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2018年12月31日月曜日

トポロジー入門演習(第11回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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商写像
商写像についてまとめておきます。

位相空間 (X,\mathcal{O}_X)(Y,\mathcal{O}_Y) の間の
全射写像 f:X\to Y が商写像であるとは、
U\in \mathcal{O}_Y\Leftrightarrow f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X
を満たすことをいいます。

この矢印の右向きの条件から、f は連続であることがわかります。

全射連続写像 f が開写像であるとき、
U\in \mathcal{P}(X)f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X であるとき、
f(f^{-1}(U))=U\in \mathcal{O}_Y であるから、矢印の左向きも成り立つので
商写像になります。

つまり、全射連続開写像は商写像になります。
同じようにして、全射連続閉写像も商写像になります。

しかし、この逆は成り立たず、全射連続で開でも閉でもない写像が商写像に
なることがあります。
どのような例があるか考えてみください。
例としては、数理科学2018年12月号(例題形式で探求する集合・位相10)
をみてください。

商写像はその名の通り、商集合に入る位相を定めます。

商位相
X を位相空間とし、\mathcal{O}_X をその位相とし、
\simX の同値関係とします。
p:X\to X/\sim を商集合を作る自然な射影とします。
このとき、p は全射となります。
p を連続とする X/\sim 上の最大の位相 \mathcal{O} を定めることができます。
\mathcal{O} は、\mathcal{O}=\{U\subset X/\sim|p^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X\} 
と定められます。
\mathcal{O} が位相であることは、すぐわかります。

このとき、この (X,\mathcal{O}_X)(X/\sim,\mathcal{O}) の間の写像
p は商写像となります。
連続性は条件から明らかで、
反対の条件 U\in \mathcal{P}(X/\sim) に対して、p^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X であるとすると、 \mathcal{O} の条件から、U\in \mathcal{O} となりますから、
商写像の左向きの条件が成り立ちます。
よって、p は商写像となります。

また、f:X\to Y を商写像とします。
このとき、f に従って X に同値関係 \sim_f
f(x)=f(y)\Leftrightarrow x\sim_f y として
定義することができます。
この同値関係によって作られる自然な射影 p:X\to X/\sim_f 
によって作られる X/\sim_f 上の商位相は Y と同相となります。
これは、自然な射影が商写像となる位相(商位相)が
一意的に決まるからです。

例えば、{\mathbb R} の同値関係 x,y\in {\mathbb R}x-y\in {\mathbb Z}
によって与えられる同値関係による商集合 {\mathbb R}/\sim 上の
商位相は、{\mathbb R}^2 の単位円
S^1=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\} と同相であることがわかります。

2018年12月19日水曜日

トポロジー入門演習(第10回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今回は、小テストを行いました。
難し目だった問題も加えましたのでそれほどできていませんでした。
特に後半の問題は問題の内容もわかっていない人も多かったようです。
これらの解答については、以前何回か書いたのでそちらを参照してください。

位相は、わかってしまえば簡単なのですが...

まずは位相について理解する必要があると思い、少し前に戻ろうと思いました。

位相をやる前にまずは、距離空間の理解が欠かせません。

もう一度距離空間を復習しておきます。

距離空間 
集合 X 上の距離関数 d:X\times X\to {\mathbb R}
とは、以下を満たすものです。

(1) d(x,y)\ge 0 かつ、d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y となる。
(2) d(x,y)=d(y,x)
(3) d(x,y)+d(y,z)\ge d(x,z)

このような距離関数が定まった空間、(X,d) のことを距離空間と言います。
この最後の不等式のことを一般に三角不等式といいます。

このとき、距離空間が定まると、開集合の概念が生まれます。

U開集合であるとは、

\forall x\in U に対して、ある \epsilon>0 が存在して、B(x,\epsilon)\subset U となること

と定義します。
ここで、B(x,\epsilon)=\{y\in X|d(x,y)\le \epsilon\} とし、x を中心とした \epsilon-近傍といいます。

このとき、開集合の集まり \{U\subset X|U\text{は開集合}\} を距離空間の開集合系
(別の言い方では位相)といいます。

開集合の補集合を閉集合といいます。
つまり、V^c が開集合となる集合 V のことを閉集合といいます。
したがって \{V|V^c\text{は開集合}\} は閉集合の集まりです。
閉集合系ともいいます。

ここで、開集合の性質として以下の3つが挙げられます。

(I)  空集合、全体集合 X は開集合である。
(II) 有限個の開集合の共通部分も開集合である。
(III) 任意個の開集合の和集合も開集合である。

(I) は明らかです。空集合が開集合であることは理解しにくいのですが、
任意の x に対してある \epsilon が存在しないといけないのですが、
任意の点がない場合は、\epsilon が存在する必要はありませんから、
無条件に成り立つことになり、空集合が開集合となるのです。

(II) を証明しましょう。有限個の開集合 U_1,\cdots, U_n とすれば、
\forall x_i\in U_i に対して \epsilon_i>0 が存在して、
B(x_i,\epsilon_i)\subset U_i が存在します。

そこで、\forall x\in \cap_{i=1}^nU_i に対して、
\epsilon_i>0 が存在して、B(x_i,\epsilon_i)\subset U_i が成り立ち、
\epsilon=\min\{\epsilon_i|i=1,\cdots n\} とすると、
B(x,\epsilon)\subset \cap_{i=1}^nU_i が成り立ちます。

よって、 \cap_{i=1}^nU_i も開集合ということがわかります。

(III) を証明しましょう。
\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\} を任意個の開集合とします。
U=\underset{\lambda\in \Lambda}{\cup}U_\lambda とします。
このとき \forall x\in U に対して、ある \lambda\in \Lambda
存在して、x\in U_\lambda が成り立ちます。
このとき、\epsilon>0 が存在して、B(x,\epsilon)\subset U_\lambda
成り立つので、B(x,\epsilon)\subset U が成り立ちます。

よって、U も開集合だということがわかります。

この3つの性質(I), (II), (III) は一般の位相空間上の性質に引き継がれます。
というか、この3つの性質を満たす集合系を開集合とする空間を位相空間といいます。

開集合が定義されれば、内点を定義することができます。
A\subset XX の部分集合としたとき、xA内点であるとは、
ある \epsilon>0 が存在して、
x\in B(x,\epsilon)\subset A となることをいいます。
内点を集めた集合を内部といいます。

特に、開集合とは全ての点が内点となる部分集合ということになります。
また、部分集合 A\subset X の内部とは、
A に包まれる開集合のなかで最も大きいものといっても同じことになります。

位相空間
位相空間を定義します。集合 X が位相空間であるとは、
X の部分集合の集合 \mathcal{O} が定まった空間として定義されます。
つまり、\mathcal{O}X の部分集合をいくつか集めた集合です。

(I)  \mathcal{O} は空集合、全体集合 X を含む。
(II) \mathcal{O} の有限個の集合の共通部分も \mathcal{O} の集合である。
(III) \mathcal{O} の任意個の集合の和集合も \mathcal{O} の集合である。

この性質をもつ部分集合の集合 \mathcal{O}位相といい、\mathcal{O}
含まれる集合を開集合といいます。

距離空間の開集合は、\epsilon-近傍を使って構成できたのに対して、
位相空間の場合は、開集合がどういうものかを性質によって定義しているところが
距離空間と異なります。

自然に、距離空間から定まる開集合全体をとると、それは、上の位相空間の
開集合の条件を満たし、距離空間は位相空間と見なせます。

また、集合 X を単純にして考えましょう。
X として有限集合をとります。
このとき、X に位相を定めることができます。
例えば、X=\{1,2,3\} に位相を定めてみましょう。

\{1,2,3\} の部分集合を定めればよいのですから、

例えば、\mathcal{O} として X の冪集合
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2\},\{3\},\{1,2\},\{2,3\},\{1,3\},\{1,2,3\}\}
をとると、この部分集合の集まりは、位相の条件 (I), (II), (III) を満たします。
冪集合をとったものがもっとも大きいですが、これをその集合の
離散位相といいます。

一番小さくとって、
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1,2,3\}\}
としても位相の条件 (I), (II), (III) を満たします。
このように、位相に必要な、空集合と全体集合しか含まないものを密着位相といいます。

そのほかにも、
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{1,2,3\}\}
としても位相の条件を満たします。
同じように、
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{2\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{3\},\{1,2,3\}\}
も同じ条件を満たします。これらは、1,2,3 を入れ替えること一致するので、
本質的に3点集合上の同じ位相を定めているといえます。
このような X 上の全単射のことを同相といいます。

つまり、(X,\mathcal{O}_1), (Y,\mathcal{O}_2) が同相であるとは、
f:X\to Y に全単射が存在して、\forall U\in \mathcal{O}_1 に対して
f(U)\in \mathcal{O}_2 となり、\forall V\in \mathcal{O}_2 に対して
f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_1 となることをいいます。

また、3点集合上の位相は、1,2,3の入れ替えをして得られるものを除けば、
ほかに6つあります。

\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{1,2\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2,3\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{1,2\},\{1,3\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2\},\{1,2\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},\{2\},\{1,2\},\{1,3\},\{1,2,3\}\}
\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1,2\},\{1,2,3\}\}

よって3点集合上の位相で、同相でないものは全部で9個あるということになります。
この9個の分類について以前、別の観点から眺めた文章を
リンク(←)に書きましたので繋いでおきます。

2018年12月13日木曜日

トポロジー入門演習(第9回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今回は演習はせずに、6,7回の問題の解答を前でもう一度解きました。
ここでは、7だけやっておきます。

7-2
距離空間であれば、可分であることと第2可算であることは同値である。

この証明は(第8回)に書きました。

7-3
下限位相 ({\mathbb R},\mathcal{O}_u) はユークリッド位相 ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}}) より真に大きいことを示せ。

下限位相では、半開区間を含めることが特徴でしたから、
[a,b)\mathcal{O}_u が真に含まれる開集合であることを示せばよいです。

示すべきことは、
\mathcal{O}_{d^{(1)}}\subset \mathcal{O}_u であり、
\mathcal{O}_{d^{(1)}}\neq \mathcal{O}_u であることを示すこと。

({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^{(1)}}) の開集合 \mathcal{O}_{d^{(1)}} の元が
すべて \mathcal{O}_u に含まれていることを示す必要があります。

任意の開区間が \mathcal{O}_u に含まれることを示せばよいです。

というのも、
開区間全体は \mathcal{O}_{d^{(1)}} の開基であるので、
\mathcal{O}_{d^{(1)}} の任意の開集合 U は、
U=\underset{(a,b)\subset U}{\cup} (a,b) を満たします。

もし、任意の開区間が \mathcal{O}_u  の開集合であるとします。
(a,b)\in \mathcal{O}_u であるので、U=\underset{(a,b)\subset U}{\cup} (a,b)
と位相の条件から、任意の U\in \mathcal{O}_{d^{(1)}} \mathcal{O}_u 
に含まれます。よって、U\in \mathcal{O}_u です。

つまり、(a,b)\in \mathcal{O}_u を証明します。

(a,b)=\underset{[x,y)\subset (a,b)}{\cup}[x,y) を満たします。
なぜかというと、I=\underset{[x,y)\subset (a,b)}{\cup}[x,y) とおきます。
I\subset (a,b) であることは和集合の各成分が [x,y)\subset (a,b) であることから
明らかです。

また、z\in (a,b) とします。このとき、[z,b)\subset (a,b) であり、
z\in [z,b) であるから、z\in I となり、(a,b)\subset I が成り立ちます。

よって、(a,b)=\underset{[x,y)\subset (a,b)}{\cup}[x,y) が成り立ちます。
開集合の性質から、(a,b)\in \mathcal{O}_u が成り立つので、
\mathcal{O}_{d^{(1)}}\subset \mathcal{O}_u が成り立ちます。

よって、\mathcal{O}_{d^{(1)}}\subset\mathcal{O}_u が成り立つことがわかりました。

また、[0,1)\mathcal{O}_u の開集合ですが、\mathcal{O}_{d^{(1)}} の開集合
ではありません。
もし、[0,1)\in \mathcal{O}_{d^{(1)}} であるとすると、開区間全体は \mathcal{O}_{d^{(1)}} の開基となる
ので、[0,1)\subset (a,b)\subset [0,1) となる (a,b) が存在する必要があります。
このとき、最初の \subset から、a<0 が成り立ち、2つ目の \subset から
0\le a が成り立ちます。よって、矛盾が成立します。

よって、\mathcal{O}_{d^{(1)}}\subset \mathcal{O}_u かつ \mathcal{O}_{d^{(1)}}\neq \mathcal{O}_u が成り立ちます。

問題7-4
f:X\to Y が連続であることの必要十分条件は、Y の任意の準開基 \mathcal{T}
に対して \forall S\in \mathcal{T} に対して f^{-1}(S)X の開集合であることを示せ。

です。X 上の位相を \mathcal{O}_X とし、Y 上の位相を \mathcal{O}_Y とします。

まず、f が連続であることは、

Yの任意の開集合 U\in \mathcal{O}_Y に対して f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X となること  (\ast)

と必要十分です。

\mathcal{B}\mathcal{O}_Y の開基とします。
このとき、\forall U\in \mathcal{O}_Y に対して、U=\underset{V\in \mathcal{B},V\subset U}\cup V と書くことができます。

よって、(\ast) が成り立つことは、

任意の Y の開基 V\in \mathcal{B} に対して、f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_X となること   (\ast\ast)

と必要十分です。

なぜかというと、
もし、Y の開基 \mathcal{B} の任意の元 V\in \mathcal{B} に対して、f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_X であるとします。

このとき、\forall U\in \mathcal{O}_Y に対して、U=\underset{V\in \mathcal{B},V\subset U}\cup V とかけるから、f^{-1}(U)=\underset{V\in \mathcal{B},V\subset U}\cup f^{-1}(V)
となり、位相の条件から、f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X となります。

また、逆に、
\forall U\in \mathcal{O}_Y に対して f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X であるなら、
\mathcal{B}\subset \mathcal{O}_Y であることから、
\forall V\in \mathcal{B} に対して、f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_X を満たす。

また、(\ast\ast) が成り立つことは、

任意の Y の準開基の元 S\in \mathcal{T} に対して、f^{-1}(S)\in \mathcal{O}_X
が成り立つこと        (\ast\ast\ast)

と同値である。
なぜかというと、
もし、Y の準開基 \mathcal{T} の任意の元 S\in \mathcal{T} に対して、
f^{-1}(S)\in \mathcal{O}_X であるとします。

このとき、\forall V\in \mathcal{B} に対して、ある有限個の準開基
V_1,\cdots, V_n が存在して、V=V_1\cap \cdots \cap V_n となるので、
f^{-1}(V)=f^{-1}(V_1\cap \cdots \cap V_n)=f^{-1}(V_1)\cap \cdots \cap f^{-1}(V_n)
となり、位相の条件から、f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_X となる。

逆に、 (\ast\ast) が成り立つとすると、f は連続なので、
任意の U\in \mathcal{O}_Y に対して、f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X
成り立ち、S\subset \mathcal{O}_Y であるので、
特に、S\in \mathcal{T}\subset \mathcal{O}_Y に対して、f^{-1}(S)\in \mathcal{O}_X が成り立つ。

よって、(\ast\ast) が成り立つことと、(\ast\ast\ast) が成り立つことは同値となります。

ゆえに、f が連続であること \Leftrightarrow (\ast) \Leftrightarrow (\ast\ast) \Leftrightarrow (\ast\ast\ast)
となります


2018年12月7日金曜日

表現行列の基底の変換行列による変換則

今週、とある学生が、手習い塾に表現行列の変換規則がわからなくなったということで
質問に来ていました。

それ以前に、彼は、同じ質問を手習い塾でして理解して帰ったのですが、
再びわからなくなったということのようでした。

装着写像と取り外し写像

まず、ベクトル空間の基底とはどのような役割をしているかから始めます。
ベクトル空間 V の元は、基底 v_1,\cdots, v_n を用いて、
x_1v_1+\cdots+x_nv_n と一意的に書くことができます。

これを、数ベクトル空間の形を借りて、

(v_1,\cdots, v_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} のように表します。
これは、横ベクトルと縦ベクトルを行列のようにして掛けることで、
ある V の元 x_1v_1+\cdots+x_nv_n を表していると思うことにします。
通常、数ベクトル空間 {\mathbb R}^n は縦ベクトルで書くことが多いですから
基底の方は自然と横並びになります。

こうすると、自然と、ベクトル空間の元 x_1v_1+\cdots+x_nv_n に対して
数ベクトルの元 \begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} を一つ定めることになります。
一次結合の一意性から、そのような数ベクトルはただ一つに定まり、
その逆写像も定まります。
その逆写像 \varphi:{\mathbb R}^n\to V  を、
\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}\mapsto (v_1,\cdots, v_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}
と定めましょう。

この写像を装着写像といい、逆写像を、取り外し写像ということにします。

装着とは、基底 (v_1,\cdots, v_n) を左に装着することで、ベクトル空間の元を
実現させているイメージです。取り外しとはその反対です。

基底の変換行列
(v_1,\cdots, v_n)(w_1,\cdots, w_n)V の2つの基底とします。
すると、
w_iv_1,\cdots, v_n の一次結合で書くことができます。
その一次結合の係数を数ベクトル p_i にしておくと、w_i=(v_1,\cdots, v_n)\cdot p_i 
と表すことができます。
それらをまとめて、P=(p_1\cdots p_n) なる行列を作っておけば、
(w_1,\cdots, w_n)=(v_1,\cdots, v_n)P となります。
(v_1,\cdots, v_n)(w_1,\cdots, w_n)V の基底であることから、P
正則行列となります。
この行列 P のことを基底の変換行列といいます。

v_1,\cdots, v_n による装着写像を \varphi_1:{\mathbb R}^n\to V
とし、
w_1,\cdots, w_n による装着写像を \varphi_2:{\mathbb R}^n\to V
とします。

装着写像 \varphi_2 により (w_1,\cdots, w_n) を装着し、
今度は、取り外し写像 \varphi^{-1}_1 により (v_1,\cdots, v_n) 
を取り外してみましょう。そうすると、

\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto (w_1,\cdots, w_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}=(v_1,\cdots, v_n)P\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto P\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix} 
となります。

つまり、\varphi_1^{-1}\circ \varphi_2P を左から掛け算する写像となることが
わかります。

表現行列
線形代数で表現行列というのを習うと思います。

ある線形写像(変換) f:V\to V があったときに、
V の基底をv_1, \cdots, v_n としたときに、

(f(v_1),\cdots, f(v_n))=(v_1,\cdots, v_n)A

としたときの、n\times n 行列 A表現行列というのでした。

ここで、(v_1,\cdots v_n)A などの書き方ですが、上と同じで、
A=\begin{pmatrix}a_{11}&\cdots &a_{1n}\\\cdots &\cdots &\cdots  \\a_{n1}&\cdots &a_{nn}\end{pmatrix} とするとき、

(v_1,\cdots v_n)A =(a_{11}v_1+\cdots +a_{n1}v_n,\cdots ,a_{1n}v_1+\cdots +a_{nn}v_n)

を意味します。

x_1v_1+\cdots +x_nv_n=(v_1,\cdots, v_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}f で写すと、
f(x_1v_1+\cdots+x_nv_n)=x_1f(v_1)+\cdots+x_nf(v_n)=(f(v_1),\cdots f(v_n))\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}=(v_1,\cdots, v_n)A\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} 
となります。

つまり、線形写像 f により、
(v_1,\cdots, v_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}\mapsto (v_1,\cdots, v_n)A\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}
のように写され、基底を取り外すことで、
数ベクトルの世界では、線形写像 f

\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}\mapsto A\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}
を意味することになります。 




表現行列の変換則
ここで、基底を取り替えたら表現行列がどのように異なるか?
ということを考えましょう。

ここで、v_1,\cdots, v_n による f の表現行列を A とし、
w_1,\cdots, w_n による f の表現行列を B とします。

つまり、
(f(v_1),\cdots, f(v_n))=(v_1,\cdots, v_n)A 
(f(w_1),\cdots, f(w_n))=(w_1,\cdots, w_n)B
となります。


装着写像とf を合成したものは、
\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\ x_n\end{pmatrix}\mapsto (v_1,\cdots v_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\to (v_1,\cdots, v_n)A\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\ x_n\end{pmatrix} 
であり、

表現行列 A を左からかけて、装着したものは、
\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto A\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto (v_1,\cdots, v_n)A\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\ x_n\end{pmatrix} 
となり、同じ写像です。

同じように、

\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\ x_n\end{pmatrix}\mapsto (w_1,\cdots w_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\to (w_1,\cdots, w_n)B\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\ x_n\end{pmatrix} 
\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto B\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto (w_1,\cdots, w_n)B\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\ x_n\end{pmatrix} 

は同じ写像です。
これを図にすると下のようになります。


上で言っていることは、この図の矢印に沿って写像を合成することで
ある空間からある空間へ行く時、どのようなルートを通っても同じ写像になります。

例えば、この図式の上の四角形についてもう一度やっておけば、
B を左から掛け算する写像

\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}\mapsto B\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}
は、(w_1,\cdots, w_n) を装着し、f を施し、再び (w_1,\cdots, w_n) を取り外す操作に
対応しますが、実際やってみると、

\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}\mapsto (w_1,\cdots, w_n)\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}\mapsto (f(w_1),\cdots, f(w_n))\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}= (w_1,\cdots w_n)B\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}\mapsto B\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}
となります。

このように、道によらずに写像が一意に定まっている図式のことを可換図式と言います。

左と右の三角形が可換であることは明らかです。

また、\varphi^{-1}_1\circ\varphi_2P を左から掛ける写像だったことも
ここで思い出しておきましょう。

今、左上の {\mathbb R}^n から出発して右上の {\mathbb R}^n にたどり着く道を
考えます。一番近道をすると、
\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto B\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}

ですが、一番外回りを通ってくると、

\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto P\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto AP\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}\mapsto P^{-1}AP\begin{pmatrix}x_1\\\vdots \\x_n\end{pmatrix}
となり、これらは同じ写像を意味しますから、

B=P^{-1}AP
が成り立つことになります。
この等式を表現行列の変換規則といいます。

また、ベクトル空間上で考えるとするなら、(w_1,\cdots, w_n) を装着して
(w_1,\cdots,w_n)P^{-1}AP=(v_1,\cdots, v_n)AP= (f(v_1),\cdots , f(v_n))P = (f(w_1),\cdots, f(w_n))=(w_1,\cdots, w_n)B
とするとよいでしょう。

2018年12月2日日曜日

トポロジー入門演習(第8回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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ここでは可算公理の周辺の基礎知識についてまとめておきます。
可算公理
可算公理には、第1可算公理と第2可算公理の2種類あります。

第1可算公理は、各点の基本近傍系として可算個のものが存在すること。
第2可算公理は、可算個の開基をもつこと。

をいいます。

また、可分であるとは、
可算な稠密部分集合が存在することをいいます。

基本的な性質を述べていきます。

まず、

距離空間なら、第1可算公理が成り立ちます。
\mathcal{N}^\ast(x)=\{B(x,\frac{1}{n})|n\in{\mathbb N} \} は距離空間の基本近傍系
となります。

(X,\mathcal{O}) を距離位相空間とします。
Vx の近傍とします。
このとき、xVの内点であるので、x\in V^i
であり、ある\epsilon が存在して、B(x,\epsilon)\subset V^i\subset V となります。
また、アルキメデスの公理により、\frac{1}{n}<\epsilon となる自然数
n が存在する。つまり、
B(x,\frac{1}{n})\subset B(x,\epsilon)\subset V^i\subset V となるので、
\mathcal{N}^\ast(x) は基本近傍系の条件を満たします。

つまり、第1可算公理は位相空間が距離空間であるための必要条件です。

また、

第2可算であれば、可分かつ第1可算が成り立ちます。

\mathcal{B} を位相 \mathcal{O} の可算開基とします。
つまり、\mathcal{B} は可算個の集合からなる開基です。
V\in \mathcal{B} に対して、x_V\in V を一つ選んでおきます。
このとき、A=\{x_V|V\in \mathcal{B}\} とすると、
AX の可算稠密集合となります。

\bar{A}=X となることを示します。

\forall x\in X とします。 x\in Ux の近傍とします。
このとき、開基の性質から、x\in V\subset U^i となる V\in \mathcal{B}
存在します。このとき、x_V\in V であるから、V\cap A\neq \emptyset となります。
よって、\emptyset \neq V\cap A\subset U\cap A より、U\cap A\neq \emptyset となります。
Ax の任意の近傍と共通部分を持つので、AX において稠密となります。

また、第2可算公理を満たす空間が第1可算公理を満たすことは、
\mathcal{N}^\ast(x)=\{V\in \mathcal{B}|x\in V\} とおくと、この集合は可算個からなり、

x の任意の近傍 V に対して、x\in U\subset V^i となる開基の元 V\in \mathcal{B}
が存在し、とくに条件から、V\in \mathcal{N}^\ast(x) となる。
ゆえに、\mathcal{N}^\ast(x) は、x の基本近傍系であり、可算個の集合からなるから
第1可算である。


さらに、

距離空間であれば、可分な空間は、第2可算公理を満たします。

距離空間なら第1可算公理を満たすので、可算個からなる
基本近傍系 \mathcal{N}^\ast(x)=\{B(x,\frac{1}{n})|n\in {\mathbb N}\} をとっておきます。
また、AX の稠密可算集合とします。
このとき、\mathcal{B}=\{V|V\in \mathcal{N}^\ast(x),x\in A\} となる集合をとると、
\#\mathcal{B}\le \aleph_0\times \aleph_0\approx \aleph_0 であるので
\mathcal{B} は開集合からなる可算集合となります。

いま、U\in \mathcal{O} を任意の開集合とします。

このとき、近傍 B(x,\frac{1}{n}) が存在して、
x\in B(x,\frac{1}{n})\subset U^i\subset U となります。
ここで、A の稠密性により、a\in B(x,\frac{1}{2n})\cap A が存在して、d(x,a)<\frac{1}{2n} を満たします。
x\in B(a,\frac{1}{2n})\subset B(x,\frac{1}{n})\subset U
となります。

つまり、\mathcal{B} はこの位相空間の開基となります。

よって、
距離空間ならば、可分であることと第2可算であることは同値になります。

この同値性は、距離空間を第1可算公理を満たす空間に弱めると成り立ちません。
その反例がゾルゲンフライ直線です。


下限位相(ゾルゲンフライ直線)
とは、\{[a,b)|a,b\in {\mathbb R}\} を開基として定義される {\mathbb R} 上の
位相空間のことを言います。

このように、開基を1つ指定してやることで1つの位相空間を定めることができます。
比較のために書いておけば、\{(a,b)|a,b\in {\mathbb R}\} を開基として定めた
位相空間は、通常の {\mathbb R} 上の位相空間となります。

ゾルゲンフライ直線は、通常と開基の入れ方が違うので、{\mathbb R} とは
異なる位相空間となります。

※開基の入れ方が異なるから異なる位相空間となるとは限らないことは注意しておきます。
例えば、{\mathbb R} 上の通常の距離位相空間は、d_1(x,y)=|x-y| として
距離を定義して得られる \mathcal{B}_1=\{B_{d_1}(x,\epsilon)|\epsilon>0\} を開基とするのと、
d_2(x,y)=\frac{|x-y|}{1+|x-y|} を距離として、\mathcal{B}_2=\{B_{d_2}(x,\epsilon)|\epsilon>0\}
を開基とするのでは開基の集合は異なりますが、同じ位相を定めます。
例えば、\mathcal{B}_1 は全体集合 {\mathbb R} は含まれないが、\mathcal{B}_2 には
全体集合 {\mathbb R} が含まれている。

しかし、ゾルゲンフライ直線と通常の距離位相は異なります。

まず、ゾルゲンフライ直線は、第1可算空間です。
\mathcal{N}^\ast(x)=\{[x,x+\frac{1}{n})|n\in {\mathbb N}\}
は、可算個の基本近傍系となります。

また、{\mathbb Q} は可算個の稠密部分集合となります。
しかし、

第2可算公理を満足しません。
\mathcal{B} をゾルゲンフライ直線の開基とします。
a\in {\mathbb R}[a,b) とすると、a\in V_a\subset [a,b)
となる V\in \mathcal{B} が存在することになります。
\min{V_a}=a なので、\{V_a|a\in {\mathbb R}\}\subset \mathcal{B}
は非可算個の集合からなるから、\mathcal{B} は非可算開基
である。
よって、任意の開基は非可算集合からなるので、
ゾルゲンフライ直線は第2可算公理を満たしません。

ゾルゲンフライ直線は、第1可算公理を満足するが、
可分性と第2可算公理の同値性が成り立たちません。

特にゾルゲンフライ直線は距離空間ではないことになります。

以前、ゾルゲンフライ直線や平面についてまとめたことが
あったので、位相的性質をさらに詳しく知りたい場合はこちら
をご覧ください。