[場所1E102(水曜日4限)]
配付プリント
HPに行く
今回は、$n$ 次元球の体積を求める方法をやりました.
$n$ 次元球とは、
$$B^n(r)=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\mathbb R}^n|x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2\le r^2\}$$
であり、その表面は $n-1$ 次元球面といい、
$$S^{n-1}(r)=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\mathbb R}^n|x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2= r^2\}$$
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今回は、$n$ 次元球の体積を求める方法をやりました.
$n$ 次元球とは、
$$B^n(r)=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\mathbb R}^n|x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2\le r^2\}$$
であり、その表面は $n-1$ 次元球面といい、
$$S^{n-1}(r)=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\mathbb R}^n|x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2= r^2\}$$
となります.
この $B^n(r)$ の体積を求めることが今回での課題でした.
$n$ 次元の極座標表示
${\mathbb R}^n$ の極座標表示を以下のようにして行います.
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3\\\cdots\\x_{n-1}=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cdots\sin\theta_{n-2}\cos\theta_{n-1}\\x_n=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cdots\sin\theta_{n-2}\sin\theta_{n-1}\\0\le \theta_i\le \pi\ \ \ (1\le i\le n-2)\\0\le \theta_{n-1}\le 2\pi\end{cases}$$
が成り立ちます.$n$ 次元の極座標表示がどうしてこのような $\sin, \cos$ の羅列になったのか疑問に思う人もいると思います.それについては授業中に説明した通りで、ここでは再び同じ説明は行いません.ざっと説明しておきます.
$n=2,3...$ として順番に考えます.ここでは、ある${\mathbb R}^n$ の点 ${\bf x}$ を、原点からの距離が $r$ のものをとります.まず、2次元の極座標表示は、
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\\0\le \theta_1\le 2\pi\end{cases}$$
ですが、この点 $(x_1,x_2)$ は、 ${\mathbb R}^2$ の中で、半径が $r$ の2次元の円盤の境界にいます.この円盤を $x_2\ge 0$ だけをとって(半分にして)、${\mathbb R}^3$ の中で、$x_1$ 軸周りで回転体を作ります.
そうしてできるものは、${\mathbb R}^3$ の $B^3(r)$です.新しい$x_2$ 軸、 $x_3$ 軸は、回転軸 $x_1$と直交する成分 $r\sin\theta_1$ を半径として、新しい$\theta_2$ の角度で、$x_2$ 軸、$x_3$ 軸に射影させることで、
$x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2$, $x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2$ となります.
よって、3次元の極座標表示は、
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\\0\le \theta_1\le \pi\\0\le\theta_2\le 2\pi\end{cases}$$
となります.
この $\theta_1,\theta_2$ の範囲の違いは、先ほど $\theta_1$ は半分にしたので、$0\le \theta_1\le \pi$となり、3次元球体が回転体であることから、$\theta_2$ は一周分の $0\le \theta_2\le 2\pi$ が取れることで生じたものです.
同じように、$n=4$ の場合の $B^4(r)$ は、上の3次元の球体を半分にして、それを $(x_1,x_2)$ 平面を軸に回転させます.
半分にしたものは、
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\\0\le \theta_1,\theta_2\le \pi\end{cases}$$
です.
原点から $r$ の距離の点を$(x_1,x_2)$ 平面に
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\end{cases}$$
として射影させれば、$x_3$には、
$x_3=r\sin\theta_1\sin theta_2$ となり、この点を、$(x_3,x_4)$ の点 $(r\sin\theta_1\sin\theta_2,0)$ として$2\pi$ だけ $(x_3,x_4)$ 平面上に回転させれば、
$$(x_3,x_4)=(r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3,r\sin\theta_1\sin \theta_2\sin\theta_3)$$
となります.ただし、$0\le \theta_3\le 2\pi$ となります.
この間、$x_1,x_2$ は軸なので、座標を変えませんので、結局、${\mathbb R}^4$ 上の
任意の点は、
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3\\x_4=r\sin\theta_1\sin\theta_2\sin\theta_3\\0\le \theta_1,\theta_2\le \pi\\0\le\theta_3\le 2\pi\end{cases}$$
のように表されることになります.
このように、半分にして回すという手順は、${\mathbb R}^n$ の極座標表示から ${\mathbb R}^{n+1}$ の極座標表示を作る場合、${\mathbb R}^n$ の最後の変数 $x_n$ の式を2つコピーして、その後ろに、新しい変数 $\theta_n$ を用意し、$\cos\theta_n$ と$\sin\theta_n$ をそれぞれ掛けたものを、${\mathbb R}^{n+1}$ の新しい変数 $x_{n}$ と $x_{n+1}$ にするとすることになります.
このように、半分にして回すことを繰り返すことで、
上の最初の式が得られます.
また、この極座標表示のヤコビアンは、
$$\frac{\partial (x_1,\cdots,x_n)}{\partial (r,\theta_1,\cdots,\theta_{n-1})}=r^{n-1}\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}$$
となります.$\theta_{n-1}$ には依存しないことに注意します.
今回、この式の証明は行いませんでした.
また、プリントには、$\prod$ を用いた式を書いていて、$\prod$ の意味は、授業中説明しませんでした.この $\prod$ の使い方は、$\sum$ の積のバージョンだと思ってください.
つまり、$\prod_{k=1}^nk=n!$ のことを意味します.なので、上の式は、
$$r^{n-1}\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}=r^{n-1}\prod_{i=1}^{n-2}(\sin\theta_{i})^{n-1-i}$$
と書けることになります.プリントでは、$i=n-1$ まで掛けていますが$\sin^0\theta_{n-1}$ は $1$ なので、あってもなくても同じ式です.
$n$次元球体の体積
今回の問題で、4次元球体の体積を求めよという問題がありましたが、
ここでは、$n$ 次元の場合としてやっておきます.
$\int\cdots\int$ はまとめて、$\int$ と書いてしまうことにします.
$$\int_{B^{n}(r_0)}dx_1\cdots dx_n$$
が $B^n(r_0)$ の体積 $|B^n(r_0)|$ となります.
ここで、半径が $r_0$ の $n$ 次元体積は、上のヤコビアンを用いて、
$$|B^n(r_0)|=\int r^{n-1}\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}drd\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
となります.ここで、全ての変数が分離された形の関数をしているので、この式は、
$$=\int_0^{r_0} r^{n-1}dr\int\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}d\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
$$=\frac{r_0^n}{n}\int\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}d\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
$$=r^n_0\frac{1}{n}\int_0^\pi\sin^{n-2}\theta_1d\theta_1\int_0^\pi\sin^{n-3}\theta_2d\theta_2\cdots\int_0^\pi\sin\theta_{n-2}d\theta_{n-2}\int_0^{2\pi}d\theta_{n-1}$$
となります.ここで、授業中やった、$\sin^n\theta$ の積分の値を使うと、
$\int_0^{\pi}\sin^n\theta d\theta=2\int_0^{\pi/2}\sin^n\theta d\theta=\frac{\Gamma(\frac{1+n}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}$ を使って、
$$|B^n(r_0)|=r_0^n\frac{1}{n}\frac{\Gamma(\frac{n-1}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n}{2})}\cdot\frac{\Gamma(\frac{n-2}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}\cdot \frac{\Gamma(\frac{n-2}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n-2}{2})}\cdots\frac{\Gamma(\frac{2}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{1}{2})}2\pi$$
$$=2\pi r^n_0\frac{1}{n}\frac{\pi^{\frac{n-2}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2})}=\frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}r^n_0$$
となります.
また、$\frac{d}{dr}|B^n(r)|=|S^{n-1}(r)|$ なので、
$$|S^{n-1}(r)|=\frac{2\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2})}r^{n-1}$$
となります.
$|S^{n-1}(r)|$ を積分の形で書けば、上の式のうちの
$$|S^{n-1}(1)|=\int\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}d\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
の部分になります.ここで、積分範囲は、$1\le i\le n-2$ の場合、$0\le \theta_i\le \pi $ であり、$\theta_{n-1}$ の場合、$0\le \theta_{n-1}\le 2\pi$ となります.
宿題の方の $|B^n(r)|$ の計算は、ヤコビアンを定義から計算し、上のような $1$ を積分する方法を使って、$n=4$ の場合、もしくは、$n=5$ の場合に求めてください.
別の方法
また、ヤコビアンを用いないで求めるなら、前回の、$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ の
また、ヤコビアンを用いないで求めるなら、前回の、$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ の
値を求めるような次のような方法で行うこともできます.
極座標を用いて、
$$\int_{{\mathbb R}^n}e^{-(x_1^2+\cdots x_n^2)}dx_1\cdots dx_n=\left(\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx\right)^n=\pi^{\frac{n}{2}}$$
であり、一方、$|S_0^{n-1}(r_0)|=|S_0^{n-1}(1)|r^{n-1}_0$ であるから、
$$\int_{{\mathbb R}^n}e^{-(x_1^2+\cdots x_n^2)}dx_1\cdots dx_n=\int_{0}^\infty e^{-r^2}|S^{n-1}(r)|dr\ \ \ \ \ (\ast)$$
$$=\int_{0}^\infty e^{-r^2}r^{n-1}|S^{n-1}(1)|dr$$
$$=|S^{n-1}(1)|\int_0^\infty e^{-r^2}r^{n-1}dr=|S^{n-1}(1)|\frac{1}{2}\Gamma(\frac{n}{2})$$
$|B^n(r)|=|B^n(1)|r^n$ より、$|S^{n-1}(r)|=n|B^n(1)|r^{n-1}$ が成り立ち、
$|B^n(1)|=\frac{1}{n}|S^{n-1}(1)|=\frac{2}{n}\frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2})}$
となるので、
$|B^n(r)|=|B^n(1)|r^n=\frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}r^n$
となります.$(\ast)$ の部分の変形は、被積分関数が、$r$ にしかよらないことから、
極座標表示が、半径が $r$ の球面を使って、
$$\int_{B^n(r)}e^{-r^2}dx_1dx_2\cdots dx_n=\int_{B^n(r)}e^{-r^2}|S^{n-1}(r)|dr$$
が成り立つことからわかります.