2017年4月21日金曜日

微積分I演習(物理学類)(第2回)

[場所1E103(金曜日5限)]

HPに行く
manabaに行く

今日は
  • 上限・下限
  • 実数の性質
  • 数列の収束定理

上限・下限

$E$ を${\mathbb R}$の部分集合で、空集合でないものとします。
このとき、
$E$ の上界を $S=\{y|x\le y,\forall x\in E\}$ として定義します。また、

$E$ の下界を $T=\{y|y\le x,\forall x\in E\}$ として定義します。

ここで、$E$ の上限を $\sup(E)=\min S$ として定義します。
また、$E$ の下限を $\inf(E)=\max T$ として定義します。

のちのために、この $y$ が上界であることの否定命題を作っておけば、

$y$ が $E$ の上界でないとは、
$\exists t\in E$ に対して $y<t$ となる。

ということです。下界であることの否定命題も同じように作ることができます。

ここで今日は、$\sup(E)$ を求めるための道具を与えました。

$s=\sup(E)$ であることは、次の[1],[2]と必要十分です。

[1] $\forall x\in E$ に対して、$x\le s$ である。
[2] $\forall s’<s$ に対して、$s’<t<s$ となる$t\in E$ が存在する。

授業でも述べましたが、[1] は、$s$ が $E$ の上界であることを言っていて、
[2] は、$s$ より、少しでも下の $s’$ は上界ではないということ(結局 $s$ が上界として最小であること)を言っています。

例題2-3は、この2条件が必要十分条件であることを示す問題です。
以下宿題の方は、この証明を見ながら作ってください。

まず、$s=\min(S)$ であることは、
(A) $s\in S$ であり、
(B) 任意の $x\in S$ に対して、 $s\le x$ となる
ということと同値です。

宿題も下を見ながら解いてください。

(同値性の証明)
(A),(B) $\Rightarrow$ [1],[2]について
(A), (B) が成り立つとする。
(A)から、$s$ は $E$ の上界の元である。
よって、$\forall x\in E$ に対して、$x\le s$ が成り立つ。ゆえに[1]が成り立つ。
(B)が成り立つとする。
ここで、$s’<s$ となる任意の元 $s’$ が $E$ の上界であるとする。
(B) から、$s\le s'$ が成り立つが、これは、$s’<s$ であることに反する。
よって、$s’<s$ となる任意の元は $E$ の上界ではない。
つまり、$s’<\exists\ t$ に対して、$t\in E$ となる(これは $s’$ が $E$ の上界であることの否定)。
ゆえに[2]が成り立つ。

(A), (B) $\Leftarrow$ [1],[2] について。
[1],[2]を仮定する。$s\in S$ であり、任意の $x\in S$ に対して、$s\le x$ であることを
示せばよいことになります。
まず、[1] の条件と上界の定義から、$s$ が $S$ の上界であることがわかります。
また、任意の $x\in S$ は $E$ の上界なので、$\forall y\in E$ に対して、$y\le x$ となります。
ここで、$\exists\ x\in S$ が $x<s$ であるとすると、[2] から、ある $E$ の元 $t$ が存在して、$x<t<s$となる。これは、$x$ は $E$ の上界であることに反する。
よって、$\forall x\in S$ ならば、$s\le x$ となる。これは(B) を示している。




実数の性質

上の実数の部分集合の、上限と下限を使って数の性質としてまず、ここではアルキメデスの原理を上げておきます。

アルキメデスの原理
任意の $a>0,b$ に対して、$na>b$ となる自然数 $n$ が存在する。

これを認めると、実数について次の性質が導かれます。

実数の稠密性
任意の $\alpha,\beta\in{\mathbb R}$ に対して、$\alpha<\beta$ なら、$\alpha<\gamma<\beta$ となる実数 $\gamma\in {\mathbb R}$ が存在する。

また、この $\gamma$ の部分を有理数、無理数としても成り立ちます。これは、有理数の稠密性、無理数の稠密性といいます。




例題2-4
$\sup(0,1)=1$ であることを示します。
ちなみに、$(0,1)=\{x|0<x<1\}$ です。

まず、[1]で、$1$ が $(0,1)$ の上界であることをいいます。
任意の $(0,1)$ の元 $x$ は、$0<x<1$ ですから、$1$ が $(0,1)$ の上界であることがわかります。
また、任意の $x<1$ の元をとると、$x<t<1$ となるような $t\in (0,1)$ が存在することを
示します。そのために、実数の稠密性を用います。

ここで、$\max\{x,0\}$ をとります。ここで $\max\{x,0\}$ は、$x,0$ のうち、大きい方を取りなさいという関数です。もし同じならその数そのものをとります。

そうすると、$0\le \max\{x,0\}$ であり、実数の稠密性で、
$\max\{x,0\}<t<1$ となる $t$ をとっておけば、$t\in (0,1)$ であることがわかります。

ゆえに、$x<t<1$ となる、 $t\in (0,1)$ を取れたことになるので、[2] が成り立ち、
$1$ は、$(0,1)$ の上限つまり、$\sup(0,1)=1$ であることがわかります。


数列の収束定理

数列の収束判定で最も有名なものを一つだけ上げておきました。
これは、実数の完備性(連続性)と言えるものと同じものです。

定理
上に有界な単調増加数列は収束する。
下に有界な単調減少数列は収束する。

例題2-5
次の漸化式で定まる数列の収束をいえ
$$a_1=1,\ \ a_{n+1}=\frac{3a_n+2}{a_n+1}$$

$$a_{n+1}-a_n=\frac{3a_n+2}{a_n+1}-\frac{3a_{n-1}+2}{a_{n-1}+1}=\frac{a_n-a_{n-1}}{(a_n+1)(a_{n-1}+1)}$$
となり、$a_2-a_1=\frac{5}{2}-1=\frac{3}{2}$ となるので、
$a_n$ が正の数列であることから、帰納的に、$a_n$は 単調増加。
また、$a_{n+1}=3-\frac{1}{a_n+1}<3$ なので、数列 $a_n$ は収束する。

例題2-5の次の問題も同じように帰納法で示してください。


0 件のコメント:

コメントを投稿