2018年12月31日月曜日

トポロジー入門演習(第11回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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商写像
商写像についてまとめておきます。

位相空間 $(X,\mathcal{O}_X)$ と $(Y,\mathcal{O}_Y)$ の間の
全射写像 $f:X\to Y$ が商写像であるとは、
$U\in \mathcal{O}_Y\Leftrightarrow f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
を満たすことをいいます。

この矢印の右向きの条件から、$f$ は連続であることがわかります。

全射連続写像 $f$ が開写像であるとき、
$U\in \mathcal{P}(X)$ が $f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$ であるとき、
$f(f^{-1}(U))=U\in \mathcal{O}_Y$ であるから、矢印の左向きも成り立つので
商写像になります。

つまり、全射連続開写像は商写像になります。
同じようにして、全射連続閉写像も商写像になります。

しかし、この逆は成り立たず、全射連続で開でも閉でもない写像が商写像に
なることがあります。
どのような例があるか考えてみください。
例としては、数理科学2018年12月号(例題形式で探求する集合・位相10)
をみてください。

商写像はその名の通り、商集合に入る位相を定めます。

商位相
$X$ を位相空間とし、$\mathcal{O}_X$ をその位相とし、
$\sim$ を $X$ の同値関係とします。
$p:X\to X/\sim$ を商集合を作る自然な射影とします。
このとき、$p$ は全射となります。
$p$ を連続とする $X/\sim$ 上の最大の位相 $\mathcal{O}$ を定めることができます。
$\mathcal{O}$ は、$\mathcal{O}=\{U\subset X/\sim|p^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X\}$ 
と定められます。
$\mathcal{O}$ が位相であることは、すぐわかります。

このとき、この $(X,\mathcal{O}_X)$ と $(X/\sim,\mathcal{O})$ の間の写像
$p$ は商写像となります。
連続性は条件から明らかで、
反対の条件 $U\in \mathcal{P}(X/\sim)$ に対して、$p^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$ であるとすると、 $\mathcal{O}$ の条件から、$U\in \mathcal{O}$ となりますから、
商写像の左向きの条件が成り立ちます。
よって、$p$ は商写像となります。

また、$f:X\to Y$ を商写像とします。
このとき、$f$ に従って $X$ に同値関係 $\sim_f$ を
$f(x)=f(y)\Leftrightarrow x\sim_f y$ として
定義することができます。
この同値関係によって作られる自然な射影 $p:X\to X/\sim_f$ 
によって作られる $X/\sim_f$ 上の商位相は $Y$ と同相となります。
これは、自然な射影が商写像となる位相(商位相)が
一意的に決まるからです。

例えば、${\mathbb R}$ の同値関係 $x,y\in {\mathbb R}$ が $x-y\in {\mathbb Z}$
によって与えられる同値関係による商集合 ${\mathbb R}/\sim$ 上の
商位相は、${\mathbb R}^2$ の単位円
$S^1=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\}$ と同相であることがわかります。

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