2017年1月26日木曜日

微積分II演習(化学類)(第11回)

[場所1E102(水曜日4限)]

配付プリント
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今回は、$n$ 次元球の体積を求める方法をやりました.

$n$ 次元球とは、
$$B^n(r)=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\mathbb R}^n|x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2\le r^2\}$$

であり、その表面は $n-1$ 次元球面といい、
$$S^{n-1}(r)=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\mathbb R}^n|x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2= r^2\}$$

となります.
この $B^n(r)$ の体積を求めることが今回での課題でした.

$n$ 次元の極座標表示
${\mathbb R}^n$ の極座標表示を以下のようにして行います.

$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3\\\cdots\\x_{n-1}=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cdots\sin\theta_{n-2}\cos\theta_{n-1}\\x_n=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cdots\sin\theta_{n-2}\sin\theta_{n-1}\\0\le \theta_i\le \pi\ \ \ (1\le i\le n-2)\\0\le \theta_{n-1}\le 2\pi\end{cases}$$

が成り立ちます.$n$ 次元の極座標表示がどうしてこのような $\sin, \cos$ の羅列になったのか疑問に思う人もいると思います.それについては授業中に説明した通りで、ここでは再び同じ説明は行いません.ざっと説明しておきます.

$n=2,3...$ として順番に考えます.ここでは、ある${\mathbb R}^n$ の点 ${\bf x}$ を、原点からの距離が $r$ のものをとります.まず、2次元の極座標表示は、

$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\\0\le \theta_1\le 2\pi\end{cases}$$

ですが、この点 $(x_1,x_2)$ は、 ${\mathbb R}^2$ の中で、半径が $r$ の2次元の円盤の境界にいます.この円盤を $x_2\ge 0$ だけをとって(半分にして)、${\mathbb R}^3$ の中で、$x_1$ 軸周りで回転体を作ります.
そうしてできるものは、${\mathbb R}^3$ の $B^3(r)$です.新しい$x_2$ 軸、 $x_3$ 軸は、回転軸 $x_1$と直交する成分 $r\sin\theta_1$ を半径として、新しい$\theta_2$ の角度で、$x_2$ 軸、$x_3$ 軸に射影させることで、
$x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2$, $x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2$ となります.
よって、3次元の極座標表示は、
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\\0\le \theta_1\le \pi\\0\le\theta_2\le 2\pi\end{cases}$$
となります.
この $\theta_1,\theta_2$ の範囲の違いは、先ほど $\theta_1$ は半分にしたので、$0\le \theta_1\le \pi$となり、3次元球体が回転体であることから、$\theta_2$ は一周分の $0\le \theta_2\le 2\pi$ が取れることで生じたものです.

同じように、$n=4$ の場合の $B^4(r)$ は、上の3次元の球体を半分にして、それを $(x_1,x_2)$ 平面を軸に回転させます.
半分にしたものは、
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\\0\le \theta_1,\theta_2\le \pi\end{cases}$$ 
です.
原点から $r$ の距離の点を$(x_1,x_2)$ 平面に
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\end{cases}$$
として射影させれば、$x_3$には、
$x_3=r\sin\theta_1\sin theta_2$ となり、この点を、$(x_3,x_4)$ の点 $(r\sin\theta_1\sin\theta_2,0)$ として$2\pi$ だけ $(x_3,x_4)$ 平面上に回転させれば、
$$(x_3,x_4)=(r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3,r\sin\theta_1\sin \theta_2\sin\theta_3)$$
となります.ただし、$0\le \theta_3\le 2\pi$ となります.
この間、$x_1,x_2$ は軸なので、座標を変えませんので、結局、${\mathbb R}^4$ 上の
任意の点は、
$$\begin{cases}x_1=r\cos\theta_1\\x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2\\x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3\\x_4=r\sin\theta_1\sin\theta_2\sin\theta_3\\0\le \theta_1,\theta_2\le \pi\\0\le\theta_3\le 2\pi\end{cases}$$
のように表されることになります.

このように、半分にして回すという手順は、${\mathbb R}^n$ の極座標表示から ${\mathbb R}^{n+1}$ の極座標表示を作る場合、${\mathbb R}^n$ の最後の変数 $x_n$ の式を2つコピーして、その後ろに、新しい変数 $\theta_n$ を用意し、$\cos\theta_n$ と$\sin\theta_n$ をそれぞれ掛けたものを、${\mathbb R}^{n+1}$ の新しい変数 $x_{n}$ と $x_{n+1}$ にするとすることになります.

このように、半分にして回すことを繰り返すことで、
上の最初の式が得られます.
また、この極座標表示のヤコビアンは、
$$\frac{\partial (x_1,\cdots,x_n)}{\partial (r,\theta_1,\cdots,\theta_{n-1})}=r^{n-1}\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}$$
となります.$\theta_{n-1}$ には依存しないことに注意します.

今回、この式の証明は行いませんでした.
また、プリントには、$\prod$ を用いた式を書いていて、$\prod$ の意味は、授業中説明しませんでした.この $\prod$ の使い方は、$\sum$ の積のバージョンだと思ってください.
つまり、$\prod_{k=1}^nk=n!$ のことを意味します.なので、上の式は、
$$r^{n-1}\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}=r^{n-1}\prod_{i=1}^{n-2}(\sin\theta_{i})^{n-1-i}$$
と書けることになります.プリントでは、$i=n-1$ まで掛けていますが$\sin^0\theta_{n-1}$ は $1$ なので、あってもなくても同じ式です.

$n$次元球体の体積
今回の問題で、4次元球体の体積を求めよという問題がありましたが、
ここでは、$n$ 次元の場合としてやっておきます.

$\int\cdots\int$ はまとめて、$\int$ と書いてしまうことにします.
$$\int_{B^{n}(r_0)}dx_1\cdots dx_n$$
が $B^n(r_0)$ の体積 $|B^n(r_0)|$ となります.
ここで、半径が $r_0$ の $n$ 次元体積は、上のヤコビアンを用いて、
$$|B^n(r_0)|=\int r^{n-1}\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}drd\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
となります.ここで、全ての変数が分離された形の関数をしているので、この式は、
$$=\int_0^{r_0} r^{n-1}dr\int\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}d\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
$$=\frac{r_0^n}{n}\int\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}d\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
$$=r^n_0\frac{1}{n}\int_0^\pi\sin^{n-2}\theta_1d\theta_1\int_0^\pi\sin^{n-3}\theta_2d\theta_2\cdots\int_0^\pi\sin\theta_{n-2}d\theta_{n-2}\int_0^{2\pi}d\theta_{n-1}$$

となります.ここで、授業中やった、$\sin^n\theta$ の積分の値を使うと、
$\int_0^{\pi}\sin^n\theta d\theta=2\int_0^{\pi/2}\sin^n\theta d\theta=\frac{\Gamma(\frac{1+n}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}$ を使って、
$$|B^n(r_0)|=r_0^n\frac{1}{n}\frac{\Gamma(\frac{n-1}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n}{2})}\cdot\frac{\Gamma(\frac{n-2}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}\cdot \frac{\Gamma(\frac{n-2}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{n-2}{2})}\cdots\frac{\Gamma(\frac{2}{2})\sqrt{\pi}}{\Gamma(\frac{1}{2})}2\pi$$
$$=2\pi r^n_0\frac{1}{n}\frac{\pi^{\frac{n-2}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2})}=\frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}r^n_0$$
となります.

また、$\frac{d}{dr}|B^n(r)|=|S^{n-1}(r)|$ なので、
$$|S^{n-1}(r)|=\frac{2\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2})}r^{n-1}$$
となります.

$|S^{n-1}(r)|$ を積分の形で書けば、上の式のうちの
$$|S^{n-1}(1)|=\int\sin^{n-2}\theta_1\sin^{n-3}\theta_2\cdots \sin^2\theta_{n-3}\sin\theta_{n-2}d\theta_1\cdots d\theta_{n-1}$$
の部分になります.ここで、積分範囲は、$1\le i\le n-2$ の場合、$0\le \theta_i\le \pi $ であり、$\theta_{n-1}$ の場合、$0\le \theta_{n-1}\le 2\pi$ となります.

宿題の方の $|B^n(r)|$ の計算は、ヤコビアンを定義から計算し、上のような $1$ を積分する方法を使って、$n=4$ の場合、もしくは、$n=5$ の場合に求めてください.


別の方法
また、ヤコビアンを用いないで求めるなら、前回の、$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ の
値を求めるような次のような方法で行うこともできます.
極座標を用いて、
$$\int_{{\mathbb R}^n}e^{-(x_1^2+\cdots x_n^2)}dx_1\cdots dx_n=\left(\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx\right)^n=\pi^{\frac{n}{2}}$$
であり、一方、$|S_0^{n-1}(r_0)|=|S_0^{n-1}(1)|r^{n-1}_0$ であるから、
$$\int_{{\mathbb R}^n}e^{-(x_1^2+\cdots x_n^2)}dx_1\cdots dx_n=\int_{0}^\infty e^{-r^2}|S^{n-1}(r)|dr\ \ \ \ \ (\ast)$$
$$=\int_{0}^\infty e^{-r^2}r^{n-1}|S^{n-1}(1)|dr$$

$$=|S^{n-1}(1)|\int_0^\infty e^{-r^2}r^{n-1}dr=|S^{n-1}(1)|\frac{1}{2}\Gamma(\frac{n}{2})$$
$|B^n(r)|=|B^n(1)|r^n$ より、$|S^{n-1}(r)|=n|B^n(1)|r^{n-1}$ が成り立ち、
$|B^n(1)|=\frac{1}{n}|S^{n-1}(1)|=\frac{2}{n}\frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2})}$
となるので、
$|B^n(r)|=|B^n(1)|r^n=\frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}r^n$

となります.$(\ast)$ の部分の変形は、被積分関数が、$r$ にしかよらないことから、
極座標表示が、半径が $r$ の球面を使って、
$$\int_{B^n(r)}e^{-r^2}dx_1dx_2\cdots dx_n=\int_{B^n(r)}e^{-r^2}|S^{n-1}(r)|dr$$

が成り立つことからわかります.



微積分II演習(化学類)(第10回)

[場所1E102(水曜日4限)]

配付プリント
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今回は、ガンマ関数とベータ関数についてやりました.
また、その周辺の積分の値、$\int_0^\infty e^{-x^2}x^sdx$ について
ガンマ関数で計算をしました.

まず、ガンマ関数は、
$$\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-t}t^{s-1}dt$$
$s>0$ で定義されますので、広義積分として定義され、ベータ関数は、
$$B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$
として定義します.$p,q>0$ ですので、これも一般には広義積分です.

ガンマ関数
ガンマ関数( $\Gamma$ 関数)の性質として、

  • $\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$ ($s>0$)
  • $\Gamma(1)=1$ 
  • $\Gamma(1/2)=\sqrt{\pi}$
などがあります.これらは、3つ目を除いて簡単に計算できます.
3つ目は、今回の計算の目的の一つでもあります.

最初のものは、部分積分をすることで、

$$\Gamma(s+1)=\int_0^\infty e^{-t}t^{s}dt=[-e^{-t}t^s]_0^\infty -\int_0^\infty (-se^{-t}t^{s-1})dt$$
$$=s\int_0^\infty e^{-t}t^{s-1}dx=s\Gamma(s)$$

となります.

上の式を補足しておきます.$t>1$ であれば、$s<n$ なる整数 $n$ を取っておけば、$t^s<t^n$ なので、ロピタルの定理を用いれば、
$0\le \lim_{t\to \infty }\frac{t^s}{e^{t}}\le \lim_{t\to \infty}\frac{t^n}{e^t}=\lim_{t\to \infty }\frac{n!}{e^t}=0$ となり、$\lim_{t\to \infty}e^{-t}t^s=0$ が成り立ちます.
なので、$[-e^{-t}t^s]_0^\infty =0$ が成り立ちます.

この式 $\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$と上の2番目の式 $\Gamma(1)=1$ とから、$n$ を整数とすれば、$\Gamma(n+1)=n!$ が成り立ちます.

他に、$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{s}dx$ もガンマ関数で表すことができます.
これは、$x^2=t$ と置換してやると、$dt=2xdx$ となり、$x^{s}dx=\frac{1}{2}x^{s-1}dt=\frac{1}{2}t^{\frac{s-1}{2}}dt$ となるので、
$\frac{1}{2}\int_0^\infty e^{-t}t^{\frac{s-1}{2}}dt=\frac{1}{2}\Gamma(\frac{s+1}{2})$ となります.
ゆえに、
$$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{s}dx=\frac{1}{2}\Gamma(\frac{s+1}{2})$$
が成り立ちます.

$n$ が奇数 $(n=2k-1)$ 偶数 $(n=2k)$ と、 と分けて考えれば、
$$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{2k-1}dx=\frac{1}{2}\Gamma(k)=\frac{(k-1)!}2$$
$$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{2k}dx=\frac{1}{2}\Gamma\left(\frac{2k+1}{2}\right)$$
$$=\frac{1}{2}\left(\frac{2k-1}{2}\right)\left(\frac{2k-3}{2}\right)\cdots \left(\frac{1}{2}\right)\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\frac{(2k-1)!!}{2^{k+1}}\sqrt{\pi}$$
とより具体的に表すことができます.

ここで、
$\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}$ を仮定しました.
このあとですぐこの値も計算します.

$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ の値

この値は、重積分を使って証明することができます.
まず、$\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2-y^2}dxdy$ が広義積分が収束することを
既知とします.これは、例題10-2で示しています.

広義重積分を使うと、まず、
$\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2-y^2}dxdy=\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2}e^{-y^2}dxdy=\int_{{\mathbb R}}e^{-x^2}dx\int_{\mathbb R}e^{-y^2}dy=\left(\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx\right)^2$ 
となります.

次に、極座標表示を用いた計算をします.極座標変換のヤコビアンが $r$ であることを使うと
$$\int\int_{{\mathbb R}^2}e^{-x^2-y^2}dxdy=\int_0^\infty \int_0^{2\pi}e^{-r^2}rdrd\theta$$
$$=2\pi\int_0^\infty e^{-r^2}rdr=2\pi\Gamma(1)=\pi$$
となり、ゆえに 
$$\left(\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx\right)^2=\pi$$
なので、
$$\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx=\sqrt{\pi}$$
が成り立ちます.積分範囲を半分にすれば、被積分関数が偶関数であることから、
$$\int_{0}^\infty e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt{\pi}}{2}$$
も成り立ちます.よって、この式から、$\int_0^\infty e^{-x^2}x^{s}dx$ の $s=0$ を入れることから、
$$\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}$$
と計算できます.

ベータ関数
ベータ関数 ( $B$関数) は最初に書いたように定義されますが、基本的な公式として
  • $B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$
  • $B(p,q)=B(q,p)$
  • $2\int_0^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2p-1}\theta\sin^{2q-1}\theta d\theta$
があります.最初の等式は、ベータ関数の収束を込みで、今回の宿題です.
2つ目は、最初の等式を認めれば、容易にわかります.最後の等式は、今回の宿題でもありました.ここでやっておきます.

$t=\cos^2\theta$ とすると、$dt=2\cos\theta(-\sin\theta )d\theta$ となります.
$$\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt=\int_{\frac{\pi}{2}}^0\cos^{2p-2}\theta\sin^{2q-2}\theta(-2\cos\theta\sin\theta)d\theta$$
$$=2\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2p-1}\theta\sin^{2q-1}\theta d\theta$$
となります.

これを用いると、
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^3\theta \cos^4\theta d\theta=\frac{1}{2}B(\frac{5}{2},2)=\frac{1}{2}\frac{\Gamma(\frac{5}{2})\Gamma(2)}{\Gamma(\frac{9}{2})}$$

$$=\frac{1}{2}\frac{ \frac{3}{2}\frac{1}{2}\sqrt{\pi}\cdot 1}{\frac{7}{2}\frac{5}{2}\frac{3}{2}\frac{1}{2}\sqrt{\pi}}=\frac{2}{35}$$

と計算できます.

2017年1月16日月曜日

トポロジー入門演習(第10回) Part II

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

連結性について少しまとめておきます.去年やった授業の中で、
間違って、弧状連結成分はいつでも閉集合と口走ったしまったような気がします.
(そうではありません)
ここで訂正しておきます.

また、有限点集合上の位相では、弧状連結と連結が同じということを
発表した人もいました.そのときは、証明がかなりややこしかったような気がします.
ここですっきりする証明を与えておきます.

有限点集合に関しては、以前(ココ)で少しまとめましたが、
そのときは、有限点空間の弧状連結性は、その有限点空間から作られるあるグラフ
の連結性と同値であることがすぐわかります.また、それは、すぐに、
有限点空間の連結性につながります.

連結成分と弧状連結成分

連結空間を定義しておきます.

連結(connected)
位相空間 $X$ が連結であるとは、
任意の $U\cap V=\emptyset$ となる開集合 $U,V$ に対して、
$X=U\cup V$ となるとすると、$U=\emptyset$ もしくは $V=\emptyset$ となる.

連結部分集合(connected component)
位相空間 $X$ の部分集合 $A$ が連結であるとは、
任意の互いに素な開集合 $U,V$ に対して、$A\subset U\cup V$ となるとき、
$A\cap U=\emptyset$ もしくは $A\cap V=\emptyset$ が成り立つ.

つまり、$A$ が $X$ の連結部分集合であることと $A$ が $X$ からくる相対位相
として連結空間であることは同値です.


ここで、次を示しておきます.

定理1
$A\subset X$ が連結部分集合ならば、$\text{Cl}(A)$ も連結な部分集合である.
(証明)
$A$ が連結であるとします.
また、$\text{Cl}(A)\subset U\cup V$ と被覆できるとします.
ただし、$U,V$ は $X$ の互いに素( $U\cap V= \emptyset$  )な開集合とします.
このとき、$\text{Cl}(A)\cap U=\emptyset$ もしくは、$\text{Cl}(A)\cap V=\emptyset$
であることを示せばよいことになります.

いま、$A\subset \text{Cl}(A)$ なので、$U\cup V$ は $A$ の被覆でもあります.
$A$ が連結であることから、$A\cap U=\emptyset$ もしくは、$A\cap V=\emptyset$ です.
いま、$A\cap U=\emptyset$ であると仮定します.
$\text{Cl}(A)$ は $A$ を含む最小の閉集合であることから、
$\text{Cl}(A)\subset U^c$ となります.よって、$\text{Cl}(A)\cap U=\emptyset$ となります.

$A\cap V=\emptyset$ であると仮定しても、同じ議論により、$\text{Cl}(A)\cap V=\emptyset$ よって、$\text{Cl}(A)$ も連結となります.$\Box$

$C(x)$ を $x$ を含む連結成分とします.$x$ の連結成分とは、$x$ を含む連結な集合の中で最大の部分集合として定義します.つまり、
$$C(x)=\cup\{A|\text{$A$ は $x$を含む連結部分集合}\}$$
です.$C(x)$ は連結であり、上で証明したことから、$\text{Cl}(C(x))$ も連結です.
しかし、$C(x)$ は $x$ を含む最大の連結集合なので、$\text{Cl}(C(x))\subset C(x)$ となります.一般に、$C(x)\subset \text{Cl}(C(x))$ なので、$C(x)=\text{Cl}(C(x))$ なので、$C(x)$ は閉集合となります.
よって、わかったことは、

定理2
任意の連結成分は閉集合.

しかし、一般に連結成分は開集合であるとは限りません.
例えば、${\mathbb Q}$ は通常の距離空間において、任意の有理数の連結成分は、一点のみからなりますが、この位相では、${\mathbb Q}$ は離散位相ではありません(任意の点の近傍は可算無限個の有理数を含む)ので連結成分は開集合ではありません.


弧状連結(path-connected)
位相空間 $X$ が弧状連結とは、任意の $a,b\in X$ に対して、ある連続写像 $[0,1]=I\to X$ が存在して、$f(0)=a$ かつ $f(1)=b$ となる.


すぐ分かることは、弧状連結であれば、連結であるということです.
位相空間 $X$ が弧状連結であり、連結でないとすると、
互いの素でない、空ではない開集合 $U,V$ によって、$X=U\cup V$ と書けます.
このとき、$a\in U$ かつ、$b\in V$ に対して、ある連続関数 $f:[0,1]\to X$ が存在して、
$f(0)=a$ かつ $f(1)=b$ となります.このとき、$[0,1]=f^{-1}(U)\cup f^{-1}(V)$ となり、
$f^{-1}(U)$, $f^{-1}(V)$ はどちらも開集合であり、空でないので、$[0,1]$ の連結性に矛盾します.よって、$X$ は連結となります.



弧状連結成分(path-connected component)
$C_p(x)=\{y\in X|f:[0,1]\to X (\text{連続}),f(0)=x,f(1)=y\}$ とおくと、$C_p(x)$ は弧状連結成分といいます.つまり、$x$ と道(path)で結ぶことができる最大の集合のことです.


連結成分は閉集合でしたが、弧状連結成分は閉集合とは限りません.
例えば、
$$S=\left\{\left(x,\sin\frac{1}{x}\right)\in {\mathbb R}^2|0<x\le 2\pi\right\}$$
の ${\mathbb R}^2$ での閉包は、
$$C=\left\{\left(x,\sin\frac{1}{x}\right)\in {\mathbb R}^2|0<x\le 2\pi\right\}\cup \{(0,y)\in {\mathbb R}^2|-1\le y\le 1\}$$
ですが、$S$ は連結ですが、弧状連結ではありません.
$S$ の中の弧状連結成分は、
$$S=\left\{\left(x,\sin\frac{1}{x}\right)\in {\mathbb R}^2|0<x\le 1\right\}$$
$$L=\{(0,y)\in {\mathbb R}^2|-1\le y\le 1\}$$
にわけられます.閉包をとったことから分かるように、$C$ は $S$ の中で、閉集合では
ありません.
$C$ のことを、トポロジストのサイン曲線といいます.

$C$ は連結だが、弧状連結ではない例として知られていますが、
連結だが、局所連結ではない例としても知られています.

局所連結(locally connected)
位相空間が局所連結であるとは、任意の $x\in X$ に対して、任意の近傍 $x\in U$ に対して、ある連結な近傍 $V$ が存在して、$x\in V\subset U$ となることである.

$x\in L$ において、$x$ の任意の近傍を取っても、その中に、連結な近傍を取ることはできません.

なので、連結でも、局所連結とは限りません.
もちろん、局所連結でも連結ではありません.最も簡単な例は
2点集合上の離散位相です.

定理3
$X$ が連結であるための必要十分条件は、任意の $x,y\in X$ に対して、ある連結部分集合 $U$ があって、$x,y\in U$ となることである.

(証明)
もし、$X$ が連結であるとすると、任意の $x,y$ に対して、$U=X$ とすることで条件が成り立ちます.逆に、$X$ が連結でないとすると、$A\cap B=\emptyset$ となる空でない開集合 $A,B$ が存在して、$X=A\cup B$ となります.$a\in A$ かつ $b\in B$ とします.
$U$ を $a,b$ を含む任意の部分集合とします.$U\subset A\cup B$ であり、$U\cap A\neq \emptyset$ であり、$U\cap B\neq \emptyset$ が成り立ちます.よって、$U$ は連結ではないことになります.よって、ある $a,b\in X$ が存在して、$a,b\in U$ となる連結部分集合 $U$ が存在しないことになります.よって、定理3が成り立ちます.$\Box$

この定理を用いると次が証明できます.

定理4
弧状連結な有限位相空間は連結.

(証明)
$X$ を有限点集合とします.任意の $x\in X$ に対して、$U(x)$ を $x$ を含む最小の開集合が存在します.このとき、最小性から $U(x)$ は $X$ の連結部分集合であることが証明できます.

任意の $a,b\in X$ が弧で結べるとします.
このとき、$f([0,1])=\{a,c_1,\cdots, c_n,b\}$ とすると、連結集合の連続像なので
 $\{a,c_1,\cdots, c_n,b\}$ も連結.
ここで、$U(a)\cup U(c_1)\cup \cdots\cup U(c_n)\cup U(b)$ が連結であることを示します.
連結でないとすると、ある $x, y\in \{a,c_1,\cdots,c_n,b\}$ で、$x\in U$ かつ $y\in V$ 
となる互いに素な開集合で、$U\cup V=U(a)\cup U(c_1)\cup \cdots\cup U(c_n)\cup U(b)$ 
と分けられます.$x,y$ を両方含む $\{a,c_1,\cdots,c_n,b\}$ の任意の部分集合 $W$ は、
空でない互いに素な $W$ 上の相対位相としての開集合の和として、
$W=(W\cap U)\cup (W\cap V)$ とかけるので、$x,y$ を含む $f([0,1])$ 
の連結部分集合を見つけることができない.よって、定理3から $f([0,1])$ が非連結
であることになり矛盾します.
よって、$U(a)\cup U(c_1)\cup \cdots\cup U(c_n)\cup U(b)$ は $a,b$ を含む連結集合となります.
よって、定理3から、$X$ は連結. $\Box$ 


また、証明の中の $\{U(a)|a\in X\}$ は有限点空間 $X$ 上の開基を成し、
$\{U(a)\}$ は、$a$ での唯一つからなる近傍基となります.


定理4からすぐ分かる次の系を挙げておきます.

系5
$X$ が連結であり、弧状連結でないとすると、$X$ の濃度は少なくとも無限である.

2017年1月6日金曜日

微積分II演習(化学類)(第9回)

[場所1E102(水曜日4限)]

配付プリント
HPに行く

今回も重積分を行いました.
いつも、重積分は何回かやっても素通りしてしまったり、応用ばかりやってしまうので
今回は基本に立ち返ってもう一度やり直しました.

前回のプリントの採点をしていて
$T$ を原点 $(\pi,\pi),(\pi,-\pi)$ を頂点とする三角形に対して、
$$\int\int_Tx^2\sin(y-x)dxdy=2\int_0^{\pi}\left(\int_{y}^{\pi}x^2\sin(y-x)dx\right)dy$$
となるような解答が多数ありました.

図形 $T$ は $x$ 軸により線対称なので、重積分も2倍だと思ったのでしょうか?


領域 $D$ が平面上の対称軸に対して対称であり、関数がその軸に対して
対称な場合、その積分値は片側の積分の2倍になる.

例えば、下の三角形 $D$ は $x$ 軸に関して対称です.
この三角形の上側の三角を $D_1$ とし、下側の三角を $D_2$ とします.


さらに、 $x$ 軸に関して関数が対称であるとします.
関数が $x$ 軸に関して対称であるとは、$f(x,-y)=f(x,y)$ つまり、
つまり、線によって対称な点同士で、同じ値をとる関数ということです.
このとき、
$$\int\int_Tf(x,y)dxdy=2\int\int_{D_1}f(x,y)dxdy=2\int\int_{D_2}f(x,y)dxdy$$

となります.つまり、$\int\int_{D_1}f(x,y)dxdy=\int\int_{D_2}f(x,y)dxdy$
であるということです.
具体的に上のような対称な関数として、$f(x,y)=y^2$ を使って計算をしてみます.

$$\int\int_{D_1}y^2dxdy=\int_0^{\pi}\left(\int_{y}^{\pi}y^2dx\right)dy=\int_0^{\pi}\left[y^2x\right]_y^{\pi}dy=\int_0^{\pi}y^2(\pi-y)dy$$
$$=\left[\frac{\pi}{3}y^3-\frac{y^4}{4}\right]_0^{\pi}=\frac{\pi^4}{3}-\frac{\pi^4}{4}=\frac{\pi^4}{12}$$
であり、下側の三角形の積分は
$$\int\int_{D_2}y^2dxdy=\int_{-\pi}^{0}\left(\int_{-y}^{\pi}y^2dx\right)dy=\int_{-\pi}^0\left[y^2x\right]_y^{\pi}dy=\int_{-\pi}^0y^2(\pi+y)dy$$
$$=\left[\frac{\pi y^3}{3}+\frac{y^4}{4}\right]_{-\pi}^0=\frac{\pi^4}{3}-\frac{\pi^4}{4}=\frac{\pi^4}{12}$$
となります.よって値は等しくなります.

図形も、関数もこのように対称ではなければ、このようなことは普通起こりません.
今計算した例は、図形と関数が両方対称だったので等しくなりました.

問題9-1
また、$[1,2]\times [x,-x]$ が表すものは長方形か、台形か?という変な問題を
作りました.何が言いたいのか?と思うかもしれませんが、
実際、$[1,2]\times [-x,x]$ のような記号を使っている人がいました.

$[1,2]$ から好きな実数と、$[-x,x]$ から好きな実数を選んでペアにするわけだから、
$[1,2]\times [-x,x]$ は、長方形ではないでしょうか?

つまり、$\{(a,b)|-1\le a\le 1,-x\le b\le x\}$ です.
$x$ は $[1,2]$ の $x$ 座標を表すなんてどこにも書いてありません.

なので、 $x$ は定数です.

たとえば、$x$ が第一座標を表して、台形みたいにしたいのなら、
$\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|1\le x\le 2,-x\le y\le x\}$ と書かないといけません.

このようにすると、平面上の台形を表します.

しかし、$[1,2]\times [-x,x]$ はどう頑張っても台形には見えません。
長方形にしかみえません。

問題9-2
(1) は普通に極座標で計算をすればよいですが、
(2) は変数変換をした方が良いですね.$u=x+y$ や $v=x-y$ などと置くのが定番ですが.
このようにすると、領域がどのように変化するか考えましょう.

まずは、どのような図形に移るか、図形を描いてみるところから始めてください.
問題9-1(2) のように、図形をまず、描く問題を最初に持ってこればよかったかもしれません.図がかけたら、ヤコビアンを計算します.計算するのは、$\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}$ であって、$\frac{\partial (u,v)}{\partial (x,y)}$ でないようにしましょう.

また、行列式がうまく計算できるかどうかわかりませんが、
スカラー倍( $s$ 倍)の行列 $sA$ の行列式は、  $s^n\det(A)$ であることに気をつけて下さい.

ここで、$n$ は $A$ の行列のサイズです.

$2\times 2$ のサイズの行列の場合、 $\det(s\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix})=s^2\det\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$
となります.

$\frac{1}{\cos^nx}$ の原始関数

$$\frac{1}{\cos^nx}$$
の積分を計算します.

$$\int_0^x\frac{d\theta}{\cos\theta}=\text{Arsinh}(\tan (x))$$
に一致することをこちら(リンク)で見ました.

なので、ここで、
$$C_n(x)=\int_0^{\text{Arctan}(x)}\frac{d\theta}{\cos^n\theta}$$
とおきます.

このとき、$s(\theta)=\tan\theta$ とおくと、
$ds=\frac{1}{\cos^2\theta}d\theta=(1+s^2)d\theta$ なので、
$$C_n(x)=\int_0^{\text{Arctan}{x}}\left(\frac{1}{\cos^2 \theta}\right)^{\frac{n}{2}}d\theta$$
$$=\int_0^{x}(1+s^2)^{\frac{n}{2}-1}ds$$
となります.つまり、この無理関数の積分が計算できれば
良いことになります.

$n=2k$ の場合、
$$C_{2k}(x)=\int_0^x(1+s^2)^{k-1}ds$$

となり、$C_{2k}(x)$ は次数が $2k-1$ 次の多項式(奇関数)になります.
$n=2k-1$ の場合
部分積分をすることで、
$$C_{2k-1}(x)=\int_0^x(1+s^2)^{k-\frac{3}{2}}ds$$
$$=\left[(1+s^2)^{k-\frac{3}{2}}s\right]_0^x-\int_0^x\left(k-\frac{3}{2}\right)(1+s^2)^{k-\frac{5}{2}}s\cdot 2sds$$
$$=(1+x^2)^{k-\frac{3}{2}}x-(2k-3)\int_0^x(1+s^2)^{k-\frac{5}{2}}(1+s^2-1)ds$$
$$=(1+x^2)^{k-\frac{3}{2}}x-(2k-3)(C_{2k-1}(x)-C_{2k-3}(x))$$
となりよって、
$$(2k-2)C_{2k-1}(x)=(1+x^2)^{k-\frac{3}{2}}x+(2k-3)C_{2k-3}(x)$$
つまり、
$$C_{2k-1}(x)=\frac{1}{2k-2}(1+x^2)^{k-\frac{3}{2}}x+\frac{2k-3}{2k-2}C_{2k-3}(x)$$
という漸化式が得られました.

よって、帰納的に、
$$C_{2k-1}(x)=x\sqrt{1+x^2}F_k(x)+\frac{(2k-3)!!}{(2k-2)!!}\text{Arsinh}(x)$$
であることがわかります.$F_k(x)$ は、ある多項式です.
$C_n(x)$ は、$n$ が偶数より、奇数の方がややこしい関数になりました.
$F_k(x)$ の関数を求めます.
展開すると、$\text{Arsin}(x)$ の成分ではない部分は、
$$\sum_{l=1}^{k-1}\frac{(2k-2l-2)!!}{(2k-2)!!}\frac{(2k-3)!!}{(2k-2l-1)!!}(1+x^2)^{k-l-\frac{1}{2}}x$$
$$=x\sqrt{1+x^2}\sum_{l=0}^{k-2}\frac{(2k-3)!!(2l)!!}{(2k-2)!!(2l+1)!!}(1+x^2)^l$$
となるので、
$$F_k(x)=\sum_{l=0}^{k-2}\frac{(2k-3)!!(2l)!!}{(2k-2)!!(2l+1)!!}(1+x^2)^l$$
となります.

$F_k$ を最初の方から計算していくと、
$F_1(x)=0$,
$F_2(x)=\frac{1}{2}$
$F_3(x)=\frac{1}{8}(2x^2+5)$
$F_4(x)=\frac{1}{48}(8x^4+26x^2+33)$
$F_5(x)=\frac{1}{384}(48x^6+200x^4+326x^2+279)$
$F_6(x)=\frac{1}{1280}(128x^8+656x^6+1368x^4+1490x^2+965)$
となります.

したがって、元々の関数でいえば、
$$\int_0^x\frac{d\theta}{\cos^{2k}(\theta)}=f_n(\tan x)$$
となり、
$$\int_0^x\frac{d\theta}{\cos^{2k-1}(\theta)}=\sin x(1+\tan^2x)g_n(\tan x)+\frac{(2k-3)!!}{(2k-2)!!}\text{Arsinh}(\tan x)$$

のような形になります.$f_n(x),g_n(x)$ はある多項式.

2017年1月1日日曜日

トポロジー入門演習(第10回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今回はゾルゲンフライ直線について解いた人がいました.
ゾルゲンフライ直線は、実数直線 ${\mathbb R}$ の位相で、通常の距離位相より、
強く、$[a,b)$ を開集合として認める位相をいいます.
正確には、このような半開区間をベース(開基)とするような、数直線上の位相のことです.

ゾルゲンフライ直線は、第一可算かつ可分を満たすが、
第2可算を満たさない空間です.

よって距離化できない空間となります.
距離空間であれば、可分と第2可算であることは同値となるからです.

また、ゾルゲンフライ直線はリンデレフです.
(ここでは証明はしませんが.)

定理1
ゾルゲンフライ直線は正則空間.
(証明)
$F$ を閉集合、$p$ をそれに入らない任意の点とする.
このとき、$F$ が閉集合であることから、$[p,c)$ なる実数 $c$ で、
$[p,c)\cap F=\emptyset $ となるものが存在します.

また、任意の $q\in F$ に対して、$[q,c_q)$ として、$[q,c_q)\cap [p,c)=\emptyset$ となる
$c_q$ 実数が存在する.
$\cup_{q\in F}[q,c_q)=V$ とすると $V$ は開集合かつ、$F\subset V$ で、$V\cap [p,c)=\emptyset$ なので、
ゾルゲンフライ直線は正則.$\Box$

さらに言えば、同じ証明をゾルゲンフライ直線の正規性について行うことができるので、ゾルゲンフライ直線は正規ですが、実は、ゾルゲンフライ直線はリンデレフなので、
前回書いたこと(正則リンデレフなら正規)からゾルゲンフライ直線が正規空間
であることが分かり、前回の定理4から、ゾルゲンフライ直線はパラコンパクトで
あることもわかります.


正規列

前回、正規性と被覆の基本的な関係性について述べましたが、実際被覆の言葉で
正規性や距離化可能を特徴づける事ができます.

そのために、被覆の正規列という概念が必要となります.

星型集合
$\mathcal{U}$ を被覆とします.
任意の部分集合 $A\subset X$ に対して、$\text{St}(A,\mathcal{U}):=\cup\{V\in\mathcal{U}|A\cap V\neq\emptyset\}$ を星型集合といいます.
また、$\mathcal{U}^\ast=\{\text{St}(U,\mathcal{U})|U\in \mathcal{U}\}$ や
$\mathcal{U}^\Delta=\{\text{St}(x,\mathcal{U})|x\in X\}$ とかきます.

$\Delta$-細分、重心細分、星型細分
被覆 $\mathcal{V}$ に対して、$\mathcal{U}^\Delta<\mathcal{V}$ なる被覆 $\mathcal{U}$ を $\mathcal{V}$ の$\Delta$-細分、もしくは、重心細分といい、
$\mathcal{U}^\ast<\mathcal{V}$ なる、被覆 $\mathcal{U}$ のことを $\mathcal{V}$ の星型細分といいます.

普通の細分 $\mathcal{V}<\mathcal{U}$ より、星型細分 $\mathcal{V}^\ast<\mathcal{U}$ の方が星型集合をとってもどこかの被覆に入るわけなので、細かくなり具合がより強くなっています.

一般に、$\mathcal{U}^\Delta<\mathcal{U}^\ast$ であることはすぐ分かるので、$\mathcal{U}$ が $\mathcal{V}$ の星型細分であれば、$\Delta$-細分であることが分かります.


正規列、正規被覆
被覆の列 $\{\mathcal{U}_i|i\in {\mathbb N}\}$ が $\mathcal{U}_{i+1}^\ast<\mathcal{U}_i$ を満たすとき、この被覆の列を正規列といいます.

被覆 $\mathcal{V}$ に対して、
ある細分 $\mathcal{U}_1<\mathcal{V}$ があって、被覆の列 $\{\mathcal{U}_i\}$ が
正規列であるとき、被覆 $\mathcal{U}$ は正規であるといいます.


定理2
$T_1$ 空間が正規となるための必要十分条件は、任意の有限開被覆が正規となることである.


また、パラコンパクトとの関係を見ると

定理3
$T_2$ 空間がパラコンパクトであるための必要十分条件は、任意の開被覆が正規となることである.


この定理からすぐに、前回の $T_2$ パラコンパクトなら正規であるがいえます.
つまり、被覆の正規列の存在がその間の関係を精密化して表しているということになります.

距離化可能定理

距離化定理は、以下の定理が古典的に知られています.
定理4(ウリゾーンの距離化定理)
第2可算かつ正規なら距離化可能.

第2可算を仮定すれば、正則空間は正規空間なので、仮定として正規性は正則性まで
弱められることが分かります.また、距離空間では、第2可算であることは可分であることと
同値ですから、これは、可分距離空間のための距離化定理だということになります.
しかし、可分でない距離空間のための距離化定理もあります.

正規空間は距離空間にある意味近い存在だが、その間を第2可算という
可算性で補うことで埋められる.実際には距離空間のためには第2可算は必要ではないので
他によい性質があるはずである.との着想のもと、長田、スミルノフは以下の定理を
証明しています.

定理5(長田-スミルノフの距離化定理)
正則空間が距離化可能であるための必要十分条件は、$\sigma$-局所有限な開基をもつことである.

距離空間は正則なので、これは
距離化可能 $\Leftrightarrow$ 正則かつ $\sigma$-局所有限な開基をもつ
ということを言っています.この定理はウリゾーンの定理の適用範囲外であった可分でない場合も
含めた一般化された距離化可能定理といえます.

ここで、集合族が、$\sigma$-局所有限であるとは、局所有限な集合族を可算個集めてきた
集合族であることを意味します.つまり、局所有限な集合族 $\mathcal{V}_n\ (n\in{\mathbb N})$
であれば、$\cup_n\mathcal{V}_n$ は、$\sigma$-局所有限であるといえます.

つまり、局所有限であることについては、部分集合族 $\mathcal{V}_n$ の濃度については言及していないので、非可算個の濃度をもつ開基だとしても、$\sigma$-局所有限な開基を持てば距離化可能だということになります.

また、Alexandroff-Urysohn-Tukeyによる正規列を用いた距離化定理もあります.
こちらも結果としては驚くべきとは思いますが、条件として、定理4や5の正則性を
取り込んだためか、近傍基の特徴として、ある正規被覆列から得られるものをとる必要があり
定理5よりは条件がややこしくなっています.

定理6(Alexandroff-Urysohn-Tukey)
$T_1$ 空間が距離化可能であるための必要十分条件は、ある正規開被覆列 $\mathcal{U}_n$ が
存在して、各点 $x\in X$ において $\{\text{St}(x,\mathcal{U}_n)|n\in\mathcal{N}\}$ が近傍基となることである.

正規列を使わない条件であれば、以下の定理があります.

定理7
$T_1$ 空間が距離化可能であるための必要十分条件は、ある開被覆列 $\mathcal{U}_n$ が
存在して、各点 $x\in X$ において $\{\text{St}(\text{St}(x,\mathcal{U}_i),\mathcal{U}_j|i,j\in\mathcal{N}\}$ が近傍基となることである.


定理7は、定理7の条件から、定理6の正規列を作ることによって証明されます.

参考文献
  • 森田紀一, 位相空間論, 岩波全書