[場所1E102(水曜日4限)]
配付プリント
HPに行く
今回は、少し話題を戻った内容も含め、
全微分可能性
$(x,y)=(a,b)$ で $f(x,y)$ が全微分可能というのは、教科書的に書けば、
$h=x-a$, $k=y-b$ とすると、
$$f(x,y)=f(a,b)+\alpha h+\beta k+o(\sqrt{h^2+k^2})\ \ (h,k)\to (0,0)$$
となる、$\alpha,\beta$ が存在することです.全微分可能とは、微分可能を
多変数の場合に定義したものです.なので、一変数同様、
接平面が存在するということと同値です.
これは、一変数関数の微分可能の一般化といえます.この定義を一変数にすれば、
$$f(x)=f(a)+\alpha h+o(h)$$
となるので、これは、$\frac{f(x)-f(a)}{h}\to \alpha$ ($h\to 0$) と同値ですから、
$f'(a)$ の存在と同じですね?
全微分可能の全というのは、偏微分可能という言い方と区別するためです.
偏微分可能とは、$x,y$ の軸上に沿った微分の仕方といえます.
例えば、偏微分は、
$$f_x(a,b)=\lim_{h\to 0}\frac{f(x,b)-f(a,b)}{h}$$
なので、$x$ 軸や $y$ 軸に沿った微分であるのに対して、
全微分の全とは、全ての方向(全ての近づき方)からの微分が存在するということです.
ここで、$f(x,y)$ が全微分可能であることを、上の $o$ を使わずに書いておきます.
(全微分可能であるための証明の方針)
$g(x,y)=f(x,y)-f(a,b)-f_x(a,b)(x-a)-f_y(a,b)(y-b)$ とおく.
このとき、 $\lim_{(x,y)\to (a,b)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}}$ が収束して、
その極限値が $0$ であるとき、 $f(x,y)$ は全微分可能となります.
(全微分可能でないことの証明の仕方)
上の$g(x,y)$ に対して、 $\lim_{(x,y)\to (a,b)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}}$ が収束しないか、その収束先が $0$ でないとき、$f(x,y)$ は全微分不可能となります.
例1
関数 $f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{\sqrt{x^2+y^2}}$
が $(x,y)=(0,0)$ で全微分可能であることは、次のようにしてわかります.
これは今回の問題の一部でもあります.
$g(x,y)=f(x,y)$ とすると、
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{x^2+y^2}}=\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$
となり、ここで、$(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ とし、$r\to 0$ なる極限を考える.
$|\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}|=|\frac{r^3(\cos^3\theta+\sin^3\theta)}{r^2}|=r|\cos^3\theta+\sin^3\theta|\le 2r\to 0$
となるので、$(x,y)\to (0,0)$ となるとき、$\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}\to 0$ となる.
よって、$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}=0$ となり、
$g(x,y)=f(x,y)=o(\sqrt{x^2+y^2})$ となる.
よって、$\frac{x^3+y^3}{\sqrt{x^2+y^2}}$ は $(0,0)$ で全微分可能であり、特に
$f_x(0,0)=0$ かつ $f_y(0,0)=0$ となる.
例2
関数 $f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$ が $(0,0)$ で全微分可能でないことの証明.
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}=0$ であることは
$(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ とすると、$|f(x,y)|=|r(\cos^3\theta+\sin^3\theta)|\le 2r\to 0$ であることから分かる.
よって、$f(0,0)=0$ とする.
まず、偏微分を求める.
$f_x(0,0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(h,0)-f(0,0)}{h}=\lim_{h\to 0}1=1$ となる.
同様に、
$f_y(0,0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(0,h)-f(0,0)}{h}=\lim_{h\to 0}1=1$ となる.
もし、$f(x,y)$ が原点で全微分可能とすると、
$g(x,y)=f(x,y)-f(0,0)-f_x(0,0)x-f_y(0,0)y=-\frac{xy(x+y)}{x^2+y^2}$ とすると、
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{x^2+y^2}}=0$ となるはずである.
今、$(h,h)\to (0,0)$ として $h>0$ で近づくとします.
このとき、
$\lim_{h\to +0}\frac{-h^2(h+h)}{(h^2+h^2)\sqrt{h^2+h^2}}=\lim_{h\to +0}\frac{-2h^3}{2h^2\sqrt{2}|h|}=\frac{-1}{\sqrt{2}}$
となり、$0$ に収束しない.
よって、$f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$ は、$(0,0)$ で全微分可能ではない.
これで証明終わりですが、斜め45度から近づけた理由は、
例えば、$(h,0)\to (0,0)$ で正の数 $h$ で近づくと $g(h,0)=0$ なので、
$\lim_{h\to +0}\frac{g(h,0)}{\sqrt{h^2+0^2}}=0$ となってしまい、うまく満たさないことを示せません.
陰関数の定理
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今回は、少し話題を戻った内容も含め、
- 全微分可能
- 陰関数の定理
全微分可能性
$(x,y)=(a,b)$ で $f(x,y)$ が全微分可能というのは、教科書的に書けば、
$h=x-a$, $k=y-b$ とすると、
$$f(x,y)=f(a,b)+\alpha h+\beta k+o(\sqrt{h^2+k^2})\ \ (h,k)\to (0,0)$$
となる、$\alpha,\beta$ が存在することです.全微分可能とは、微分可能を
多変数の場合に定義したものです.なので、一変数同様、
接平面が存在するということと同値です.
これは、一変数関数の微分可能の一般化といえます.この定義を一変数にすれば、
$$f(x)=f(a)+\alpha h+o(h)$$
となるので、これは、$\frac{f(x)-f(a)}{h}\to \alpha$ ($h\to 0$) と同値ですから、
$f'(a)$ の存在と同じですね?
全微分可能の全というのは、偏微分可能という言い方と区別するためです.
偏微分可能とは、$x,y$ の軸上に沿った微分の仕方といえます.
例えば、偏微分は、
$$f_x(a,b)=\lim_{h\to 0}\frac{f(x,b)-f(a,b)}{h}$$
なので、$x$ 軸や $y$ 軸に沿った微分であるのに対して、
全微分の全とは、全ての方向(全ての近づき方)からの微分が存在するということです.
ここで、$f(x,y)$ が全微分可能であることを、上の $o$ を使わずに書いておきます.
(全微分可能であるための証明の方針)
$g(x,y)=f(x,y)-f(a,b)-f_x(a,b)(x-a)-f_y(a,b)(y-b)$ とおく.
このとき、 $\lim_{(x,y)\to (a,b)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}}$ が収束して、
その極限値が $0$ であるとき、 $f(x,y)$ は全微分可能となります.
(全微分可能でないことの証明の仕方)
上の$g(x,y)$ に対して、 $\lim_{(x,y)\to (a,b)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}}$ が収束しないか、その収束先が $0$ でないとき、$f(x,y)$ は全微分不可能となります.
例1
関数 $f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{\sqrt{x^2+y^2}}$
が $(x,y)=(0,0)$ で全微分可能であることは、次のようにしてわかります.
これは今回の問題の一部でもあります.
$g(x,y)=f(x,y)$ とすると、
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{x^2+y^2}}=\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$
となり、ここで、$(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ とし、$r\to 0$ なる極限を考える.
$|\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}|=|\frac{r^3(\cos^3\theta+\sin^3\theta)}{r^2}|=r|\cos^3\theta+\sin^3\theta|\le 2r\to 0$
となるので、$(x,y)\to (0,0)$ となるとき、$\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}\to 0$ となる.
よって、$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}=0$ となり、
$g(x,y)=f(x,y)=o(\sqrt{x^2+y^2})$ となる.
よって、$\frac{x^3+y^3}{\sqrt{x^2+y^2}}$ は $(0,0)$ で全微分可能であり、特に
$f_x(0,0)=0$ かつ $f_y(0,0)=0$ となる.
例2
関数 $f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$ が $(0,0)$ で全微分可能でないことの証明.
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}=0$ であることは
$(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ とすると、$|f(x,y)|=|r(\cos^3\theta+\sin^3\theta)|\le 2r\to 0$ であることから分かる.
よって、$f(0,0)=0$ とする.
まず、偏微分を求める.
$f_x(0,0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(h,0)-f(0,0)}{h}=\lim_{h\to 0}1=1$ となる.
同様に、
$f_y(0,0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(0,h)-f(0,0)}{h}=\lim_{h\to 0}1=1$ となる.
もし、$f(x,y)$ が原点で全微分可能とすると、
$g(x,y)=f(x,y)-f(0,0)-f_x(0,0)x-f_y(0,0)y=-\frac{xy(x+y)}{x^2+y^2}$ とすると、
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{g(x,y)}{\sqrt{x^2+y^2}}=0$ となるはずである.
今、$(h,h)\to (0,0)$ として $h>0$ で近づくとします.
このとき、
$\lim_{h\to +0}\frac{-h^2(h+h)}{(h^2+h^2)\sqrt{h^2+h^2}}=\lim_{h\to +0}\frac{-2h^3}{2h^2\sqrt{2}|h|}=\frac{-1}{\sqrt{2}}$
となり、$0$ に収束しない.
よって、$f(x,y)=\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$ は、$(0,0)$ で全微分可能ではない.
これで証明終わりですが、斜め45度から近づけた理由は、
例えば、$(h,0)\to (0,0)$ で正の数 $h$ で近づくと $g(h,0)=0$ なので、
$\lim_{h\to +0}\frac{g(h,0)}{\sqrt{h^2+0^2}}=0$ となってしまい、うまく満たさないことを示せません.
陰関数の定理
陰関数の定理についてやりました.
少しだけ抽象的なので、わからなくなったら、$F(x,y)=x^2+y^2-1$ となる簡単な場合を
想定して考えてください.
陰関数の定理は、
$F(x,y)$ を $C^1$ 級関数とする.このとき、$F_y(x_0,y_0)\neq 0$ であるなら、
$(x_0,y_0)$ の近くで、$F(x,y)=0$ を満たす関数 $y=\varphi(x)$ が存在し、$x=x_0$ において$C^1$ 級となる.
$C^1$ 級というのがわからなければ無視しても構いません.
要するに、$F(x,y)=0$ を満たす集合が、なめらかな曲線で、その点が、$x$ 軸からのグラフになっている場所はどこか?ということです.
例えば、$F(x,y)=x^2+y^2-1$ の場合、これは、平面上の単位円を表していますが、
その単位円の点 $(x_0,y_0)$ で、その周りで、$x$ 軸からのグラフのようになっている点は、ちょうど $F_y(x,y)=2y\neq 0$ つまり、$(1,0),(-1,0)$ となる点以外の点だということです.
ここ(リンク先)に一昨年書いた陰関数を教えた時のグラフがあります.
「微積分II演習(第5回)例1」ですが、この絵のように、$(1,0),(-1,0)$ の点以外の円上の点では、その点を含む小さい区間を取れば、$x$ 軸からのグラフになっていますね?
また、$y$ 軸からのグラフになっている、つまり、$x=\psi(y)$ なる関数になっているための条件は、$F_x(x,y)\neq 0$ となることです.今の円の場合では、$2x\neq 0$ であるので、$(0,1),(0,-1)$ となる点以外の点ということになります.
宿題の$\varphi(x)$ の2回微分を求めよ、という問題は、
1回微分の求め方を真似て求めてください.
つまり、$F(x,y)=0$ の陰関数 $y=\varphi(x)$ の1回微分は、
$F(x,\varphi(x))=0$ という恒等式を微分をすることで、
$F_x(x,\varphi(x))+F_y(x,\varphi(x))\varphi’(x)=0$ となります.
ここで、合成関数の微分を用いています.
よって、移項して整理することで、
$\varphi’(x)=-\frac{F_x(x,y)}{F_y(x,y)}$ となります.
ここで、$y=\varphi(x)$ が陰関数であることから、その点の周りで、$F_y(x,y)\neq 0$ を満たすことを思い出してください.
この方法を真似ることで、$\varphi’’(x)$ が表記の式になることを示して下さい.
やり方は、$F_x(x,\varphi(x))+F_y(x,\varphi(x))\varphi’(x)=0$ をさらに、$x$ で微分してください.合成関数の微分法を何回か使うことになります.
問題5-2(1) の方は、具体的に与えられた関数から、陰関数の微分法を用いて、
接線、法線の方程式を求めてください.それらの公式は、プリントに書きました.
また、最後の問題は、極値の応用問題です.
一定体積を $V$ 各辺の長さを $a,b,c$ などとおいて、表面積をある2変数関数
として書けばできるのではないでしょうか?
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