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2016年11月9日水曜日

微積分II演習(化学類)(第4回)

[場所1E102(水曜日4限)]

配付プリント
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今日のことを書く前に、今回返すレポートについて悪い例です.

問題2-2の(d)を例としてとります.

n\ge 4のときに、(x,y)\to (0,0) のときに
\frac{x^3+y^3}{(x^2+y^2)^{\frac{n}{2}}}
が発散することについて、

収束することを示す時には、これに絶対値をつけて評価し、極限を考えればよいですが、
発散を示す場合は、そのようなことをする必要はありません.
また、(0,0) への行き方を指定して考えても構いません.

収束は、すべての道に対して収束することを言わなければならなかったのですが、
それを否定した命題を示す場合には、ある道に対して収束しないことを示せば
十分だからです.

それはさておき、答案として以下のような解答がいかに多いことか.

極座標を取ってやって、

|\frac{x^3+y^3}{(x^2+y^2)^{\frac{n}{2}}}|=|\frac{r^3(\cos^3\theta+\sin^3\theta)}{r^n}|=\frac{1}{r^{n-3}}|\cos^3\theta+\sin^3\theta|\le \frac{2}{r^{n-3}}\to \infty

としているのです.絶対値をっている上、\frac{2}{r^{n-3}}\to \infty
とまでやっています.完全に蛇足です.
収束の時になぜ絶対値を取って上から評価したのか考えてください.
(注:発散を示す場合、絶対値を取って、下から評価しても発散を示すことはできます.)


つまり、(0,0) にいくに従って 0 から \infty の間( \infty を含めて)のどこかに行くということ主張しているに他なりません.

何も示したことにはなりません.
収束だろうが、発散だろうがどのような場合にも成り立つことを示したに過ぎないからです.

正しくは、絶対値を取る必要はなく、さらに、\theta=0 などと固定したまま (0,0) に収束するなどするとよいでしょう.

そのようなとき、
y=0 かつ、x\to 0 として (0,0) に近づくとすると、n\ge4 であることを考慮すると

\frac{x^3+y^3}{(x^2+y^2)^{\frac{n}{2}}}=\frac{x^3}{x^{\frac{n}{2}}}=\frac{1}{x^{\frac{n}{2}-3}}\to \infty

となり、発散が示せます.

このような極めて単純な解答を書いた人はいませんでした.


この他、(b) において正確でない文章

極限において
0\le |\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}|\le 0
となるので、収束する

このような文章が大量発生していますが、
他人の文章を写すにしても、自分の文章としても、正しくない式を使って議論することは
できません.自分の文章が正しいことを言っているのかどうか判断しながら書いてください.
このような訓練をすることはかなり大変ですが、自分の文章が正しいのか、確認するなどの習慣だけでも身につけて下さい.


第4回の授業の内容について書きます。
内容は

  • 2次近似
  • 極値の判定でした。
この内容と同じ内容で、
一昨年のブログをここ
また、去年のブログをここ
にかいてあります。

また、ここには2変数関数のグラフの凹凸についてのヘッセ行列ごとの
グラフの凹凸について綺麗な絵をのせています。

今回やったことは、2次近似の式から2変数関数のグラフの凹凸が描けるという
ことです。

これは、高校で習う微積分の教科書にもある通り、関数の極値を求め、
その凹凸を知ることで、その極値が極大値か極小値かということを調べる手法です。

一変数の場合を復習しておきます。
ここで、用語を一つ用意しておきます。
y=f(x) の微分が消える場所を臨界点もしくは停留点といいます.
プリントにはすでに書いてあるのですが、授業中に説明がなかったですね.
2変数の場合は、
z=f(x,y) であれば、f_x(x,y)=0 かつ f_y(x,y)=0 となる点 (x,y)=(a,b) のことを
同じように臨界点、停留点といいます.


問題:y=f(x) の極値を求めたい。
Step 1:  f(x)=0 となる点(臨界点) x=a を求める.
Step 2:  そのような点 x=a に対して、f’(x) が負の数の数から正の数に切り替わる点であれば、y=f(x)x=a でその点は極小.また、f’(x) が正の数から負の数に切り替わる点であれば、y=f(x)x=a でその点は極大.

Step2’:  Step2 の代わりに、特に、f’’(a)>0 であれば、x=ay=f(x) は極小をとり、f’’(a)<0 であれば、x=ay=f(x) は極大をとる.



つまり、臨界点が極値であるための十分条件として、2回微分を調べることで、

f’’(a)>0 ならば、極小、
f’’(a)<0 ならば、極大ということです。

また、f’(a)=0 であるとするとき、極大か極小は決められません。
例えば、f(x)=x^3 は臨界点は x=0 のみで、2回微分は f’’(a)=0ですが、x=0 で、f(x) は極大でも極小でもありません。

また、f(x)=x^4 の臨界点は、やはり x=0 のみで、f’’(0)=0 となります.
しかし、x=0 では、f(x) は極小です。 なぜかというと、f’(x)=3x^3 という関数は、x=0 において、負から正の数をとるからです.Step 2が適用できるからです.

なので、臨界点において、f''(a)=0 だからといって、極値だとか、極値でないとかをいうことはできません.y=x^3 の原点での様子は、極値ではありませんが、
臨界点(その値のことは臨界値)は正しいいいかたです.


問題:z=f(x,y) の極値を求めたい。
Step 1:  f_x(x,y)=0 かつ f_y(x,y)=0 を満たす点 (x,y)=(a,b) (臨界点)を求める.

Step 2’: ヘッセ行列 H=\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix} の行列式 \det(H) (ヘッシアンという)が、0 でないとする.

\det(H)>0 であるとすると、(x,y)=(a,b) は極値となる.
 さらに、f_{xx}(a,b)>0 とすると、極小値である.
 さらに、f_{xx}(a,b)<0 とすると、極大値である.
\det(H)<0 であるとすると、(x,y)=(a,b) は極値ではない.
 どのような形かというと、鞍点である.


鞍点がどのような点であるかというと、下のようなグラフのことをいいます.
馬の背中っぽいですよね?

このグラフは z=x^2-y^2 のグラフをmathematicaに描いてもらった図です.
具体的な2回微分などは授業中にやったはずなので、例の計算などはここでは省略しておきます.

同じように、\det(H)=0 であるからといって、極値だとか、極値でないとかをいうことはできません.

レポートでよくある間違いは、\det(H)=0 という点が出てきたとき、すぐさま、
極値ではないということを結論づけている解答があります.
上と同じ例を与えれば、

z=x^3+y^3 は、極値でも馬の鞍でもありません.試しに描いてみせれば、

という、なんとも言えないグラフになります.
同じように、z=x^4+y^4 というグラフは、ヘッシアンは消えますが、極値になります.

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