2017年10月12日木曜日

トポロジー入門演習(第2回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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必要な配布プリントはHPで取ってください。

今回配布したプリントは

  • べき集合とその濃度
  • 位相の定義
  • 距離空間からくる位相
についてやりました。

べき集合と濃度

集合論については、先週のベルンシュタインの定理から続いていますが、
もう少し集合論を学んでいきましょう。

濃度
集合全体に、全単射 $A\to B$ が存在する(対等な集合)という同値関係をいれてできた
同値類を濃度といいます。集合 $A$ の濃度を $|A|$ と表すことにします。
同値類全体は集合にはならないので、この場合商集合という言葉は適切では
ありません。

べき集合
$X$ を集合とし、$X$ の部分集合全体の集合を $\mathcal{P}(X)$ と言います。
$\mathcal{P}(X)$ には必ず空集合と $X$ 自身が入っています。

授業の最後に述べましたが、空集合はどんな集合の部分集合になっていることに
気をつけてください。


自然数全体 ${\mathbb N}$ の部分集合全体 $\mathcal{P}({\mathbb N})$ の濃度を調べると、
$$\{0,1,2,3,\cdots \}\cup {\mathbb N}$$
が得られます。
$0$ は空集合からなる同値類、$n$ は $n$ 個の元からなる同値類、
${\mathbb N}$ は ${\mathbb N}$ 全体からなる同値類ということになります。


対角線論法
対角線論法とは、実数全体と自然数が対等ではない、
つまり $|{\mathbb N}|\neq |{\mathbb R}|$ であることを示す方法です。
実数は、開区間 $(0,1)$ と対等です。
というのも、実数が 自然数と対等であるとすると、

$a_1,a_2,\cdots$ のように実数を一列に並べられることになります。
$a_1=0.a_1^1a_1^2.....$
$a_2=0.a_2^1a_2^2.....$
$a_3=0.a_3^1a_3^2.....$
$\vdots$
このとき、$b=0.b^1b^2\cdots$ なる小数展開を $b^i\neq a^i_i$ かつ $b^i\neq 0,9$ であると
します。このとき、 $b$ は $a_i$ のどれとも違う(小数第 $i$ 位が異なるので。)
この数は上のどれにも並べられていないことになります。
(実際、小数展開は小数展開だけでは決まりませんが、それは、$0.3999....=0.400...$ など、
$0$ や $9$ が無限個続くような場合に相当します。しかし、$b^i$ の条件からそれらの数に
なっていないことは明らかです。)

さて、問題は、${\mathbb N}$ とべき集合 $\mathcal{P}({\mathbb N})$ の濃度がことなること
を対角線論法を応用してできますか?というものでした。

$\mathcal{P}({\mathbb N})$ の元を $a_1,a_2,...$ のように並べてみて工夫して
$b$ を作ってみてください。


位相の定義と距離位相

位相空間とは、集合 $X$ と、$X$ のべき集合の部分集合 $\mathcal{O}$ で以下を満たすものでした。

  • $\emptyset ,X\in \mathcal{O}$ である。
  • $U_i\in \mathcal{O}$ $(i=1,...,n)$ なら $\cap_{i=1}^nU_i\in \mathcal{O}$ である。
  • $U_\lambda(\lambda\in \Lambda)$ を任意の $\mathcal{O}$ の集まりとすると、$\cup_{\lambda\in\Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O}$ である。
この条件を満たす $(X,\mathcal{O})$ を位相空間という。

例として、距離空間 $(X,d)$ からくる距離位相 $(X,\mathcal{O}_d)$ があります。
距離位相の $\mathcal{O}_d\ni O$ は、
$\forall x\in O$ に対して $\epsilon>0$ が存在して、$B_d(x,\epsilon)\subset O$
を満たすものとして定義されます。つまり、どの点にもその周りのなんらかの
$\epsilon$ 近傍 $B_d(x,\epsilon)$ も含んでいるということです。

つまり、イメージでは、端っこの点を含んでいないようなものを開集合というのです。
確かに、閉区間 $[0,1]$ は端っこの点を含んでいるので、これは開集合とはならないのです。
(この端っこの点というのを次回ちゃんと定義します。一般の位相空間の場合にも
定義されます。)
確かに、$0\in [0,1]$ には、$[0,1]$ の中に含まれるように $\epsilon$ 近傍入れることは
できません。(通常のユークリッド距離を入れた時の話です。もちろん離散位相が入っていたら違います。)

なので、${\mathbb R}$ 上の距離位相からくる位相 $\mathcal{O}$ の中には
閉区間 $[0,1]$ は入ってないことになります。

今回は、有限個の元からなる集合上の位相と、
距離空間からくる位相空間について紹介をしました。

距離空間から距離位相という位相空間を定義しました。
しかし、違う距離空間なのに、同じ距離位相というものになってしまうものがあります。
つまり、距離空間から距離位相を作るのは単射ではないということです。

また、位相空間は距離空間を一般化した概念です。
実際、距離空間からこないような位相空間もあります。

この位相空間というのはなんのために考えるのでしょうか?
それは、空間の連続性というものを念頭に考えています。

違う距離空間なのに、同じ位相空間を与えるということは、
その2つの空間のある”連続性"が一致するということを意味します。

空間をどのように理解したら良いのか?
ここでは、おおまかな空間の”連続性”のみを空間の理解の尺度とする
というということを言っています。
つまり、空間の繋がり具合が同じなら同じ空間ということです。

次回以降、この概念について厳密に定義をしていきます。


配付プリントの訂正
課題の4つ目の下から2行目が間違っていたので訂正してあります。

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