2019年6月3日月曜日

数学外書輪講I(第2回)

[場所1E501(月曜日5限)]


4/22から外書輪講の輪講が始まりました。

今回は素数が無限個あることの証明です。

定理
素数は無限個存在する。


まずは以下を示してもらいました。もっとも有名な証明と思います。

(ユークリッドの証明)
素数が有限個とする。

$\{p_1,p_2,\cdots, p_n\}$
が素数のすべての集合とする。
このとき、
$n=p_1p_2\cdots p_n+1$ という自然数を考える。
この数 $n$ の任意の素因数を $p$ とする。
$p$ の $n$ このどれかになすはずである。
$p_1p_2\cdots p_n+1=px$ とすると、
$px-p_1p_2\cdots p_n=1$ であり、左辺は $p$ で割り切れる。
よって、右辺も $p$ 割り切れる必要がある。
しかし、$1$ はこのどの素数の倍数ではないので、矛盾する。(証明終了)


次は微積分を使う証明でした。

(オイラーの証明)
$\pi(x)=\#\{p\le x|p:\text{prime}\}$
という関数を考える。

まず、関数 $\frac{1}{t}$ の $1$ から $x$ までの積分と、それまでの
短冊領域での面積を比較することで、
$$\log x\le 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots +\frac{1}{n}$$
が成り立つ。
$$\text{(右辺)}\le \sum_{(\ast)}\frac{1}{m}$$
となります。
ただし、この最後の和の $(\ast)$ の意味は、
$1$ から $n$ までに登場する素数の倍数となる数 $m$ 全体の和をとること
を意味するとします。
そのような集合には、1から $n$ までの数は含まれているので、
最後の不等式が成り立ちます。

この$\sum_{(\ast)}$ を計算すると、

$$\sum_{p\in {\mathbb P},p\le x}\sum_{k\ge 0}\frac{1}{p^k}$$
となります。ここで ${\mathbb P}$ は素数の集合。
よって、

$$\log x\le \prod_{p\in {\mathbb P},p\le x}\frac{1}{1-\frac{1}{p}}= \prod_{p\in {\mathbb P},p\le x}\frac{p}{p-1}$$
$$=\prod_{k=1}^{\pi(x)}\frac{p_k}{p_k-1}$$
が成り立ちます。
ここで、$p_1,p_2,\cdots, p_n$ は素数を順番に並べた数列。

$$\frac{p_k}{p_k-1}=1+\frac{1}{p_k-1}\le 1+\frac{1}{k}=\frac{k+1}{k}$$
となる。
よって、

$$\log x\le \prod_{k=1}^{\pi(x)}\frac{k+1}{k}=\pi(x)+1$$
となり、$\log x$ が無限に発散する関数なので、$\pi(x)$ も無限に発散する
関数となる。
つまり、素数は無限個ある。

(証明終了)
証明で登場した $\pi(x)$ は、実数上の実数を値にもつ関数で、
素数が来たら1上がり、それ以外の実数では定数になるような関数です。
一般にこの関数は $\pi$ の字を用いて、$\pi$-関数と言ったりもします。
この関数の増大度に関する素数定理が有名です。


3人目は、ゴールドバッハの証明です。
これも鮮やかです。

(ゴールドバッハの証明)
フェルマー数を $F_n=2^{2^n}+1$ と定義する。
このとき、任意の2つのフェルマー数は互いに素であることを示せば良い。

$\prod_{k=0}^{n-1}F_k=F_n-2$ であることを証明する。
帰納法により証明する。
$n=1$ の場合は、
$F_0=3$ かつ$F_1=5$ であるから、
$F_0=F_1-2$ として成立する。
この式が $n$ まで正しいとする。

$$\prod_{k=0}^{n}F_k=(\prod_{k=0}^{n-1}F_k)F_n=(F_n-2)F_n$$
$$=(2^{2^n}-1)(2^{2^n}+1)=2^{2^{n+1}}-1=F_{n+1}-2$$
よって、$n+1$ の場合も正しい。
よって、任意の自然数 $n$ に対して、$\prod_{k=0}^{n-1}F_k=F_n-2$
が正しい。

もし、$n> m$ として、$F_n$ $F_m$ 公約素因数 $p$ を持つとする。
このとき、$F_n-\prod_{k=0}^{n-1}F_k=2$ であり、
この左辺は $p$ で割り切れる。
よって、右辺も $p$ で割り切れる。よって $p$ は $2$ でないといけない。
しかし、一般に、フェルマー数は奇数なので $2$ を因数に持つことはないので矛盾する。
よって $n>m$ に対して $F_n,F_m$ は公約素因数を持たない。つまり互いに素である。

数列 $F_1,F_2,\cdots$ を求めるたび毎に新しい素数が素因数として現れる。
フェルマー数は無限数列であるので、素数は少なくとも無限個あることがわかる。(証明終了)

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