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2016年11月23日水曜日

微積分II演習(化学類)(第5回)

[場所1E102(水曜日4限)]

配付プリント
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今回は、少し話題を戻った内容も含め、
  • 全微分可能
  • 陰関数の定理
についてやりました.

全微分可能性

(x,y)=(a,b)f(x,y) が全微分可能というのは、教科書的に書けば、
h=x-a, k=y-b とすると、

f(x,y)=f(a,b)+\alpha h+\beta k+o(\sqrt{h^2+k^2})\ \ (h,k)\to (0,0)

となる、\alpha,\beta  が存在することです.全微分可能とは、微分可能を
多変数の場合に定義したものです.なので、一変数同様、
接平面が存在するということと同値です.

これは、一変数関数の微分可能の一般化といえます.この定義を一変数にすれば、

f(x)=f(a)+\alpha h+o(h)

となるので、これは、\frac{f(x)-f(a)}{h}\to \alpha (h\to 0) と同値ですから、
f'(a) の存在と同じですね?

全微分可能の全というのは、偏微分可能という言い方と区別するためです.
偏微分可能とは、x,y の軸上に沿った微分の仕方といえます.

例えば、偏微分は、

f_x(a,b)=\lim_{h\to 0}\frac{f(x,b)-f(a,b)}{h}
なので、x 軸や y 軸に沿った微分であるのに対して、
全微分の全とは、全ての方向(全ての近づき方)からの微分が存在するということです.

ここで、f(x,y) が全微分可能であることを、上の o を使わずに書いておきます.

(全微分可能であるための証明の方針)
g(x,y)=f(x,y)-f(a,b)-f_x(a,b)(x-a)-f_y(a,b)(y-b) とおく.
このとき、 \lim_{(x,y)\to (a,b)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}} が収束して、
その極限値が 0 であるとき、 f(x,y) は全微分可能となります.

(全微分可能でないことの証明の仕方)
上のg(x,y) に対して、 \lim_{(x,y)\to (a,b)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}} が収束しないか、その収束先が 0 でないとき、f(x,y) は全微分不可能となります.


例1
関数 f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{\sqrt{x^2+y^2}}
(x,y)=(0,0) で全微分可能であることは、次のようにしてわかります.
これは今回の問題の一部でもあります.

g(x,y)=f(x,y) とすると、
\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{x^2+y^2}}=\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}
となり、ここで、(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta) とし、r\to 0 なる極限を考える.

|\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}|=|\frac{r^3(\cos^3\theta+\sin^3\theta)}{r^2}|=r|\cos^3\theta+\sin^3\theta|\le 2r\to 0
となるので、(x,y)\to (0,0) となるとき、\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}\to 0 となる.

よって、\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}=0 となり、
g(x,y)=f(x,y)=o(\sqrt{x^2+y^2}) となる.

よって、\frac{x^3+y^3}{\sqrt{x^2+y^2}}(0,0) で全微分可能であり、特に
f_x(0,0)=0 かつ f_y(0,0)=0 となる.


例2
関数 f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}(0,0) で全微分可能でないことの証明.
\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}=0 であることは
(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta) とすると、|f(x,y)|=|r(\cos^3\theta+\sin^3\theta)|\le 2r\to 0 であることから分かる.
よって、f(0,0)=0 とする.

まず、偏微分を求める.
f_x(0,0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(h,0)-f(0,0)}{h}=\lim_{h\to 0}1=1 となる.
同様に、
f_y(0,0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(0,h)-f(0,0)}{h}=\lim_{h\to 0}1=1 となる.

もし、f(x,y) が原点で全微分可能とすると、
g(x,y)=f(x,y)-f(0,0)-f_x(0,0)x-f_y(0,0)y=-\frac{xy(x+y)}{x^2+y^2} とすると、

\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{x^2+y^2}}=0 となるはずである.
今、(h,h)\to (0,0) として h>0 で近づくとします.
このとき、

\lim_{h\to +0}\frac{-h^2(h+h)}{(h^2+h^2)\sqrt{h^2+h^2}}=\lim_{h\to +0}\frac{-2h^3}{2h^2\sqrt{2}|h|}=\frac{-1}{\sqrt{2}}
となり、0 に収束しない.

よって、f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2} は、(0,0) で全微分可能ではない.

これで証明終わりですが、斜め45度から近づけた理由は、
例えば、(h,0)\to (0,0) で正の数 h で近づくと g(h,0)=0 なので、
\lim_{h\to +0}\frac{g(h,0)}{\sqrt{h^2+0^2}}=0 となってしまい、うまく満たさないことを示せません.

陰関数の定理
陰関数の定理についてやりました.
少しだけ抽象的なので、わからなくなったら、F(x,y)=x^2+y^2-1 となる簡単な場合を
想定して考えてください.

陰関数の定理は、
F(x,y)C^1 級関数とする.このとき、F_y(x_0,y_0)\neq 0 であるなら、
(x_0,y_0) の近くで、F(x,y)=0 を満たす関数 y=\varphi(x) が存在し、x=x_0 においてC^1 級となる.

C^1 級というのがわからなければ無視しても構いません.
要するに、F(x,y)=0 を満たす集合が、なめらかな曲線で、その点が、x 軸からのグラフになっている場所はどこか?ということです.

例えば、F(x,y)=x^2+y^2-1 の場合、これは、平面上の単位円を表していますが、
その単位円の点 (x_0,y_0) で、その周りで、x 軸からのグラフのようになっている点は、ちょうど F_y(x,y)=2y\neq 0 つまり、(1,0),(-1,0) となる点以外の点だということです.

ここ(リンク先)に一昨年書いた陰関数を教えた時のグラフがあります.
微積分II演習(第5回)例1」ですが、この絵のように、(1,0),(-1,0) の点以外の円上の点では、その点を含む小さい区間を取れば、x 軸からのグラフになっていますね?

また、y 軸からのグラフになっている、つまり、x=\psi(y) なる関数になっているための条件は、F_x(x,y)\neq 0 となることです.今の円の場合では、2x\neq 0 であるので、(0,1),(0,-1) となる点以外の点ということになります.

宿題の\varphi(x) の2回微分を求めよ、という問題は、

1回微分の求め方を真似て求めてください.
つまり、F(x,y)=0 の陰関数 y=\varphi(x) の1回微分は、
F(x,\varphi(x))=0 という恒等式を微分をすることで、
F_x(x,\varphi(x))+F_y(x,\varphi(x))\varphi’(x)=0 となります.
ここで、合成関数の微分を用いています.
よって、移項して整理することで、
\varphi’(x)=-\frac{F_x(x,y)}{F_y(x,y)} となります.
ここで、y=\varphi(x) が陰関数であることから、その点の周りで、F_y(x,y)\neq 0 を満たすことを思い出してください.
この方法を真似ることで、\varphi’’(x) が表記の式になることを示して下さい.

やり方は、F_x(x,\varphi(x))+F_y(x,\varphi(x))\varphi’(x)=0 をさらに、x で微分してください.合成関数の微分法を何回か使うことになります.

問題5-2(1) の方は、具体的に与えられた関数から、陰関数の微分法を用いて、
接線、法線の方程式を求めてください.それらの公式は、プリントに書きました.

また、最後の問題は、極値の応用問題です.
一定体積を V 各辺の長さを a,b,c などとおいて、表面積をある2変数関数
として書けばできるのではないでしょうか?

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