少しずつblogに書いていきます。
全部は書く時間もないので、要所だけ書いていきます。
授業のHPはこちらです。
トポロジーBは空間のホモロジーを学ぶ授業です。
ちなみに、2年生までのトポロジー入門(位相空間を学ぶ授業)は仮定されます。
今回はホモロジー理論の概要ってことで、話していきました。
ホモロジーとは、位相空間の位相不変量で、ホモロジーを計算することで、いくつかの空間同士を比べることができます。
位相不変量であるとは、同相であるとき同じ値になるような量のことです。
ホモロジーは量として群に値をもつ位相空間の不変量であって、
ホモロジー群とも呼ばれます。
このホモロジー $H_\ast(X)$ は、空間$X$ に対して定義されますが、
$\ast$のところには、整数が入り、$H_n(X)$ が一つの群となります。
それが $n$ に関して列をなしているため、全体として $H_\ast(X)$ と書かれます。
ですので、正確には $X$ に対して群の列が不変量になります。
一般にホモロジー群は、積が可換となるアーベル群にもなります。
$n$ はホモロジーの次数ともよばれます。
空間のホモロジーは
$$H_0(X), H_1(X), H_2(X),\cdots$$
のように非負の整数を次数とするアーベル群の列になります。
たとえば空間内の単位球を $S^2$ とすると、$S^2$ のホモロジー群は
0次のホモロジーから順に
$${\mathbb Z}, 0, {\mathbb Z}, 0, 0,\cdots$$
となります。ここでは、$S^2$ とは球の表面を考えています。
また、${\mathbb Z}$ は整数全体からなる集合に足し算で群演算をもつ
アーベル群です。
ホモロジー群は後半に示すようにホモトピー性質を持ちますので
単位球でも任意の半径の球でも同じホモロジーになりますし、$S^2$に同相を保つ
ようにして連続的に変形してもホモロジー群は変わらず上記の列になります。
なので、正多面体の表面の空間も上記と同じホモロジー群ということになります。
一方ドーナツ状の空間、いわゆるトーラスを$T^2$ のホモロジー群では、
$${\mathbb Z}, {\mathbb Z}^2, {\mathbb Z}, 0, 0,\cdots$$
となります。1次のホモロジーは ${\mathbb Z}^2$ として2次元あり、
$S^2$ とは違いますね。
このことから、$S^2$ と $T^2$ は同相ではないことが数値的に理解することができます。
もっというと、これらはホモトピー同値でもないことになります。
この授業では、どのようにしてホモロジーを定義するのか?
またどのようにして定義から計算するのかを理解していきます。
ここでホモロジーの公理を述べておきます。
ここでは、空間 $X$ を拡張した空間対 $(X,A)$ にたいして
ホモロジーを考えます。
空間対とは、位相空間 $X$ とその部分空間 $A\subset X$ のペアを与えたものとなります。
特に $A=\emptyset$ とき、$(X,\emptyset)=X$ と同一視します。
また、連続写像 $f:(X,A)\to (Y,B)$ は、連続写像 $f:X\to Y$ であり、
$f(A)\subset B$ を満たします。
(「ホモロジー入門」(東京大学出版(坪井俊著))の抜粋です。
ホモロジーの公理
(F) 空間対 $(X,A)$に対して$H_\ast(X,A)$を与えることは共変関手である。
つまり以下を満たす。
・連続写像$f:(X,A)\to (Y,B)$と$g:(Y,B)\to (Z,C)$に対して、$g_\ast\circ f_\ast=(g\circ f)_\ast$を満たす。
・ $\text{id}:(X,A)\to (X,A)$が恒等写像のとき、$\text{id}_\ast$は$H_\ast(X,A)$上の恒等写像となる。
(H) $H_n$はホモトピー公理を満たす。
$f_0,f_1$がホモトピックであれば、$f_{0,\ast}=f_{1,\ast}$を満たす。
(P) $(X,A)$に対して$\partial_\ast:H_n(X,A)\to H_{n-1}(A)$が存在して、空間対の長完全系列
$$\to H_n(A)\overset{i_\ast}{\to} H_n(X)\overset{j_\ast}{\to} H_n(X,A)\overset{\partial_\ast}{\to} H_{n-1}(A)\overset{i_\ast}{\to} H_{n-1}(X)\to\cdots$$
が存在し、連続写像$f:(X,A)\to (Y,B)$に対して、以下の図式が長完全系列の準同型となる。
$$ \begin{CD}\cdots\ H_n(A) @>{i_\ast}>> H_n(X) @>{j_\ast}>> H_n(X,A) @>{\partial _n}>>H_{n-1}(A)\ \cdots\\@VV{f_\ast}V @VV{f_\ast}V @VV{f_\ast}V @VV{f_\ast}V\\ \cdots\ H_n(B) @>{i'_\ast}>> H_n(Y) @>{j_\ast'}>>H_n(Y,B) @>{\partial'_\ast}>>H_{n-1}(B)\ \cdots \end{CD}$$
(E) 切除公理を満たす。
$B\subset A\subset X$において$A$を開集合$B$を閉集合とするとき、包含写像$i:(X-B,A-B)\hookrightarrow (X,A)$に関して
$$i_\ast: H_n(X-B,A-B)\to H_n(X,A)$$
が同型である。
(D) 次元公理を満たす。
つまり、$$H_n(\{p\})\cong \begin{cases}{\mathbb Z}&n=0\\0&n\neq 0\end{cases}$$
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