2019年6月3日月曜日

数学外書輪講I(第5回)

[場所1E501(月曜日5限)]

HPに行く

Proofs from THE BOOKをみんなで読んでいます。

Chapter 9

今回は、$\zeta(2)=\frac{\pi^2}{6}$ であることの別証明です。

$\zeta(2)=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}$ ですが、級数の収束の定番、
挟み撃ちの原理を用いる方法です。
ある意味直接的で、高校性でも理解できる方法です。

私は、$\sin $ 関数を因数分解したり、フーリエ級数などを
用いる方法しか思いつきませんでした。

$\sin y\le y\le \tan y$ なる不等式を使います。

2乗をしてこの逆数を取ると、

$\cot^2 y\le \frac{1}{y^2}\le \text{csc}^2y$
となります。

オイラーの公式
$e^{inx}=(\cos nx+i\sin nx)^n$ を用いることで、

$\sin nx=\binom{n}{1}\sin x\cos^{n-1}x-\binom{n}{3}\sin^3x\cos^{n-3}x+\cdots$
となり、$n=2m+1$ とし、 $(2m+1)x=r\pi$ とする。ここで、$r=1,2,\cdots, m$ とすると、
$0=\binom{2m+1}{1}\sin x\cos^{2m}x-\binom{2m+1}{3}\sin^3x\cos^{2m-1}x+\cdots $
となります。
$\sin^{2m+1}x$ で割ることで、
$0=\binom{2m+1}{1}\cot^{2m}\frac{r\pi}{2m+1}-\binom{2m+1}{3}\cot^{2m-2}\frac{r\pi}{2m+1}+\cdots +(-1)^m\binom{2m+1}{2m+1}$

となります。この式を多項式
$$\binom{2m+1}{1}t^{m}-\binom{2m+1}{3}t^{m-1}+\cdots+(-1)^m\binom{2m+1}{2m+1}$$
の零点が、$\cot^2\frac{r\pi}{2m+1},\ \ \ r=1,2,\cdots, m$ であるとみることもできます。
ここで、これらの $m$ 個は互いに異なる実数であることに注意してください。
よって、解と係数の関係により、
$$\sum_{r=1}^m\cot^2\frac{r\pi}{2m+1}=\frac{\binom{2m+1}{1}}{\binom{2m+1}{3}}=\frac{2m(2m-1)}{6}$$
が成り立ちます。
同様に、$\cot^2x+1=\text{csc}^2x$ であるから、


$\sum_{r=1}^m\text{csc}^2\frac{r\pi}{2m+1}=\frac{2m(2m+2)}{6}$
とすることにより、 
$\frac{2m(2m+2)}{6}\le \sum_{r=1}^m\left(\frac{2m+1}{r\pi}\right)^2\le \frac{2m(2m+2)}{6}$
となります。よって、$\frac{(2m+1)^2}{\pi^2}$ で両辺を割れば、
$\frac{2m(2m-2)}{6(2m+1)^2}\pi^2\le \sum_{r=1}^m\frac{1}{r^2}\le \frac{2m(2m+1)}{6(2m+1)^2}\pi^2$
が成り立ちます。
よって、$m\to \infty$ のとき、
$$\sum_{r=1}^\infty \frac{1}{r^2}=\frac{\pi^2}{6}$$
が成り立ちます。


二項係数は(ほとんど)べきにならないこと

前回のバートランドの仮説の続きで、シルベスターの定理で
以下のものがあります。

定理'(シルベスター)
$n\ge 2k$ なら、$n,n-1,\cdots, n-k+1$ のどれか少なくとも一つ $k$ より大きい
素因数 $p$ が存在する。

この同値な命題として、下があります。

命題
$\binom{n}{k}$ は、いつも、$p>k$ なる素因数をもつ。

二項係数 $\binom{n}{m}$ がいつ $p$ を割るかという話でした。

目標となるのは、次の定理です。

定理(Erdös [1.])
$4\le k\le n-4$ かつ、$\ell\ge 2$  のときに、
$\binom{n}{k}=m^\ell$ となる整数解 $(n,m)$ は存在しない。

(証明)
二項係数の対称性から、$n\ge 2k$ を仮定してもよいです。
そうすると、シルベスターの定理が使えて、$\binom{n}{k}$ には、
$p>k$ となる素因数が少なくとも一つ存在します。
その素因数は、$m^\ell$ を割るので結局、$m^\ell$ には
素因数 $p$ は少なくとも $\ell$ 個( $\ell$ の倍数個でちょうど割れる)入っており、
$n,n-1,\cdots, n-k+1$ の中の $n-i$ にすべて入っています。

その素因数について、$n\ge p^\ell>k^\ell\ge k^2$ が成り立つことになります。

ここで、$n-j=a_jm_j^\ell$ のように $a_j$ には $\ell$ 乗因子は
含まれていないように一意に分解できます。

上で議論したことから、$a_j$ には、$k$ より大きい素因数は入っていません。

また、$i\neq j$ ならば、$a_i\neq a_j$ を示します。

もし、$i\neq j$ において、$a_i=a_j$ であるとしたら、
$m_i\ge m_j+1$ が成り立ち、
$k>(n-i)-(n-j)=a_j(m_i-\ell-m_j^\ell)\ge a_j((m_j+1)^\ell-m_j^\ell)$
$>a_j\ell m_j^{\ell-1}\ge \ell(a_jm_j^{\ell})^{1/2}\ge \ell (n-k+1)^{1/2}\ge \ell(\frac{n}{2}+1)^{1/2}>n^{1/2}$

となり、上の不等式と矛盾します。
  1. P. Erdös: On a diophantine equation, J. London Math. 21(1951) 176-178

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