[場所1E103(水曜日4限)]
HPに行く.
今日は
次元
有限生成ベクトル空間の次元とは、そのベクトル空間の基底の数のことをいいます.
有限生成でないベクトル空間の次元は、有限でないと言うか、無限次元と言います.
ちなみに、\{0\} もベクトル空間の定義を満たすので、ベクトル空間です.次元は 0 と定義します.このベクトル空間には基底は存在しません.基底の集合が空集合であるのではなく、基底が定義できません.空集合を使ってもこの一つしかないベクトルを生成できるわけでもないです.空集合が生成できるはずがないので空集合が基底集合というわけでもないです.ですので、この場合、次元は 0 として定義しておくのです.
ちなみに、このベクトル空間は、すべてのベクトル空間の部分空間に含まれており、任意のベクトル空間の次元が 0 の部分空間はただ一つです.
また、一般に、
事実
有限生成ベクトル空間において、部分空間 W\subset V があるとき、
\dim W\le \dim V
がなりたち、等号が成り立つのは、W=V のときに限ります.
よって、次元が 0 のものと、\dim(V) のものは、部分空間として唯一つ決まります.
直和であることを示すこと
ベクトル空間 V とその部分空間 V_1,V_2\subset V が与えられているとき、
V=V_1\oplus V_2
とかきます.
先週の補空間の定義と同じだと思った人も多いと思いますが、その通りで、V において、V_2 は V_1 の補空間になっており、V_1 は V_2 の補空間になっています.
和および直和の次元公式
\dim(V_1+V_2)=\dim(V_1)+\dim(V_2)-\dim(V_1\cap V_2)
が成り立ちます.
また、V_1+V_2 が直和であるとするとき、\{0\} の次元が 0 なので、
\dim(V_1\oplus V_2)=\dim(V_1)+\dim(V_2)
となります.
ですから、補空間の次元というのは、全体の次元からその部分空間の次元を引いたものになります.
まず、V_1,V_2\subset V が全体の直和になるためには、部分空間の次元の和が全体になる必要があります.演習の時間にやったように、
\dim(V_1)+\dim(V_2)\neq \dim(V) であるようなら、それがどのようなベクトル空間であるかに関わらず直和にはなり得ません.
また、あらゆるベクトル空間の次元は非負なので、
\dim(V_1)+\dim(V_2)<\dim(V) ならば、V_1+V_2=V も成り立ちません.
\dim(V_1)+\dim(V_2)= \dim(V) であるときに限り、直和かどうかの議論を V_1,V_2 の定義に帰って考える意味があります.
そういうわけで、今後そのような場合に、V_1,V_2\subset V が与えられたとき、V_1\cap V_2=\{0\} であるかどうか確かめます.
A-6-2(4)
の続きをやってみます.
V_1=\langle(1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}1&1\\1&3\\1&3\\1&2\end{pmatrix}\rangle,V_2=\langle(1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}0&1\\1&4\\2&3\\0&3\end{pmatrix}\rangle
V_1\cap V_2\ni {\bf v} は、
{\bf v}=\begin{pmatrix}1&1\\1&3\\1&3\\1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c\\d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\1&4\\2&3\\0&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}e\\f\end{pmatrix}
とかけるので、c,d,e,f は、
\begin{pmatrix}1&1&0&-1\\1&3&-1&-4\\1&3&-2&-3\\1&2&0&-3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c\\d\\e\\f\end{pmatrix}={\bf 0}
となるような連立一次方程式を解けばよいことになります.
まず、行列を簡約化すると下のようになります.
\begin{pmatrix}1&1&0&-1\\1&3&-1&-4\\1&3&-2&-3\\1&2&0&-3\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&0&1\\0&1&0&-2\\0&0&1&-1\\0&0&0&0\end{pmatrix}
よって、任意のスカラー c_1 を用いて
\begin{pmatrix}c\\d\\e\\f\end{pmatrix}= c_1\begin{pmatrix}-1\\2\\1\\1\end{pmatrix}
と書けます.
つまり、
V_1\cap V_2=\langle (1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}1&1\\1&3\\1&3\\1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-1\\2\end{pmatrix}\rangle=\langle(1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}1\\5\\5\\3\end{pmatrix}\rangle=\langle 1+5x+5x^2+3x^3\rangle\neq \{0\}
ということになります.
よって、2つのベクトル空間 V_1+V_2 は直和ではないことがわかります.
また、V_1+V_2=V であるかどうかは、上の事実を使います.
V_1+V_2 は当然Vの部分空間です.
次元公式を使って計算をすると、
\dim(V_1+V_2)=\dim(V_1)+\dim(V_2)-\dim(V_1\cap V_2)=2+2-1=3
となって、\dim(V)=4 であることから、V_1+V_2\neq V が成り立ちます.
共通部分のベクトル空間を求める方法
今日は、直和であるかどうかの問題でしたが、結局、共通部分のベクトル空間が何か(要するにその基底は何か)という問題でした.
上で行ったのは、
V_1,V_2 がどちらも \langle {\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n\rangle のように、ベクトルで生成する形の場合に求めていましたが、連立一次方程式の形になっているときは、以下のようにします.
V_1=\{{\bf v}\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}1&-1&0\\2&-1&0\end{pmatrix}{\bf v}=0\}
V_2=\{{\bf v}\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}1&0&-1\end{pmatrix}{\bf v}=0\}
としてください.
以下1次元の場合とします.
もし、V_1\cap V_2=\langle f \rangle とすると、
f\in V_1 かつ、f\in V_2
となりますが、要はこのベクトルを延長して、V_1,V_2 の基底を作りなさいという問題です.
ここで、延長の仕方を工夫する必要があります.
いつもの単位ベクトルに相当するものを足しても、当然、部分空間 V_1,V_2 の外に出てしまうでしょう.
単位ベクトルは、V_1,V_2 に入っているとは限りません.
なので、V_1,V_2 に入っているベクトルで、基底を延長する必要があります.
そのようなベクトルは、初めの V_1,V_2 の定義式のベクトルを使えばよいでしょう.
つまり、(f,{\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3) や (f,{\bf w}_1,{\bf w}_2) のように
ベクトルを並べておいて、この中から左端から最大個の一次独立なベクトルを選ぶようにすればよいことになります.(正確に言えばこれを行列で表示しておいてから簡約化をする.)
HPに行く.
今日は
- 次元.
- 直和であることを示すこと.
- 直和の次元公式
- 共通部分のベクトル空間を求めること.
次元
有限生成ベクトル空間の次元とは、そのベクトル空間の基底の数のことをいいます.
有限生成でないベクトル空間の次元は、有限でないと言うか、無限次元と言います.
ちなみに、\{0\} もベクトル空間の定義を満たすので、ベクトル空間です.次元は 0 と定義します.このベクトル空間には基底は存在しません.基底の集合が空集合であるのではなく、基底が定義できません.空集合を使ってもこの一つしかないベクトルを生成できるわけでもないです.空集合が生成できるはずがないので空集合が基底集合というわけでもないです.ですので、この場合、次元は 0 として定義しておくのです.
ちなみに、このベクトル空間は、すべてのベクトル空間の部分空間に含まれており、任意のベクトル空間の次元が 0 の部分空間はただ一つです.
また、一般に、
事実
有限生成ベクトル空間において、部分空間 W\subset V があるとき、
\dim W\le \dim V
がなりたち、等号が成り立つのは、W=V のときに限ります.
よって、次元が 0 のものと、\dim(V) のものは、部分空間として唯一つ決まります.
直和であることを示すこと
ベクトル空間 V とその部分空間 V_1,V_2\subset V が与えられているとき、
- V_1\cap V_2=\{0\}
- V=V_1+ V_2
V=V_1\oplus V_2
とかきます.
先週の補空間の定義と同じだと思った人も多いと思いますが、その通りで、V において、V_2 は V_1 の補空間になっており、V_1 は V_2 の補空間になっています.
和および直和の次元公式
\dim(V_1+V_2)=\dim(V_1)+\dim(V_2)-\dim(V_1\cap V_2)
が成り立ちます.
また、V_1+V_2 が直和であるとするとき、\{0\} の次元が 0 なので、
\dim(V_1\oplus V_2)=\dim(V_1)+\dim(V_2)
となります.
ですから、補空間の次元というのは、全体の次元からその部分空間の次元を引いたものになります.
まず、V_1,V_2\subset V が全体の直和になるためには、部分空間の次元の和が全体になる必要があります.演習の時間にやったように、
\dim(V_1)+\dim(V_2)\neq \dim(V) であるようなら、それがどのようなベクトル空間であるかに関わらず直和にはなり得ません.
また、あらゆるベクトル空間の次元は非負なので、
\dim(V_1)+\dim(V_2)<\dim(V) ならば、V_1+V_2=V も成り立ちません.
\dim(V_1)+\dim(V_2)= \dim(V) であるときに限り、直和かどうかの議論を V_1,V_2 の定義に帰って考える意味があります.
そういうわけで、今後そのような場合に、V_1,V_2\subset V が与えられたとき、V_1\cap V_2=\{0\} であるかどうか確かめます.
A-6-2(4)
の続きをやってみます.
V_1=\langle(1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}1&1\\1&3\\1&3\\1&2\end{pmatrix}\rangle,V_2=\langle(1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}0&1\\1&4\\2&3\\0&3\end{pmatrix}\rangle
V_1\cap V_2\ni {\bf v} は、
{\bf v}=\begin{pmatrix}1&1\\1&3\\1&3\\1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c\\d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\1&4\\2&3\\0&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}e\\f\end{pmatrix}
とかけるので、c,d,e,f は、
\begin{pmatrix}1&1&0&-1\\1&3&-1&-4\\1&3&-2&-3\\1&2&0&-3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c\\d\\e\\f\end{pmatrix}={\bf 0}
となるような連立一次方程式を解けばよいことになります.
まず、行列を簡約化すると下のようになります.
\begin{pmatrix}1&1&0&-1\\1&3&-1&-4\\1&3&-2&-3\\1&2&0&-3\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&0&1\\0&1&0&-2\\0&0&1&-1\\0&0&0&0\end{pmatrix}
よって、任意のスカラー c_1 を用いて
\begin{pmatrix}c\\d\\e\\f\end{pmatrix}= c_1\begin{pmatrix}-1\\2\\1\\1\end{pmatrix}
と書けます.
つまり、
V_1\cap V_2=\langle (1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}1&1\\1&3\\1&3\\1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-1\\2\end{pmatrix}\rangle=\langle(1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}1\\5\\5\\3\end{pmatrix}\rangle=\langle 1+5x+5x^2+3x^3\rangle\neq \{0\}
ということになります.
よって、2つのベクトル空間 V_1+V_2 は直和ではないことがわかります.
また、V_1+V_2=V であるかどうかは、上の事実を使います.
V_1+V_2 は当然Vの部分空間です.
次元公式を使って計算をすると、
\dim(V_1+V_2)=\dim(V_1)+\dim(V_2)-\dim(V_1\cap V_2)=2+2-1=3
となって、\dim(V)=4 であることから、V_1+V_2\neq V が成り立ちます.
共通部分のベクトル空間を求める方法
今日は、直和であるかどうかの問題でしたが、結局、共通部分のベクトル空間が何か(要するにその基底は何か)という問題でした.
上で行ったのは、
V_1,V_2 がどちらも \langle {\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n\rangle のように、ベクトルで生成する形の場合に求めていましたが、連立一次方程式の形になっているときは、以下のようにします.
V_1=\{{\bf v}\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}1&-1&0\\2&-1&0\end{pmatrix}{\bf v}=0\}
V_2=\{{\bf v}\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}1&0&-1\end{pmatrix}{\bf v}=0\}
であるとすると、
V_1\cap V_2=\{{\bf v}\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}1&-1&0\\2&-1&0\\1&0&-1\end{pmatrix}{\bf v}=0\}
と行列を積み上げればよいことになります.
このとき、
V_1\cap V_2=\{0\} であることは、\det\begin{pmatrix}1&-1&0\\2&-1&0\\1&0&-1\end{pmatrix}\neq 0
と同値ということになります.
よって、部分空間 V_1,V_2 がいくつかのベクトルで生成される形で書かれている場合でも、一度連立一次方程式に直してから考えると、共通部分のベクトル空間は行列を積み上げてから求めることもできます.
宿題C-6-3について
今回の最後の宿題は、いろいろとややこしいので、(おそらく)ひっかかりやすい部分を下で述べておきます.肝心なところは授業中にあまりはっきりとは言えませんでした.
部分空間 V_1=\langle {\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_2\rangle,V_2=\langle{\bf w}_1,{\bf w}_2\rangle が指定され、それぞれ、3次元、2次元です.
全体空間は4次元ですので、次元公式から、V_1\cap V_2 の次元は、必ず 1次元以上あることになります.
そのとき、(2) は、部分空間 V_1,V_2 の生成ベクトル {\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3 および {\bf w}_1,{\bf w}_2 を以下のように直してくださいということです.
たとえば、V_1\cap V_2 の次元が 1次元であるとき、
V_1\cap V_2=\langle f \rangle とすると、
V_1=\langle f,g_1,g_2\rangle
V_2=\langle f,g_3\rangle
の形に直してください.
V_1\cap V_2 の次元が 2 の場合は、
V_1=\langle f_1,f_2,g\rangle
V_2=\langle f_1,f_2\rangle
としてください.
以下1次元の場合とします.
もし、V_1\cap V_2=\langle f \rangle とすると、
f\in V_1 かつ、f\in V_2
となりますが、要はこのベクトルを延長して、V_1,V_2 の基底を作りなさいという問題です.
ここで、延長の仕方を工夫する必要があります.
いつもの単位ベクトルに相当するものを足しても、当然、部分空間 V_1,V_2 の外に出てしまうでしょう.
単位ベクトルは、V_1,V_2 に入っているとは限りません.
なので、V_1,V_2 に入っているベクトルで、基底を延長する必要があります.
そのようなベクトルは、初めの V_1,V_2 の定義式のベクトルを使えばよいでしょう.
つまり、(f,{\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3) や (f,{\bf w}_1,{\bf w}_2) のように
ベクトルを並べておいて、この中から左端から最大個の一次独立なベクトルを選ぶようにすればよいことになります.(正確に言えばこれを行列で表示しておいてから簡約化をする.)
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