[場所1E103(金曜日5限)]
HPに行く.
今日は
特に重要な、ある2変数関数が極値を持つための(十分)条件についてやりました。
解き方の流れは、高校時代に散々やった1変数関数の極値問題の2変数化
です.
ちなみに、2変数関数のグラフについてはこちら(←)に描いてあります.
昨年行った同じ授業のブログ内容はこちら(←)にあります.
テイラーの定理
テイラーの定理は、関数(ここでは、何回でも微分できる関数)を $n$ 次の項の無限和として書く方法です.つまり、
1変数の場合、$x=a$ での展開は、
$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\frac{f'''(a)}{3!}(x-a)^3+...$$
となりますが、多変数の場合は、$h=x-a, k=y-b$ とおくと、
$$f(x,y)=f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k+\frac{1}{2!}(f_{xx}(a,b)h^2+2f_{xy}(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)+...$$
となります.
一般項は、$h,k$ の $n$ 次式で、$h^n, h^{n-1}k,h^{n-2}k^2,...k^n$ の和によって以下のように表されます.
このように展開される式のことをテイラー展開といいます.
$n$ 次式の項は、
$$\frac{1}{n!}\sum_{l=0}^n\binom{n}{l}\frac{\partial^n f}{\partial x^l\partial y^{n-l}}(a,b)h^lk^{n-l}\ \ \ \ \ \ (\#)$$
になります.
このように各項の $h,k$ の指数の和が全て等しい式のことを斉次多項式といいます.
たとえば、$h^3+3hk^2+k^3, h^2+hk-k^2$ などです.
上の(#) は $\frac{1}{n!}\left(h\frac{\partial}{\partial x}+k\frac{\partial}{\partial y}\right)^nf$ となります.
つまり、方向微分 $h\frac{\partial}{\partial x}+k\frac{\partial}{\partial y}$ の $n$ 乗を計算していることになり、これは、1変数のテイラーの定理の形とそっくりになります.
関数をテイラー展開の (定数関数)+(1次関数)+(2次関数)+...+(N次式) として表したものをその関数のN次近似式といいます.
2変数関数の $(a,b)$ での1次近似式は、
$$f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k$$
であり、2次近似式は、
$$f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k+\frac{1}{2}(f_{xx}(a,b)h^2+2f_{xy}(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)$$
となります.この2次近似式を使って2変数関数のグラフの凹凸(極値問題)を考えていきます.
極値問題
極値(簡単のため1変数関数)、ある関数 $y=f(x)$ が、ある点 $x=a$ での接線 $L$ が平行であるとします.このとき、その点のある周辺で、$y=f(x)$ のグラフが ($x=a$ を除いて)$L$ の全て上に位置しているとき、極小点といい、 $y=f(x)$ のグラフが ($x=a$ を除いて)$L$ の全て下側にあるとき、極小点といいます.式で書けば、
ある$x=a$ の近くの全ての点 $x$ において、
$f(x)\ge f(a)$ であり、等号成立は $x=a$ のみのとき
$x=a$ は極小点
ある$x=a$ の近くの全ての点 $x$ において、
$f(x)\le f(a)$ であり、等号成立は $x=a$ のみのとき
$x=a$ は極大点
となります.ここでは、関数の2次近似を用いた極点の判定を行います.
昨年度の授業を思い出すと、1変数関数の極値問題と2変数関数の極値問題を対比させた気がしますが、今年度は特にその辺は強調しませんでした.
ここでもう一度.
1変数関数 $y=f(x)$ の極値を求める.
つまり、$f''(a)>0$ は極小点であるための十分条件であって、$f''(a)=0$でも極小点を持つことがあります.たとえば、$y=x^4$ とするとき、$f''(0)=0$ ですが、$f'(x)=4x^3$ が$x=0$ の近くで、負から正に変わっているために、ここで極小値となるのです.
2変数関数 $z=f(x,y)$ の極値を求める.
定理
$f_x(a,b)=f_y(a,b)=0$ となる点 $(a,b)$ において、
$\det\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}>0$ ならば、
$(a,b)$ において $f(x,y)$ は極値をもち、そのとき、
$\det\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}<0$ であれば、その点 $(a,b)$ は、極点にはなりません.
最後に残った
$\det\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}=0$ の場合ですが、これは、 $(a,b)$ が極点となることもあれば、そうでないこともあり、この形からすぐに極点かどうかは断言できません.
このようにこれは、2回微分までを使っていますので、関数の2次近似の情報を使っています.
つまり、極点の周辺で関数は、
$$f(a,b)+\frac{1}{2}(f_{xx}(a,b)h^2+2f_{xy}(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)$$
のように、展開されており、2次式が剥き出しの状態になっています.
つまりこの関数がこの点の周りでその振る舞いを決めているのは、この2次式ということになります.この2次式の状況が関数の丸さ(曲がり具合)を見ていることになります.
行列の観点からは、$\det(H)>0$ かつ、$f_{xx}(a,b)>0$ とは、その行列 $H$ の固有値(2つ)がどちらも正の数であること(対称行列行列が正定値という)を示しています.また、$\det(H)>0$ かつ、$f_{xx}(a,b)<0$ は行列 $H$ の固有値がどちらも負の数であること(対称行列行列が負定値という)を示しています.
また、$\det(H)<0$ ということは、行列 $H$ の固有値が正負両方現れること(対称行列行列が不定値という)を意味しています.
この固有値は、関数の曲がり具合の元です.
2変数関数の極値における代表的な関数として、
$z=x^2+y^2$, $z=xy$, $z=-x^2-y^2$
があります.
1つ目は、$H=\begin{pmatrix}2&0\\0&2\end{pmatrix}$ となり、重複した固有値 $2$ が現れています.(固有ベクトルは軸方向でその方向での方向微分 $\frac{\partial }{\partial x}$, $\frac{\partial}{\partial y}$ は、2回微分が正の関数です.)
さらに言えば、どの方向も同じ"正の"曲がり方をしており、下に凸になっていることを表しています.
2つ目は、$H=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ となり、固有値 $1,-1$ が現れています.(固有ベクトルは $(1,1), (1,-1)$ ですが、この方向に制限すると、$x^2$、$-x^2$ となり、つまり、方向によって、下に凸になったり、上に凸になったりしています.このような状況では極値とはいえません.
3つ目は、$H=\begin{pmatrix}-2&0\\0&-2\end{pmatrix}$ なり、重複した固有値 $-2$ が現れています.1つ目の全てマイナス1倍になっています.どの方向も $-2$ の曲がり方、つまり上に凸になっています.
グラフはさきほどのリンク(こちら)にあります.
また、最後に、一般に実対称行列の固有値は全て実数になることをコメントしておきます.
HPに行く.
今日は
- テイラーの定理と
- 極値問題
特に重要な、ある2変数関数が極値を持つための(十分)条件についてやりました。
解き方の流れは、高校時代に散々やった1変数関数の極値問題の2変数化
です.
ちなみに、2変数関数のグラフについてはこちら(←)に描いてあります.
昨年行った同じ授業のブログ内容はこちら(←)にあります.
テイラーの定理
テイラーの定理は、関数(ここでは、何回でも微分できる関数)を $n$ 次の項の無限和として書く方法です.つまり、
(関数)=(定数関数)+(1次関数)+(2次関数)+(3次関数)+.......
と書いていくことです.この N次関数の項は、N-1次関数は和として含まれず、丁度 N次関数しか含まれません.つまり、斉次多項式です.1変数の場合、$x=a$ での展開は、
$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\frac{f'''(a)}{3!}(x-a)^3+...$$
となりますが、多変数の場合は、$h=x-a, k=y-b$ とおくと、
$$f(x,y)=f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k+\frac{1}{2!}(f_{xx}(a,b)h^2+2f_{xy}(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)+...$$
となります.
一般項は、$h,k$ の $n$ 次式で、$h^n, h^{n-1}k,h^{n-2}k^2,...k^n$ の和によって以下のように表されます.
このように展開される式のことをテイラー展開といいます.
$n$ 次式の項は、
$$\frac{1}{n!}\sum_{l=0}^n\binom{n}{l}\frac{\partial^n f}{\partial x^l\partial y^{n-l}}(a,b)h^lk^{n-l}\ \ \ \ \ \ (\#)$$
になります.
このように各項の $h,k$ の指数の和が全て等しい式のことを斉次多項式といいます.
たとえば、$h^3+3hk^2+k^3, h^2+hk-k^2$ などです.
上の(#) は $\frac{1}{n!}\left(h\frac{\partial}{\partial x}+k\frac{\partial}{\partial y}\right)^nf$ となります.
つまり、方向微分 $h\frac{\partial}{\partial x}+k\frac{\partial}{\partial y}$ の $n$ 乗を計算していることになり、これは、1変数のテイラーの定理の形とそっくりになります.
関数をテイラー展開の (定数関数)+(1次関数)+(2次関数)+...+(N次式) として表したものをその関数のN次近似式といいます.
2変数関数の $(a,b)$ での1次近似式は、
$$f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k$$
であり、2次近似式は、
$$f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k+\frac{1}{2}(f_{xx}(a,b)h^2+2f_{xy}(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)$$
となります.この2次近似式を使って2変数関数のグラフの凹凸(極値問題)を考えていきます.
極値問題
極値(簡単のため1変数関数)、ある関数 $y=f(x)$ が、ある点 $x=a$ での接線 $L$ が平行であるとします.このとき、その点のある周辺で、$y=f(x)$ のグラフが ($x=a$ を除いて)$L$ の全て上に位置しているとき、極小点といい、 $y=f(x)$ のグラフが ($x=a$ を除いて)$L$ の全て下側にあるとき、極小点といいます.式で書けば、
ある$x=a$ の近くの全ての点 $x$ において、
$f(x)\ge f(a)$ であり、等号成立は $x=a$ のみのとき
$x=a$ は極小点
ある$x=a$ の近くの全ての点 $x$ において、
$f(x)\le f(a)$ であり、等号成立は $x=a$ のみのとき
$x=a$ は極大点
となります.ここでは、関数の2次近似を用いた極点の判定を行います.
昨年度の授業を思い出すと、1変数関数の極値問題と2変数関数の極値問題を対比させた気がしますが、今年度は特にその辺は強調しませんでした.
ここでもう一度.
1変数関数 $y=f(x)$ の極値を求める.
- まず、微分が0の点を求める(極値ならば、接線が $x$ 軸に平行だから微分係数(傾き)は0)
- $f'(x)=0$ を解く.
- この方程式の解を $x=a$ として、さらに、$f''(a)>0$ ならば、この点で極小点となり、$f'(a)<0$ .ならば、極大点となる.
つまり、$f''(a)>0$ は極小点であるための十分条件であって、$f''(a)=0$でも極小点を持つことがあります.たとえば、$y=x^4$ とするとき、$f''(0)=0$ ですが、$f'(x)=4x^3$ が$x=0$ の近くで、負から正に変わっているために、ここで極小値となるのです.
2変数関数 $z=f(x,y)$ の極値を求める.
$H=\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}$
とおきます.これはヘッセ行列と呼ばれています.
- まず、偏微分が0の点を求める(極値ならば、接平面が $xy$ 平面に平行だから、各偏微分係数は0)
- $f_x(x,y)=f_y(x,y)=0$ を解く.
- この方程式の解を $(x,y)=(a,b)$ として、さらに、$\det(H)>0$ ならば、この点は極点となり、さらに、$f_{xx}(a,b)>0$ .ならば、極小点、$f_{xx}(a,b)<0$ ならば極大点となる.
定理
$f_x(a,b)=f_y(a,b)=0$ となる点 $(a,b)$ において、
$\det\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}>0$ ならば、
$(a,b)$ において $f(x,y)$ は極値をもち、そのとき、
$f_{xx}(a,b)>0$ ならば極小点(下に凸)
$f_{xx}(a,b)<0$ ならば極大点(上に凸)
となる.さらに、$\det\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}<0$ であれば、その点 $(a,b)$ は、極点にはなりません.
最後に残った
$\det\begin{pmatrix}f_{xx}(a,b)&f_{xy}(a,b)\\f_{yx}(a,b)&f_{yy}(a,b)\end{pmatrix}=0$ の場合ですが、これは、 $(a,b)$ が極点となることもあれば、そうでないこともあり、この形からすぐに極点かどうかは断言できません.
このようにこれは、2回微分までを使っていますので、関数の2次近似の情報を使っています.
つまり、極点の周辺で関数は、
$$f(a,b)+\frac{1}{2}(f_{xx}(a,b)h^2+2f_{xy}(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)$$
のように、展開されており、2次式が剥き出しの状態になっています.
つまりこの関数がこの点の周りでその振る舞いを決めているのは、この2次式ということになります.この2次式の状況が関数の丸さ(曲がり具合)を見ていることになります.
行列の観点からは、$\det(H)>0$ かつ、$f_{xx}(a,b)>0$ とは、その行列 $H$ の固有値(2つ)がどちらも正の数であること(対称行列行列が正定値という)を示しています.また、$\det(H)>0$ かつ、$f_{xx}(a,b)<0$ は行列 $H$ の固有値がどちらも負の数であること(対称行列行列が負定値という)を示しています.
また、$\det(H)<0$ ということは、行列 $H$ の固有値が正負両方現れること(対称行列行列が不定値という)を意味しています.
この固有値は、関数の曲がり具合の元です.
2変数関数の極値における代表的な関数として、
$z=x^2+y^2$, $z=xy$, $z=-x^2-y^2$
があります.
1つ目は、$H=\begin{pmatrix}2&0\\0&2\end{pmatrix}$ となり、重複した固有値 $2$ が現れています.(固有ベクトルは軸方向でその方向での方向微分 $\frac{\partial }{\partial x}$, $\frac{\partial}{\partial y}$ は、2回微分が正の関数です.)
さらに言えば、どの方向も同じ"正の"曲がり方をしており、下に凸になっていることを表しています.
2つ目は、$H=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ となり、固有値 $1,-1$ が現れています.(固有ベクトルは $(1,1), (1,-1)$ ですが、この方向に制限すると、$x^2$、$-x^2$ となり、つまり、方向によって、下に凸になったり、上に凸になったりしています.このような状況では極値とはいえません.
3つ目は、$H=\begin{pmatrix}-2&0\\0&-2\end{pmatrix}$ なり、重複した固有値 $-2$ が現れています.1つ目の全てマイナス1倍になっています.どの方向も $-2$ の曲がり方、つまり上に凸になっています.
グラフはさきほどのリンク(こちら)にあります.
また、最後に、一般に実対称行列の固有値は全て実数になることをコメントしておきます.
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