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2018年12月19日水曜日

トポロジー入門演習(第10回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今回は、小テストを行いました。
難し目だった問題も加えましたのでそれほどできていませんでした。
特に後半の問題は問題の内容もわかっていない人も多かったようです。
これらの解答については、以前何回か書いたのでそちらを参照してください。

位相は、わかってしまえば簡単なのですが...

まずは位相について理解する必要があると思い、少し前に戻ろうと思いました。

位相をやる前にまずは、距離空間の理解が欠かせません。

もう一度距離空間を復習しておきます。

距離空間 
集合 X 上の距離関数 d:X\times X\to {\mathbb R}
とは、以下を満たすものです。

(1) d(x,y)\ge 0 かつ、d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y となる。
(2) d(x,y)=d(y,x)
(3) d(x,y)+d(y,z)\ge d(x,z)

このような距離関数が定まった空間、(X,d) のことを距離空間と言います。
この最後の不等式のことを一般に三角不等式といいます。

このとき、距離空間が定まると、開集合の概念が生まれます。

U開集合であるとは、

\forall x\in U に対して、ある \epsilon>0 が存在して、B(x,\epsilon)\subset U となること

と定義します。
ここで、B(x,\epsilon)=\{y\in X|d(x,y)\le \epsilon\} とし、x を中心とした \epsilon-近傍といいます。

このとき、開集合の集まり \{U\subset X|U\text{は開集合}\} を距離空間の開集合系
(別の言い方では位相)といいます。

開集合の補集合を閉集合といいます。
つまり、V^c が開集合となる集合 V のことを閉集合といいます。
したがって \{V|V^c\text{は開集合}\} は閉集合の集まりです。
閉集合系ともいいます。

ここで、開集合の性質として以下の3つが挙げられます。

(I)  空集合、全体集合 X は開集合である。
(II) 有限個の開集合の共通部分も開集合である。
(III) 任意個の開集合の和集合も開集合である。

(I) は明らかです。空集合が開集合であることは理解しにくいのですが、
任意の x に対してある \epsilon が存在しないといけないのですが、
任意の点がない場合は、\epsilon が存在する必要はありませんから、
無条件に成り立つことになり、空集合が開集合となるのです。

(II) を証明しましょう。有限個の開集合 U_1,\cdots, U_n とすれば、
\forall x_i\in U_i に対して \epsilon_i>0 が存在して、
B(x_i,\epsilon_i)\subset U_i が存在します。

そこで、\forall x\in \cap_{i=1}^nU_i に対して、
\epsilon_i>0 が存在して、B(x_i,\epsilon_i)\subset U_i が成り立ち、
\epsilon=\min\{\epsilon_i|i=1,\cdots n\} とすると、
B(x,\epsilon)\subset \cap_{i=1}^nU_i が成り立ちます。

よって、 \cap_{i=1}^nU_i も開集合ということがわかります。

(III) を証明しましょう。
\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\} を任意個の開集合とします。
U=\underset{\lambda\in \Lambda}{\cup}U_\lambda とします。
このとき \forall x\in U に対して、ある \lambda\in \Lambda
存在して、x\in U_\lambda が成り立ちます。
このとき、\epsilon>0 が存在して、B(x,\epsilon)\subset U_\lambda
成り立つので、B(x,\epsilon)\subset U が成り立ちます。

よって、U も開集合だということがわかります。

この3つの性質(I), (II), (III) は一般の位相空間上の性質に引き継がれます。
というか、この3つの性質を満たす集合系を開集合とする空間を位相空間といいます。

開集合が定義されれば、内点を定義することができます。
A\subset XX の部分集合としたとき、xA内点であるとは、
ある \epsilon>0 が存在して、
x\in B(x,\epsilon)\subset A となることをいいます。
内点を集めた集合を内部といいます。

特に、開集合とは全ての点が内点となる部分集合ということになります。
また、部分集合 A\subset X の内部とは、
A に包まれる開集合のなかで最も大きいものといっても同じことになります。

位相空間
位相空間を定義します。集合 X が位相空間であるとは、
X の部分集合の集合 \mathcal{O} が定まった空間として定義されます。
つまり、\mathcal{O}X の部分集合をいくつか集めた集合です。

(I)  \mathcal{O} は空集合、全体集合 X を含む。
(II) \mathcal{O} の有限個の集合の共通部分も \mathcal{O} の集合である。
(III) \mathcal{O} の任意個の集合の和集合も \mathcal{O} の集合である。

この性質をもつ部分集合の集合 \mathcal{O}位相といい、\mathcal{O}
含まれる集合を開集合といいます。

距離空間の開集合は、\epsilon-近傍を使って構成できたのに対して、
位相空間の場合は、開集合がどういうものかを性質によって定義しているところが
距離空間と異なります。

自然に、距離空間から定まる開集合全体をとると、それは、上の位相空間の
開集合の条件を満たし、距離空間は位相空間と見なせます。

また、集合 X を単純にして考えましょう。
X として有限集合をとります。
このとき、X に位相を定めることができます。
例えば、X=\{1,2,3\} に位相を定めてみましょう。

\{1,2,3\} の部分集合を定めればよいのですから、

例えば、\mathcal{O} として X の冪集合
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2\},\{3\},\{1,2\},\{2,3\},\{1,3\},\{1,2,3\}\}
をとると、この部分集合の集まりは、位相の条件 (I), (II), (III) を満たします。
冪集合をとったものがもっとも大きいですが、これをその集合の
離散位相といいます。

一番小さくとって、
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1,2,3\}\}
としても位相の条件 (I), (II), (III) を満たします。
このように、位相に必要な、空集合と全体集合しか含まないものを密着位相といいます。

そのほかにも、
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{1,2,3\}\}
としても位相の条件を満たします。
同じように、
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{2\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{3\},\{1,2,3\}\}
も同じ条件を満たします。これらは、1,2,3 を入れ替えること一致するので、
本質的に3点集合上の同じ位相を定めているといえます。
このような X 上の全単射のことを同相といいます。

つまり、(X,\mathcal{O}_1), (Y,\mathcal{O}_2) が同相であるとは、
f:X\to Y に全単射が存在して、\forall U\in \mathcal{O}_1 に対して
f(U)\in \mathcal{O}_2 となり、\forall V\in \mathcal{O}_2 に対して
f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_1 となることをいいます。

また、3点集合上の位相は、1,2,3の入れ替えをして得られるものを除けば、
ほかに6つあります。

\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{1,2\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2,3\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{1,2\},\{1,3\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2\},\{1,2\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2\},\{1,2\},\{1,3\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1,2\},\{1,2,3\}\}

よって3点集合上の位相で、同相でないものは全部で9個あるということになります。
この9個の分類について以前、別の観点から眺めた文章を
リンク(←)に書きましたので繋いでおきます。

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