2017年10月19日木曜日

トポロジー入門演習(第3回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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必要な配付プリントはHPで取ってください。


前回の復習からです。

課題2-1
対角線論法により、${\mathbb R}$と${\mathbb N}$が対等でないことがわかる。
同じようにして、${\mathbb N}$と$\mathcal{P}({\mathbb N})$は濃度が異なることを示せ。

まず、${\mathbb N}$と$\mathcal{P}({\mathbb N})$ の間に全単射が存在するということは、

$\mathcal{P}({\mathbb N})\to {\mathbb N}$
なる、ちょうど自然数と一対一な名前付け(ラベルづけ)ができるということを意味します。

多くのグループが両者が対等でないことを下のように導いていました。

対角線論法っぽくやるなら、

$A_1,A_2,\cdots $ を自然数の部分集合とし、この並びで
${\mathbb N}$ の部分集合を重複なく、もれなく並べられているとします。

このとき、新しい集合 $B$ を以下のように作る。
各自然数 $i$ に対して、
$i\not\in A_i$ であるなら、$i$ を $B$ の要素とする。
$i\in A_i$  であるなら、$i$ を $B$ の要素にしない。

このようにすると、自然数の部分集合 $B$ がつくられます。
つまり、$B\in \mathcal{P}({\mathbb N})$ です。
よって、$B$ のある $i$ があって、$A_i=B$ となるはずです。

このとき、以下のいずれかがただ一つだけ成り立つ。

  • $i\in B$ であり、$i\not\in A_i$
  • $i\not\in B$ であり、$i\in A_i$

これは $B$ の定義からわかります。
つまり、$B\not\subset A_i$ もしくは $A_i\not\subset B$ が成り立つことを言っています。
よって、どの $i$ に対しても、$B\neq A_i$ が成り立つことがわかります。

これは全て並べられたことに矛盾します。
この作り方だとすると、どの$A_i$ にも包まれないか、$A_i$ も包まないかものが
作れています。特に $B$ は空集合でも全体集合でもありません。

定理2-1を誤解している人がいるようなので、もう一度書いておきます。
選択公理を仮定します。
定理2-1
任意の2つの集合 $A,B$ は、対等でないなら、単射 $A\to B$ もしくは、単射 $B\to A$ が
存在する。また、そのうちただ一つが成り立つ。

要するに、集合を任意の2つもってきたら、濃度 $|\cdot |$ に対して、
$|A|<|B|$
$|A|=|B|$
$|A|>|B|$
のいずれかがなりたつということです。

課題2-2, 2-3
は比較的よくできていました。
授業中も言いましたが、位相を構築せよ。書かれていたら、少なくとも位相である事は
確かめてください。

問題は、課題2-4でした。
課題2-4
以下の問題に答えよ。ただし、
開区間とは、$(a,b)=\{x|a<x<b\}$ となる形の実数上の部分集合で、閉区間とは、$[a,b]=\{x|a\le x\le b\}$ の形の ${\mathbb R}$ 上の部分集合とする。

(1) $X={\mathbb R}^2$ とする。$\forall x\in X$ に対して、 $B_d(x,\epsilon)$ が
開集合であることを証明せよ。
(2) $X={\mathbb R}^2$ とし、
$$d((x_1,x_2),(y_1,y_2))=\sqrt{(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2}$$
$$d_M((x_1,x_2),(y_1,y_2))=|x_1-y_1|+|x_2-y_2|$$
によって得られる位相空間 $(X,\mathcal{O}_d)$ と $(X,\mathcal{O}_{d_M})$ は同値であることを示せ。
(3) 実数直線の部分集合の話として以下の問題を解き、一般に $\mathcal{O}$ の元を開集合と呼ぶ理由を考えよ。(位相の条件の2つ目と3つ目。)

  1. 1点を共有する無限個の開区間の和集合は再び開区間であることを示せ。
  2.  1点を共有する無限個の閉区間の共通集合は閉区間もしくは1点であることを示せ。
  3.  無限個の開区間の共通集合が閉区間となる場合があることを示せ。
  4.  無限個の閉区間の和集合が開区間となる場合があることを示せ。

(1)はできていても、(2)がよく分かっていないものもありました。

(2)の証明の方針としては、 $\mathcal{O}_d\subset \mathcal{O}_{d_M}$ かつ、
 $\mathcal{O}_d\supset \mathcal{O}_{d_M}$ が成り立つことを
示せばよく、

それぞれは、さらに、
$U\in \mathcal{O}_d$ ならば、$U\in \mathcal{O}_{d_M}$ であり、
$V\in \mathcal{O}_{d_M}$ ならば、$V\in \mathcal{O}_{d}$ であることを
示せばよいことになります。

この証明は、
$U\in \mathcal{O}_d$ であることはどういうことか、
$V\in \mathcal{O}_{d_m}$ であることはどういうことかを思い出してもらえばよいです。

例えば、$U\in \mathcal{O}_d$ に対して、各点 $x\in U$ に対して、$d$ の意味で
$\epsilon$-球を含むようにできますが、同時に、$d_M$ の意味で
各点 $x\in U$ に対してなんらかの $\epsilon'$-球を含むようにできている
ことを言うことになります。

きちんと書いてあるグループを丸にしました。

(3) はもう少し問題の意図が読みきれていないところがありました。
まず、区間ではなく、開集合を扱っているグループがあります。

${\mathbb R}$ を開区間もしくは閉区間というのか?についても
よく指定がされていないのも問題だったかもしれません。

できていなかったグループはもう一度課題をだしてもらいます。

今回は、以下の話のプリント配りました。
  • 位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の部分集合の内部、閉包、境界、外部
課題の方は、
  • 閉集合を用いた位相の定義
  • 1点集合の性質
  • 有限集合上の位相
  • 無限集合上の位相
  • 平面上の単位円盤の内部、閉包、境界、外部
について行いました。上の4つの用語の定義だけしておきます。

内部・・・$A$ の内部とは、$A$ に包まれる最大の開集合のこと
閉包・・・$A$ の閉包とは、$A$ を包む最小の閉集合のこと
境界・・・$A$ の境界とは、$A$ の閉包から $A$ の内部を除いた集合のこと
外部・・・$A$ の外部とは、$A$ の補空間の内部のこと


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