[場所1E103(月曜日4限)]
HPに行く.
今回も多くの人に発表してもらいました.
積空間
積空間について解いた人がいたので、ここですこしだけ、注意点を述べておきます.
有限個の位相空間 X_1,\cdots, X_n の積空間
\prod_{i=1}^nX_i=X_1\times X_2\times \cdots\times X_n に入る積位相は、
U_i を X_i の開集合として、
U_1\times U_2\times \cdots\times U_n を開基とするような位相のことを意味します.
また、積空間の一つ一つの位相空間を因子空間といいます.
もう一度言うと、積位相の開基は、
\{U_1\times U_2\times \cdots\times U_n|U_i\in\mathcal{O}_i\}
となります.(\mathcal{O}_i を X_i の位相とします.)
このとき、自然な射影 p_i:\prod_{i=1}^nX_i\to X_i\ \ (p_i:(x_1,\cdots,x_n)\mapsto x_i) は連続写像となります.
どうしてかというと、U_i をX_i の任意の開集合とすると、
p_i^{-1}(U_i)=X_1\times \cdots\times X_{i-1}\times U_i\times X_{i+1}\cdots \times \cdots X_n
となるからです.この右辺は、当然、上の開基の作り方から開集合です.
次に、無限個の位相空間の場合の積空間を定義します.
これは、各成分の空間から開集合を任意の取ってきて掛け合わせるのが標準的ではありません.正解は、
無限個の位相空間 \{X_\lambda|\lambda\in\Lambda\} に対して、
p_\lambda^{-1}(U_\lambda) を準開基とするような位相を入れたものを積位相といいます.
ここで、p_\lambda は、因子空間への射影 \prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\to X_\lambda を表します.
このように積位相を定義すると、積位相とは、因子空間への射影
p_\lambda:\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\to X_\lambda
を連続にするような、最弱の位相ということになります.
つまり、積位相では、\lambda_1\cdots\lambda_n\in \Lambda に対して、
X_{\lambda_i} の任意の開集合 U_i に対して、p_{\lambda_i}^{-1}(U_1)\cap\cdots\cap p_{\lambda_n}^{-1}(U_n) を開基としています.
たとえば、X_i={\mathbb R} として \Lambda={\mathbb N}、{\mathbb R}^\infty に積位相を入れますと、
(0,1)^\infty は開集合ではなくなります.
そのような任意の位相空間の開集合 U_\lambda に対して、\prod_{\lambda\in\Lambda}U_\lambda を
開集合の開基として認める積空間を箱型積位相といいます.
p=(p_1,p_2,\cdots)\in(0,1)^\infty をとると、p\in U\subset (0,1)^\infty となる開基の元 U が存在することになりますが、上のような開基を取るとすると、有限個以外の {\mathbb N} の元 n に対して、Uには、全ての {\mathbb R} が含まれているはずなので、そのような n に対して、p\in p_1\times \cdots \times{\mathbb R}\times \cdots\subset U となる.これは、(0,1)^\infty の全ての {\mathbb N} の成分に対して、因子空間が有界であることに反するので、(0,1)^\infty は積位相では開集合ではなくなります.
定理
f:Y\to \prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda が連続であるための必要十分条件は、任意の\lambda に対して p_\lambda\circ f が連続であることである.
(証明)
f が連続であるとする.任意の開基の逆像が開集合であればよい.
U=p_{\lambda}^{-1}(U_{\lambda}) とする.
よって、f^{-1}(U)=f^{-1}(p_{\lambda}^{-1}(U_{\lambda}))=(p_{\lambda}\circ f)^{-1}(U_{\lambda}) が開集合であるから、任意の \lambda\in \Lambda に対して、p_\lambda\circ f は連続になる.
逆に、p_\lambda\circ f が連続になるとする.
このとき、f が連続であるためには、任意の開基の逆像が開集合であればよい.
U を任意の開基の元とする.このとき、有限個 \lambda_1\cdots\lambda_n\in \Lambda に対して、U=\cap_{i=1}^np_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i}) とかける.
f^{-1}(U)=f^{-1}(\cap_{i=1}^np_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i}))=\cap_{i=1}^nf^{-1}(p_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i})))=\cap_{i=1}^n(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i})
今、p_\lambda\circ f は連続であるから、(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i}) は開集合である.
よって、位相の定義から、\cap_{i=1}^n(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i}) すなわち、f^{-1}(U) は開集合.
これは、f が連続であることを意味する.
コンパクト性と分離公理
\mathcal{U} が位相空間の被覆であるとは、部分集合の族 \mathcal{U} で、
任意の p\in X に対して\mathcal{U} の中のある部分集合
A\in \mathcal{U} が存在して p\in A となることをいいます.
被覆 \mathcal{U} が有限個の被覆であるとき、有限被覆であるという.
\mathcal{V} が被覆 \mathcal{U} の部分集合で、\mathcal{V} が被覆である
とき、\mathcal{V} は \mathcal{U} の部分被覆と言います.
コンパクト、リンデレフと正規性
まずは、コンパクト空間とリンデレフ空間の定義をしておきます.
コンパクト
任意の開被覆が有限部分被覆をもつ.
リンデレフ
任意の開被覆が可算部分被覆をもつ.
コンパクト性と分離公理の関係についての最も基本的な定理は以下です.
演習でも証明した人がいましたね.
定理1
コンパクトかつハウスドルフな空間は正規空間である.
正規、正則などの定義はここではしませんが、リンク(ここ)にあります.
リンデレフ空間と分離公理の関係として以下が成り立ちます.
定理2
リンデレフかつ正則な空間は正規空間.
つまり、リンデレフまで弱めるなら、正則まで仮定すれば、正規が
いえるということです.
パラコンパクトと正規性
リンデレフの他に、コンパクトの周辺の重要な性質としてパラコンパクトがあります.
部分被覆という方向ではなく、次のような被覆の細分に対する有限性に関する定義です.
2つの被覆 \mathcal{U},\mathcal{V} が X の被覆であるとき、\mathcal{V} が \mathcal{U} の細分であるとは、任意の V\in \mathcal{V} に対してある \mathcal{U} の元 U が存在して、 V\subset U となることをいいます.またこのとき、\mathcal{V}<\mathcal{U} とかきます.
局所有限
任意の点 p\in X に対して、p の近傍 U(p) が存在して、\{U\in \mathcal{U}|U\cap U(p)\neq \emptyset\} が有限集合となる.
パラコンパクト
任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\mathcal{V}<\mathcal{U} なる局所有限開被覆 \mathcal{V} が存在する.
パラコンパクト性は、正規性とも関係があります.
先ほどの定理1はリンデレフまでは弱められませんでしたが、パラコンパクト
までなら次のように弱めることができます.
定理3
パラコンパクトハウスドルフ空間は正規である.
この定理は、パラコンパクトは、距離空間や離散空間など、基本的な性質を持つものに
入っていますが、ある意味、正規より強い性質だということになります.
(証明の概略)パラコンパクトで T_2 が正則であることがわかれば、任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\text{Cl}(\mathcal{V})<\mathcal{U} なる開被覆 \mathcal{V} が
存在し、パラコンパクトから、この \text{Cl}(\mathcal{V}) は局所有限な閉被覆であることがわかります.そのような被覆が存在すれば、空間が正規であることがわかります.
よって、パラコンパクトハウスドルフ空間が正則であることを示せばよいといことになります.
任意の点 x\in X とx を含まない任意の閉集合 F とする.x の開近傍 U で、\text{Cl}(U)\cap F=\emptyset となるものが存在することを示せばよい.
ハウスドルフ空間であることから、任意の y\in F に対して、V(y) で、x\not\in\text{Cl}(V(y)) となる.ここで \mathcal{V}=\{V(y)\}\cup (X-F) は X の被覆であり、パラコンパクト性から \mathcal{H}<\mathcal{V} なる局所有限な開被覆 \mathcal{H} が存在する.V=\cup \{G\in \mathcal{H}|G\cap F\neq \emptyset\} とすると、F は F\subset V ですが、
任意の H\in \mathcal{H} に対して、H\subset V があって、V\in \mathcal{V} なので、
x\not\in \text{Cl}(H) である.\mathcal{H} は局所有限であることから、
x\not\in \text{Cl}(V) がいえる(下の補題1).よって、X は正則.
先ほどのリンデレフの定理はこれだけでもかなり有用ですが、以下のものもあります.
定理4
リンデレフかつ正則ならば、パラコンパクト.
定理2では、リンデレフかつ正則なら正規まで言えたのですが、
この場合、さらに強くパラコンパクトまで言えるということです.
また、リンデレフより強いコンパクトまで仮定すれば、正則を仮定しなくても
パラコンパクトは言えますから、正則とリンデレフという弱いものの合わせ技で
パラコンパクトが言えるという定理です.
これもかなり有用です.
コンパクト性と分離公理の間に面白い関係性があるということがわかりましたが、
関係性ばかりでなく、正規性の被覆を用いた同値条件を得ることもできますが、
それはどこかでまた書こうと思います.
最後に、定理3で使った補題を書いておきます.
今回の定理の詳しい証明については、位相空間の教科書(例えば参考文献の教科書)を見てください.
演習でも扱うかどうか?
注意として、上の定理1,2,4は定義からではなく、ちゃんと証明が必要です.また、定理3ももっとちゃんと証明する必要があります.
下に、上の定理3で使った補題を書いておきます.
補題1
位相空間の X 部分集合族 \mathcal{A} が局所有限であれば、任意の部分族も局所有限、\text{Cl}(\mathcal{A}) も局所有限であり、以下が成り立つ.
\text{Cl}(\cup\{A|A\in \mathcal{A}\})=\cup\{\text{Cl}(A)|A\in \mathcal{A}\}
補題2
X が正則であれば、任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\text{Cl}(\mathcal{H})<\mathcal{U} なる開被覆 \mathcal{H} が存在する.
補題3
X が T_1 ならば、任意の有限開被覆 \mathcal{U} に対して、\mathcal{V}<\mathcal{U} なる局所有限な閉被覆が存在するなら、X は正規.
参考文献
HPに行く.
今回も多くの人に発表してもらいました.
積空間
積空間について解いた人がいたので、ここですこしだけ、注意点を述べておきます.
有限個の位相空間 X_1,\cdots, X_n の積空間
\prod_{i=1}^nX_i=X_1\times X_2\times \cdots\times X_n に入る積位相は、
U_i を X_i の開集合として、
U_1\times U_2\times \cdots\times U_n を開基とするような位相のことを意味します.
また、積空間の一つ一つの位相空間を因子空間といいます.
もう一度言うと、積位相の開基は、
\{U_1\times U_2\times \cdots\times U_n|U_i\in\mathcal{O}_i\}
となります.(\mathcal{O}_i を X_i の位相とします.)
このとき、自然な射影 p_i:\prod_{i=1}^nX_i\to X_i\ \ (p_i:(x_1,\cdots,x_n)\mapsto x_i) は連続写像となります.
どうしてかというと、U_i をX_i の任意の開集合とすると、
p_i^{-1}(U_i)=X_1\times \cdots\times X_{i-1}\times U_i\times X_{i+1}\cdots \times \cdots X_n
となるからです.この右辺は、当然、上の開基の作り方から開集合です.
次に、無限個の位相空間の場合の積空間を定義します.
これは、各成分の空間から開集合を任意の取ってきて掛け合わせるのが標準的ではありません.正解は、
無限個の位相空間 \{X_\lambda|\lambda\in\Lambda\} に対して、
p_\lambda^{-1}(U_\lambda) を準開基とするような位相を入れたものを積位相といいます.
ここで、p_\lambda は、因子空間への射影 \prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\to X_\lambda を表します.
このように積位相を定義すると、積位相とは、因子空間への射影
p_\lambda:\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\to X_\lambda
を連続にするような、最弱の位相ということになります.
つまり、積位相では、\lambda_1\cdots\lambda_n\in \Lambda に対して、
X_{\lambda_i} の任意の開集合 U_i に対して、p_{\lambda_i}^{-1}(U_1)\cap\cdots\cap p_{\lambda_n}^{-1}(U_n) を開基としています.
たとえば、X_i={\mathbb R} として \Lambda={\mathbb N}、{\mathbb R}^\infty に積位相を入れますと、
(0,1)^\infty は開集合ではなくなります.
そのような任意の位相空間の開集合 U_\lambda に対して、\prod_{\lambda\in\Lambda}U_\lambda を
開集合の開基として認める積空間を箱型積位相といいます.
p=(p_1,p_2,\cdots)\in(0,1)^\infty をとると、p\in U\subset (0,1)^\infty となる開基の元 U が存在することになりますが、上のような開基を取るとすると、有限個以外の {\mathbb N} の元 n に対して、Uには、全ての {\mathbb R} が含まれているはずなので、そのような n に対して、p\in p_1\times \cdots \times{\mathbb R}\times \cdots\subset U となる.これは、(0,1)^\infty の全ての {\mathbb N} の成分に対して、因子空間が有界であることに反するので、(0,1)^\infty は積位相では開集合ではなくなります.
また、積空間への写像が連続であるための必要十分条件として以下のものが分かります.
定理
f:Y\to \prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda が連続であるための必要十分条件は、任意の\lambda に対して p_\lambda\circ f が連続であることである.
(証明)
f が連続であるとする.任意の開基の逆像が開集合であればよい.
U=p_{\lambda}^{-1}(U_{\lambda}) とする.
よって、f^{-1}(U)=f^{-1}(p_{\lambda}^{-1}(U_{\lambda}))=(p_{\lambda}\circ f)^{-1}(U_{\lambda}) が開集合であるから、任意の \lambda\in \Lambda に対して、p_\lambda\circ f は連続になる.
逆に、p_\lambda\circ f が連続になるとする.
このとき、f が連続であるためには、任意の開基の逆像が開集合であればよい.
U を任意の開基の元とする.このとき、有限個 \lambda_1\cdots\lambda_n\in \Lambda に対して、U=\cap_{i=1}^np_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i}) とかける.
f^{-1}(U)=f^{-1}(\cap_{i=1}^np_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i}))=\cap_{i=1}^nf^{-1}(p_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i})))=\cap_{i=1}^n(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i})
今、p_\lambda\circ f は連続であるから、(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i}) は開集合である.
よって、位相の定義から、\cap_{i=1}^n(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i}) すなわち、f^{-1}(U) は開集合.
これは、f が連続であることを意味する.
コンパクト性と分離公理
\mathcal{U} が位相空間の被覆であるとは、部分集合の族 \mathcal{U} で、
任意の p\in X に対して\mathcal{U} の中のある部分集合
A\in \mathcal{U} が存在して p\in A となることをいいます.
被覆 \mathcal{U} が有限個の被覆であるとき、有限被覆であるという.
\mathcal{V} が被覆 \mathcal{U} の部分集合で、\mathcal{V} が被覆である
とき、\mathcal{V} は \mathcal{U} の部分被覆と言います.
コンパクト、リンデレフと正規性
まずは、コンパクト空間とリンデレフ空間の定義をしておきます.
コンパクト
任意の開被覆が有限部分被覆をもつ.
リンデレフ
任意の開被覆が可算部分被覆をもつ.
コンパクト性と分離公理の関係についての最も基本的な定理は以下です.
演習でも証明した人がいましたね.
定理1
コンパクトかつハウスドルフな空間は正規空間である.
正規、正則などの定義はここではしませんが、リンク(ここ)にあります.
この定理において、コンパクトをリンデレフに弱めた時、
結果として正規とは限りません.もっと言えば、正則ともならないような空間があります.
例
{\mathbb N} に対して、(a,b)=1 となる正の整数に対して、
U_b(a)=\{b+an\in {\mathbb N}| n\in {\mathbb N}\} とすると、U_b(a) を開基とする
位相空間を {\mathbb N} に入れることができます、ハウスドルフであることは、
任意の異なる正整数は異なる等差数列に含まれるので、明らか.
可算集合なので、リンデレフは明らか、しかし、正則ではありません.
例えば、任意の2点は、閉近傍によって分離できません.
話を元のリンデレフに戻します.
因子空間がコンパクトである積空間はコンパクト(チコノフの定理)ですが、
リンデレフでは、任意の積空間はリンデレフとも限りません.リンデレフ空間と分離公理の関係として以下が成り立ちます.
定理2
リンデレフかつ正則な空間は正規空間.
つまり、リンデレフまで弱めるなら、正則まで仮定すれば、正規が
いえるということです.
パラコンパクトと正規性
リンデレフの他に、コンパクトの周辺の重要な性質としてパラコンパクトがあります.
部分被覆という方向ではなく、次のような被覆の細分に対する有限性に関する定義です.
2つの被覆 \mathcal{U},\mathcal{V} が X の被覆であるとき、\mathcal{V} が \mathcal{U} の細分であるとは、任意の V\in \mathcal{V} に対してある \mathcal{U} の元 U が存在して、 V\subset U となることをいいます.またこのとき、\mathcal{V}<\mathcal{U} とかきます.
局所有限
任意の点 p\in X に対して、p の近傍 U(p) が存在して、\{U\in \mathcal{U}|U\cap U(p)\neq \emptyset\} が有限集合となる.
パラコンパクト
任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\mathcal{V}<\mathcal{U} なる局所有限開被覆 \mathcal{V} が存在する.
パラコンパクト性は、正規性とも関係があります.
先ほどの定理1はリンデレフまでは弱められませんでしたが、パラコンパクト
までなら次のように弱めることができます.
定理3
パラコンパクトハウスドルフ空間は正規である.
この定理は、パラコンパクトは、距離空間や離散空間など、基本的な性質を持つものに
入っていますが、ある意味、正規より強い性質だということになります.
(証明の概略)パラコンパクトで T_2 が正則であることがわかれば、任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\text{Cl}(\mathcal{V})<\mathcal{U} なる開被覆 \mathcal{V} が
存在し、パラコンパクトから、この \text{Cl}(\mathcal{V}) は局所有限な閉被覆であることがわかります.そのような被覆が存在すれば、空間が正規であることがわかります.
よって、パラコンパクトハウスドルフ空間が正則であることを示せばよいといことになります.
任意の点 x\in X とx を含まない任意の閉集合 F とする.x の開近傍 U で、\text{Cl}(U)\cap F=\emptyset となるものが存在することを示せばよい.
ハウスドルフ空間であることから、任意の y\in F に対して、V(y) で、x\not\in\text{Cl}(V(y)) となる.ここで \mathcal{V}=\{V(y)\}\cup (X-F) は X の被覆であり、パラコンパクト性から \mathcal{H}<\mathcal{V} なる局所有限な開被覆 \mathcal{H} が存在する.V=\cup \{G\in \mathcal{H}|G\cap F\neq \emptyset\} とすると、F は F\subset V ですが、
任意の H\in \mathcal{H} に対して、H\subset V があって、V\in \mathcal{V} なので、
x\not\in \text{Cl}(H) である.\mathcal{H} は局所有限であることから、
x\not\in \text{Cl}(V) がいえる(下の補題1).よって、X は正則.
先ほどのリンデレフの定理はこれだけでもかなり有用ですが、以下のものもあります.
定理4
リンデレフかつ正則ならば、パラコンパクト.
定理2では、リンデレフかつ正則なら正規まで言えたのですが、
この場合、さらに強くパラコンパクトまで言えるということです.
また、リンデレフより強いコンパクトまで仮定すれば、正則を仮定しなくても
パラコンパクトは言えますから、正則とリンデレフという弱いものの合わせ技で
パラコンパクトが言えるという定理です.
これもかなり有用です.
コンパクト性と分離公理の間に面白い関係性があるということがわかりましたが、
関係性ばかりでなく、正規性の被覆を用いた同値条件を得ることもできますが、
それはどこかでまた書こうと思います.
最後に、定理3で使った補題を書いておきます.
今回の定理の詳しい証明については、位相空間の教科書(例えば参考文献の教科書)を見てください.
演習でも扱うかどうか?
注意として、上の定理1,2,4は定義からではなく、ちゃんと証明が必要です.また、定理3ももっとちゃんと証明する必要があります.
下に、上の定理3で使った補題を書いておきます.
補題1
位相空間の X 部分集合族 \mathcal{A} が局所有限であれば、任意の部分族も局所有限、\text{Cl}(\mathcal{A}) も局所有限であり、以下が成り立つ.
\text{Cl}(\cup\{A|A\in \mathcal{A}\})=\cup\{\text{Cl}(A)|A\in \mathcal{A}\}
補題2
X が正則であれば、任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\text{Cl}(\mathcal{H})<\mathcal{U} なる開被覆 \mathcal{H} が存在する.
補題3
X が T_1 ならば、任意の有限開被覆 \mathcal{U} に対して、\mathcal{V}<\mathcal{U} なる局所有限な閉被覆が存在するなら、X は正規.
参考文献
- 森田紀一, 位相空間論, 岩波全書
0 件のコメント:
コメントを投稿