2022年1月27日木曜日

トポロジー入門(第12回)

[場所:オンライン(月曜日3限)]



今回は、連結性の残りと分離公理についてやりました。

連結性

連結に対して、連結成分があったように、
弧状連結に対しても弧状連結成分があります。
位相空間に対して、$a\in X$ に対して
弧 $f:[0,1]=I\to X$ で $f(0)=a$ となるもので、
$f(1)$ を集めたもの $\{f(1)|f:I\to X,f(0)=a\}$ を
$a$ の弧状連結成分といい、$C_{\text{path}}(a)$ とかきます。

例えば、前回の定理11.8で構成した$I\cup J$ は
$I, J$ がそれぞれが弧状連結成分になります。
ゆえに、弧状連結成分は閉集合になるとは限らず、開集合になるとも
限りません。
また、$a$ の弧状連結成分は、$a$ を含む弧状連結集合の中で最大のもの
となります。

また、次の連結性についても解説しました。

定義12.3
位相空間$(X,\mathcal{O})$ が $\forall x\in X$ と、
任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
ある連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$U\subset V$ を
満たすとき、$(X,\mathcal{O})$ は局所連結であるという。

局所連結であることは、
基本近傍系として連結なものが取れることと同値になります。
特に、近傍として連結なものが取れる必要があります。

同様に、以下の定義をすることもできます。

定義12.4
位相空間$(X,\mathcal{O})$ が $\forall x\in X$ と、
任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
ある弧状連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$U\subset V$ を
満たすとき、$(X,\mathcal{O})$ は局所弧状連結であるという。


連結ならば弧状連結であり、
局所連結ならば局所弧状連結になることも同様です。
また、同様に、各点において弧状連結な近傍が取れます。
これ以外に関係がないのかと思われるかもしれませんが
以下の定理があります。

定理12.1
連結かつ局所弧状連結なら弧状連結である。

証明
$a\in X$ に対して、$C_{\text{path}}(a)$ が開かつ閉集合であることを示せば、
連結性から $C_{\text{path}}(a)=X$ となり $X$ が弧状連結であることがわかります。
$\forall x\in C_{\text{path}}(a)$ に対して、弧状連結な近傍が取れるので、
それを $V$ とすると、最大性から、
$V\subset C_{\text{path}}(x)$ であることがわかります。
よって、$x\in C_{\text{path}}(a)$ は内点であるから、$C_{\text{path}}(a)$ は
開集合となります。

$x\in\overline{ C_{\text{path}}(a)}$ とします。
任意の近傍 $V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
弧状連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、
$U\subset V$ であることがわかります。
ここで、$U\cap C_{\text{path}}(a)\neq \emptyset$
であり、$U\cup C_{\text{path}}(a)$ も弧状連結であるから、
弧状連結成分の最大性から、$U\subset C_{\text{path}}(a)$ が成り立ちます。
特に、$x\in C_{\text{path}}(a)$ が成り立ちます。
よって、$\overline{C_{\text{path}}(a)}\subset C_{\text{path}}(a)$ であることがわかります。
また、$C_{\text{path}}(a)\subset \overline{C_{\text{path}}(a)}$ であることから、
$\overline{C_{\text{path}}(a)}=C_{\text{path}}(a)$ であることがわかります。
よって、$C_{\text{path}}(a)$ が閉集合であることがわかります。

よって、$C_{\text{path}}(a)$ が開かつ閉集合であることがわかりました。$\Box$

以上より、連結性を4つ紹介して、その間に成り立つ定理について
まとめましたが、実際、以下のようにそれらが成り立つ位相空間が存在します。
以下にそのような位相空間の例を挙げておきます。


 連結局所連結弧状連結局所弧状連結
1点 
(※) ◯  ◯ ×
ワルシャワ円××
${\mathbb L}’$××
定理11.8×××

連結性を満たさない例については、各例に1点を加えれば実現できますので省略しています。
ワルシャワ円(ワルシャワサークル)とは、定理11.8(トポロジストのサインカーブ)の $I,J$ 
をつなげて連結にしたものを言います。こちらにその絵があります。
(※) の空間は ${\mathbb R}$ 上の補可算位相空間の cone があります。
位相空間 $X$ のcone $C(X)$とは $X\times I$ に $X\times \{1\}$ を1点に
潰して得られる商位相空間です。

また、補可算位相空間とは、開集合として補集合が高々可算個の点集合のものとする位相空間で、
${\mathbb R}$ 上で考えたものは、連結かつ局所連結だが、弧状連結ではなく局所弧状連結ではない空間になります。そのconeをとることで弧状連結だけが満たされて、
この条件を満たす空間ということになります。

また、${\mathbb L}$ は長い直線と呼ばれ、$[0,1)$ を非可算無限個つなげてできる
位相空間です。可算無限個つなげてできる位相空間は${\mathbb R}$ と同相になります。
それもこちらに解説があります。
ここで、 ${\mathbb L}'$ は無限遠点 $\{\infty\}$ を付け加えてできる空間になります。
付け加える(コンパクト化と言います)ことはまだ習っていませんが、$(0,1)$ に
1を加えて $(0,1]$ を作る操作だと考えてください。


分離公理

後半はハウスドルフ空間についておこないました。
位相空間の部分集合 $A,B$ が開集合によって分離されるとは、
$U,V$ を開集合として、$A\subset U$, $V\subset B$ を満たし、$U\cap V=\emptyset$
を満たすことを言います。

定義12.5
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の任意の相異なる点 $p,q\in X$ に対して、
開集合 $U,V$ が存在して、$p\in U,q\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$
を満たす時、 $X$ はハウスドルフ空間という。

つまり、任意の相異なる2点が開集合によって分離される時にハウスドルフ空間と
言うのです。
公理「任意の相異なる2点が開集合によって分離される」を $T_2$ 公理ともいうので、
ハウスドルフ空間のことを $T_2$ 空間ということもあります。

例12.4
距離空間はハウスドルフ空間になります。
距離空間の相異なる点 $p,q\in X$ に対して、
$2\delta=d(p,q)$ とすることで、$p,q$ には、$B_d(p,\delta)$ と $B_d(q,\delta)$
が $p,q$ を分離することがわかります。

例12.5
$n$ 点集合が離散位相を持つならそれはハウスドルフ空間であることもすぐわかります。
逆に、有限点集合がハウスドルフなら離散位相空間になります。

よって、有限点集合上の離散位相ではないものは皆 $T_2$ 公理を満たさないことになります。

また、ハウスドルフ空間は位相的性質であることは簡単にわかります。

定理12.3 
ハウスドルフ性は位相的性質である。

また、ハウスドルフ空間の同値な言い換えがsいくつかあります。

定理12.3, 12.4
ハウスドルフ空間であることは以下のそれぞれと同値
  • $\Delta=\{(x,x)|x\in X\}$ が閉集合である。
  • $\{x\}=\cap \{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$ である。

(証明)ハウスドルフ空間であれば、$(p,q)\in \Delta^c$ は、$p\neq q$ であるから、
開集合 $U,V$ が存在して、$p\in U,q\in V$ を満たし、$U\cap V=\emptyset$ を満たす。
よって、$U\times V\subset \Delta^c$ であるから、$(p,q)\in \Delta^c$ は
内点。つまり$\Delta^c$ は閉集合。

逆に$\Delta^c$が閉集合であれば、$p\neq q\in X$ に対して、
$(p,q)\in W\subset \Delta^c$ となる開集合 $W$ が存在して、
直積位相から、$(p,q)\subset  U\times V\subset W$ が成り立ちます。
$U\times U\cap \Delta^c=\emptyset$ であるから、
$U\cap V=\emptyset$ となり、$X$ はハウスドルフ空間であることがわかります。

$X$ がハウスドルフ空間であるとします。
このとき、$x\in X$ に対して $x\neq y$ となる $y$ を取ります。
この時、開集合$U,V$ が存在して、$x\in U,y\in V$ とし、
$U\cap V=\emptyset$ となります。$x\in U\subset V^c$ であり、
$V^c$ は閉集合であるから、
$x\in U\subset \overline{U}\subset V^c$ であるから、
$y\not\in \overline{U}$ であるから特に、
$y\not\in \{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$
となる。

に、$\forall x\in X$ に対して、$\{x\}=\cap\{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$
が成り立つとすると、$y\neq y$ とすると、
$W\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$y\not\in \overline{W}$ となります。
$V=(\overline{W})^c$ また、$x\in U\subset W$ となる開集合 $U$ が存在するので、
$x\in U$ かつ $y\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ となります。
よって$X$ がハウスドルフ空間となります。$\Box$


また、次の定理を示しました。

定理12.5
$X$ を位相空間、$Y$ ハウスドルフ空間とする。
$F:G:X\to Y$ を連続写像とする。今、$D\subset X$ を稠密集合とする。
$F|_{D}=G|_{D}$ であるとすると、$F=G$ が成り立つ。

関数 $F,G$ が等しいというのは、$\forall x\in X$ に対して、
$F(x)=G(x)$ となることを意味します。

(証明) 
$F,G:X\to Y$ に対して、ハウスドルフ空間 $Y$ に対して、$F\neq G$
であるとします。
この時、$F(x)\neq G(x)$ となる $x\in X$ が存在します。
ハウスドルフ性から、$Y$ の開集合 $U,V$ が存在して、$F(x)\in U$, $G(x)\in V$
かつ $U\cap V=\emptyset$ となります。

$x\in F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ であり、$F,G$ が連続であることから、
$F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ は $X$ の開集合となります。

よって、$F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)\cap D\neq \emptyset$ ですから、
$d\in D$ であって、$d\in F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ を満たします。
よって、$F(d)\in U$ かつ $G(d)\in V$ となります。$U\cap V=\emptyset$ であることから
少なくとも、$F(d)\neq G(d)$ であるから $F|_D\neq G|_D$ となります。$\Box$

この定理から、$X$ 上の ${\mathbb R}$ に値をもつ連続関数の集合 $C(X)$
の濃度を決定することができます。

$X={\mathbb R}$ とすると、可算集合 ${\mathbb Q}$ からの連続関数
によって一意的に決定されるから、

$$|C({\mathbb R})|\le |{\mathbb R}^{\mathbb Q}|= (2^{\aleph_0})^{\aleph_0}\le 2^{\aleph_0\times \aleph_0}\le 2^{\aleph_0}$$

となります。一方、$C({\mathbb R})$ には定数関数が ${\mathbb R}$ の分だけ存在するので、
$|C({\mathbb R})|\ge |{\mathbb R}|=2^{\aleph_0}$ となり、
$|C({\mathbb R})|=2^{\aleph_0}=|{\mathbb R}|$ が成り立ちます。

つまり、$C({\mathbb R})$ は 連続体濃度存在することがわかります。


又、ハウスドルフ空間に対して以下の性質が成り立ちます。

定理12.6
ハウスドルフ空間の任意の部分空間もハウスドルフ空間である。

定理12.7
全ての因子空間がハウスドルフ空間であるような任意の直積位相空間も
ハウスドルフ空間である。

これらの証明はそれほど難しくないので、証明はここでは省略します。

また、$T_2$ 公理を弱くした次の $T_1$ 公理もあります。

定義12.6
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ が相異なる $x,y$ に対して、
$\exists U,V\in \mathcal{O}((x\in U,y\not\in U)\wedge(x\not\in V,y\in V))$
$T_1$ 公理と言う。$T_1$ 公理を満たす空間を
$T_1$ 空間という。

$T_1$ 公理は、$\exists U,V\in \mathcal{O}(x\in U,y\not\in U))$
というだけで同じことです。
というのも、$x,y$ を $y,x$ にするだけで、もう一つの条件も満たすからです。

ここで $T_1$ 空間には次の性質があります。

定理12.8
$(X,\mathcal{O})$ が $T_1$ 空間であることと、 $X$ の各点が閉集合であることは
同値である。


(証明) $X$ が$T_1$ 空間であるとします。
$\forall x\in  X$ に対して、$y\in\{x\}^c$ をとります。
この時、$\exists U\in\mathcal{O}$ が存在して、$y\in U$ かつ$x\not\in U$ 
つまり、$U\subset \{x\}^c$ となる。つまり、$y$ は $\{x\}^c$ の内点。
よって、$\{x\}^c$ は開集合であるから、$x$ は閉集合となります。

$\forall x\in X$ に対して $\{x\}$ が閉集合であるとします。
このとき、$x,y\in X $を $x\neq y$ とします。
$U=\{y\}^c$ と $V=\{x\}^c$ とおきます。
この時、$U,V$ は開集合であり、$x\in U,y\not\in U$ かつ $y\in V,x\not\in V$
となります。つまり、$X$ は $T_1$ 空間となります。 $\Box$

例12.8
$T_1$ 空間であってハウスドルフ空間ではないものが存在します。
例えば、無限集合上の補有限位相 $(X,\mathcal{O}_{\text{cf}})$ を取りますと、
$(X,\mathcal{O}_{\text{cf}})$ は $T_1$ 空間にはなりますが、
ハウスドルフ空間にはなりません。
実際、空ではない任意の開集合が交わりを持つことがわかります。

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