2017年1月26日木曜日

微積分II演習(化学類)(第10回)

[場所1E102(水曜日4限)]

配付プリント
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今回は、ガンマ関数とベータ関数についてやりました.
また、その周辺の積分の値、$\int_0^\infty e^{-x^2}x^sdx$ について
ガンマ関数で計算をしました.

まず、ガンマ関数は、
$$\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-t}t^{s-1}dt$$
$s>0$ で定義されますので、広義積分として定義され、ベータ関数は、
$$B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$
として定義します.$p,q>0$ ですので、これも一般には広義積分です.

ガンマ関数
ガンマ関数( $\Gamma$ 関数)の性質として、

  • $\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$ ($s>0$)
  • $\Gamma(1)=1$ 
  • $\Gamma(1/2)=\sqrt{\pi}$
などがあります.これらは、3つ目を除いて簡単に計算できます.
3つ目は、今回の計算の目的の一つでもあります.

最初のものは、部分積分をすることで、

$$\Gamma(s+1)=\int_0^\infty e^{-t}t^{s}dt=[-e^{-t}t^s]_0^\infty -\int_0^\infty (-se^{-t}t^{s-1})dt$$
$$=s\int_0^\infty e^{-t}t^{s-1}dx=s\Gamma(s)$$

となります.

上の式を補足しておきます.$t>1$ であれば、$s<n$ なる整数 $n$ を取っておけば、$t^s<t^n$ なので、ロピタルの定理を用いれば、
$0\le \lim_{t\to \infty }\frac{t^s}{e^{t}}\le \lim_{t\to \infty}\frac{t^n}{e^t}=\lim_{t\to \infty }\frac{n!}{e^t}=0$ となり、$\lim_{t\to \infty}e^{-t}t^s=0$ が成り立ちます.
なので、$[-e^{-t}t^s]_0^\infty =0$ が成り立ちます.

この式 $\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$と上の2番目の式 $\Gamma(1)=1$ とから、$n$ を整数とすれば、$\Gamma(n+1)=n!$ が成り立ちます.

他に、$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{s}dx$ もガンマ関数で表すことができます.
これは、$x^2=t$ と置換してやると、$dt=2xdx$ となり、$x^{s}dx=\frac{1}{2}x^{s-1}dt=\frac{1}{2}t^{\frac{s-1}{2}}dt$ となるので、
$\frac{1}{2}\int_0^\infty e^{-t}t^{\frac{s-1}{2}}dt=\frac{1}{2}\Gamma(\frac{s+1}{2})$ となります.
ゆえに、
$$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{s}dx=\frac{1}{2}\Gamma(\frac{s+1}{2})$$
が成り立ちます.

$n$ が奇数 $(n=2k-1)$ 偶数 $(n=2k)$ と、 と分けて考えれば、
$$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{2k-1}dx=\frac{1}{2}\Gamma(k)=\frac{(k-1)!}2$$
$$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{2k}dx=\frac{1}{2}\Gamma\left(\frac{2k+1}{2}\right)$$
$$=\frac{1}{2}\left(\frac{2k-1}{2}\right)\left(\frac{2k-3}{2}\right)\cdots \left(\frac{1}{2}\right)\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\frac{(2k-1)!!}{2^{k+1}}\sqrt{\pi}$$
とより具体的に表すことができます.

ここで、
$\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}$ を仮定しました.
このあとですぐこの値も計算します.

$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ の値

この値は、重積分を使って証明することができます.
まず、$\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2-y^2}dxdy$ が広義積分が収束することを
既知とします.これは、例題10-2で示しています.

広義重積分を使うと、まず、
$\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2-y^2}dxdy=\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2}e^{-y^2}dxdy=\int_{{\mathbb R}}e^{-x^2}dx\int_{\mathbb R}e^{-y^2}dy=\left(\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx\right)^2$ 
となります.

次に、極座標表示を用いた計算をします.極座標変換のヤコビアンが $r$ であることを使うと
$$\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2-y^2}dxdy=\int_0^\infty \int_0^{2\pi}e^{-r^2}rdrd\theta$$
$$=2\pi\int_0^\infty e^{-r^2}rdr=2\pi\Gamma(1)=\pi$$
となり、ゆえに 
$$\left(\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx\right)^2=\pi$$
なので、
$$\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx=\sqrt{\pi}$$
が成り立ちます.積分範囲を半分にすれば、被積分関数が偶関数であることから、
$$\int_{0}^\infty e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt{\pi}}{2}$$
も成り立ちます.よって、この式から、$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{s}dx$ の $s=0$ を入れることから、
$$\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}$$
と計算できます.

ベータ関数
ベータ関数 ( $B$関数) は最初に書いたように定義されますが、基本的な公式として
  • $B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$
  • $B(p,q)=B(q,p)$
  • $2\int_0^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2p-1}\theta\sin^{2q-1}\theta d\theta$
があります.最初の等式は、ベータ関数の収束を込みで、今回の宿題です.
2つ目は、最初の等式を認めれば、容易にわかります.最後の等式は、今回の宿題でもありました.ここでやっておきます.

$t=\cos^2\theta$ とすると、$dt=2\cos\theta(-\sin\theta )d\theta$ となります.
$$\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt=\int_{\frac{\pi}{2}}^0\cos^{2p-2}\theta\sin^{2q-2}\theta(-2\cos\theta\sin\theta)d\theta$$
$$=2\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2p-1}\theta\sin^{2q-1}\theta d\theta$$
となります.

これを用いると、
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^3\theta \cos^4\theta d\theta=\frac{1}{2}B(\frac{5}{2},2)=\frac{1}{2}\frac{\Gamma(\frac{5}{2})\Gamma(2)}{\Gamma(\frac{9}{2})}$$

$$=\frac{1}{2}\frac{ \frac{3}{2}\frac{1}{2}\sqrt{\pi}\cdot 1}{\frac{7}{2}\frac{5}{2}\frac{3}{2}\frac{1}{2}\sqrt{\pi}}=\frac{2}{35}$$

と計算できます.

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