Processing math: 100%

2015年11月6日金曜日

線形代数II演習(第5回)

[場所1E103(水曜日4限)]


HPに行く.

今日は
  • 一次独立なベクトルを拡張して基底にすること、
  • 補空間を求めること、
  • あるベクトル空間を解空間とする連立一次方程式を作ること
をやりました.


一次独立なベクトルを拡張して基底にすること

{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_k を一次独立なベクトルとするとき、
このベクトルを含むようなベクトル空間 V の基底を作ります.

ここでは、数ベクトル空間の場合にやることにします.
そうではない場合は、一度、適当な基底を用いて数ベクトルに直しておけば十分です.

k 個の数ベクトル(縦ベクトル)を並べて、 n\times k 行列を作っておきます.
(このとき、k\le n になっています.n はベクトル空間 V の次元ですが、それより大きい数のベクトルを一次独立なベクトルとして取ることはできません.)

A=({\bf a}_1\cdots{\bf a}_k) とします.

さらに、この行列に単位行列 E を横に並べて、 B=(AE) のように、n\times (k+n) 行列を作っておきます.

後ろに一次独立なベクトルを n 個つけているので、B のランクは n であることを注意しておきます.
B=({\bf a}_1\cdots {\bf a}_{n+k})
とします.

この行列 B を簡約化すると、必ず、その中に、n 個の一次独立な縦ベクトル(標準基底になるようなベクトル)が得られます.そのような列のことを先頭列といいました.
簡約化を

(AE)\to \cdots \to C=({\bf c}_1\cdots{\bf c}_{k+n})

とします.
簡約化された行列 C は階段行列で、最初から、一次独立なベクトルを順にとっていますから、最初の k 個の数ベクトル {\bf c}_1,\cdots,{\bf c}_{k} が必ず、先頭列になっています.さらに、後半の n 個の縦ベクトルの中から n-k 個の先頭列 {\bf c}_{i_1},\cdots,{\bf c}_{i_{n-k}} を見つけることができます.

よって、{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_k に加えて、{\bf a}_{i_1},\cdots,{\bf a}_{i_{n-k}} を付け加えることによって、基底として、

{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_k,{\bf a}_{i_1},\cdots,{\bf a}_{i_{n-k}}
を作ることができます.

補空間の基底を求めること

部分ベクトル空間が与えられているとき、その補空間(の基底)を与えます.

補空間は、まだ講義の方では説明していないと思いますが、以下の定義を満たすものです.

W\subset V をベクトル空間 V の部分空間とします.
W'W の補空間であるとは、以下を満たすものです.
  • W\cap W'=\{{\bf 0}\} かつ、
  • W+W'=V であること.
W+W' とは、\{w+w'\in V|w\in W,w'\in W'\} なる V の部分空間のことです.


ここでは、部分空間 W として、幾つかのベクトルが生成している形として
与えられているとします.



ところで、部分空間の与えられ方は、大体、以下の2種類が考えられます.
  • 連立一次方程式が与えられている.
  • 生成するベクトルが与えられている.

後者のほうではまず、やることはありませんが、前者の場合は、一度方程式を解いて、生成するベクトル(大体基底のことが多い)としておく必要があります.



部分ベクトル空間があるいくつかのベクトルで生成していると仮定します.さらに、数ベクトル空間ではない場合は、ある基底を使って数ベクトルに直しておきます.

W=\langle {\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_k\rangle
となったときに、A=({\bf a}_1\cdots{\bf a}_k) として、基底の拡張をします.
これは上で説明したとおりです.

そうすると、{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_k 以外に出てくる一次独立なベクトルたちが、W' として生成しているベクトルということになります.

具体例の計算は授業中に幾つかやったので省略します.


ベクトル空間を連立一次方程式の解空間とみなす

あるベクトル空間 W\subset V (この際、数ベクトル空間でよい)を連立一次方程式の解空間とみなすことを考えます.


まず、連立一次方程式を解く(数ベクトル空間の場合に)ということは、

Ax=0 なるベクトル x  ⇒ x=c_1{\bf v}_1+\cdots+c_k{\bf v}_k なる表示を与える.
という書き換えを行うことです.

ここでやりたいことは、逆の操作、
x=c_1{\bf v}_1+\cdots+c_k{\bf v}_k なるベクトル ⇒ Ax=0 なる連立一次方程式を与える.
をすることです.
例を使って行います.
\begin{pmatrix}1\\2\\3\end{pmatrix},\begin{pmatrix}4\\5\\6\end{pmatrix}
で生成される部分ベクトル空間 W があったときに、W の満たす連立一次方程式を求めることを考えます.このベクトルをまとめて作った 3\times 2 行列の転置行列は、
\begin{pmatrix}1&2&3\\4&5&6\end{pmatrix}
です.この行列を簡約化します.すると、
\begin{pmatrix}1&2&3\\4&5&6\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&2&3\\0&-3&-6\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&2&3\\0&1&2\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-1\\0&1&2\end{pmatrix}
となり、W は、\langle \begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\2\end{pmatrix}\rangle
と書くことができます.よって、x_1=c,x_2=d とすると、x_3=-c+2d となり、c,d に代入して、移項することで、x_1-2x_2+x_3=0 が得られます.この式が W を決めている連立一次方程式ということになります.
このとき、先頭行に対応するところに、文字、c,d を置いたことに注意してください.
先頭行ではない行の分だけ、関係式(つまり連立一次方程式)が出てくることになります.

つまり、
\langle\begin{pmatrix}1\\2\\3\end{pmatrix},\begin{pmatrix}4\\5\\6\end{pmatrix}\rangle=\left\{{\bf v}\in {\mathbb C}^3|\begin{pmatrix}1&-2&1\end{pmatrix}{\bf v}=0\right\}
となります.

最終的に、A=\begin{pmatrix}1&-2&1\end{pmatrix} とおくとき、
A{\bf v}=0
が求める連立一次方程式となります.

慣れてこれば、一度転置してからもう一度転置しなおすということはしないで済むかもしれません.

0 件のコメント:

コメントを投稿