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2016年12月31日土曜日

トポロジー入門演習(第9回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今回も多くの人に発表してもらいました.

積空間
積空間について解いた人がいたので、ここですこしだけ、注意点を述べておきます.
有限個の位相空間 X_1,\cdots, X_n の積空間
\prod_{i=1}^nX_i=X_1\times X_2\times \cdots\times X_n に入る積位相は、
U_iX_i の開集合として、
U_1\times U_2\times \cdots\times U_n を開基とするような位相のことを意味します.
また、積空間の一つ一つの位相空間を因子空間といいます.

もう一度言うと、積位相の開基は、
\{U_1\times U_2\times \cdots\times U_n|U_i\in\mathcal{O}_i\}
となります.(\mathcal{O}_iX_i の位相とします.)
このとき、自然な射影 p_i:\prod_{i=1}^nX_i\to X_i\ \ (p_i:(x_1,\cdots,x_n)\mapsto x_i) は連続写像となります.
どうしてかというと、U_iX_i の任意の開集合とすると、
p_i^{-1}(U_i)=X_1\times \cdots\times X_{i-1}\times U_i\times X_{i+1}\cdots \times \cdots X_n
となるからです.この右辺は、当然、上の開基の作り方から開集合です.

次に、無限個の位相空間の場合の積空間を定義します.
これは、各成分の空間から開集合を任意の取ってきて掛け合わせるのが標準的ではありません.正解は、
無限個の位相空間 \{X_\lambda|\lambda\in\Lambda\} に対して、
p_\lambda^{-1}(U_\lambda) を準開基とするような位相を入れたものを積位相といいます.
ここで、p_\lambda は、因子空間への射影 \prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\to X_\lambda を表します.

このように積位相を定義すると、積位相とは、因子空間への射影
p_\lambda:\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\to X_\lambda
を連続にするような、最弱の位相ということになります.

つまり、積位相では、\lambda_1\cdots\lambda_n\in \Lambda に対して、
X_{\lambda_i} の任意の開集合 U_i に対して、p_{\lambda_i}^{-1}(U_1)\cap\cdots\cap  p_{\lambda_n}^{-1}(U_n) を開基としています.

たとえば、X_i={\mathbb R} として \Lambda={\mathbb N}{\mathbb R}^\infty に積位相を入れますと、
(0,1)^\infty は開集合ではなくなります.
そのような任意の位相空間の開集合 U_\lambda に対して、\prod_{\lambda\in\Lambda}U_\lambda
開集合の開基として認める積空間を箱型積位相といいます.

p=(p_1,p_2,\cdots)\in(0,1)^\infty をとると、p\in  U\subset (0,1)^\infty となる開基の元 U が存在することになりますが、上のような開基を取るとすると、有限個以外の {\mathbb N} の元 n に対して、Uには、全ての {\mathbb R} が含まれているはずなので、そのような n に対して、p\in p_1\times \cdots \times{\mathbb R}\times \cdots\subset U となる.これは、(0,1)^\infty の全ての {\mathbb N} の成分に対して、因子空間が有界であることに反するので、(0,1)^\infty は積位相では開集合ではなくなります.


また、積空間への写像が連続であるための必要十分条件として以下のものが分かります.

定理
f:Y\to \prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda が連続であるための必要十分条件は、任意の\lambda に対して p_\lambda\circ f が連続であることである.

(証明)
f が連続であるとする.任意の開基の逆像が開集合であればよい.
U=p_{\lambda}^{-1}(U_{\lambda}) とする.
よって、f^{-1}(U)=f^{-1}(p_{\lambda}^{-1}(U_{\lambda}))=(p_{\lambda}\circ f)^{-1}(U_{\lambda}) が開集合であるから、任意の \lambda\in \Lambda に対して、p_\lambda\circ f は連続になる.
逆に、p_\lambda\circ f が連続になるとする.
このとき、f が連続であるためには、任意の開基の逆像が開集合であればよい.
U を任意の開基の元とする.このとき、有限個 \lambda_1\cdots\lambda_n\in \Lambda に対して、U=\cap_{i=1}^np_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i}) とかける.

f^{-1}(U)=f^{-1}(\cap_{i=1}^np_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i}))=\cap_{i=1}^nf^{-1}(p_{\lambda_i}^{-1}(U_{\lambda_i})))=\cap_{i=1}^n(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i})
今、p_\lambda\circ f は連続であるから、(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i}) は開集合である.
よって、位相の定義から、\cap_{i=1}^n(p_{\lambda_i}\circ f)^{-1}(U_{\lambda_i}) すなわち、f^{-1}(U) は開集合.
これは、f が連続であることを意味する.

コンパクト性と分離公理

\mathcal{U} が位相空間の被覆であるとは、部分集合の族 \mathcal{U} で、
任意の p\in X に対して\mathcal{U} の中のある部分集合
A\in \mathcal{U} が存在して p\in A となることをいいます.

被覆 \mathcal{U} が有限個の被覆であるとき、有限被覆であるという.

\mathcal{V} が被覆 \mathcal{U} の部分集合で、\mathcal{V} が被覆である
とき、\mathcal{V}\mathcal{U}部分被覆と言います.


コンパクト、リンデレフと正規性
まずは、コンパクト空間とリンデレフ空間の定義をしておきます.
コンパクト
任意の開被覆が有限部分被覆をもつ.

リンデレフ
任意の開被覆が可算部分被覆をもつ.

コンパクト性と分離公理の関係についての最も基本的な定理は以下です.
演習でも証明した人がいましたね.

定理1
コンパクトかつハウスドルフな空間は正規空間である.

正規、正則などの定義はここではしませんが、リンク(ここ)にあります.

この定理において、コンパクトをリンデレフに弱めた時、
結果として正規とは限りません.もっと言えば、正則ともならないような空間があります.

{\mathbb N} に対して、(a,b)=1 となる正の整数に対して、
U_b(a)=\{b+an\in {\mathbb N}| n\in {\mathbb N}\} とすると、U_b(a) を開基とする
位相空間を {\mathbb N} に入れることができます、ハウスドルフであることは、
任意の異なる正整数は異なる等差数列に含まれるので、明らか.
可算集合なので、リンデレフは明らか、しかし、正則ではありません.
例えば、任意の2点は、閉近傍によって分離できません.


話を元のリンデレフに戻します.
因子空間がコンパクトである積空間はコンパクト(チコノフの定理)ですが、
リンデレフでは、任意の積空間はリンデレフとも限りません.

リンデレフ空間と分離公理の関係として以下が成り立ちます.


定理2
リンデレフかつ正則な空間は正規空間.

つまり、リンデレフまで弱めるなら、正則まで仮定すれば、正規が
いえるということです.


パラコンパクトと正規性
リンデレフの他に、コンパクトの周辺の重要な性質としてパラコンパクトがあります.
部分被覆という方向ではなく、次のような被覆の細分に対する有限性に関する定義です.

2つの被覆 \mathcal{U},\mathcal{V}X の被覆であるとき、\mathcal{V}\mathcal{U}細分であるとは、任意の V\in \mathcal{V} に対してある \mathcal{U} の元 U が存在して、 V\subset U となることをいいます.またこのとき、\mathcal{V}<\mathcal{U} とかきます.

局所有限
任意の点 p\in X に対して、p の近傍 U(p) が存在して、\{U\in \mathcal{U}|U\cap U(p)\neq \emptyset\} が有限集合となる.


パラコンパクト
任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\mathcal{V}<\mathcal{U} なる局所有限開被覆 \mathcal{V} が存在する.


パラコンパクト性は、正規性とも関係があります.
先ほどの定理1はリンデレフまでは弱められませんでしたが、パラコンパクト
までなら次のように弱めることができます.


定理3
パラコンパクトハウスドルフ空間は正規である.


この定理は、パラコンパクトは、距離空間や離散空間など、基本的な性質を持つものに
入っていますが、ある意味、正規より強い性質だということになります.

(証明の概略)パラコンパクトで T_2 が正則であることがわかれば、任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\text{Cl}(\mathcal{V})<\mathcal{U} なる開被覆 \mathcal{V}
存在し、パラコンパクトから、この \text{Cl}(\mathcal{V}) は局所有限な閉被覆であることがわかります.そのような被覆が存在すれば、空間が正規であることがわかります.

よって、パラコンパクトハウスドルフ空間が正則であることを示せばよいといことになります.
任意の点 x\in Xx を含まない任意の閉集合 F とする.x の開近傍 U で、\text{Cl}(U)\cap F=\emptyset となるものが存在することを示せばよい.
ハウスドルフ空間であることから、任意の y\in F に対して、V(y) で、x\not\in\text{Cl}(V(y)) となる.ここで \mathcal{V}=\{V(y)\}\cup (X-F)X の被覆であり、パラコンパクト性から \mathcal{H}<\mathcal{V} なる局所有限な開被覆 \mathcal{H} が存在する.V=\cup \{G\in \mathcal{H}|G\cap F\neq \emptyset\} とすると、FF\subset V ですが、
任意の H\in \mathcal{H} に対して、H\subset V があって、V\in \mathcal{V} なので、
x\not\in \text{Cl}(H) である.\mathcal{H} は局所有限であることから、
x\not\in \text{Cl}(V) がいえる(下の補題1).よって、X は正則.

先ほどのリンデレフの定理はこれだけでもかなり有用ですが、以下のものもあります.

定理4
リンデレフかつ正則ならば、パラコンパクト.

定理2では、リンデレフかつ正則なら正規まで言えたのですが、
この場合、さらに強くパラコンパクトまで言えるということです.


また、リンデレフより強いコンパクトまで仮定すれば、正則を仮定しなくても
パラコンパクトは言えますから、正則とリンデレフという弱いものの合わせ技で
パラコンパクトが言えるという定理です.
これもかなり有用です.


コンパクト性と分離公理の間に面白い関係性があるということがわかりましたが、
関係性ばかりでなく、正規性の被覆を用いた同値条件を得ることもできますが、
それはどこかでまた書こうと思います.
最後に、定理3で使った補題を書いておきます.
今回の定理の詳しい証明については、位相空間の教科書(例えば参考文献の教科書)を見てください.
演習でも扱うかどうか?

注意として、上の定理1,2,4は定義からではなく、ちゃんと証明が必要です.また、定理3ももっとちゃんと証明する必要があります.
下に、上の定理3で使った補題を書いておきます.

補題1
位相空間の X 部分集合族 \mathcal{A} が局所有限であれば、任意の部分族も局所有限、\text{Cl}(\mathcal{A}) も局所有限であり、以下が成り立つ.
\text{Cl}(\cup\{A|A\in \mathcal{A}\})=\cup\{\text{Cl}(A)|A\in \mathcal{A}\}

補題2
X が正則であれば、任意の開被覆 \mathcal{U} に対して、\text{Cl}(\mathcal{H})<\mathcal{U} なる開被覆 \mathcal{H} が存在する.

補題3
XT_1 ならば、任意の有限開被覆 \mathcal{U} に対して、\mathcal{V}<\mathcal{U} なる局所有限な閉被覆が存在するなら、X は正規.

参考文献

  • 森田紀一, 位相空間論, 岩波全書

2016年12月29日木曜日

微積分II演習(化学類)(第8回)

[場所1E102(水曜日4限)]

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今回は、円盤上の積分をやりました.
つまり、極座標を使って変換するやり方です.
基本は変数変換を置換積分を行うのですが、式を書いておけば、
Dが原点を中心とした半径 r_0 の円盤だとすると、
D 上の積分は、E=[0,2\pi)\times [0,r_0] 上の積分となり、

\int\int_Df(x,y)dxdy=\int\int_Ef(r\cos\theta,r\sin\theta)rdrd\theta=\int_0^{2\pi}\left(\int_0^{r_0}f(r\cos\theta,r\sin\theta)rdr\right)d\theta
となります.つまり、極座標変換のヤコビアンは r というわけです.
極座標のヤコビアンは r です.証明をしておけば、

x=r\cos\theta=\varphi(r,\theta)
y=r\sin\theta=\psi(r,\theta)
とすると、ヤコビ行列は
\begin{pmatrix}\varphi_r&\varphi_\theta\\\psi_r&\psi_\theta\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos\theta&-r\sin\theta\\\sin\theta&r\cos\theta\end{pmatrix}
であり、行列式をとれば、\cos\theta\cdot r\cos\theta-(-r\sin\theta\cdot \sin\theta)=r(\cos^2\theta+\sin^2\theta)=r
となります.

授業中にやった計算をもういちどやっておきます.

D=\{(x,y)|0\le x\le 1,0\le y\le x\}
\int\int_D\frac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}dxdy です.

例題8-2(1) 
置換積分を用いて累次積分を行う方法です.
三角形領域で、まず、x を先に積分し、あとで、y で積分します.
なので、y を固定して考えると、D とぶつかる線分は、y\le x\le 1 となります.

なので、積分は、
\int_0^1\left(\int_y^1\frac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}dx\right)dy
と累次積分の形になります.

x=y\tan\theta として変数変換をすると、
dx=\frac{y}{\cos^2\theta}d\theta なので、
\int\int_D\frac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}dxdy=\int_0^1\left(\int_y^1\frac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}dx\right)dy
よって、
\int_0^1\left(\int_{\frac{\pi}{4}}^{\text{Arctan}(\frac{1}{y})}\frac{1}{\sqrt{(\tan^2\theta)y^2+y^2}}\frac{y}{\cos^2\theta}d\theta\right)dy
=\int_0^1\left(\int_{\frac{\pi}{4}}^{\text{Arctan}(\frac{1}{y})}\cos\theta\cdot\frac{1}{\cos^2\theta}d\theta\right)dy=\int_0^1\left(\int_{\frac{\pi}{4}}^{\text{Arctan}(\frac{1}{y})}\frac{d\theta}{\cos\theta}\right)dy\ \ \ (\ast)
ここで、\int\frac{d\theta}{\cos\theta} を計算しておきます.(積分定数は省略します.)

\int\frac{d\theta}{\cos\theta}=\int\frac{\cos\theta d\theta}{\cos^2\theta}=\int\frac{\cos\theta d\theta}{1-\sin^2\theta}
\sin\theta=s とおけば、上の式は以下のように計算できます.
下の計算で、最後に逆双曲線関数の公式を用いました.つまり、\text{Arsinh}(x)y=\sinh(x)=\frac{e^x-e^{-x}}{2} の逆関数で、(\text{Arsinh}(x))’=\frac{1}{\sqrt{1+x^2}} となります(この微分は後で使います).
\int\frac{1}{1-s^2}ds=\frac{1}{2}\int\left(\frac{1}{1-s}+\frac{1}{1+s}\right)ds
=\frac{1}{2}\left(-\log(1-s)+\log(1+s)\right)=\frac{1}{2}\log\frac{1+s}{1-s}=\frac{1}{2}\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
=\frac{1}{2}\log\frac{(1+\sin\theta)^2}{1-\sin^2\theta}=\log\frac{1+\sin\theta}{\cos\theta}=\log(\tan\theta+\sqrt{\frac{1}{\cos^2\theta}})
=\log(\tan\theta+\sqrt{1+\tan^2\theta})=\text{Arsinh}(\tan\theta)
となります.
つまり、\frac{1}{\cos x}dx の原始関数は \text{Arsinh}(\tan x) であることがわかりました.
特に、\text{Arsinh}(\tan x) は次のような簡単な積分表示ができるということになります.
\text{Arsinh}(\tan x)=\int_0^x\frac{d\theta}{\cos\theta}


よって上の式 (\ast) に入れてやると、
\int_0^1\left(\int_{\frac{\pi}{4}}^{\text{Arctan}(\frac{1}{y})}\frac{d\theta}{\cos\theta}\right)dy=\int_0^1\left[\text{Arsinh}(\tan\theta)\right]_{\frac{\pi}{4}}^{\text{Arctan}(\frac{1}{y})}dy
=\int_0^1\left(\text{Arsinh}\left(\frac{1}{y}\right)-\text{Arsinh}(1)\right)dy=\int_0^1\text{Arsinh}\left(\frac{1}{y}\right)dy-\text{Arsinh}(1)
部分積分をすることで、
=\left[y\cdot\text{Arsinh}\left(\frac{1}{y}\right)\right]_0^1-\int_0^1y\frac{-\frac{1}{y^2}}{\sqrt{1+\frac{1}{y^2}}}dy-\text{Arsinh}(1)
=-\lim_{y\to 0}\left(y\cdot\text{Arsinh}\left(\frac{1}{y}\right)\right)+\int_0^1\frac{1}{\sqrt{1+y^2}}dy

ここで、ロピタルの定理を用いて、\lim_{y\to 0}\left(y\cdot\text{Arsinh}\left(\frac{1}{y}\right)\right)=\lim_{z\to \infty}\frac{\text{Arsinh}(z)}{z}=\lim_{z\to \infty}\frac{\frac{1}{\sqrt{1+z^2}}}{1}=0

なので、上の積分は、
=\int_0^1\frac{1}{\sqrt{1+y^2}}dy=\text{Arsinh}(1)
となります.
ここで、逆双曲線関数の積分表示 \text{Arsinh}(x)=\int_0^x\frac{1}{1+y^2}dy を使いました.
この逆双曲線関数の値は、上の公式をもう一度用いれば、
\text{Arsinh}(1)=\log(1+\sqrt{2})
と、すこし具体的な値(よく知っている形)になりました.


例題8-2(2)

極座標表示による変数変換を用いて行うやリ方です.
x=\cos\theta, y=\sin\theta とすると、
この三角形内の、原点からの線分で、
0\le \theta\frac{\pi}{4} かつ、0\le r\le l となります.
ここで、l は、上の図の線分の長さですが、\theta の式で書けば、
l=\frac{1}{\cos\theta} となります.

\int\int_D\frac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}dxdy=\int_0^{\frac{\pi}{4}}\int_0^{\frac{1}{\cos\theta}}\frac{1}{r}rdrd\theta=\int_0^{\frac{\pi}{4}}[r]_0^{\frac{1}{\cos\theta}}d\theta
=\int_0^{\frac{\pi}{4}}\frac{1}{\cos\theta}d\theta=[\text{Arsinh}(\tan\theta)]_0^{\frac{\pi}{4}}=\text{Arsinh}(1)
と計算できます.

まとめ
この2つの計算で分かる通り、重積分では、積分の方法を変えるだけで、劇的に計算を楽にすることができる場合があります.先ずは、(x,y)-座標でやるか、極座標表示でやるかの選択肢があります.
今回は、領域の形からだけではなく、式の形からも考えて積分方法を考える必要があるといえると思います.

2016年12月21日水曜日

微積分II演習(化学類)(第7回)

[場所1E102(水曜日4限)]

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今回の演習は積分に入りました。

今回は、四角形領域と三角形領域だけ扱いました.

D=[a,b]\times [c,d] を平面上の a\le x\le  b かつ c\le y\le d を満たす領域とします.
このとき、
\int\int_Df(x,y)dxdy
は、\int_c^d\left(\int_a^bf(x,y)dx\right)dy と逐次積分(累次積分)として計算されます.
これが四角形上の積分です.
例えば、
f(x,y)=xy とすると、D=[0.1]\times [0,1]
\int\int_Dxydxdy=\int_0^1\left(\int_0^1xydx\right)dy=\int_0^1\left[\frac{x^2y}{2}\right]_0^1dy=\int_0^1\frac{y}{2}dy=\left[\frac{y^2}{4}\right]_0^1=\frac{1}{4}
などと計算します.

変数変換の公式

重積分の変数変換の公式とは、一変数の置換積分をしていることと同じです.
まず、{\mathbb R}^2 上の領域 D の積分に対して、その積分を、(u,v)-平面の積分に変換する方法です.x=\varphi(u,v), y=\psi(u,v) なる一対一写像あるとします.
このとき、(u,v)-平面の領域 E が領域 D に移るとします.

また、ヤコビアン \frac{\partial (x,y)}{\partial(u,v)}\begin{pmatrix}\varphi_u&\varphi_v\\\psi_u&\psi_v\end{pmatrix} の行列式として定義します.

そうすると、D 上の関数 f(x,y) の重積分は、
\int\int_Df(x,y)dxdy
\int\int_Ef(\varphi(u,v),\psi(u,v))|\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}|dudv
と変数変換されます.ここで、絶対値が付いていることに注意してください.

例えば、
f(x,y)=x^2+y^2 で、
|x+y|\le 2, |x-y|\le 2 を満たす領域を D とする.
このとき、x=u+v, y=-u+v とすると、
|v|\le 1 かつ、|u|\le 1 になります.
ここで、ヤコビ行列は、
\begin{pmatrix}1&1\\-1&1\end{pmatrix} の行列式であり、2 となります.
また、x^2+y^2=(u+v)^2+(-u+v)^2=2u^2+2v^2=2(u^2+v^2) となります.

よって、\int\int_D(x^2+y^2)dxdy=\int\int_{|u|\le 1,|v|\le 1}2(u^2+v^2)2dudv=4\int_{-1}^1\left(\int_{-1}^1(u^2+v^2)du\right)dv=4\int_{-1}^1\left[\frac{u^3}{3}+uv^2\right]_{-1}^1dv=4\int_{-1}^1\left(\frac{2}{3}+2v^2\right)dv=8\left[\frac{v}{3}+\frac{v^3}{3}\right]_{-1}^1=\frac{32}{3}
と計算されます.

積分の順序交換
積分の順序は交換することができます.
例えば、(0,0),(a,0),(0,b) を頂点とする三角形を D とする.
\int\int_Df(x,y)dxdy=\int_0^b\left(\int_0^{a-\frac{a}{b}y}f(x,y)dx\right)dy=\int_0^a\left(\int_0^{b-\frac{b}{a}x}f(x,y)dy\right)dx

\int_0^b\left(\int_0^{a-\frac{a}{b}y}x^2ydx\right)dy=\int_0^b\left[\frac{x^3y}{3}\right]_0^{a-\frac{a}{b}y}dy=\int_0^b(a-\frac{a}{b}y)^3\frac{y}{3}dy=\frac{1}{12}\left(-\frac{b}{a}\left[(a-\frac{a}{b}y)^4y\right]_0^b+\frac{b}{a}\int_0^b(a-\frac{a}{b}y)^4dy\right)=\frac{b}{12a}\int_0^b(a-\frac{a}{b}y)^4dy=\frac{b}{12a}\left[-\frac{b}{5a}(a-\frac{a}{b}y)^5\right]_0^b=\frac{b^2}{60a^2}a^5=\frac{a^3b^2}{60}
\int_0^a\left(\int_0^{b-\frac{b}{a}x}x^2ydy\right)dx=\int_0^a\left[\frac{x^2y^2}{2}\right]_0^{b-\frac{b}{a}x}dx=\int_0^ax^2\frac{(b-\frac{b}{a}x)^2}{2}dx=\frac{1}{2}\int_0^a(b^2x^2-\frac{2b^2}{a}x^3+\frac{b^2}{a^2}x^4)dx=\frac{1}{2}\left[b^2\frac{x^3}{3}-\frac{2b^2}{a}\frac{x^4}{4}+\frac{b^2}{a^2}\frac{x^5}{5}\right]_0^a=\frac{1}{60}a^3b^2


2016年12月19日月曜日

トポロジー入門演習(第8回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今回は慌ただしく、15人の人の発表を見ました。
一人5分くらいということですが、いつも、もう少しで、できるかもしれないと
期待して一人の人に時間をかけてしまうことがあります。
これからは、もう少し早めに行って黒板に早く書いた人から見ようと思います。
今の段階で、92回の発表を見ました.すでに去年の113回にもう迫ろうとしています.
ちなみに、一昨年は97問ですから、年々解く人が増えています.
その前はもっと少なかった(最高で7問の人がいたくらい)ですから.

有志で自主ゼミをしたせいかでしょうか.これだけ位相空間が好きな人が
集まれば、今後位相空間を専門にする人が多く現れると面白いですね.
そもそも筑波は、昔から他のどこの主要大学より、位相空間が強い土地です.

個人的には、位相空間に強い人がドンドン現れて、
数学の他の分野と融合しながら、数学の風景が変わって来ると面白いなぁ
と思っています.

来年以降も自主ゼミが伝統で続くといいと思います.

正則空間と正規空間
ここで、正則空間と正規空間をまとめておきます。
定義をここで述べておきます。

正則空間
任意の閉集合とその閉集合にない一点は開集合で分離される。

正規空間
任意の2つの交わらない閉集合は開集合で分離される。

です.分離されるということは、その2つの集合を含む開集合 U,V が存在して、
U\cap V=\emptyset となるということです.


正則空間であることの必要十分条件
X が正則であることは X の閉近傍全体が基本近傍系となることとは必要十分.

(証明)
X が正則であるとする.R(X)Xの閉近傍全体とする.
x\in X とする.Ux の任意の近傍とする.
このとき U は近傍なので、x\in V\subset U なる開集合 V が存在する.
X-V は閉集合なので、正則性から、ある開集合 U_0,U_1 が存在して、
x\in U_0 かつ X-V\subset U_1 となり、かつ U_0\cap U_1=\emptyset となる.
よって、W=X-U_1 は閉集合であり、x\in W となる.また、x\in U_0\subset W となるので、Wx の閉近傍となる.
よって、任意の近傍 U に対して、 x\in W\subset U なる閉近傍 W が存在する.
これは、R(X)X の基本近傍系となることを意味している.

逆に、閉近傍全体が基本近傍系となるとすると、x を任意の点として、Fx\not\in F なる任意の閉集合とする.
このとき、U=X-Fx の開近傍であり、x のある閉近傍 W が存在して、x\in W\subset U となる.よって、X-WF を含む開集合で、W は閉近傍であることから、ある開集合 x\in V\subset W が存在する.
よって、V, X-W は、x, F を分離する開集合となる.



正規空間であることの以下のような必要十分条件があります.
X が正規であることは X の閉集合 F と開集合 G に対して、F\subset G ならば、開集合 U で、F\subset U\subset \bar{U}\subset G となるものが存在する.
(証明)
X が正規とする.X の閉集合 FG を開集合であり、F\subset G を満たすとする.このとき、F と、X-G に対して開集合 U,V が存在して、F\subset U かつ、X-G\subset V かつ、U\cap V=\emptysetとなるものが存在する.
よって、U\subset X-V\subset G となり、X-V は閉集合なので、U\subset \bar{U}\subset X-V となる.ゆえに、F\subset U\subset \bar{U}\subset G となる開集合 U が存在する.
逆に、閉集合 F と開集合 G で、F\subset G となるものに対して、F\subset U\bar{U}\subset G なる開集合が存在するとするとする.
今、閉集合 V_0,V_1 に対して、V_0\cap V_1=\emptyset となるものを任意にとる.
このとき、V_0\subset X-V_1 となり、X-V_1 は開集合.
よって、開集合 U が存在して、V_0\subset U\subset \bar{U}\subset X-V_1 となる.
このとき、X-\bar{U} は、開集合であり、V_1\subset X-\bar{U} であり、
V_0\subset U_0 であるので、V_0,V_1U_0 X-U_0 によって分離できる.


パラコンパクトと可算パラコンパクト
位相空間 X とそのある部分集合の族が存在した時、その族が、局所有限とは、任意の点 p において、その点の近傍 U(p) が存在して、U(p) と共通部分をもつ部分集合が有限個しかないことを言います.
ここで、コンパクト空間の周辺の定義をいくつか紹介して終わります.

コンパクト
任意の開被覆が有限部分被覆をもつ.

パラコンパクト
任意の開被覆に対して局所有限な開細分をもつ.

部分被覆ではなく、開細分であるということに注意してください.
つまり開被覆の任意の開集合 A に対して、局所有限な開被覆の開集合 U が存在して、U\subset A となるということです.

可算パラコンパクト
任意の可算開被覆に対して局所有限な開細分をもつ.

メタコンパクト
任意の開被覆に対して、点有限な開細分をもつ

点有限であるとは、任意の点 x に対して、その点とぶつかる被覆が有限であることをいいます.

オーソコンパクト
任意の開被覆において、次のような性質(内部保存)を満たす開細分が存在する.
任意の点 x について、x をその開細分の共通部分をとると、再び開集合となる.

コンパクト \Rightarrow パラコンパクト
パラコンパクト \Rightarrow メタコンパクト
メタコンパクト \Rightarrow オーソコンパクト

となることがすぐわかると思います.また、

パラコンパクト  \Rightarrow 可算パラコンパクト

もすぐわかります.

2016年12月12日月曜日

微積分II演習(化学類)(第6回)

[場所1E102(水曜日4限)]

配付プリント
HPに行く

今回はラグランジュの未定乗数法をやりました.
多項式など簡単な場合です.

前提となるのは、{\mathbb R}^2 上の有界閉集合上の連続関数は
最大値と最小値を持つということです.({\mathbb R}^2 だけではなく一般に {\mathbb R}^n で成り立ちますが、あまり一般的な空間はここでは扱いません.)
本当は最初に有界閉集合であることをチェックする必要があります.
閉集合であることは、以前やった様な示し方もありますが、ここでは、多項式(一般に連続関数)の零点集合などは、閉集合になります.
また、有界であるかどうかは、g(x,y)=0 なる多項式の場合、
x^ny^mg(1/x,1/y)=0 なる式、(ここで、n,mx,yのそれぞれ最高次の係数とする)が
(x,y)=(0,0) なる点がなければ、有界ですが、ここではあまりそれらにはこだわりません.



x^2+y^2-1=0 となる条件の元、xy などの関数の最大値を求めよ.

のような問題を解きます.例えば、x=\cos\theta, y=\sin\thetaとしておけば、
xy=\cos\theta\sin\theta=\frac{1}{2}\sin2\theta となるので、
最大値は 1/2で、
\theta=\frac{\pi}{4},\frac{5\pi}{4} のとき、
最小値は、-1/2 で、
\theta=\frac{3\pi}{4},\frac{7\pi}{4} のとき、
となり、簡単に求まりますが、このように極座標表示がすぐ求められるわけではありません.そのような場合も含めて、関数のまま、行います.

最大、最小の求め方
f=xy とし、g=x^2+y^2-1 としておきます.
このとき、H=f-\lambda g=xy-\lambda(x^2+y^2-1) とします.

このとき、fg=0 での臨界点(微分がゼロになる点)は、
H(x,y,\lambda) での3変数関数としての臨界点である.

これが、手法の核となる部分です.
本当は最大最小を求めたいのに、微分が消えているだけの臨界点を求めるのは手法として弱いと思うかもしれませんが、最大、最小は臨界点であることを考慮し、最大と最小があらかじめ存在が確定している場合は、臨界点を求めるだけで意味があります.

臨界点の方程式を作って見ると、
\begin{cases}H_x=y-2\lambda x\\H_y=x-2\lambda y\\H_\lambda=-x^2-y^2+1\end{cases}
となります.この方程式を解きますが、授業で示したように、最初の2つは、x,y についての線形な方程式であり、3番目の方程式から、(x,y)\neq (0,0) が満たされるので、
この線形方程式の行列式 (-2\lambda)(-2\lambda)-1=0 でなければなりません.
よって、\lambda=\frac{1}{2}, -\frac{1}{2} となります.
このとき、もう一度式に戻して、(x,y) を求めると、
\lambda=\frac{1}{2} の場合、(x,y)=(\pm\frac{1}{\sqrt{2}},\pm\frac{1}{\sqrt{2}}) (複合同順)
\lambda=-\frac{1}{2} の場合、(x,y)=(\pm\frac{1}{\sqrt{2}},\mp\frac{1}{\sqrt{2}}) (複合同順)
となり、それらは、最大、最小に対応することになります.

\lambda の値が3つ現れた時は、そのうちの最大のものが最大値であり、最小のものが最小値に対応します.真ん中の値がある場合は、その点は、極大、極小( y=x^3 の原点の様に停留点かもしれません)かもしれませんが、それがすぐにどちらかはわかりません.
g(x,y)=0 を一度、陰関数の定理で、陰関数に直してから議論する必要があります.

円盤上の最大、最小

円盤(有界で閉集合)の内部上での最大最小を求める問題も発展問題としてやりました.
ここでは、例を挙げてはしませんが、まとめておきます.

円盤を D=\{(x,y)|x^2+y^2\le 1\} (ディスクの D )としておくと、
A=\{(x,y)|x^2+y^2< 1\} とし、
B=\{(x,y)|x^2+y^2= 1\} とします.

このとき、A\cup B=D の最大値最小値は、A,B のそれぞれの最大値、最小値のうち大きい方(同じ場合はその値)となります.

ただ、A の方は、有界閉集合ではありません(有界だが、開集合)ので、最大、最小が存在しないかもしれません.実際授業中でやった通り、f(x,y)=xy は内部 A で最大値、最小値を持ちませんでした.

なので、A の方の最大値、最小値を考慮する必要があるかどうかは、もちろん、最大値、最小値が存在するときに限ります.
B の方は必ず、最小値最大値がありますので、全体 D としては必ず、最大値最小値は存在します.

参考のため、以下のページも挙げておきます。

  • 微積分II演習(2015年度)
  • 微積分II演習(2014年度)ここでも円盤上の最大最小を扱っています.(今回授業でやった同じ例を扱っています.)


トポロジー入門演習(第7回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

先日手習い塾にいきましたら、
問題3-21を解いている人が多かったので、ここでもう一度やっておきます。

ここに、簡単な問題の解答を載せていくので、発表ゼロの人はまずはこちらから解き始めて(発表し始めて)ください.
今回は、(3,4,5),(6,7) の問題を一つずつ紹介しました.

問題3-21
X を距離空間とする.A の内点 x を、x を中心とした A に含まれる \epsilon-球が存在することと定義し、 A の内部 A^\circA の内点全体とする.また、 A の触点(任意の \epsilon>0 に対して U_\epsilon(x)\cap A\neq \emptyset となる点全体)を \bar{A}A の閉包という.このとき、以下のそれぞれに答えよ.
(1)  A^\circ は、A に含まれる最大の開集合であることを示せ.
(2) \bar{A}A を含む最小の閉集合であることを示せ.

つまり、A^\circ=\{x\in X|\text{ ある }\epsilon>0\text{ に対して }U_{\epsilon}(x)\subset A\}
となる集合とすると、(1) は、A^\circA に含まれる開集合であり、それが、A に含まれるものの中で、最小であるということを示せということです.


(1) についてやると、まず、A^\circA の部分集合であることは、x\in A^\circ に対して、x\in U(x,\epsilon)\subset A となることから明らかです.次に A^\circ が開集合であることを示します.A^\circ が開集合であることは、A^\circ の任意の点 x に対して U(x,\epsilon)\subset A^\circ を満たすような \epsilon>0 が存在することです.

条件から、U(x,\epsilon)\subset A となる \epsilon>0 は存在するのだから、
あとは、そのような U(x,\epsilon)\subset A^\circ となることを示せばよいことになります.

しかし、U(x,\epsilon) が開集合であることを使えば、
任意の y\in U(x,\epsilon) に対して、ある \delta が存在して、U(y,\delta)\subset U(x,\epsilon) となります.U(x,\epsilon)\subset A であることと A^\circ の定義から
y\in A^\circ であることがわかります.

ゆえに、U(x,\epsilon)\subset A^\circ となることがわかりました.
つまり、A^\circ は開集合であることがわかりました.

よって、A^\circ は開集合であり、A に含まれるすべての開集合が含まれている
ということもわかったと思います.

要するに、\cup\{S|A\text{ に含まれる開集合}\}\subset A^\circ
であることもわかります.A^\circA の開集合であることから、
A^\circ\subset \cup\{S|S\text{ は }A\text{に含まれる開集合}\}\subset A^\circ
となります.

ゆえに、A^\circ = \cup\{S|S\text{ は }A\text{に含まれる開集合}\} となります.
つまり、A^\circA に含まれる開集合で、A に含まれる開集合をすべて含んでいるので、A^\circ は、A に含まれる最大の開集合ということになります.

最大であることを実際証明することもできます.

x\in A-A^\circ が、あるA に含まれる開集合 B の点であるとすると、
ある \epsilon>0 が存在して、U(x,\epsilon)\subset B\subset A となります.
A^\circ の定義から、x\in A^\circ であることから条件に反します.

同じようにして、(2) についても証明することができます.


次に、6,7の問題でも手習い塾でやっていた問題は、

問題6-1-1の
{\mathbb R} の部分集合の族を \mathcal{O}=\{(a,\infty)|a\in {\mathbb R}\cup\{-\infty\}\}\cup\{\emptyset\}
とすると位相空間であることを示せ.

という問題でした.(最初配ったプリントにはミスプリがありましたので直しました.最後の部分は \cap ではなく、\cup が正しいです.)

X が位相空間であることを示すには、X の部分集合族 \mathcal{O} が以下の性質を満たすことを示せば良いことになります.
[1] \emptyset \in \mathcal{O} かつ X\in\mathcal{O}
[2] 有限個の U_1,\cdots,U_n\in \mathcal{O} に対して、U_1\cap U_2\cdots\cap U_n\in\mathcal{O} となる.
[3] 任意個の U_\lambda\in\mathcal{O} に対して、\cup_{\lambda\in\Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O} となる.

上の6-1-1についてやって見ると、
[1] については \emptyset\in \mathcal{O},(-\infty,\infty)=X\in \mathcal{O} であるから成り立つ.
[2] について、(a_1,\infty),\cdots,(a_n,\infty)\in\mathcal{O} とし、\cap_{i=1}^n(a_i,\infty) を考える.a_1\cdots,a_n の中で -\infty が一つでもあれば、 のぞいて考えても構わない.(もし、そのような物しかなければ、この共通集合は (-\infty,\infty) となりこのときも[2] は成り立っている.)
任意の i に対して、-\infty<a_i<\infty として構わない.このとき、\cap_{i=1}^n(a_i,\infty)(\max\{a_i\},\infty) となるので、\cap_{i=1}^n(a_i,\infty)\in\mathcal{O} となる.
[3] \cup_{\lambda\in\Lambda}(a_\lambda,\infty) を考える.この中で、一つでも、(-\infty,\infty) があるとすると、この和集合は (-\infty,\infty) になる.なので任意の \lambda\in\Lambda に対して a_\lambda\neq -\infty と仮定してよい.
このとき、\cup_{\lambda\in\Lambda}(a_\lambda,\infty)=(\inf\{\lambda|\lambda\in\Lambda\},\infty) となる.
実際、a\in \cup_{\lambda\in\Lambda}(a_\lambda,\infty) とすると、ある\lambda\in \Lambda に対して、a_\lambda<a が成り立つので、\inf\{a_\lambda|\lambda\in \Lambda\}<a が成り立つ.
よって、\cup_{\lambda\in\Lambda}(a_\lambda,\infty)\subset (\inf\{\lambda|\lambda\in\Lambda\},\infty)
逆に、a\in (\inf\{\lambda|\lambda\in\Lambda\},\infty) とすると、\inf\{\lambda|\lambda\in\Lambda\}<a となり、a\{\lambda|\lambda\in\Lambda\} の下界ではないので、ある \lambda\in\Lambda に対して、a_\lambda<a となる.よって、
a\in \cup_{\lambda\in\Lambda}(a_\lambda,\infty) がいえる.
よって、\cup_{\lambda\in\Lambda}(a_\lambda,\infty)=(\inf\{\lambda|\lambda\in\Lambda\},\infty) がなりたつ.
つまり、\cup_{\lambda\in\Lambda}(a_\lambda,\infty)\in \mathcal{O} が成り立ったので、[3]が成り立つことがわかる.