2017年4月15日土曜日

微積分I演習(物理学類)(第1回)

[場所1E103(金曜日5限)]

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今学期も授業が始まりました.
いつものようにブログを更新していきたいと思います.

物理学類の微積分I演習の授業を担当します.
物理学類の学生はいつも元気な学生が多いのでとても楽しみです.
この授業を担当するのは、4年ぶりで、そのときやった授業の記録が、
(リンク)に全てアップしてあります.
講義の先生もこのときと違うのでこの通り進むわけではありませんが、参考のため.

今回やったことは、高校の微積分の内容の演習で、
この微積分の授業は、高校の数学の分野で言えば、数列と微積分が融合したような
内容です.基本的に、極限操作に関する内容だと理解することもできます.

今回のプリントはmanabaにアップします.

小テストの内容
今回はいきなりですが、小テストを行いました.

小テストの内容は、
(1) 次の条件を満たす数列$a_n$の一般項を求めよ.
$$a_{n+1}=2a_n+n^2,\ \ a_1=2$$
(2) 次の関数の極値とその増減をかけ.
$$f(x)=\frac{x}{1+x^2}$$
(3)  次の関数の積分値を求めよ.
$$\int_0^\frac{\pi}{2}\sqrt{1-\cos t}\,dt$$

でした.

小テストの解答
(1) のような漸化式から一般項を求めることは数列の問題としてよくあるものです.

もう一度ここで書いておきます.その際、考えるのは、階差数列でした.
階差数列とは、前の数列との関係を探るための手法です.
前後関係の数列の比較の仕方はいろいろとあると思いますが、
ここでは、
$b_n=a_{n+1}-a_n$ とします.
このように、数列 $a_n$ から数列 $b_n$ を作る操作を階差操作ということにします.

すると、
$$b_n=2b_{n-1}+n^2-(n-1)^2=2b_{n-1}+2n-1$$
となります.さらに、$b_n$ との関係式を探ると、
$c_n=b_{n+1}-b_n$ とすると、上の数列は、
$c_n=2c_{n-1}+2(n+1)-1-(2n-1)$
となり、
$c_n=2c_{n-1}+2$ となります.このとき、$\alpha=2\alpha+2$ となる方程式を解いて、
$\alpha=-2$ となるので、恒等式 $-2=2(-2)+2$ と$c_n$ の漸化式を引いて、
$c_n+2=2(c_{n-1}+2)$ となります.
ここで、$a_1=2$ $a_2=5$ $a_3=14$ となりますので、
$b_1=3$, $b_2=9$ です.ですので、$c_1=6$ となります.
$$c_n+2=2^{n-1}(c_1+2)=8\cdot 2^{n-1}$$
となります.
つまり、$c_n=8\cdot 2^{n-1}-2$ です.
(ここで注意したいことは、 $c_n$ は指数関数的な振る舞いをするということです.)

また、$b_n$ の式に戻すには、
$$b_n=b_1+\sum_{j=1}^{n-1}c_j=3+\sum_{j=1}^{n-1}(8\cdot 2^{j-1}-2)$$
$$=3-2(n-1)+8(2^{n-1}-1)=-2n-3+8\cdot 2^{n-1}$$
となります.
(ここで注意したいことは、上のような階差操作を戻したときには、前の数列に、多項式が加わったかたちになるということです.つまり、指数関数と多項式の和の形になりました.下でやるように、階差操作を何回も戻した時も、出てくるのは、多項式だけということになります.)

$a_n$ の式に戻すには、
$$a_n=a_1+\sum_{j=1}^{n-1}b_j=2+\sum_{j=1}^{n-1}(-2j-3+8\cdot 2^{j-1})$$
$$=2-n(n-1)-3(n-1)+8(2^{n-1}-1)=-n^2-2n-3+8\cdot 2^{n-1}$$
となります.これが一般項となります.

(2) $f(x)=\frac{x}{1+x^2}$ とすると、
$$f’(x)=\frac{1\cdot(1+x^2)-x(2x)}{(1+x^2)^2}=\frac{1-x^2}{(1+x^2)^2}$$
なので、$f’(x)=0$ となるのは、$x=\pm1$ となり、増減表は、
$$\begin{array}{|c|c|c|c|c|}\hline x&&-1&&1&\\\hline f’(x)&-&0&+&0&-\\\hline f(x)&\searrow&&\nearrow&&\searrow\\\hline\end{array}$$

となります.

(3) の積分は、三角関数
$$\sqrt{1-\cos t}=\sqrt{2\frac{1-\cos t}{2}}=\sqrt{2\sin^2\frac{t}{2}}$$
となります.また、$0\le t\le \frac{\pi}{2}$ のとき、$\sin\frac{t}{2}>0$ であることを注意すると、
$$\int_0^{\pi/2}\sqrt{1-\cos t}\,dt=\sqrt{2}\int_0^{\pi/2}\sqrt{\sin^2\frac{t}{2}}\,dt$$
$$=\sqrt{2}\int_0^{\pi/2}\sin\frac{t}{2}\,dt=\sqrt{2}\left[-2\cos\frac{t}{2}\right]_0^{\pi/2}$$
$$=-2\sqrt{2}\left(\frac{\sqrt{2}}{2}-1\right)=2(\sqrt{2}-1)$$



数列から漸化式を作ること、漸化式から数列を作ること
小テスト以外には、今回は主に、
  • 数列から漸化式を作る.
  • 漸化式から具体的な数列を作る.
の操作をやってもらいました.これは、意味を考えれば、逆操作です。

また、物理学は自然現象をうまく解釈するための現象学といえます.

つまり、上の操作はそれぞれ、次のように普遍化することができます.
  • 自然の中から法則性を見出す.
  • 法則性から自然現象を明らかにする(及び予測する).

今の場合、数列を一つの物理現象と捉えて考えてください.
上の階差操作とは、前後関係から何かしらの法則性を見出そうとする試みと解釈されます.
上の (1) は漸化式という法則性から数列がどのように記述されるのか?を明らかにしたわけで、上の2番目の操作といえます.一般の $n$ のときにどのような値になっているか?ということをうまく
予測できるような形になったといってもよいです.

この方向性とは逆に、2人の学生には、具体的な数列から漸化式を作ってもらいました.

今回やったところは、高校までの知識で、それまで数学に四苦八苦した人も
いるかもしれませんが、それを初歩として次回以降進んでいきますので、
苦手意識のある人は、大学の数学の前に、これまでの微積分をざっと目を通しておいても
よいかもしれません.

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