2017年10月2日月曜日

トポロジー入門演習(第1回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今日は、トポロジー入門演習の第一回の授業を行いました。
今年からグループワークを取り入れることにしました。

この授業での講義用語です。
説明・・・相手にわかってもらうようにわかりやすく話して、理解させること。
     例えば、例を出したり、して感覚的に分かってもらうようにする。
     正確にわかりやすく説明することができればなおよい。

証明・・・正確に内容を把握し、論理的に正確に説明をつけること。
     わかりやすい証明をすることができればなおよい。
     
つまり、説明は、相手が納得すればそれでOKですが、
証明は論理的に正確に説明をつけることで、相手はもとより、完全に
正しい説明をすることを意味します。



内容は、

  • 集合論の復習
  • イプシロンデルタ論法
  • 距離空間の基礎

です。
どれも、このトポロジー入門の授業を理解する上で欠かせない部分です。
むしろ、この3つを少しだけ難しくした内容がトポロジー入門ということになります。
距離空間だけは、新しいかもしれませんが、
ピタゴラスの定理など既知ですから、ユークリッド空間の一般化という点で、
すでに学んでいるところです。

集合論の基礎

数学のほとんどが集合を基礎に進んでいきますから、この内容が分かっていないと
先に進めません。

おさらいしておきます。
しかし、集合の表記方法は既知とします。

$x$ が集合 $A$ に含まれることを、 $x\in A$ と書きます。
他に、$x$ は $A$ のであるとか、要素であるとか言っても同じことです。


集合 $A$ が集合 $B$ に包まれることを、$A\subset B$ と書きます。
他に、$A$ は $B$ の部分集合であると言っても同じことです。

この含まれることと、包まれることを正確に区別してください。
このような些細なことでも混同していくと、その先につまづきが生じることがあります。
(もしつまづいても、その時にもう一度復習することが理解が進むこともあります。)

2つの集合 $A,B$ が等しい($A=B$)とは、
$A\subset B$ かつ $B\subset A$ が満たされることをいいます。


集合の演算
和集合と共通集合を下に定義します。$\lor$ は「または」、$\land$ は「かつ」とよみます。
$A\cup B=\{a|a\in A\lor B\}$
$A\cap B=\{a|a\in A\land B\}$

$A\subset X$ を部分集合として、$A^c=\{a\in X|a\not\in A\}$ とかき、
$A$ の $X$ での補集合といいます。

$A,X$ を集合としたときに、差集合を $X\setminus A=\{a\in X|a\not\in X\}$ として定義します。
要するに補集合と同じと思うかもしれませんが、この場合、$A$ は $X$ に
包まれている必要はありません。

2つの集合が対等であるということ
集合 $A$ と $B$ が対等であるとは、
$A$ と $B$ の間に全単射が存在することを言います。
このとき、$A$ から $B$ に全単射があっても、$B$ から $A$ に全単射があっても
同じことです。(なぜなら全単射が存在するということは、その逆写像が存在して
それも全単射だからです。)


イプシロンデルタ論法
これは関数の連続性をいうためのテクニックですが、この授業において
一般の距離空間さらに、位相空間の場合に一般化されます。

関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で連続であるとは、
任意の $\epsilon>0$ においてある $\delta>0$ が存在して、
$|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-f(a)|<\epsilon$
この論法をうまく説明できるかどうか?
そして、説明できた後、具体的な関数に対して適用できるか?
つまり、$\epsilon$ に対して、$\delta$ をどのように選べば良いかがわかれば
証明ができるはずです。


距離空間の基礎

距離空間というのは新しく出たかもしれませんが、基本は、ユークリッド空間 ${\mathbb R}^n$ に定義されたピタゴラス距離のことと思えばよいでしょう。2点 $x=(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ と $y=(y_1,y_2,\cdots, y_n)$ の間の距離を
$\sqrt{(x_1-y_1)^2+\cdots +(x_n-y_n)^2}$
と考えれば、この空間上に距離が定義されました。この値を $d(x,y)$ と書くことにします。
ここで、問題があります。

問題
一般の集合 $X$ があったときに、どのようにして、距離というものを
入れて話をすることができるでしょうか?

この問題に答えを与えているのが、距離空間なのです。
元とは違う集合にも、同じような”もの"を導入したい!という動機は
数学でよく使われる一般化という思考方法です。

ユークリッド空間内の距離を少し一般化しておけば、2点間の距離はいつでもピタゴラスの定理を満たすようなものでなくてもよいといことです。
(一般の空間では座標のようなものが存在しないかもしれませんので。)

一般の距離空間を考えるには、付随して距離関数 $d$ というものを考える必要があります。
それがどのような性質を満たさなければならないか?
$X$ をある集合とします。距離関数 $d:X\times X\to {\mathbb R}$ が満たすべき性質は以下です。
  • $d(x,y)\ge 0$ が成り立つ。さらに、 $d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y$ である。
  • $d(x,y)=d(y,x)$ が成り立つ。
  • $d(x,y)+d(y,z)\ge d(x,z)$ が成り立つ。
今回の課題には、距離空間における部分集合 $A\subset X$ に対して、
$d(x,A)=\inf\{a|a\in A\}$ として部分集合と $x$ の距離を定義します。
そのとき、
$|d(x,A)-d(y,A)|\le d(x,y)$ 
が成り立つことを証明してもらいました。
それを用いると、(特に、$X={\mathbb R}$ としておいてもよい。)
$f:=d(x,A)$ として定義した関数 $X\to {\mathbb R}$ が連続であることがイプシロンデルタ
論法を使って得られます。

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