空間とします。このとき、以下が成り立ちます。
定理
$A$ が対角化できるためには、
$$n=\sum_{i=1}^r\dim(W_{\lambda_i})$$
が成り立つことが必要十分である。
(証明)
$A$ が対角化できるとすると、正則行列 $P$ と対角行列 $D$ が存在して、
$P^{-1}AP=D$ となります。$P$ を左からかけて、$AP=PD$ としておきます。
$P$ の第 $i$ 列を $p_i$ とし、$D$ の対角成分を $d_1,d_2,\cdots, d_n$ とします。
$i$ 列だけみると、$Ap_i=d_i p_i$ が成り立ちます。
よって、$p_i$ は固有値 $d_i$ に属する $A$ の固有ベクトルとなります。
また、$P$ は正則であるので、
$p_1,\cdots, p_n$ は ${\mathbb C}^n$ の基底となります。
よって、固有値 $\lambda_j$ に対して、$\lambda_j=d_i$ となる $i$ の数を $n_j$
とします。このとき、そのような $p_i$ を集めることで、
$n_j$ 個の一次独立な $W_{\lambda_j}$ のベクトルが
あることになるので、$\dim(W_{\lambda_j})\ge n_j$ となります。
よって、
$$n=\sum_{j=1}^r n_j\le \dim(W_{\lambda_j})\le n$$
である。よって、$n= \dim(W_{\lambda_j})$ となります。
一方、$n=\sum_{j=1}^r\dim(W_{\lambda_j})$ が成り立つとします。
このとき、$l_j=\dim W_{\lambda_j}$ として、$W_{\lambda_j}$ の基底を
$l_j$ 個 $p_{j,1},\cdots, p_{j,l_j}$ と取ります。
このとき、 $n$ 個のベクトル $p_{1,1},\cdots, p_{1,l_1},p_{2,1},\cdots, p_{2,l_2},\cdots, p_{r,l_r}$
を並べると、
これらは、固有ベクトルから、
$A(p_{1,1},\cdots, p_{1,l_1},p_{2,1},\cdots, p_{2,l_2},\cdots, p_{r,l_r})=(\lambda_1p_{1,1},\cdots, \lambda_1p_{1,l_1},\cdots, \lambda_rp_{r,l_r})=PD$
となります。ここで、$D$ はある対角行列であり、
$P=(p_{1,1},\cdots, p_{1,l_1},p_{2,1},\cdots, p_{2,l_2},\cdots, p_{r,l_r})$
とします。これらは一次独立であるので、$P$ は正則行列になります。(証明終了)
他に、対角化可能のための十分条件として、以下があります。
定理
$n$ 次正方行列 $A$ の固有多項式の解が重複なく、ちょうど$n$ 個
存在するとき、$A$ は対角化可能である。
(証明)
$A$ の固有値が重複なく、$\lambda_1,\lambda_2.\cdots, \lambda_n$
のように存在したとする。このとき、
$W_{\lambda_i}$ には固有ベクトル(non-zero ベクトル)が少なくとも一つ以上あるので、
次元は1以上です。$\dim(W_{\lambda_i})\ge 1$ となります。
よって、
$n\ge\sum_{i=1}^n\dim(W_{\lambda_i})\ge n$ であるので、
$n=\sum_{i=1}^nW_{\lambda_i}$ となります。つまり、$A$ は対角化可能となります。(証明終了)
(10)を解くには、例えば、次のような行列を考えればよいでしょう。
(証明)
$A=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix}$
とすると、$A$ は三角行列ですから、固有値は、対角成分となります。
実際、固有多項式は $\det(xE-A)=\det\begin{pmatrix}x&-1\\0&x\end{pmatrix}=x^2$
となりますので、この根である $0$ が固有値となります。
固有値は $0$ だけですので、$W_0$ を求めればよいことになります。
$W_0=\{x|(0\cdot E-A)x=0\}=\{x|Ax=0\}$ ですが、
$x=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}$ とすると、
この連立一次方程式は、$x_2=0$ と同じです。
よって、$x_1=c$ と置けば、
$$x=\begin{pmatrix}c\\0\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$$
となるので、$W_0$ は、
$$\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$$
によって生成されます。
ベクトル空間となります。つまり、$W_{0}$ の次元は1次元となります。
よって、$A$ の次数は2なので、
$2\neq 1$ であることから、
この行列は対角化できません。(証明終了)
このように固有多項式に重複解が存在する場合、対角化可能かどうかは
多項式からは判断できませんので、実際、連立方程式を解いて、次元を
調べる必要があります。
例えば、同じ $x^2$ を固有多項式にもつ行列として、ゼロ行列がありますが、
ゼロ行列は明らかに対角行列ですので対角化可能です。
今回は、誰も発表者がいなかったので、線形代数の復習をしました。
(7) 3つのベクトル $v_1$, $v_3$ $v_3$ のうちどの2つをとっても一次独立であるとき、これらは一次 独立か?
これは、ダメです。
${\mathbb R}^2$ の場合を考えてみます。
$v_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$, $v_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$, $v_3=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}$ としてみれば、
どの2つも平行ではないので、1次独立になりますが、
3つの間には、$v_3=v_1+v_2$ が成り立つのでこれらの間では一次独立ではありません。
(10) $2\times 2$ 正方行列で対角化できない行列の例をあげよ。
ですが、1年生の授業では、対角化可能条件はやらなかったそうです。
ここでは、対角化可能条件について、まとめておきます。
$A$ を $n$ 次正方行列とします。$\lambda_1,\lambda_2,\cdots, \lambda_r$ を
$A$ の固有値全体とします。また、$W_{\lambda_i}$ を固有値 $\lambda_i$ の
固有空間とします。このとき、以下が成り立ちます。
定理
$A$ が対角化できるためには、
$$n=\sum_{i=1}^r\dim(W_{\lambda_i})$$
が成り立つことが必要十分である。
(証明)
$A$ が対角化できるとすると、正則行列 $P$ と対角行列 $D$ が存在して、
$P^{-1}AP=D$ となります。$P$ を左からかけて、$AP=PD$ としておきます。
$P$ の第 $i$ 列を $p_i$ とし、$D$ の対角成分を $d_1,d_2,\cdots, d_n$ とします。
$i$ 列だけみると、$Ap_i=d_i p_i$ が成り立ちます。
よって、$p_i$ は固有値 $d_i$ に属する $A$ の固有ベクトルとなります。
また、$P$ は正則であるので、
$p_1,\cdots, p_n$ は ${\mathbb C}^n$ の基底となります。
よって、固有値 $\lambda_j$ に対して、$\lambda_j=d_i$ となる $i$ の数を $n_j$
とします。このとき、そのような $p_i$ を集めることで、
$n_j$ 個の一次独立な $W_{\lambda_j}$ のベクトルが
あることになるので、$\dim(W_{\lambda_j})\ge n_j$ となります。
よって、
$$n=\sum_{j=1}^r n_j\le \dim(W_{\lambda_j})\le n$$
である。よって、$n= \dim(W_{\lambda_j})$ となります。
一方、$n=\sum_{j=1}^r\dim(W_{\lambda_j})$ が成り立つとします。
このとき、$l_j=\dim W_{\lambda_j}$ として、$W_{\lambda_j}$ の基底を
$l_j$ 個 $p_{j,1},\cdots, p_{j,l_j}$ と取ります。
このとき、 $n$ 個のベクトル $p_{1,1},\cdots, p_{1,l_1},p_{2,1},\cdots, p_{2,l_2},\cdots, p_{r,l_r}$
を並べると、
これらは、固有ベクトルから、
$A(p_{1,1},\cdots, p_{1,l_1},p_{2,1},\cdots, p_{2,l_2},\cdots, p_{r,l_r})=(\lambda_1p_{1,1},\cdots, \lambda_1p_{1,l_1},\cdots, \lambda_rp_{r,l_r})=PD$
となります。ここで、$D$ はある対角行列であり、
$P=(p_{1,1},\cdots, p_{1,l_1},p_{2,1},\cdots, p_{2,l_2},\cdots, p_{r,l_r})$
とします。これらは一次独立であるので、$P$ は正則行列になります。(証明終了)
他に、対角化可能のための十分条件として、以下があります。
定理
$n$ 次正方行列 $A$ の固有多項式の解が重複なく、ちょうど$n$ 個
存在するとき、$A$ は対角化可能である。
(証明)
$A$ の固有値が重複なく、$\lambda_1,\lambda_2.\cdots, \lambda_n$
のように存在したとする。このとき、
$W_{\lambda_i}$ には固有ベクトル(non-zero ベクトル)が少なくとも一つ以上あるので、
次元は1以上です。$\dim(W_{\lambda_i})\ge 1$ となります。
よって、
$n\ge\sum_{i=1}^n\dim(W_{\lambda_i})\ge n$ であるので、
$n=\sum_{i=1}^nW_{\lambda_i}$ となります。つまり、$A$ は対角化可能となります。(証明終了)
(10)を解くには、例えば、次のような行列を考えればよいでしょう。
(証明)
$A=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix}$
とすると、$A$ は三角行列ですから、固有値は、対角成分となります。
実際、固有多項式は $\det(xE-A)=\det\begin{pmatrix}x&-1\\0&x\end{pmatrix}=x^2$
となりますので、この根である $0$ が固有値となります。
固有値は $0$ だけですので、$W_0$ を求めればよいことになります。
$W_0=\{x|(0\cdot E-A)x=0\}=\{x|Ax=0\}$ ですが、
$x=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}$ とすると、
この連立一次方程式は、$x_2=0$ と同じです。
よって、$x_1=c$ と置けば、
$$x=\begin{pmatrix}c\\0\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$$
となるので、$W_0$ は、
$$\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$$
によって生成されます。
ベクトル空間となります。つまり、$W_{0}$ の次元は1次元となります。
よって、$A$ の次数は2なので、
$2\neq 1$ であることから、
この行列は対角化できません。(証明終了)
このように固有多項式に重複解が存在する場合、対角化可能かどうかは
多項式からは判断できませんので、実際、連立方程式を解いて、次元を
調べる必要があります。
例えば、同じ $x^2$ を固有多項式にもつ行列として、ゼロ行列がありますが、
ゼロ行列は明らかに対角行列ですので対角化可能です。