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2017年2月22日水曜日

トポロジー入門演習(第14回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

以下、T_1 を満たす位相空間を X とします.

正規空間と正規列

部分集合族 \mathcal{U}=\{U\}\mathcal{V}=\{V\} において \mathcal{U}\mathcal{V} の細分であるとは、任意の U\in \mathcal{U} においてある V\in \mathcal{V} が存在して、U\subset V となることをいいます.
それを、\mathcal{U}<\mathcal{V} と書きます.

位相空間 X とし、A\subset X  を X の部分集合とします.
\mathcal{U}X の部分集合族とするとき、\mathcal{U}(A)
\cup \{U\in \mathcal{U}|U\cap A\neq \emptyset\} となる X の部分集合とします.

今、\mathcal{U} を部分集合族とし、
\mathcal{U}^\Delta=\{\mathcal{U}(x)|x\in X\}
\mathcal{U}^\ast=\{\mathcal{U}(U)|U\in \mathcal{U}\}
なる部分集合族を定義します.

X の開被覆の列 \{\mathcal{U}_i\} があって、
\mathcal{U}_i>\mathcal{U}_{i+1}^\Delta をみたすとき、この部分集合列 \{\mathcal{U}_i\}正規列と言います.
一般に、\mathcal{U}>\mathcal{V}^\Delta なる \mathcal{U} の細分 \mathcal{V}
\Delta-細分 (\Delta-refinement、もしくはpoint star refienment)といい、\mathcal{U}>\mathcal{V}^\ast なる細分を \ast-細分ともいいます.

また、X の開被覆 \mathcal{U} に対して、\mathcal{U}=\mathcal{U}_1 として
正規列 \{\mathcal{U}_i\} が存在するとき、\mathcal{U} は正規であるといいます.

X の開被覆に対して正規列が存在するとき、X は全体正規空間 (fully normal)といいます.つまり、全正規空間とは、任意の開被覆に対して、\Delta-細分開被覆を持てばよいということです.このとき次が成り立ちます.

定理
全正規ならば正規.また、全正規ならパラコンパクト.

が成り立ちます.

また、正規空間と正規被覆の関係は次のようになっています.

定理(Tukey)
位相空間が正規であるための必要十分条件は、任意の有限開被覆が正規であることである.

つまり、正規性を被覆の性質として言い換えたということになります.


展開空間(development)

開被覆列 \mathcal{U}_i が展開列 (development)であるとは、
各点 x\in X に対して \{\mathcal{U}_i^\ast(x)|i\in {\mathbb N}\}x
の基本近傍系(局所ベース)となるような被覆列であるものをいいます.
展開列を持つ空間を展開空間といいます.

すぐわかることですが、展開空間は第1可算空間です.
しかし、第2可算かどうかはわかりません.

正則な展開空間のことをムーア空間といいます.

距離空間は、各点において半径が 1/i ボールを使うことで、展開列を作ることが
できるので、展開空間であり、距離空間の正則性から距離空間はムーア空間であることが
わかります.
しかし、ムーア空間は距離化可能のための単なる必要条件であって十分条件では
ありません.


Niemytzki平面
Niemytzki平面(ムーア平面ともいう)があります.Niemytzki平面は、上半空間 \{(x,y)\in{\mathbb R}^2|y\ge 0\} に入る位相で、y>0 では普通の距離位相が入り、(x,0) の近傍は、(x,0) において x 軸に接する円の内部と (x,0) の和集合とします.

Niemytzki平面は、可分で第2可算でない位相空間なので、距離化可能では
ありません.(ゾルゲンフライ直線のときと同じですね.)しかし、ムーア空間にはなっています.\mathcal{U}_iy>0 ではその点と、x 軸に接する半径 1/n の円を S_n(x) とすると、\mathcal{U}_n=\{\{(x,y)\}|y>0\}\cup \{S_n(x)|x\in {\mathbb R}\} とすると、
\mathcal{U}_n は展開列になっています.

Niemytzki平面は完全正則であることがわかっているので特に正則.

しかし、正規にはなりません.ゾルゲンフライ平面のときと同じように、
可分な空間において非可算な閉な離散空間(ちょうど x 軸がそう)を持ちますので
正規空間ではありません.(ティーツェの拡張定理の帰結)

Niemytzki平面とゾルゲンフライ平面
ゾルゲンフライ平面は可分であり、対角線 (x+y=1) に離散な非可算閉集合が存在しますので、上と同じ理由で正規にはなりません.
他にも両者ともパラコンパクト性も満たさないなど似た性質を持ちます.
( \because パラコンパクトハウスドルフならば正規である)

連結性で言えば、Niemytzki平面は連結なのに対して、ゾルゲンフライ平面は、
完全非連結(Totally disconnected)です.


距離化できないムーア空間
距離化できないムーア空間はそのほかにも、例えば、Pixley-Royやvan Douwenらによってもその反例が精力的に構成されています.これも今からしてみれば大分昔の話なので
現代ではもっと進んでいるかもしれません.


正規ムーア空間予想
また、このようなよく知られた距離化可能でないムーア空間は正規ではないことが観察されました.したがって、次のような予想が立てられました.ちなみに、正規ムーア空間は完全正規空間(任意の部分空間位相が正規)になります.

正規ムーア空間予想(Moore)
正規なムーア空間は距離化可能である.

この予想は未だ解決していないようです.この予想を立てたのは下にも出てくる1937年のJonesのようです.今年は正規ムーア空間予想を立ててからちょうど80年ということになります.
正規性を少し強めた場合の解決が次です.


定理(ムーアの距離化定理)
族正規(collectionwise normal)なムーア空間は距離化可能.

族正規とは、任意の疎な閉部分集合族 \{V_\alpha\}に対して、互いに素な開集合族 \{U_\alpha\} が存在して、V_\alpha\subset U_\alpha とできることを言います.

また、部分集合族 \mathcal{U}$ が疎(discrete)であるとは、 部分集合族の閉包 \bar{\mathcal{U}} が互いに素であり、局所有限であることをいいます.

また、擬正規(pseudo normal)ムーア空間で、距離化可能でないものが存在します.

擬正規空間とは、任意の閉集合と、それと交わらない可算個の閉集合が開集合によって分離される空間をいいます.定義から、正規空間ならば、擬正規空間であり、擬正規空間ならば正則です.

族正規 \Rightarrow 正規 \Rightarrow 擬正規
のように間に正規が挟まれますので、ムーア空間の正規性が距離空間の性質として妥当ではないか?ということです.

永いこと解決していないところを見ると、この予想は否定的に解決される可能性も
ありますね.
そして必要充分条件の為の新しい概念が登場するかもしれません.


可分な場合の距離化定理
もっとも古い距離化定理は、ウリゾーンの距離化定理(正則、第2可算なら距離空間)
です.(正確にいえば、ウリゾーンは正規性と第2可算を仮定しており、その証明の1
年後にチコノフによって正則性まで一般化された.)
しかし第2可算というのはある意味強い条件であって、そこまで認めれば距離化は
少なくともできるという見方もできます.

距離空間なら第2可算と可分は同じなので、この定理は、可分距離空間の距離化判定条件ということになります.(ちなみに、正則可分でも距離化可能とは限りません.上にも登場したゾルゲンフライ平面があります.)

また、上のNiemytzki平面のように、ムーア空間は第2可算とはかぎりませんので、
ムーアの距離化定理は非可分な距離空間にも使えます.

可分距離空間のムーア空間を用いた判定条件もまだ知られていないようです.
ただ、有名なのは次です.

定理(Jones)
2^{\aleph_0}<2^{\aleph_1} ならば、可分な正規ムーア空間は距離化可能

Jonesはこの中で、2^{\aleph_0}<2^{\aleph_1} であれば、任意の可分正規空間は \aleph_1-コンパクトであることを示しています.
\aleph_1-コンパクトとは任意の非可算な部分集合が極限点を持つということです.
しかし、実は、Heathによってこの逆を示しました.

定理(Heath)
任意の可分な正規空間が\aleph_1-コンパクトであれば、2^{\aleph_0}<2^{\aleph_1} が成り立つ.

また、次の結果も知られています.

定理(Bing, Nagami)
パラコンパクトな正規なムーア空間は距離化可能.

また、この問題も上で示唆したように、集合論や連続体仮説などと密接に関係していることも知られていますが、現在はどのような状況なのでしょうか?

参考文献
  • E. K. van Douwen,  The Pixley-Roy topology on spaces of subsets, Set-Theoretic Topology, Academic Press, New our, 1977,  pp.111-134
  • C. Pixley  and  P.  Roy,  Uncompletable Moore spaces, Topology Conference, Auburn University, 1969,  pp.75-85
  • Lynn Arthur Steen and J. Arthur Seebach Jr., Counterexamples in Topology, Second edition. Springer-Verlag, New York-Heidelberg, 1978. xi+244 pp. 
  • R. H. Bing,  Metrication of topological spaces, Canad. J. Maths 3(1951) 175-186
  • K. Nagami, Paracompactness and strong screenability, Nagoya Math. J. 8(1955) 83-88

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