2017年2月22日水曜日

微積分II演習(化学類)(第14回)

[場所1E102(水曜日4限)]

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今回は定期テストを行いました.

前回の模擬テストを少し改良してつくりました.
5問あったので、それぞれを20点満点にして計算すると、
以下のような結果となりました.

平均76.1点
最高点100点
最低点24点

次の表は各問題の正答率です.

問題12(1,2)345
得点率(%)66.077.5, 78.087.283.888.2



問題14-1
全微分可能であることの定義を問う問題と実際全微分可能であることを示す問題で、
形式は,13-1とは全く同じです.

定義は、
$$f(x,y)=f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k+o(\sqrt{h^2+k^2})$$
となることです.ここで $h=x-a$ で、$k=y-b$ です.
もしくは、
$$f(x,y)=f(a,b)+\alpha h+\beta k+o(\sqrt{h^2+k^2})$$
となる $\alpha, \beta$ が存在するでもよいです.

また、$\frac{x^4+y^4}{x^2+y^2}$ が全微分可能であることは宿題でも出した
おなじみの関数です.

上の定義は、$\frac{f(x,y)=f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k}{\sqrt{h^2+k^2}}\to 0$ であることを
示せばよいので、この左辺を $(a,b)=(0,0)$ の場合に計算をします.

$f_x(0,0)=\lim_{x\to 0}\frac{f(x,0)-f(0,0)}{x}=0$ であり、同じように、$f_y(0,0)=0$ がわかるので、
上の右辺は $f(x,y)$ と同じです.

全微分可能であることを示すには、$x=r\cos\theta, y=r\sin \theta$ とおいて、
$|\frac{x^4+y^4}{(x^2+y^2)^{\frac{3}{2}}}|=|r(\cos^4\theta+\sin^4\theta)|\le 2r\to 0$
となるので、結果全微分可能がいえます.

もっとも多かった間違い(1/3くらいの人は書いていた)は、

$\frac{x^4+y^4}{(x^2+y^2)^{\frac{3}{2}}}$ の連続性に帰着させてはいるものの、

なぜか、$(x,y)=(h,h)$ とおいて、収束性を示し、だから全微分可能であると書いていました.2変数関数の連続性とはどんな近づき方によっても連続が言えないといけません.
これでは近づき方を制限して考えてしまっています.


問題14-2

この問題もほぼ模擬テストと同じですが、(1) は微分ではなく偏微分をしている所が少し違います.

例えば、$\frac{\partial }{\partial u}(f(x(u,v),y(u,v))=f_x(x(u,v),y(u,v))x_u(u,v)+f_y(x(u,v),y(u,v))y_u(u,v)$
と計算されますが、

$\frac{\partial }{\partial u}(f(x(u,v),y(u,v))=f_x(x(u,v),y(u,v))x_u(u,v)$
のように計算している人がいました.

また、接平面の方程式ですが、
正しくは、
$z=f(a,b)+f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)$ ですが、

$f(a,b)-f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)=0$ や、
$f(a,b)-f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)=f(x,y)$ などと連立したような感じで
書いているひとがいました.

平面の方程式なので $x,y,z$ の一次式になるはずですが、
例えば、$x+y-2=\log(x^2+y^2-xy)$ などと、$\log$ の入った式が出てきてしまいます.

接平面の方程式は一次式であることをもっと強調すればよかったと思いました.

問題14-3

極値を求める問題で、大方できていましたが、間違えているひとは、

例えば、ヘッセ行列の行列式$=0$ が極値の方程式と勘違いしている人がしました.
つまり、$\det(H)=0$ としてまず計算を始めてしまっています.

正しくは $f_x(a,b)=f_y(a,b)=0$ が極値の候補となり、この方程式の解を
考えます.$f_x=4x^3-4y$ で $f_y=4y-4x$ となりますので、
その解は $(0,0),(\pm1,\pm1)$ となります.(複合同順)

また、その中で、ヘッセ行列 $\begin{pmatrix}f_{xx}&f_{xy}\\f_{yx}&f_{yy}\end{pmatrix}$ の行列式が正のものは極値を与えます.
それは $(\pm1,\pm1)$ の場合であり、さらに、$f_{xx}(\pm1,\pm1)>0$ であることから
極小であることがわかります.$(0,0)$ では、ヘッセ行列の行列式が負なので、
極値ではありません.

模擬テストではラグランジュの未定乗数法もやりましたが、テストでは省略しました.


問題14-4

積分の問題です.極座標変換をすれば良いですね.そうすると、
積分は、
$$\int_0^1\int_0^{2\pi}\frac{r^3\sin^2\theta}{\sqrt{1-r^2}}d\theta dr$$
となります.$\theta$ の方を先に積分をすると、
$\int_0^{2\pi}\sin^2\theta d\theta=\int_0^{2\pi}\frac{1-\cos2\theta}{2}d\theta=\left[\frac{\theta}{2}-\frac{\sin2\theta}4\right]_0^{2\pi}=\pi$ なので、
$$\pi\int_0^1\frac{r^3}{\sqrt{1-r^2}}dr$$
となり、$s=1-r^2$ とおくと、$dr=-2rdr$
$-\frac{\pi}{2}\int_1^0\frac{1-s}{\sqrt{s}}ds$ と計算できて、
$=\frac{\pi}{2}\int_0^1(s^{-\frac{1}{2}}-s^{\frac{1}{2}})ds=\frac{\pi}{2}\left[2s^{\frac{1}{2}}-\frac{2}{3}s^{\frac{3}{2}}\right]_0^1=\frac{2}{3}\pi$ となります.


問題14-5

この問題はよくできていたように思います.
ガンマ関数に関する問題ですが、穴埋めにしました.
$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ を求めますが、
授業中なんどもやった変換ですが、$s=x^2$ とおきます.
そうすると、積分は、$\frac{1}{2}\int_0^\infty e^{-s}s^{-\frac{1}{2}}ds=\frac{1}{2}\Gamma(\frac{1}{2})$ となります.よって、$\Gamma(\frac{1}{2})$ が求まればよいですが、
それをベータ関数との関係式 $B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$ を用いて計算するというのがこの問題の主旨です.
よって、$\frac{\Gamma(\frac{1}{2})\Gamma(\frac{1}{2})}{\Gamma(1)}=B(\frac{1}{2},\frac{1}{2})$ となり、$B(\frac{1}{2},\frac{1}{2})=\int_0^1\frac{1}{\sqrt{t(1-t)}}dt$ となります.

あとはこの積分を実行するだけですが、置換する方法をもうこちらから与えました.
$t=\sin^2\theta$ とおけば、$\int_0^{\frac{\pi}{2}}2d\theta$ となることで

$B(\frac{1}{2},\frac{1}{2})=\pi$ がいえます.
また $\Gamma(1)=1$ であることから、$\Gamma(\frac{1}2)=\sqrt{\pi}$ がいえて、
$\int_0^\infty e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt{\pi}}{2}$ がわかります.

トポロジー入門演習(第14回)

[場所1E103(月曜日4限)]

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以下、$T_1$ を満たす位相空間を $X$ とします.

正規空間と正規列

部分集合族 $\mathcal{U}=\{U\}$ と $\mathcal{V}=\{V\}$ において $\mathcal{U}$ が $\mathcal{V}$ の細分であるとは、任意の $U\in \mathcal{U}$ においてある $V\in \mathcal{V}$ が存在して、$U\subset V$ となることをいいます.
それを、$\mathcal{U}<\mathcal{V}$ と書きます.

位相空間 $X$ とし、$A\subset X$  を $X$ の部分集合とします.
$\mathcal{U}$ を $X$ の部分集合族とするとき、$\mathcal{U}(A)$ を
$\cup \{U\in \mathcal{U}|U\cap A\neq \emptyset\}$ となる $X$ の部分集合とします.

今、$\mathcal{U}$ を部分集合族とし、
$\mathcal{U}^\Delta=\{\mathcal{U}(x)|x\in X\}$
$\mathcal{U}^\ast=\{\mathcal{U}(U)|U\in \mathcal{U}\}$
なる部分集合族を定義します.

$X$ の開被覆の列 $\{\mathcal{U}_i\}$ があって、
$\mathcal{U}_i>\mathcal{U}_{i+1}^\Delta$ をみたすとき、この部分集合列 $\{\mathcal{U}_i\}$ を正規列と言います.
一般に、$\mathcal{U}>\mathcal{V}^\Delta$ なる $\mathcal{U}$ の細分 $\mathcal{V}$ を
$\Delta$-細分 ($\Delta$-refinement、もしくはpoint star refienment)といい、$\mathcal{U}>\mathcal{V}^\ast$ なる細分を $\ast$-細分ともいいます.

また、$X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ に対して、$\mathcal{U}=\mathcal{U}_1$ として
正規列 $\{\mathcal{U}_i\}$ が存在するとき、$\mathcal{U}$ は正規であるといいます.

$X$ の開被覆に対して正規列が存在するとき、$X$ は全体正規空間 (fully normal)といいます.つまり、全正規空間とは、任意の開被覆に対して、$\Delta$-細分開被覆を持てばよいということです.このとき次が成り立ちます.

定理
全正規ならば正規.また、全正規ならパラコンパクト.

が成り立ちます.

また、正規空間と正規被覆の関係は次のようになっています.

定理(Tukey)
位相空間が正規であるための必要十分条件は、任意の有限開被覆が正規であることである.

つまり、正規性を被覆の性質として言い換えたということになります.


展開空間(development)

開被覆列 $\mathcal{U}_i$ が展開列 (development)であるとは、
各点 $x\in X$ に対して $\{\mathcal{U}_i^\ast(x)|i\in {\mathbb N}\}$ が $x$
の基本近傍系(局所ベース)となるような被覆列であるものをいいます.
展開列を持つ空間を展開空間といいます.

すぐわかることですが、展開空間は第1可算空間です.
しかし、第2可算かどうかはわかりません.

正則な展開空間のことをムーア空間といいます.

距離空間は、各点において半径が $1/i$ ボールを使うことで、展開列を作ることが
できるので、展開空間であり、距離空間の正則性から距離空間はムーア空間であることが
わかります.
しかし、ムーア空間は距離化可能のための単なる必要条件であって十分条件では
ありません.


Niemytzki平面
Niemytzki平面(ムーア平面ともいう)があります.Niemytzki平面は、上半空間 $\{(x,y)\in{\mathbb R}^2|y\ge 0\}$ に入る位相で、$y>0$ では普通の距離位相が入り、$(x,0)$ の近傍は、$(x,0)$ において $x$ 軸に接する円の内部と $(x,0)$ の和集合とします.

Niemytzki平面は、可分で第2可算でない位相空間なので、距離化可能では
ありません.(ゾルゲンフライ直線のときと同じですね.)しかし、ムーア空間にはなっています.$\mathcal{U}_i$ を $y>0$ ではその点と、$x$ 軸に接する半径 $1/n$ の円を $S_n(x)$ とすると、$\mathcal{U}_n=\{\{(x,y)\}|y>0\}\cup \{S_n(x)|x\in {\mathbb R}\}$ とすると、
$\mathcal{U}_n$ は展開列になっています.

Niemytzki平面は完全正則であることがわかっているので特に正則.

しかし、正規にはなりません.ゾルゲンフライ平面のときと同じように、
可分な空間において非可算な閉な離散空間(ちょうど $x$ 軸がそう)を持ちますので
正規空間ではありません.(ティーツェの拡張定理の帰結)

Niemytzki平面とゾルゲンフライ平面
ゾルゲンフライ平面は可分であり、対角線 ($x+y=1$) に離散な非可算閉集合が存在しますので、上と同じ理由で正規にはなりません.
他にも両者ともパラコンパクト性も満たさないなど似た性質を持ちます.
( $\because$ パラコンパクトハウスドルフならば正規である)

連結性で言えば、Niemytzki平面は連結なのに対して、ゾルゲンフライ平面は、
完全非連結(Totally disconnected)です.


距離化できないムーア空間
距離化できないムーア空間はそのほかにも、例えば、Pixley-Royやvan Douwenらによってもその反例が精力的に構成されています.これも今からしてみれば大分昔の話なので
現代ではもっと進んでいるかもしれません.


正規ムーア空間予想
また、このようなよく知られた距離化可能でないムーア空間は正規ではないことが観察されました.したがって、次のような予想が立てられました.ちなみに、正規ムーア空間は完全正規空間(任意の部分空間位相が正規)になります.

正規ムーア空間予想(Moore)
正規なムーア空間は距離化可能である.

この予想は未だ解決していないようです.この予想を立てたのは下にも出てくる1937年のJonesのようです.今年は正規ムーア空間予想を立ててからちょうど80年ということになります.
正規性を少し強めた場合の解決が次です.


定理(ムーアの距離化定理)
族正規(collectionwise normal)なムーア空間は距離化可能.

族正規とは、任意の疎な閉部分集合族 $\{V_\alpha\}$に対して、互いに素な開集合族 $\{U_\alpha\}$ が存在して、$V_\alpha\subset U_\alpha$ とできることを言います.

また、部分集合族 \mathcal{U}$ が疎(discrete)であるとは、 部分集合族の閉包 $\bar{\mathcal{U}}$ が互いに素であり、局所有限であることをいいます.

また、擬正規(pseudo normal)ムーア空間で、距離化可能でないものが存在します.

擬正規空間とは、任意の閉集合と、それと交わらない可算個の閉集合が開集合によって分離される空間をいいます.定義から、正規空間ならば、擬正規空間であり、擬正規空間ならば正則です.

族正規 $\Rightarrow$ 正規 $\Rightarrow$ 擬正規
のように間に正規が挟まれますので、ムーア空間の正規性が距離空間の性質として妥当ではないか?ということです.

永いこと解決していないところを見ると、この予想は否定的に解決される可能性も
ありますね.
そして必要充分条件の為の新しい概念が登場するかもしれません.


可分な場合の距離化定理
もっとも古い距離化定理は、ウリゾーンの距離化定理(正則、第2可算なら距離空間)
です.(正確にいえば、ウリゾーンは正規性と第2可算を仮定しており、その証明の1
年後にチコノフによって正則性まで一般化された.)
しかし第2可算というのはある意味強い条件であって、そこまで認めれば距離化は
少なくともできるという見方もできます.

距離空間なら第2可算と可分は同じなので、この定理は、可分距離空間の距離化判定条件ということになります.(ちなみに、正則可分でも距離化可能とは限りません.上にも登場したゾルゲンフライ平面があります.)

また、上のNiemytzki平面のように、ムーア空間は第2可算とはかぎりませんので、
ムーアの距離化定理は非可分な距離空間にも使えます.

可分距離空間のムーア空間を用いた判定条件もまだ知られていないようです.
ただ、有名なのは次です.

定理(Jones)
$2^{\aleph_0}<2^{\aleph_1}$ ならば、可分な正規ムーア空間は距離化可能

Jonesはこの中で、$2^{\aleph_0}<2^{\aleph_1}$ であれば、任意の可分正規空間は $\aleph_1$-コンパクトであることを示しています.
$\aleph_1$-コンパクトとは任意の非可算な部分集合が極限点を持つということです.
しかし、実は、Heathによってこの逆を示しました.

定理(Heath)
任意の可分な正規空間が$\aleph_1$-コンパクトであれば、$2^{\aleph_0}<2^{\aleph_1}$ が成り立つ.

また、次の結果も知られています.

定理(Bing, Nagami)
パラコンパクトな正規なムーア空間は距離化可能.

また、この問題も上で示唆したように、集合論や連続体仮説などと密接に関係していることも知られていますが、現在はどのような状況なのでしょうか?

参考文献
  • E. K. van Douwen,  The Pixley-Roy topology on spaces of subsets, Set-Theoretic Topology, Academic Press, New our, 1977,  pp.111-134
  • C. Pixley  and  P.  Roy,  Uncompletable Moore spaces, Topology Conference, Auburn University, 1969,  pp.75-85
  • Lynn Arthur Steen and J. Arthur Seebach Jr., Counterexamples in Topology, Second edition. Springer-Verlag, New York-Heidelberg, 1978. xi+244 pp. 
  • R. H. Bing,  Metrication of topological spaces, Canad. J. Maths 3(1951) 175-186
  • K. Nagami, Paracompactness and strong screenability, Nagoya Math. J. 8(1955) 83-88

トポロジー入門演習(第13回)

[場所1E103(月曜日4限)]

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$C^\ast$ 環と連続関数環

位相空間 $X$ の連続関数環は、位相空間から導き出される自然な代数構造です.
トポロジー入門演習(第11回)でも書いたように、Gelfandおよび、Naimarkの以下の定理が
知られています.$C^\ast$ 環などの用語は第11回もしくは他の参考文献をみてください.

定理(Gelfand-Naimark)
可換な $C^\ast$ -環は、局所コンパクトハウスドルフ空間の複素数値連続関数のなす環に等長 $\ast$-同型となる.

同相な位相空間ならそのような連続関数環は、$C^\ast$-環として同型になります.この定理は、可換な $C^\ast$- 環が全ての局所コンパクトなハウスドルフ空間を与えることができ、 可換 $C^\ast$ 環はそのような空間を全て分類していると言えます.

よって可換な $C^\ast$- 環がどれほど重要かわかるでしょう.それを調べる動機が十分にあるという事でもあります.

局所コンパクトハウスドルフ空間

局所コンパクト空間は一点コンパクト化して、コンパクト空間に埋め込むことができます.つまり、あるコンパクト空間の部分位相空間とみなすことができます.
また、コンパクト化する前がハウスドルフであれば、一点コンパクト化すればハウスドルフ空間ともなります.
また、演習でもやったように、コンパクトハウスドルフ空間は、正規空間です.
しかし、それは距離空間とみなすことができるとは限りません.
例えば、長い直線は、局所コンパクトハウスドルフな正規空間ですが、距離化可能ではありません.


Gelfand-Naimarkこのような定理は、さらに高度な空間、$C^\infty$ 多様体においては、
つぎのようなものも知られています.

定理
$C^\infty$ 多様体は、その $C^\infty$ 関数環によって特徴づけられる.つまり、$M,N$ が微分同相であることと、$C^\infty(M)$ と $C^\infty(N)$ が環として同型であることは同値である.

さらに、次も知られています.

定理(Pursell-Shanks)
$M,N$ が微分同相であることと、$M,N$ の一階線形微分作用素(コンパクト台をもつベクトル場)のなすリー代数 $\Xi(M)$ と$\Xi(N)$ はリー代数として同型であることは同値である.


関数環とい抽象的な対象を調べる代わりに、リー代数に注目しており、より扱いやすくなっているといえます.そこからどれほど情報を取り出せるのでしょうか?

また、Gelfand表現とは、可換な $C^\ast$-環 $A$ に対して、ある局所コンパクトハウスドルフ空間 $\Omega(A)$ 上の複素数値連続関数環への同型写像をいいます.

$\Omega(A)$ は可換バナッハ環 $A$ から ${\mathbb C}$ への多元環としての準同型写像全体とし、それを指標といいます.この指標は、$A$ のベクトル空間としての双対 $A^\ast$ の部分集合であり、双対からくる弱$\ast$ 位相として位相空間となります.

この位相に関して、自然に、$\Omega(A)$ はハウスドルフであり、局所コンパクトとなるのです.また、$A$ が環として $1$ を含むのなら、$\Omega(A)$ はコンパクトになります.


Gelfand表現が $C^\ast$-環の同型写像であることのスケッチ

また、$\phi\in \Omega(A)$ を多元環の準同型写像とすると、

$$\varphi:A\to C_0(\Omega(A))$$

を $a\mapsto \phi(a)$ として定義することで、$\phi\mapsto \phi(a)$ は $\Omega(A)$上の連続関数となります.下に $0$ が付いているのは、$\Omega(A)$ の無限遠点で関数が $0$ に収束することを意味しています.

このような写像 $\varphi$ をGelfand表現と呼びます.

$A$ が単なるバナッハ$\ast$-環であれば、そのような写像(縮小写像)が存在することはわかるのですが、さらに $A$ が ($0$ でない) $C^\ast$ 環の場合、それが($C^\ast$環としての)同型になっていることが証明できます.

$C^\ast$ 環としての同型とは、バナッハ環としての同型であり、$\ast$-を保つ写像のことです.

ここで、この$\varphi$ は、$\ast$-準同型は縮小写像であることから、$\varphi$ は等長的であることもわかります.等長的ということは、単射だということがわかりました.

$\varphi$ は $C_0(\Omega(A))$ への$C^\ast$ 埋め込みつまり、$\varphi$ によって、$A$ は$C_0(\Omega(A))$ の中の $C^\ast$ 部分環だということがわかります.
また、$\varphi(A)$ は $C_0(\Omega(A))$ の中で、分離的であり ($\phi,\psi\in \Omega(A)$ が存在して $\varphi(a)(\phi)\neq \varphi(a)(\psi)$) 、かつ、非消滅的である( $\phi\in \Omega(A)$ に対して $\varphi(a)(\phi)\neq 0$ となるようにできる)ことが証明できます.

よって、ストーンワイエルストラスの定理より、$\varphi(A)$ は $C_0(\Omega(A))$ の中で稠密である
ことがわかります.(分離的、と非消滅的の定義は、トポロジー入門演習(第11回)を見よ.)
ここで、$\varphi(A)$ は閉部分集合であるということがわかっているので、$\varphi(A)=C_0(\Omega(A))$ であることがわかります.


このように、Gelfand表現について(詳細を十分に省略して)書きましたが、初心者向けにくわしく理解する場合には下の参考文献が役に立つとおもわれます.
記号などは、この文献に従いました.

参考文献

  • 夏目利一,  トポロジストの為の作用素環論入門, 数学メモアール第2巻(2001)

2017年2月14日火曜日

微積分II演習(化学類)(第13回)

[場所1E102(水曜日4限)]

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今回は今週ある定期試験の模擬試験として半期の復習の日としました.
今回解いた問題の答えはHPにありますので開いてみてください.
今週の試験はこれと全く同じ問題というわけではありませんので今回の
プリントをもとにきちんと勉強し直してください.

全微分可能性
この話題に関しては、微積分II演習(第5回)をみてください.
今回話したように、

$f(x,y)$ が $(a,b)$ で全微分可能とは、
$h=x-a, k=y-b$ とすると、
$$f(x,y)=f(a,b)+\alpha h+\beta k+o(\sqrt{h^2+k^2})$$
を満たすように $\alpha,\beta$ を選ぶことができるということになります.
実際 $\alpha=f_x(a,b)$ であり、$\beta=f_y(a,b)$ となります.

全微分可能であることと偏微分可能であることは違いますので注意が必要です.
偏微分可能であるとは、
$f_x(a,b)=\lim_{h\to 0}\frac{f(x,b)-f(a,b)}{h}$
$f_y(a,b)=\lim_{k\to 0}\frac{f(a,y)-f(a,b)}{k}$
が両方存在することであって、これは全微分可能であるための必要条件なだけであって
十分な条件ではありません.

合成関数の微分法

この話題に関しては、微積分II演習(第3回)をみてください.
合成関数の微分法の問題は公式を当てはめるだけですね.
実際、
$f(x(t),y(t))$ の微分は、合成関数の微分法は $f_x(x(t),y(t))x’(t)+f_y(x(t),y(t))y’(t)$ です.
なので、$x(u,v)$, $y(u,v)$ のように置き換えたときも、例えば
$f(x(u,v),y(u,v))$ の$u$-微分は、$f_x(x(u,v),y(u,v))x_u(u,v)+f_y(x(u,v),y(u,v))y_u(u,v)$ となります.

接平面の方程式を求める問題もやりました.
これも公式を当てはめるだけですが、うえの、全微分の定義
$$f(x,y)=f(a,b)+\alpha h+\beta k+o(\sqrt{h^2+k^2})$$
の高次の項 $o(\sqrt{h^2+k^2})$ を切り落とした
$$z=f(a,b)+\alpha h+\beta k$$
が接平面の方程式となります.

極値問題、ラグランジュの未定乗数法

この話題に関しては、微積分II演習(第4回)微積分II演習(第6回)
を見てください.

極値の判定問題は、いかのようにして行います.
Step 1: 全ての偏微分が消えている点を探す、つまり $f_x(a,b)=f_y(a,b)=0$ となる方程式から $(a,b)$ を求める.これらの点のことを臨界点といいます.この点は、極値の候補となります.
Step 2: 2回微分 $f_{xx}(a,b), f_{xy}(a,b), f_{yy}(a,b)$ を求め、ヘッセ行列を作ります.
$H=\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(ab)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}$ のような行列 $H$ のことです.各臨界点 $(a,b)$ において $H$ の行列式(ヘッシアン)を求めておきます.
Step 3: 各臨界点においてヘッシアンが正の場合は、その臨界点は極値となります.ヘッシシアンが負の臨界点は極値にはなりません.ヘッシアンが $0$ の場合は、別に考察が必要で、この段階では極値になるともならないとも判定ができません.
Step 4: ヘッシアンが正の場合、さらに、$f_{xx}(a,b)>0$ であれば、この極値は極小値であり、$f_{xx}(a,b)<0$ であれば、極大値ということになります.

このような手順で極値の判定を行ってください.
Step 3で極値とはならない点の近くでは、その点より大きくなる方向もあれば、小さくなる方向もあり、いわば、馬の鞍のような状態となっています.

ラグランジュの未定乗数法は、定番通りの方法をとればよいです.
最大最小を求める関数を $f(x,y)$ 関係式が $g(x,y)=0$ となるとすると、
$H(x,y,\lambda)=f(x,y)-\lambda g(x,y)$ の3変数の関数と見た時の臨界点を求めればよいことになります.つまり、$H_x=H_y=H_\lambda=0$ という連立方程式を解けばよいことになります.

積分法

この話題に関しては、微積分II演習(第7回)微積分II演習(第8回)微積分II演習(第9回)微積分II演習(第12回)を見てください.
教えた内容は、ほとんどの場合、累次積分に直して計算するか、極座標を用いて、最終的に累次積分に直すかということでした.

計算方法は、上のリンクやHPの問題の答えを参照して下さい.

注意するところは、極座標変換などをして変数変換をすると、ヤコビアンの絶対値を
かけて計算する必要があるということです.たとえば、$x=r\cos\theta,y=r\sin\theta$ であれば、$r$ がヤコビアンになります.例えば、$D$を原点中心の単位円としたとき、
$$\int_D\sqrt{x^2+y^2}dxdy=\int_0^{2\pi}\int_0^1r\cdot rdrd\theta$$
と計算できます.

ベータ関数

この話題に関しては、微積分II演習(第10回)微積分II演習(第11回)を見てください.

この問題は、教科書には積極的に書いていなかったかもしれませんが、公式など覚えて使いこなせば、ややこしい積分計算の助けになると思います.また、いつも出てくる(例えば三角関数の積分や $e^{-x^2}$ の積分など)計算を統一的にみることもできるので、積分値の整理にもなります.

よく使われて基本的な定義と公式は、

[定義]($s,p,q>0$)
$$\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}dx$$
$$B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$
[公式]
$$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$$
$$\Gamma(1/2)=\sqrt{\pi}$$
$$B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$$
$$B(p,q)=2\int_0^{\pi/2}\sin^{2p-1}\theta\cos^{2q-1}\theta d\theta$$
となります.
これらを駆使して積分を計算していきます.
この $p,q,s$ は全て(正の)実数で大丈夫だということに注意しておきます.

例えば、よく現れる $\int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^n\theta d\theta$ はベータ関数を使って、$\frac{1}{2}B(\frac{n+1}{2},\frac{1}{2})$ として書くことができます.

これらの公式とガンマ関数とベータ関数がどんなものだったかを復習をしておいてください.
ガンマ関数は、$n$ 次元の球体の体積を表すのにも使われました.


定期試験では、今回の問題がそのままの形で使われるということではありませんので
しっかりと勉強をしてきて下さい.

トポロジー入門演習(第12回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

コンパクト開位相

位相空間 $X,Y$ において、連続写像 $X\to Y$ のなす集合を $C(X,Y)$ とかきます.
$C(X,Y)$ は集合ですので、この集合上に位相を導入し、空間とすることができます.
$Y$ が距離空間である場合は、$C(X,Y)$ は一様収束位相という位相をいれることができますが、そうではない場合、位相の入れるために一工夫する必要があります.

$X$ の部分集合 $A$, $Y$ の部分集合 $B$ に対して、
$$W(A,B)=\{f\in C(X,Y)| f(A)\subset B\}$$
と定義します.

$A$ をコンパクト、 $B$ を開集合となる、$W(A,B)$ を準開基とする位相、
つまりそのような $W(A,B)$ によって生成される位相を
$C(X,Y)$ 上のコンパクト開位相といいます.
このようにすると、$Y$ に距離を入れなくても位相を導入することができ、
“ある意味”、$C(X,Y)$ 上の一様収束位相の代わりと言えるものができます.

$C(X,Y)$ の部分集合 $H$ にそのような位相を制限してできる相対位相も
$H$ のコンパクト開位相といいます.

$H\subset C(X,Y)$ を部分集合とします.このとき、
$\Phi_H:H\times X\to Y$ を $(f,x)=f(x)$ となる写像とします.

ある空間の位相 $\mathcal{O}_1, \mathcal{O}_2$ に対して $\mathcal{O}_1$ より $\mathcal{O}_2$ の方が大きいとは、単に $\mathcal{O}_1\subset \mathcal{O}_2$ であることを意味し、
論理の上では $\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ となることもありえますので、
日本語の言葉にひきずられないようにしてください.

このとき、以下が成り立ちます.

定理
(1)  $\Phi_H$ が連続であるなら、$H$ の上の位相はコンパクト開位相を必ず含む.
つまり、$\Phi_H$ を連続にするためには $H$ 上の位相はコンパクト開位相より大きい.
(2) $X$ が局所コンパクトハウスドルフならば、$H$ がコンパクト開位相で
あれば $\Phi_H$ は連続となる.

要するに、コンパクト開位相とは、$\Phi_H$ を連続にするためには必ず必要であるが、
$X$ が局所コンパクトハウスドルフならそれだけで十分 $\Phi_H$ の連続性がいえるということです.

分離公理に関して以下の定理もあります.ここで、$C(X,Y)$ にはコンパクト開位相
を入れておきます.

定理
(1) $Y$ がハウスドルフならば、$C(X,Y)$ もハウスドルフ
(2) $Y$ が $T_3$ 空間ならば、$C(X,Y)$ も $T_3$ 空間

(1) の証明は、よく考えれば証明もすぐできそうですが、(2) は $T_3$ との同値条件
「任意の近傍 $N$ に対して $\bar{V}\subset N$ となる閉近傍 $\bar{V}$ を含む」
に言い換えて行うとよいです.例えば、参考文献をみよ.


連続関数のなす集合 $C(X)$ に入る位相として、一様収束位相と
コンパクト開位相がありますが、両者を比べると、以下のようになります.

定理
(1) $C(X)$ 上の一様収束位相はコンパクト開位相より大きい.
(2) コンパクト空間 $X$ では、$C(X)$ の一様収束位相とコンパクト開位相は一致する.

(1) の主張は、 $X$ 上の任意のコンパクト集合 $K$ と ${\mathbb R}$ 上の任意の開集合 $U$
に対して、$W(K,U)$ が一様収束位相に関して開集合であるということです.
(2) はコンパクトであれば、その逆も成り立つということです.

つまり、コンパクト開位相は、ごくありふれた写像空間の位相ということになります.
しかし、$X$ がコンパクトではない場合、一般的に $C(X)$ は一様収束位相よりは
真にちいさい位相であり、場面によっては注意が必要ということになります.


参考文献

  • 内田伏一、集合と位相、 裳華房(数学シリーズ)

2017年2月8日水曜日

微積分II演習(化学類)(第12回)

[場所1E102(水曜日4限)]

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今回は、曲面積についての演習を行いました.

曲面積

曲面
最初に曲面が何か?ということに答えておきます.
下の答えも完全ではない部分がありますが、ここでは、これで十分です.

曲面 $S$ とは、$S$ の各点において、接平面を持つような部分集合のことをいいます.
$S$ の点 $p$ の接平面 $V$ とは $p$ の近くで $S$ にいくらでも近い平面のことを言います.
ここで、曲面は、${\mathbb R}^3$ 上に埋め込まれていると仮定しておきます.
つまり、$p$ の近くで、2つのパラメータ表示が存在し、$\{\varphi(u,v)\in {\mathbb R}^3|(u,v)\in E\}\subset{\mathbb R}^3$ となります.
$\varphi_u,\varphi_v$ が ${\mathbb R}^3$ で一次独立になっているとき、接平面をもつ
ということになります.

例えば、球面は、$x=r\cos u$, $y=r\sin u\cos v$, $z=r\sin u\sin v$ とします.$r\neq 0$ は定数です.
つまり、
$\varphi(u,v)=(r\cos u,r\sin u\cos v,r\sin u\sin v)$ とすると、
$\varphi_u=(-r\sin u,r\cos u\cos v,r\cos u\sin v)$ であり、$\varphi_v=(0,-r\sin u\sin v,r\sin u\cos v)$
となります.
この2つのベクトルで張られるベクトル空間が接平面となります.

しかし、この2つが平面を作らない場合もあって、それは、
$\varphi_u,\varphi_v$ が一次独立でない、つまり平行であるときです.

平行であるとると、まず第一座標をくらべて、$r\sin u- 0\Leftrightarrow \sin u=0$ となり、
$(x,y,z)=(\pm r, 0, 0)$ となります.
この点以外では、”この表示”では$\varphi_u,\varphi_v$ で張られる空間が接平面と
なります.
しかし、この2点 $(\pm r, 0, 0)$ でも、別の表示を使うことにします.

例えば、$(x,y,z)=(r\sin u\cos v, r\sin u\sin v,r\cos u)$ としますと、この座標で
$\varphi_u,\varphi_v$ が接平面を作れないとすると、$(0,0,\pm r)$ のみであり、
この点は、上の方法でパラメータ表示を使った場合は、接平面が存在していました.

もし、この2つのパラメータ表示でも接平面が作れないとすると、それは、
$(\pm r,0,0)=(0,0,\pm r)$ となる点のはずですが、この等式は今は成り立っていませんので
そのような点がないことになります.
つまり、この2つの表示方法で球面全体を覆うことができたということになります.

なので、球面の各点において、接平面が作れることになりました.

ここでは、曲面論の授業ではありませんので、これ以上は突っ込みません.

で、本当の課題は、球面など、空間内に埋め込まれた曲面の面積を測る方法を
学ぶということでした.

曲面積の公式

上で書いたように、曲面が2つのパラメータの表示で書かれた方法ではなく、
関数の形で書かれた方法のときの場合の公式を与えました.

つまり、曲面が、$z=f(x,y)$ のとき、つまり、空間内で、$(x,y,f(x,y))$ と書ける時、
曲面の曲面積 $S$ は、

$$S=\int\int_D\sqrt{1+f_x^2+f_y^2}dxdy$$

と計算できます.ここで、$D$ とは、この曲面が表す $(x,y)$ の領域を表します.

例えば、
$z=xy$ で、$x^2+y^2\le r^2$ であるような関数の曲面積は、

$f_x=y,f_y=x$ とすると、曲面積 $S$ は、
$$S=\int\int_D\sqrt{1+y^2+x^2}dxdy$$
であり、極座標表示を使うと、
$$S=\int_0^r\int_0^{2\pi}\sqrt{1+r^2}rdrd\theta=2\pi\int_0^r\sqrt{1+r^2}rdr$$

となり、さらに置換積分をして、$\pi\int_1^{1+r^2}\sqrt{s}ds=\left[\frac{2}{3}s^{\frac{3}{2}}\right]_1^{1+r^2}$

となり、$S=\frac{2\pi}{3}((1+r^2)^{\frac{3}{2}}-1)$ となります.

おなじように、$z=x^2+y^2$ の場合は、
$f_x=2x,f_y=2y$ なので、先ほどの計算を使うと、
$$S=\int\int_D\sqrt{1+4x^2+4y^2}dxdy=\int_0^r\int_0^{2\pi}\sqrt{1+4r^2}rdrd\theta$$
$$=\int_0^{2r}\int_0^{2\pi}\frac{s}{4}\sqrt{1+s^2}dsd\theta=\frac{2\pi}{4}\frac{1}{3}((1+4r^2)^{\frac{3}{2}}-1)$$
$$=\frac{\pi}{6}((1+4r^2)^{\frac{3}{2}}-1)$$
となります.

回転体の曲面積
回転体とは、$(x,y)$-平面の関数 $y=f(x)$ において、そのグラフ$(x,f(x))$ を$x$-軸を
軸として、新しい $z$ 軸と $y$ 軸とで作られる $yz$-平面を使って回転させたものを
$y=f(x)$ を $x$ 軸に関して回転させた回転体といいます.

関数が $[a,b]$ の閉区間上の場合、この回転体の表面積は、
$$2\pi\int_a^b|f(x)|\sqrt{1+f’(x)^2}dx$$
と計算できます.

例えば、球面は、$\sqrt{1-x^2}$ なるグラフの回転体ですので
$f(x)=\sqrt{1-x^2}$ を当てはめると、
$f’(x)=-\frac{x}{\sqrt{1-x^2}}$ となり、
$$|f(x)|\sqrt{1+f’(x)^2}=\sqrt{1-x^2}\sqrt{1+\frac{x^2}{1-x^2}}=1$$
となるので、球面の表面積 $S$ は、
$$S=2\pi\int_{-1}^1dx=4\pi$$
となります.

また、表面積は、無限区間でも、
$y=e^{-x}\ (x\ge 0)$ なる関数の回転体であっても、
$f’(x)=-e^{-x}$ とすると、
$$2\pi\int_0^\infty e^{-x}\sqrt{1+e^{-2x}}dx$$
となり、$s=e^{-x}$ とすると、 $ds=-e^{-x}dx$ より、$dx=-\frac{ds}{s}$
$-2\pi\int_1^0 \sqrt{1+s^2}ds=2\pi\int_0^1\sqrt{1+s^2}ds$ と置換されます.
よって、$s=\sinh (t)$ とすると、$ds=\cosh(t)dt$ となり、
$$S=2\pi\int_0^{\text{Arsinh}(1)}\cosh^2(t)dt=2\pi\int_0^{\text{Arsinh}(1)}\frac{1+\cosh(2t)}{2}dt$$
$$=\pi\left[t+\sinh(t)\cosh(t)\right]_0^{\text{Arsinh}(1)}=\pi(\text{Arsinh}(1)+\sqrt{1+1})$$
$$=\pi(\sqrt{2}+\text{Arsinh}(1))$$
$\text{Arsinh}(t)=\log(t+\sqrt{1+t^2})$ なので、
$S=\pi(\sqrt{2}+\log(1+\sqrt{2}))$ ともかけます.


今回の課題は、曲面積の公式を使って回転体の表面積の公式を導いてもらう
という課題でした.もうすでに出してもらったわけですが.
計算に必要なのは、$h(x,y)$ (回転体の関数を $f(x)$ と $y$ で表したもの)と $D$ の部分でした.
また、最後に $y$ について積分する部分があります.
これから採点します.

2017年2月6日月曜日

トポロジー入門演習(第11回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.


一様収束位相

$X$ を位相空間とし、$C(X)$ を $X$ 上の実数値もしくは複素数値連続関数全体のなす距離空間とします.
$C(X)$ 上の一様収束位相とは、$f,g\in C(X)$ に対して、
$$\delta(f,g)=\sup\{|f(x)-g(x)||x\in X\}$$
を定義し、$|f(x)-g(x)|$ が $x$ の値を変えると、どこまでも大きくなる場合、
$\delta(f,g)=\infty$ とします.

$f,g\in C(X)$ に対して、$\delta(f,g)<\infty$ となる場合
(例えば、$X$ がコンパクトである場合)
$\delta$  は $C(X)$ の距離となり、一様収束位相といいます.
この位相は、 $C(X)$ 上に完備距離空間を与えます.

$\{f_n\}$ を基本列(コーシー列)とします.
$f(x)=\lim_{x\to \infty}f(x)$ として定義すると、
$f(x)$ は、$\{f_n\}$ の収束先であり、連続関数となります.
なので、この位相に関して、$C(X)$ は完備距離空間ということになります.

$C(X)$は位相空間だけでなく、線形空間として、や環の構造を持ちます.

バナッハ環

定義(バナッハ環)
$R$ が実数、もしくは、複素数上の結合的多元環(もしくは結合代数)であるとする.
つまり、$x,y,z\in R$ かつ $\lambda\in {\mathbb R},{\mathbb C}$ とするとき、
$(xy)z=x(yz)$, $x(y+z)=xy+xz$, $(x+y)z=xy+yz$, $\lambda(xy)=(\lambda x)y=x(\lambda y)$ を満たすとする.
また、$R$ は完備なノルム(通常バナッハ空間という)、$||\cdot||$ が存在するとする.
つまり, $x\in R$ に対して、
$||x||\ge 0$ かつ、$||x||=0$ なら、$x=0$ である.
$||\lambda x||=|\lambda|\cdot ||x||$ 、$||x+y||\le ||x||+||y||$ が成り立つ.
このとき、
$$||xy||\le ||x||\cdot||y||$$
が成り立つ.


つまり、バナッハ環とは、実数、複素数上の結合代数がバナッハ空間であるとき、
$||xy||\le ||x||\cdot||y||$ を満たすものと言っても良いです.

一般に、バナッハ環は可換とは限りません.

また、$R$ が複素数体上のバナッハ環とします.
$R$ に、$\ast$ という対合写像(i.e., $\ast :R\to R$ があり、$\ast^2=1$ となるもの)が存在し、
$||a^\ast||=||a||$ と、$(ab)^\ast=b^\ast a^\ast$ が成り立つ時、バナッハ$\ast$-環といい、
さらに、$||a^\ast a||=||a||^2$ が成り立つとき、$R$ を$C^\ast$環といいます.

$C^\ast$環は、現在、解析学の作用素環という分野の中心的研究分野です.
私は専門では有りませんので、詳しいことはここでは書けませんが....

下の意味で、$C^\ast$環は位相空間の代数化と見做すことができます.
局所コンパクト空間の複素数値連続関数環(無限遠で $0$ に収束するような空間)は自然に$C^\ast$環となりますが、
以下のように逆も成り立ちます.

定理(Gel'fand)
可換$C^\ast$環は、ある局所コンパクト空間の連続関数環となる.

ようするに、可換$C^\ast$環の研究は、局所コンパクト空間の研究と一致すると
言えます.ただ、その手法は位相空間そのものではなく、環上の解析学となります.

また、$C^\ast$環も非可換なものが存在しますが、その環に対してどのような空間が
対応するのか?ということを考える分野は非可換幾何と言われています.


上のGel’fandの定理の証明の中で重要なのは下の、ストーン-ワイエルシュトラスの定理です.
ここで証明をするのは大変なので、定理だけ述べておきます.

定理(ストーン-ワイエルシュトラス)
$X$ をコンパクト空間とし、$S$ を $X$ 上の連続関数全体 $C(X)$ の部分多元環とする.
このとき、$S$ が以下の2つを満たすなら $S$ は $C(X)$ の中で稠密でである.
(1) $S$ は $X$ の任意の 2 点を分離する.つまり、$X$ の相異なる任意の 2 点 $x, y$ に対して、$f(x)\neq f(y)$ を満たすような $f\in C(X)$ が存在する.
(2) $S$ は $X$ の各点で消滅しない.つまり、$X$ の任意の $x$ に対して、ある、$f\in C(X)$ が存在して、$f(x)\neq 0$ となる.


この定理は、解析学でよく知られている、連続関数の多項式近似定理(ワイエルシュトラス)
の一般化といえます.