[場所1E202(月曜日4限)]
HPに行く
今回は積空間について書いておきます。
"積"とは、直積集合の積のことです。
つまり、位相空間がいくつかあったときにその直積集合上に
位相を考えます。
つまり、$(X_i,\mathcal{O}_i)$ $i=1,2,\cdots, n$ を有限個の位相空間
とするとき、$\prod_{i=1}^nX_i=X_1\times \cdots \times X_n$ 上の位相を積位相と言います。
積空間
$(X_i,\mathcal{O}_i)$ $i=1,2,\cdots, n$ を有限個の位相空間とします。
このとき、$\mathcal{B}=\{U_1\times\cdots \times U_n|U_i\in \mathcal{O}_i\}$ を開基とする
$\prod_{i=1}^nX_i$ 上の位相がただ一つ定まり、
それを $\prod_{i=1}^nX_i$ 上の積位相と言います。
その空間を $\prod_{i=1}^n(X_i,\mathcal{O}_i)$ とかきます。
また、$\prod_{i=1}^n(X_i,\mathcal{O}_i)=(\prod_{i=1}^nX_i,\prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i)$
とも書くことにします。
この位相空間を積位相空間と言います。
この $\prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i$ の書き方は、集合論としての $\prod$ の意味と
違うので注意してください。
つまり、$U\in \prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i$ であるとは、
上の $\mathcal{B}$ の部分集合 $\mathcal{B}_U$ が存在して、
$U=\cup\mathcal{B}_U$ となることとして定義されています。
$\prod_{i=1}^nX_i$ の方は通常の直積集合の意味です。
集合論としての $\prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i$ を考えると、$U_i\in \mathcal{O}_i$
に対して、 $(U_1,\cdots, U_n)$ という元の集まりになってしまいます。
このように積位相を定義すると、わかることは、$\text{pr}_{i}:\prod_{i=1}^nX_i\to X_i$
を自然な射影( $\Leftrightarrow (x_1,\cdots, x_n)\mapsto x_i$ )として定義したとき、
$\text{pr}_i$ が連続になります。
(証明) $U_i\in \mathcal{O}_i$ とすると、$\text{pr}_i^{-1}(U_i)=X_1\times \cdots \times X_{i-1}\times U_i\times X_{i+1}\times \cdots \times X_n$ であり、
これは、$\mathcal{B}$ の元であり、特に開集合です。
よって、開集合の逆像が開集合となったので、$\text{pr}_i$ は連続となります。
例えば、${\mathbb R}^2$ 上に、
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})$ の2つの積位相 $({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})\times ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})$ を定めることが
できます。つまり、$({\mathbb R}^2,\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i)$ です。
ここで、$\mathcal{O}_i=\mathcal{O}_{d^{(1)}}$ です。
一方、$\mathcal{O}_{d^{(2)}}$ として位相を入れることができます。
ここで、$d^{(n)}((x_1,\cdots, x_n),(y_1,\cdots, y_n))=\sqrt{(x_1-y_1)^2+\cdots+(x_n-y_n)^2}$
と定義をしています。
$({\mathbb R}^2,\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i)$ の開集合は、
$\mathcal{B}=\{U\times V|U,V\in \mathcal{O}_{d^{(1)}}\}$ のいくつかの和集合で表される
もの全体です。
$\mathcal{O}_{d^{(2)}}$ は、
$\mathcal{B}_2=\{B(x,r)|x\in {\mathbb R}^2,r>0\}$ を開基とする位相です。
ここで、$B(x,r)=\{y\in {\mathbb R}^2|d^{(2)}(x,y)<r\}$ とします。
つまり、$r$-開球体です。
命題
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})\times ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})$
は $({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d^{(2)}})$ と同相である。
証明の方針は、$\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i=\mathcal{O}_{d^{(2)}}$ を
集合として等しいことを示せば良い。
$({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d^{(2)}})$ の開基は $\mathcal{B}_2=\{B(x,r)|x\in {\mathbb R}^2,r>0\}$ です。
まずはこれを示しておきます。
(証明)
位相空間 $(X,\mathcal{O}_1)$ と $(X,\mathcal{O}_2)$ に
対して、$\mathcal{B}_1$, $\mathcal{B}_2$ をそれらの開基とします。
$\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ であるための必要十分条件は、
$\mathcal{B}_1\subset \mathcal{O}_2$ かつ
$\mathcal{B}_2\subset \mathcal{O}_1$ を満たすことです。
なぜかというと、
$\Rightarrow$ は、
$\mathcal{B}_1\subset \mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$
かつ、$\mathcal{B}_2\subset \mathcal{O}_2=\mathcal{O}_1$
で、すぐ成り立ちます。
$\Leftarrow$ は、
$U\in \mathcal{O}_1$ に対して、$\forall p\in U$ にたいして $U_p\subset U$ となる $U_p\in \mathcal{B}_1$ が成り立ちます。
$\mathcal{B}_1\subset \mathcal{O}_2$ であるので、$U_p\in \mathcal{O}_2$ であるので、
$U=\cup_{p\in U}U_p$ であるから、位相の条件から、$U\in \mathcal{O}_2$ が成り立つ。
よって、$\mathcal{O}_1\subset\mathcal{O}_2$ です。
$V\in \mathcal{O}_2$ とする。$\forall q\in V$ に対して $V_q\subset V$ となる $V_q\in \mathcal{B}_2$ が成り立ちます。
$\mathcal{B}_2\subset \mathcal{O}_1$ であるので、$V_q\in \mathcal{O}_1$ であるので、
$V=\cup_{q\in V}V_q$ であるから、位相の条件から、$V\in \mathcal{O}_1$ が成り立つ。
よって、$\mathcal{O}_2\subset\mathcal{O}_1$ です。
よって、$\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ $\Box$
上の命題の証明に入りましょう。
まず、$\mathcal{B}_2\subset \prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i$ であることを示します。
$B(x,r)=\{y|d^{(1)}(x,y)<\epsilon\}$ とします。
このとき、$\forall y\in B(x,r)$ に対して、$B(y,r')\subset B(x,r)$ となる $r'$ が
存在します。$y=(y_1,y_2)$ として、$B(y_1,\frac{r'}{\sqrt{2}})\times B(y_2,\frac{r'}{\sqrt{2}})\subset B(y,r')$ であるので、
$y\in B(y_1,\frac{r'}{\sqrt{2}})\times B(y_2,\frac{r'}{\sqrt{2}})\subset B(x,r)$ が成り立ちます。
$B(y_1,\frac{r'}{\sqrt{2}})\times B(y_2,\frac{r'}{\sqrt{2}})\in \mathcal{B}$ であるので
$B(x,r)$ は、$\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i$ に含まれる開集合となります。
つまり、$\mathcal{B}_2\subset \prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i$ が成り立ちます。
次に、$\mathcal{B}\subset \mathcal{O}_{d^{(2)}}$ であることを示します。
$U\times V\in \mathcal{B}$ とします。
このとき、$U,V\in \mathcal{O}_{d^{(1)}}$ であるから、
$\forall (x,y)\in U\times V$ に対して、$B(x,r)\subset U$ かつ $B(y,r)\subset V$ となる
$r>0$ が存在します。
よって、$B(x,r)\times B(y,r)\subset U\times V$ となります。
また、$B(x,r)\times B(y,r)$ に対して、$B((x,y),r)\subset B(x,r)\times B(y,r)$
となります。
よって、$B((x,y),r)\subset U\times V$ となります。
つまり、$U\times V\in \mathcal{O}_{d^{(2)}}$ となります。
今回は積空間について書いておきます。
"積"とは、直積集合の積のことです。
つまり、位相空間がいくつかあったときにその直積集合上に
位相を考えます。
つまり、$(X_i,\mathcal{O}_i)$ $i=1,2,\cdots, n$ を有限個の位相空間
とするとき、$\prod_{i=1}^nX_i=X_1\times \cdots \times X_n$ 上の位相を積位相と言います。
積空間
$(X_i,\mathcal{O}_i)$ $i=1,2,\cdots, n$ を有限個の位相空間とします。
このとき、$\mathcal{B}=\{U_1\times\cdots \times U_n|U_i\in \mathcal{O}_i\}$ を開基とする
$\prod_{i=1}^nX_i$ 上の位相がただ一つ定まり、
それを $\prod_{i=1}^nX_i$ 上の積位相と言います。
その空間を $\prod_{i=1}^n(X_i,\mathcal{O}_i)$ とかきます。
また、$\prod_{i=1}^n(X_i,\mathcal{O}_i)=(\prod_{i=1}^nX_i,\prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i)$
とも書くことにします。
この位相空間を積位相空間と言います。
この $\prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i$ の書き方は、集合論としての $\prod$ の意味と
違うので注意してください。
つまり、$U\in \prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i$ であるとは、
上の $\mathcal{B}$ の部分集合 $\mathcal{B}_U$ が存在して、
$U=\cup\mathcal{B}_U$ となることとして定義されています。
$\prod_{i=1}^nX_i$ の方は通常の直積集合の意味です。
集合論としての $\prod_{i=1}^n\mathcal{O}_i$ を考えると、$U_i\in \mathcal{O}_i$
に対して、 $(U_1,\cdots, U_n)$ という元の集まりになってしまいます。
このように積位相を定義すると、わかることは、$\text{pr}_{i}:\prod_{i=1}^nX_i\to X_i$
を自然な射影( $\Leftrightarrow (x_1,\cdots, x_n)\mapsto x_i$ )として定義したとき、
$\text{pr}_i$ が連続になります。
(証明) $U_i\in \mathcal{O}_i$ とすると、$\text{pr}_i^{-1}(U_i)=X_1\times \cdots \times X_{i-1}\times U_i\times X_{i+1}\times \cdots \times X_n$ であり、
これは、$\mathcal{B}$ の元であり、特に開集合です。
よって、開集合の逆像が開集合となったので、$\text{pr}_i$ は連続となります。
例えば、${\mathbb R}^2$ 上に、
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})$ の2つの積位相 $({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})\times ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})$ を定めることが
できます。つまり、$({\mathbb R}^2,\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i)$ です。
ここで、$\mathcal{O}_i=\mathcal{O}_{d^{(1)}}$ です。
一方、$\mathcal{O}_{d^{(2)}}$ として位相を入れることができます。
ここで、$d^{(n)}((x_1,\cdots, x_n),(y_1,\cdots, y_n))=\sqrt{(x_1-y_1)^2+\cdots+(x_n-y_n)^2}$
と定義をしています。
$({\mathbb R}^2,\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i)$ の開集合は、
$\mathcal{B}=\{U\times V|U,V\in \mathcal{O}_{d^{(1)}}\}$ のいくつかの和集合で表される
もの全体です。
$\mathcal{O}_{d^{(2)}}$ は、
$\mathcal{B}_2=\{B(x,r)|x\in {\mathbb R}^2,r>0\}$ を開基とする位相です。
ここで、$B(x,r)=\{y\in {\mathbb R}^2|d^{(2)}(x,y)<r\}$ とします。
つまり、$r$-開球体です。
命題
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})\times ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}})$
は $({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d^{(2)}})$ と同相である。
証明の方針は、$\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i=\mathcal{O}_{d^{(2)}}$ を
集合として等しいことを示せば良い。
$({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d^{(2)}})$ の開基は $\mathcal{B}_2=\{B(x,r)|x\in {\mathbb R}^2,r>0\}$ です。
まずはこれを示しておきます。
(証明)
位相空間 $(X,\mathcal{O}_1)$ と $(X,\mathcal{O}_2)$ に
対して、$\mathcal{B}_1$, $\mathcal{B}_2$ をそれらの開基とします。
$\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ であるための必要十分条件は、
$\mathcal{B}_1\subset \mathcal{O}_2$ かつ
$\mathcal{B}_2\subset \mathcal{O}_1$ を満たすことです。
なぜかというと、
$\Rightarrow$ は、
$\mathcal{B}_1\subset \mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$
かつ、$\mathcal{B}_2\subset \mathcal{O}_2=\mathcal{O}_1$
で、すぐ成り立ちます。
$\Leftarrow$ は、
$U\in \mathcal{O}_1$ に対して、$\forall p\in U$ にたいして $U_p\subset U$ となる $U_p\in \mathcal{B}_1$ が成り立ちます。
$\mathcal{B}_1\subset \mathcal{O}_2$ であるので、$U_p\in \mathcal{O}_2$ であるので、
$U=\cup_{p\in U}U_p$ であるから、位相の条件から、$U\in \mathcal{O}_2$ が成り立つ。
よって、$\mathcal{O}_1\subset\mathcal{O}_2$ です。
$V\in \mathcal{O}_2$ とする。$\forall q\in V$ に対して $V_q\subset V$ となる $V_q\in \mathcal{B}_2$ が成り立ちます。
$\mathcal{B}_2\subset \mathcal{O}_1$ であるので、$V_q\in \mathcal{O}_1$ であるので、
$V=\cup_{q\in V}V_q$ であるから、位相の条件から、$V\in \mathcal{O}_1$ が成り立つ。
よって、$\mathcal{O}_2\subset\mathcal{O}_1$ です。
よって、$\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ $\Box$
上の命題の証明に入りましょう。
まず、$\mathcal{B}_2\subset \prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i$ であることを示します。
$B(x,r)=\{y|d^{(1)}(x,y)<\epsilon\}$ とします。
このとき、$\forall y\in B(x,r)$ に対して、$B(y,r')\subset B(x,r)$ となる $r'$ が
存在します。$y=(y_1,y_2)$ として、$B(y_1,\frac{r'}{\sqrt{2}})\times B(y_2,\frac{r'}{\sqrt{2}})\subset B(y,r')$ であるので、
$y\in B(y_1,\frac{r'}{\sqrt{2}})\times B(y_2,\frac{r'}{\sqrt{2}})\subset B(x,r)$ が成り立ちます。
$B(y_1,\frac{r'}{\sqrt{2}})\times B(y_2,\frac{r'}{\sqrt{2}})\in \mathcal{B}$ であるので
$B(x,r)$ は、$\prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i$ に含まれる開集合となります。
つまり、$\mathcal{B}_2\subset \prod_{i=1}^2\mathcal{O}_i$ が成り立ちます。
次に、$\mathcal{B}\subset \mathcal{O}_{d^{(2)}}$ であることを示します。
$U\times V\in \mathcal{B}$ とします。
このとき、$U,V\in \mathcal{O}_{d^{(1)}}$ であるから、
$\forall (x,y)\in U\times V$ に対して、$B(x,r)\subset U$ かつ $B(y,r)\subset V$ となる
$r>0$ が存在します。
よって、$B(x,r)\times B(y,r)\subset U\times V$ となります。
また、$B(x,r)\times B(y,r)$ に対して、$B((x,y),r)\subset B(x,r)\times B(y,r)$
となります。
よって、$B((x,y),r)\subset U\times V$ となります。
つまり、$U\times V\in \mathcal{O}_{d^{(2)}}$ となります。
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