2016年4月28日木曜日

微積分I演習(第3回)

[場所1E101(水曜日4限)]


    今日は

    • 数列の収束を $\epsilon-N$ 論法を使って示す.
    • 関数の連続性を $\epsilon-\delta$ 論法を使って示す.
    ことを行いました.微積や数学基礎の講義を聞いているだけではどのように示すのか?その意味などわかりませんので、今日は実践演習となったと思います.$\epsilon-N$ の方はみなさんすぐ、解けたと思いますが、$\epsilon-\delta$ の方は少し尻切れになって解く時間がありませんでした.休み明けの授業ではちゃんと取り上げます.

    授業中に言いましたが、数学は、正しいことの積み重ねでできています.
    その積み重ねの最初に来るのが定義です.高校で習ったようななんとなく概念の一つに
    収束と連続があります.この2つは、いくらでも近くに近づくとか、繋がっているとか
    抽象的な言葉でごまかしてきましたが、これも数学とするのなら、定義から積み重なった
    ものでなければなりません.そのため、まずは、収束と連続の定義から始める必要があります.

    また、先週の収束判定定理は、$a_n$ が単調増加で上に有界であれば収束するという"定理"です.なので、収束判定定理は、この数列の収束の定義から証明できるものです.論理的には、この定理を用いれば、定義にわざわざ戻る必要はなくて、使いやすい収束判定定理を用いればよいわけです.今回学ぶものは、収束判定定理に戻らず、本家本元の定義に戻って証明する手法です.

    $\epsilon-N$ 論法

    数列 $a_n$ が $a$ に収束するとは、いくらでも $a_n$ が $a$ に近くなることを定義すればよいわけですが、次のようになります.

    任意の正の実数 $\epsilon>0$に対して、ある $N\in {\mathbb N}$ が存在して、$n\ge N$ なるすべての整数 $n$ に対して、
    $$|a_n-a|<\epsilon$$
    となる.

    これは、前回のブログ(リンク)にも書きました.
    つまり、$a$ のどんなに近くにも、ある一定の $N$ より先の"全て"の $n$ において $a_n$ が
    含まれるということです.

    例えば、
    $$1,\frac11,2,\frac12,3,\frac13\cdots$$
    とすると、$0$ のどんなに近くにも、この数列の元が含まれますが、どんなに $n$ を大きくしてやっても、そこから先、全てが $0$ の近くに含まれるようにはできません.
    なので、この数列は $0$ に収束することはできません.

    この数列が $0$ に収束しないことを証明するには、上の定義の否定の命題が満たさればよいことになります.数列の収束の否定を書きます.

    定義6(数列 $a_n$ が $a$ に収束しないこと)
    ある実数、$\epsilon>0$ に対して、任意の $N$ に対して、$n>N$ なるある整数に対して $|a_n-a|\ge \epsilon$ が成り立つ.

    となります."任意の" と "ある" がひっくり返っていることと、最後の結論が否定されていることに注意してください.


    上の数列にもどって、この数列が $0$ に収束しないことを証明します.
    (証明)
    まず、$\epsilon=1$ とし、任意の $N\in {\mathbb N}$ をとります.そして、$n$ を $n\ge N$ なる奇数をとります.もちろんそのような $n$ は存在します.よって、そのような $n$ に対して、$a_n\ge 1$ ですから、 $|a_n-0|=|a_n|\ge 1=\epsilon$ が成り立つので,
    $a_n$ は $0$ に収束しません.$\Box$


    さて、授業では、数列 $1/n$ が $0$ に収束することを証明しました.数列収束の証明のプロトタイプとなりますので、ここでももう一度やってみます.
    (・・・)で書かれたものは証明の一部ではなく、単なるコメントです.


    証明
    まず、任意に $\epsilon>0$ をとります.(ここで任意にとったものを固定しています.)
    このとき、アルキメデスの原理により、$\frac{1}{\epsilon}<N$ なる整数が存在します.
    (厳密に書く場合は「アルキメデスの原理により」は入れましょう.最初のうちは分かりやすくいれてもよいです.そのうち、省略しても構いません.)

    ここで、$n\ge N$ なる任意の整数 $n$ に対して、
    $|a_n-0|=\frac{1}{n}\le \frac{1}{N}<\epsilon$
    となり、収束の定義により、 $a_n=\frac{1}{n}$ は $0$ に収束します.$\Box$


    途中の $n$ も任意にとって固定しています.最後の $\Box$ は証明終了を意味しますが、つけなければならないこともありません.

    このとき、$\lim_{n\to \infty}\frac1n=0$ もしくは、 $a_n\to 0\ \ (n\to \infty)$ とかきます.

    証明の一番のポイントは、数列によって $N$ をどのようにとるのかを工夫するところでしょう.

    例えば、$a_n=\frac{1}{\log n}\ \ (n=2,3,4,\cdots)$ であったとすると、$e^{1/\epsilon}<N$ などとする必要があります.アルキメデスの原理を使えば、$\epsilon>0$ がどんな値でも必ず $N$ が存在します.



    この定義を使えば、例えば、次の命題を示すことができます.
    これは第3回の演習問題に載せたので理解して誰か発表しても構いません.

    命題7(積の数列の極限)
    $a_n\to a$ かつ $b_n\to b$ のときに、$a_nb_n\to ab$ が成り立つ.

    まず、$b_n\to b$ なる数列 $b_n$ があったときに、$b_n$  は実数上で有界であることを使うとやりやすいです.
    つまり、ある実数 $M$ が存在して、任意の $n\in{\mathbb N}$ に対して、$|b_n|<M$ が成り立つということです.この証明は、数学基礎の方でやっていると思うので省略します.

    (証明)
    仮定として、まず、$a_n\to a$ かつ $b_n\to b$ が成り立つので、任意の $\epsilon_1,\epsilon_2>0$ に対してある、$N_1,N_2\in{\mathbb N}$ が存在して、
    $n_1\ge N_1$ なる任意の整数 $n_1$ と $n_2\ge N_2$ なる任意の整数 $n_2$ に対して、
    $|a_{n_1}-a|<\epsilon_1$ かつ $|b_{n_2}-b|<\epsilon_2$ が成り立ちます.

    次に、$a\neq 0$を仮定します.
    任意の $\epsilon>0$ をとります.さらに、上の仮定において、
    $N_1,N_2$ を、$\epsilon_1=\frac{\epsilon}{2M}$ とした時の $N_1$ と、$\epsilon_2=\frac{\epsilon}{2|a|}$ としたときの $N_2$ をとります.
    さらに、$N=\max\{N_1,N_2\}$ としておけば、
    $n>N$ なる任意の $n$ に対して、三角不等式と仮定を用いることで、
    $|a_nb_n-ab|=|(a_n-a)b_n+a(b_n-b)|<|a_n-a||b_n|+|a||b_n-b|<\frac{\epsilon}{2M}M+|a|\frac{\epsilon}{2|a|}=\frac{\epsilon}{2}+\frac{\epsilon}{2}=\epsilon$
    となります.

    よって、$a_nb_n\to ab$ が成り立ちます.

    $a=0$ の場合は、途中の $N_1,N_2$ の取り方として、$\epsilon_1=\frac{\epsilon}{M}$ としておけば、$N_2$ はどんな値でも、同じように証明をすることができます.$\Box$

    途中、証明がトリッキーな(意図的な)感じがしますが、$\epsilon-N$ など、この手の命題の証明は大体いつもこんな感じです.

    $\epsilon-\delta$ 論法

    $\epsilon-\delta$ 論法では関数の連続性を証明することができます.
    まずは、関数の連続性の定義です.

    定義8(関数の連続性)
    関数 $f(x)$ が $x=x_0$ で連続であるとは、
    任意の $\epsilon>0$ なる実数 $\epsilon$ に対して、ある正の実数 $\delta$ が存在して、$|x-x_0|<\delta$ なる任意の $x$ は、 $|f(x)-f(x_0)|<\epsilon$ を満たす.

    $(a,b)$ で、実数上の区間で、$a$ から $b$ までのものを表すことにします.
    ただし、どちらの境界点も含まれないものです.これを開区間といいます.

    定義8の意味することは以下のようになります.
    値域の方で、$f(x_0)$ を中心とした任意の区間 $(f(x_0)-\epsilon,f(x_0)+\epsilon)$ をとってやっても、 $f$ によってその区間に収まるような定義域の方での $x_0$ を中心とした区間 $(x_0-\delta,x_0+\delta)$ が存在するということを意味しています.

    このとき、$(f(x_0)-\epsilon,f(x_0)+\epsilon)$ に収まる点があるというのではなく、$(x_0-\delta,x_0+\delta)$ の全ての点が、$(f(x_0)-\epsilon,f(x_0)+\epsilon)$ に収まるように $\delta$ を選んでこなければならないということです.


    定義8を否定することで、関数の不連続性を示す命題は、次のようになります.

    定義9(関数の不連続性)
    関数 $f(x)$ が $x=x_0$ で連続でないとは、
    ある $\epsilon>0$ なる実数 $\epsilon$ に対して、任意の正の実数 $\delta$ に対して、$|x-x_0|<\delta$ なるある $x$ に対して、 $|f(x)-f(x_0)|\ge\epsilon$ を満たす.

    例えば、
    $$f(x)=\begin{cases}x&x\ge 0\\x-1&x< 0\end{cases}$$
    なる関数を考えてください.グラフを書いてみれば、見るからに連続ではないですが、

    $f(0)=0$ を中心とした区間 $(f(0)-\frac12,f(0)+\frac12)$ を考えると、その区間の間に入ってくる $0$ を中心とした開区間が存在しないことがわかります.
    というのも、$f$ によって、$(-\frac12,\frac12)$ に移ってくる実数は、$0$ もしくは、区間$(0,\frac12)$ ということになります.特に負の数は含まれません.

    一方、 $0$ のどんなに近くの区間、$(-\delta,\delta)$ をとっても、負の数は必ず含まれてしまいます.なので、$f$ によって、そのような値は $(-\frac12,\frac12)$ の幅の中に入れることはできないのです.

    これは、上の関数が不連続であることの説明です.証明に十分なものだけ書けば、下のようになります.

    証明
    $\epsilon=\frac12$ とおく.このとき、$\delta>0$ なる任意の実数をとる.このとき、
    $|x-0|<\delta$ なる $x$ として、$-\delta/2$ を取る.この $x$ は、
    $|f(x)-f(0)|=|-\frac{\delta}{2}-1-0|=\frac{\delta}{2}+1>1$
    となり、 $f(x)$ の不連続性がわかる.$\Box$

    この証明が何を言っているのか、グラフを書きながら考えてみて下さい.

    次は連続である方の証明ですが、授業で取り上げた $y=2x^2$ をもう一度やってみます.

    $y=2x^2$ が $x=1$ で連続であること.
    (証明)
    $\epsilon>0$ を任意にとります.
    このとき、$0<\delta<\frac{-2+\sqrt{4+2\epsilon}}{2}$
    なる実数 $\delta$ をとる.
    $x$ を $|x-1|<\delta$ なる任意の実数とする.
    $|x-1|<\delta$ から、$|x+1|=|x-1+2|<|x-1|+2=\delta+2$ が成り立つ.
    よって、
    $|f(x)-f(1)|=2|x-1||x+1|<2\delta(2+\delta)<\epsilon$ が成り立つ.$\Box$

    この証明もきちんとわかるまで読んでみてください.

    $\delta$ をどうしてそのようにとったのかというと、
    最後の不等式 $2\delta(2+\delta)<\epsilon$ を示すには、
    $\delta$ が $2\delta^2+4\delta-\epsilon<0$ なる正の実数であることを示せばよいことに
    なります.
    これは、$\frac{-2-\sqrt{4+2\epsilon}}{2}<\delta<\frac{-2+\sqrt{4+2\epsilon}}{2}$
    が成り立てばよいですから、そのような $\delta$ を取ったことになるのです.

    本当は、不等式を示すだけならきっちり2次方程式を解く必要ないのですが....
    このページの最後でそのような例も載せます.

    また、途中の $|x+1|\le |x-1|+2$ はいわゆる三角不等式 $|A+B|\le |A|+|B|$ です.
    三角不等式は微積ではよくでてきます.


    上の方程式をきっちりとかなくてもよい方法は以下のようにやります.

    $y=x^3$ は $x=1$ で連続である.
    (証明)
    $\epsilon>0$ を任意にとる。
    $0<\delta<\min\{1,\frac{\epsilon}7\}$ としてとると、
    $|x-1|<\delta$ が成り立つ任意の $x$ に対して、三角不等式を使って、
    $|x^2+x+1|\le |(x-1)^2+3(x-1)+3|\le \delta^2+3\delta+3$ が成り立ち、
    $|x^3-1|=|x-1||x^2+x+1|<\delta(\delta^2+3\delta+3)<7\delta<\epsilon$
    となり、$y=x^3$ は $1$ で連続であることがわかる.$\Box$

    上の $y=2x^2$ のときのように、3次方程式をといておなじようなことをする
    ということは、面倒です.基本、不等式が示せればよいので、このようにしました.
    一応解説をすれば、
    $\delta<\min\{1,\frac{\epsilon}7\}$ としたおかげで、$\delta<1$ かつ $\delta<\frac{\epsilon}{7}$
    が成り立つので、
    $\delta^2+3\delta+3<7$ とできたということです.



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