2016年4月16日土曜日

線形代数続論演習(第1回)

[場所1E103(金曜日3限)]


HPに行く.


今日から線形代数続論と続論演習が始まりました.
この授業では、線形代数IIの復習をしながら、ジョルダン標準形というものを
学習する授業です.

授業の最初にも言いましたが、この授業は、

  • 連立一次方程式の解法
  • ベクトル空間の定義
  • 固有値、固有ベクトル
は知識として仮定されています.


去年度の反省を生かして、今回は発表する時間を多く設けようと思っています.
説明とその演習だけで終わってしまう回もあるかと思いますので、その時は直前におしらせします.しばらく復習が続きそうですので、来週もこのままの状態のまま進みます.

今日は、線形代数の復習として、
  • 連立一次方程式の解き方(一般のベクトル空間の場合も含めて)
  • いくつか言葉の定義.
など行いました.今回の演習の宿題は基本的には、無説明でできるものばかり(復習ということ)です.

連立一次方程式の解法

連立一次方程式が解けないと話にならないので、まずこれから話をしました.
増岡先生の講義では、ジョルダン標準形による正方行列の分類、ベクトルの一次結合の書き方などを教わったようですね.


では、連立一次方程式の解き方をここで復習します.

数ベクトル空間の場合

連立一次方程式は、通常、
$$\begin{cases}2x_1+x_2-x_3=0\\x_1+x_2+x_3\end{cases}$$
のように書かれています.一般には、行列 $A$ に対して、$A{\bf x}=0$ のように書かれます.授業中では、結構単純な形をしてしまったので、ここでは少し複雑にしました.

よって、このとき、行列を使って書くと、
$$A=\begin{pmatrix}2&1&-1\\1&1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}=0$$
のように書かれます.この $2\times 3$ 行列の基本変形をします.

$\begin{pmatrix}2&1&-1\\1&1&1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}0&-1&-3\\1&1&1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&1&1\\0&1&3\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-2\\0&1&3\end{pmatrix}$

のようになります.ここで、最後の行列ののうち、$\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$ や $\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix}-2\\3\end{pmatrix}$ に分けて考えます.

前者(1つ目と2つ目)は、${\mathbb R}^2$ の標準基底の形で、後者(3つ目)はそれらの一次結合の形をしています.この標準基底の数は行列のランクといいます.
$\text{rank}(A)$ と書きます.$A$ は考えている行列のことです.

このとき、方程式を
$$\begin{cases}x_1=2x_3\\x_2=-3x_3\end{cases}$$
のように整えると、$x_3$ が独立変数で、$x_1,x_2$ が従属変数であることが分かります.
つまり、解の自由度は、独立変数の数なので、$3-\text{rank}(A)$ ということになります.

一般には、変数が $n$ 個あれば、 
$$n-\text{rank}{A}$$
解の自由度ということになります.
このランクが線形代数(行列)における最重要概念(増岡先生の言葉通り)です.


解法に戻れば、解の自由度に適当なパラメータを置くことで、
$\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}2\\-3\\1\end{pmatrix}$
のようになります.よって、生成系の形で書けば、
$\{{\bf x}\in {\mathbb R}^3|A{\bf x}={\bf 0}\}=\left\langle \begin{pmatrix}2\\-3\\1\end{pmatrix}\right\rangle$
とかくことができます.

ベクトル空間の場合

授業中にやった問題A-1-4は、前年度の線形代数II演習の定期テストでの問題で、意外にも解けなかった問題(正答率50パーセント程)です.授業中でも詳しくやりました.
そのとき書いたブログがありますので、コチラの中の問題15-3をみてください.

${\mathbb R}[x]_2$ の基底 $1,x,x^2$ を使って
$f(x)=ax^2+bx+c$
と書いておきます.

このとき、方程式 $f(x)-f(1-x)=0$ を書き下すと、

$2(a+b)x-a-b=0$ となります.
このとき、方程式と思って、$x$ の値を求めるのではなく、
このイコール $=$ は多項式として等しいというイコールと考えてください.
つまり、ベクトル空間のベクトルが等しいというイコールです.

数ベクトル空間では、$(0,2(a+b),-a-b)=(0,0,0)$ とおなじことです.
よって、各係数が等しいことになり、$2(a+b)=0$ かつ $a+b=0$ が成り立ちます.

つまり、この $f(x)-f(1-x)=0$ の連立一次方程式は

$$a+b=0$$

となります.
よって、係数行列は、
$$\begin{pmatrix}1&1&0\end{pmatrix}$$
となり、これはすでに簡約化されており、
上のように整理すると、
$$a=-b$$
となります.
変数は $a,b,c$ の3つあり、解の自由度は、 $3-\text{rank}(A)=2$ となります.
$b,c$ が独立に動ける変数となり、それらを $c_1,c_2$ とすることで、
$$\begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}=c_1\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}+c_2\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}$$
となり、基底 $x^2,x,1$ を戻すと、
$$\left\langle(x^2,x,1)\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix},(x^2,x,1)\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}\right \rangle=\langle -x^2+x,1\rangle$$
となります.
これは、$\langle x^2-x,1\rangle$ とかいても同じです.
$\langle -x^2+x,1\rangle=\langle x^2-x,1\rangle$ ですので、答えはどちらでも構いません.


(別解)
また、別解として、$F:{\mathbb R}[x]_2\to {\mathbb R}[x]_2$ なる線形写像を
$F(f(x))=f(x)-f(1-x)$ として定義したとき、$\text{Ker}{F}$ を考えればよいことになります.

この線形写像の表現行列を求める.
$F(1)=0$, $F(x)=x-(1-x)=2x-1$, $F(x^2)=x^2-(1-x)^2=2x-1$
となるので、
$$(F(x^2),F(x),F(1))=(x^2,x,1)\begin{pmatrix}0&0&0\\2&2&0\\-1&-1&0\end{pmatrix}$$

この表現行列を簡約化する.そうすると、
$\begin{pmatrix}0&0&0\\2&2&0\\-1&-1&0\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&1&0\\0&0&0\\0&0&0\end{pmatrix}$
よって、
$\begin{pmatrix}1&1&0\\0&0&0\\0&0&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$
となる方程式を解くことになり、同じように、$a=-b$ が得られる.
あとは、上に書いたようになる.


宿題でも同じような問題を作りましたので、どちらのやり方でも良いので、
同じようにやってください.

今回の宿題について

(1-1)
は巾零行列の固有多項式を求める問題ですが、固有多項式の解はすべて固有値ですから、
問題は、巾零行列の固有値がすべて 0 であることを示せば良いことになります.

(1-2)
上でやったようなやり方をしてください.

(1-3)
(1) は帰納法を使うかしてください.
(2) は基底であるための必要十分条件は同じプリントの(まとめ)の1-2をよく読んで適用してください.

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