[場所1E103(月曜日4限)]
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$C^\ast$ 環と連続関数環
位相空間 $X$ の連続関数環は、位相空間から導き出される自然な代数構造です.
トポロジー入門演習(第11回)でも書いたように、Gelfandおよび、Naimarkの以下の定理が
知られています.$C^\ast$ 環などの用語は第11回もしくは他の参考文献をみてください.
定理(Gelfand-Naimark)
可換な $C^\ast$ -環は、局所コンパクトハウスドルフ空間の複素数値連続関数のなす環に等長 $\ast$-同型となる.
同相な位相空間ならそのような連続関数環は、$C^\ast$-環として同型になります.この定理は、可換な $C^\ast$- 環が全ての局所コンパクトなハウスドルフ空間を与えることができ、 可換 $C^\ast$ 環はそのような空間を全て分類していると言えます.
よって可換な $C^\ast$- 環がどれほど重要かわかるでしょう.それを調べる動機が十分にあるという事でもあります.
局所コンパクトハウスドルフ空間
局所コンパクト空間は一点コンパクト化して、コンパクト空間に埋め込むことができます.つまり、あるコンパクト空間の部分位相空間とみなすことができます.
また、コンパクト化する前がハウスドルフであれば、一点コンパクト化すればハウスドルフ空間ともなります.
また、演習でもやったように、コンパクトハウスドルフ空間は、正規空間です.
しかし、それは距離空間とみなすことができるとは限りません.
例えば、長い直線は、局所コンパクトハウスドルフな正規空間ですが、距離化可能ではありません.
Gelfand-Naimarkこのような定理は、さらに高度な空間、$C^\infty$ 多様体においては、
つぎのようなものも知られています.
定理
$C^\infty$ 多様体は、その $C^\infty$ 関数環によって特徴づけられる.つまり、$M,N$ が微分同相であることと、$C^\infty(M)$ と $C^\infty(N)$ が環として同型であることは同値である.
さらに、次も知られています.
定理(Pursell-Shanks)
$M,N$ が微分同相であることと、$M,N$ の一階線形微分作用素(コンパクト台をもつベクトル場)のなすリー代数 $\Xi(M)$ と$\Xi(N)$ はリー代数として同型であることは同値である.
関数環とい抽象的な対象を調べる代わりに、リー代数に注目しており、より扱いやすくなっているといえます.そこからどれほど情報を取り出せるのでしょうか?
また、Gelfand表現とは、可換な $C^\ast$-環 $A$ に対して、ある局所コンパクトハウスドルフ空間 $\Omega(A)$ 上の複素数値連続関数環への同型写像をいいます.
$\Omega(A)$ は可換バナッハ環 $A$ から ${\mathbb C}$ への多元環としての準同型写像全体とし、それを指標といいます.この指標は、$A$ のベクトル空間としての双対 $A^\ast$ の部分集合であり、双対からくる弱$\ast$ 位相として位相空間となります.
この位相に関して、自然に、$\Omega(A)$ はハウスドルフであり、局所コンパクトとなるのです.また、$A$ が環として $1$ を含むのなら、$\Omega(A)$ はコンパクトになります.
Gelfand表現が $C^\ast$-環の同型写像であることのスケッチ
また、$\phi\in \Omega(A)$ を多元環の準同型写像とすると、
$$\varphi:A\to C_0(\Omega(A))$$
を $a\mapsto \phi(a)$ として定義することで、$\phi\mapsto \phi(a)$ は $\Omega(A)$上の連続関数となります.下に $0$ が付いているのは、$\Omega(A)$ の無限遠点で関数が $0$ に収束することを意味しています.
このような写像 $\varphi$ をGelfand表現と呼びます.
$A$ が単なるバナッハ$\ast$-環であれば、そのような写像(縮小写像)が存在することはわかるのですが、さらに $A$ が ($0$ でない) $C^\ast$ 環の場合、それが($C^\ast$環としての)同型になっていることが証明できます.
$C^\ast$ 環としての同型とは、バナッハ環としての同型であり、$\ast$-を保つ写像のことです.
ここで、この$\varphi$ は、$\ast$-準同型は縮小写像であることから、$\varphi$ は等長的であることもわかります.等長的ということは、単射だということがわかりました.
$\varphi$ は $C_0(\Omega(A))$ への$C^\ast$ 埋め込みつまり、$\varphi$ によって、$A$ は$C_0(\Omega(A))$ の中の $C^\ast$ 部分環だということがわかります.
また、$\varphi(A)$ は $C_0(\Omega(A))$ の中で、分離的であり ($\phi,\psi\in \Omega(A)$ が存在して $\varphi(a)(\phi)\neq \varphi(a)(\psi)$) 、かつ、非消滅的である( $\phi\in \Omega(A)$ に対して $\varphi(a)(\phi)\neq 0$ となるようにできる)ことが証明できます.
よって、ストーンワイエルストラスの定理より、$\varphi(A)$ は $C_0(\Omega(A))$ の中で稠密である
ことがわかります.(分離的、と非消滅的の定義は、トポロジー入門演習(第11回)を見よ.)
ここで、$\varphi(A)$ は閉部分集合であるということがわかっているので、$\varphi(A)=C_0(\Omega(A))$ であることがわかります.
このように、Gelfand表現について(詳細を十分に省略して)書きましたが、初心者向けにくわしく理解する場合には下の参考文献が役に立つとおもわれます.
記号などは、この文献に従いました.
参考文献
HPに行く.
$C^\ast$ 環と連続関数環
位相空間 $X$ の連続関数環は、位相空間から導き出される自然な代数構造です.
トポロジー入門演習(第11回)でも書いたように、Gelfandおよび、Naimarkの以下の定理が
知られています.$C^\ast$ 環などの用語は第11回もしくは他の参考文献をみてください.
定理(Gelfand-Naimark)
可換な $C^\ast$ -環は、局所コンパクトハウスドルフ空間の複素数値連続関数のなす環に等長 $\ast$-同型となる.
同相な位相空間ならそのような連続関数環は、$C^\ast$-環として同型になります.この定理は、可換な $C^\ast$- 環が全ての局所コンパクトなハウスドルフ空間を与えることができ、 可換 $C^\ast$ 環はそのような空間を全て分類していると言えます.
よって可換な $C^\ast$- 環がどれほど重要かわかるでしょう.それを調べる動機が十分にあるという事でもあります.
局所コンパクトハウスドルフ空間
局所コンパクト空間は一点コンパクト化して、コンパクト空間に埋め込むことができます.つまり、あるコンパクト空間の部分位相空間とみなすことができます.
また、コンパクト化する前がハウスドルフであれば、一点コンパクト化すればハウスドルフ空間ともなります.
また、演習でもやったように、コンパクトハウスドルフ空間は、正規空間です.
しかし、それは距離空間とみなすことができるとは限りません.
例えば、長い直線は、局所コンパクトハウスドルフな正規空間ですが、距離化可能ではありません.
Gelfand-Naimarkこのような定理は、さらに高度な空間、$C^\infty$ 多様体においては、
つぎのようなものも知られています.
定理
$C^\infty$ 多様体は、その $C^\infty$ 関数環によって特徴づけられる.つまり、$M,N$ が微分同相であることと、$C^\infty(M)$ と $C^\infty(N)$ が環として同型であることは同値である.
さらに、次も知られています.
定理(Pursell-Shanks)
$M,N$ が微分同相であることと、$M,N$ の一階線形微分作用素(コンパクト台をもつベクトル場)のなすリー代数 $\Xi(M)$ と$\Xi(N)$ はリー代数として同型であることは同値である.
関数環とい抽象的な対象を調べる代わりに、リー代数に注目しており、より扱いやすくなっているといえます.そこからどれほど情報を取り出せるのでしょうか?
また、Gelfand表現とは、可換な $C^\ast$-環 $A$ に対して、ある局所コンパクトハウスドルフ空間 $\Omega(A)$ 上の複素数値連続関数環への同型写像をいいます.
$\Omega(A)$ は可換バナッハ環 $A$ から ${\mathbb C}$ への多元環としての準同型写像全体とし、それを指標といいます.この指標は、$A$ のベクトル空間としての双対 $A^\ast$ の部分集合であり、双対からくる弱$\ast$ 位相として位相空間となります.
この位相に関して、自然に、$\Omega(A)$ はハウスドルフであり、局所コンパクトとなるのです.また、$A$ が環として $1$ を含むのなら、$\Omega(A)$ はコンパクトになります.
Gelfand表現が $C^\ast$-環の同型写像であることのスケッチ
また、$\phi\in \Omega(A)$ を多元環の準同型写像とすると、
$$\varphi:A\to C_0(\Omega(A))$$
を $a\mapsto \phi(a)$ として定義することで、$\phi\mapsto \phi(a)$ は $\Omega(A)$上の連続関数となります.下に $0$ が付いているのは、$\Omega(A)$ の無限遠点で関数が $0$ に収束することを意味しています.
このような写像 $\varphi$ をGelfand表現と呼びます.
$A$ が単なるバナッハ$\ast$-環であれば、そのような写像(縮小写像)が存在することはわかるのですが、さらに $A$ が ($0$ でない) $C^\ast$ 環の場合、それが($C^\ast$環としての)同型になっていることが証明できます.
$C^\ast$ 環としての同型とは、バナッハ環としての同型であり、$\ast$-を保つ写像のことです.
ここで、この$\varphi$ は、$\ast$-準同型は縮小写像であることから、$\varphi$ は等長的であることもわかります.等長的ということは、単射だということがわかりました.
$\varphi$ は $C_0(\Omega(A))$ への$C^\ast$ 埋め込みつまり、$\varphi$ によって、$A$ は$C_0(\Omega(A))$ の中の $C^\ast$ 部分環だということがわかります.
また、$\varphi(A)$ は $C_0(\Omega(A))$ の中で、分離的であり ($\phi,\psi\in \Omega(A)$ が存在して $\varphi(a)(\phi)\neq \varphi(a)(\psi)$) 、かつ、非消滅的である( $\phi\in \Omega(A)$ に対して $\varphi(a)(\phi)\neq 0$ となるようにできる)ことが証明できます.
よって、ストーンワイエルストラスの定理より、$\varphi(A)$ は $C_0(\Omega(A))$ の中で稠密である
ことがわかります.(分離的、と非消滅的の定義は、トポロジー入門演習(第11回)を見よ.)
ここで、$\varphi(A)$ は閉部分集合であるということがわかっているので、$\varphi(A)=C_0(\Omega(A))$ であることがわかります.
このように、Gelfand表現について(詳細を十分に省略して)書きましたが、初心者向けにくわしく理解する場合には下の参考文献が役に立つとおもわれます.
記号などは、この文献に従いました.
参考文献
- 夏目利一, トポロジストの為の作用素環論入門, 数学メモアール第2巻(2001)
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