[場所オンライン(月曜日3限)]
今回は商位相空間と連結性について解説しました。
商位相
まず、次の定義をします。
定義10.1
(X,\mathcal{O}_X)、(Y,\mathcal{O}_Y) を位相空間とし、
f:X\to Y を全射とする。
f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X\Leftrightarrow U\in \mathcal{O}_X
が成り立つとき、f は商写像という。
すぐわかることは、商写像なら連続ということです。
上の⇐が f の連続性を意味するからです。
しかし、商写像は全射連続だけではありません。
その条件をまずは見ていきます。
商写像の例として、連続で開な全射があります。
定理10.1
f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y) が連続な全射な開写像なら、f は商写像。
(証明) 連続性は仮定されているから、写像であることの\Rightarrow
を示せばよいです。
U\in \mathcal{P}(Y) に対して、f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X
なら、f が開写像であることから f(f^{-1}(U))=U\in\mathcal{O}_Y
分かります。
よって、写像の条件の\Rightarrow が分かります。
このことから f は商写像であることがわかります。 \Box
商写像の特徴付けをここで与えます。
定理10.3
全射 f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y)
が商写像であることとは、
\mathcal{O}_Y が f を連続にする最大の位相であることの
必要十分条件である。
\mathcal{O}_Y が f を連続にする最大の位相であるとは、
\mathcal{O} が f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}) を連続とする
任意の位相なら \mathcal{O}\subset\mathcal{O}_Y であることを意味します。
(定理10.3の証明) (十分性) f が商写像であるとします。
このとき、\mathcal{O} を f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}) を連続にする任意の位相なら
\forall U\in \mathcal{O} に対して、f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X
であることから、商写像の定義から U\in\mathcal{O}_Y が分かります。
ゆえに、\mathcal{O}\subset\mathcal{O}_Y となります。このことから
\mathcal{O}_Y は f を連続にする最大の位相であることが分かります。
(必要性) \mathcal{O}_Y が f を連続にする最大の位相とする。
まず f が連続であることから、商写像の条件の\Leftarrow が成り立つ。
商写像の条件の \Rightarrow を示す。
任意の f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X に対して、
\mathcal{O}=\{\emptyset,U,Y\} は Y 上の位相であり、f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}) は連続である。
ここで、\mathcal{O}_Y は f を連続にする最大の位相であったから \mathcal{O}\subset \mathcal{O}_Y が分かる。
特に、U\in\mathcal{O}_Y である。
よって、これは、f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y) が商写像
であることを意味します。\Box
ここで、 次の定義をしましょう。
位相空間 (X,\mathcal{O}) と全射 f:X\to Y が存在したとき、
Y 上の f の最小にする位相を \mathcal{O}_f と書くことにします。
このとき、直前の定理から \mathcal{O}_f は
(X,\mathcal{O})\to (Y,\mathcal{O}_f) が
商写像となるような Y 上の位相ということになります。
そのような位相の一意性もわかることになります。
このとき、\mathcal{O}_fは、
\{U\subset Y|f^{-1}(U)\in\mathcal{O}_X\}
としても定義されます。
このようにして、全射 f:X\to Y を通して、X 上の位相から
f の連続性を通して Y 上の位相を"標準的に"作る唯一の方法があることになります。
この方法を通して、商集合 X/\sim を位相空間にすることができます。
商集合とは、集合 X 上に導入された同値関係\sim
によって作られる同値類全体の集合のことです。
\sim が同値関係であるとは、\forall a,b,c\in X に対して、
(i) a\sim a
(ii) a\sim b\rightarrow b\sim a
(iii) a\sim b かつ b\sim c ならば a\sim c
を満たす2項関係のことです。
このとき、C(a)=\{x\in X|a\sim x\} として同値類を表します。
この同値類全体の集合 \{C(a)|a\in X\} を商集合といい、
X/\sim と書くのでした。
写像 p:X\to X/\sim を
a\mapsto C(a) として定めたとき、
p を自然な射影といいます。
記号の使い方として、C(a) のことを [a] とかぎかっこを
使って書くことがあります。
今、X 上に位相 \mathcal{O} が入っていたとき、
自然な射影 p:X\to X/\sim を通して、X/\sim に
位相を入れることができます。
この時できる (X/\sim,\mathcal{O}_p) を
X/\sim 上の商位相空間(\mathcal{O}_p を商位相)といいます。
つまり、p が商写像となるような位相空間を X/\sim
上に導入したことになります。
例10.4
({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d_2})
に、同値関係として、(x_1,y_1)\sim(x_2,y_2)\leftrightarrow x_1=x_2
として導入する。自然な射影を p とします。
(x,y) を含む同値類を [x,y] と表すことにします。
このとき、構成される商位相空間 ({\mathbb R}^2/\sim,\mathcal{O}_{d_2,p})
は ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1}) と同相になります。
実際、\varphi([x,y])=f(x) として定義すると
\varphi:{\mathbb R}^2/\sim\to {\mathbb R} は同相になります。
まず写像になることは、[x,y]=[x',y'] なら、\varphi([x,y])=x=x'=\varphi([x',y'])
であるからです。
単射性は、\varphi([x,y])=\varphi([x',y']) なら、x=x' が成り立ち、
同値関係の定義から (x,y)\sim (x',y') が成り立つので、[x,y]=[x',y']
が成り立ちます。
全射性は、\forall x\in {\mathbb R} に対して z\in {\mathbb R} を
任意に選ぶと、\varphi([x,z])=x が得られることからわかります。
同相であることは次の定理の証明に一般化して証明します。
定理10.4
f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y) を商写像とする。
このとき、f(x)=f(x')\leftrightarrow x\sim x' として
X に同値関係 \sim を導入する。その自然な射影を p とする。
このとき、商位相空間 (X/\sim,\mathcal{O}_p) は
(Y,\mathcal{O}_Y) と同相である。
(証明) \varphi:X/\sim\to Y を \varphi([x])=f(x) として定義すると
\varphi が写像であることや、全単射であることは上記の例10.4と
同様の証明をすることでわかります。
また、\varphi([x])=\varphi(p(x))=\varphi\circ p(x)=f(x)
であることから、\varphi\circ p=f であることもわかります。
\varphi が同相写像であることを示そう。
(連続性) U\in \mathcal{O}_Y とすると、p^{-1}(\varphi^{-1}(U))=(\varphi\circ p)^{-1}(U)=f^{-1}(U)
より、f の連続性から p^{-1}(\varphi^{-1}(U))\in \mathcal{O}_X であることが
わかり、p が商写像であることから\varphi^{-1}(U)\in \mathcal{O}_{X,p}
であることが分かります。これは、\varphi が連続であることを意味します。
(開写像性) V\in \mathcal{O}_{X,p} に対して、
p^{-1}(V)=p^{-1}(\varphi^{-1}(\varphi(V)))=(\varphi\circ p)^{-1}(\varphi(V))=f^{-1}(\varphi(V))
であり、p が連続であることと f が商写像であることから、\varphi(V)\in \mathcal{O}_{Y}
であることがわかります。
これは\varphi が開写像であることを意味します。
全単射な連続な開写像は同相写像であるから、f は同相写像となります。\Box
これらのことから、例10.4の写像
({\mathbb R}^2/\sim,\mathcal{O}_{d_2,p})\to ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})
は同相写像であることがわかります。
ここで次の定理を用意します。
定理10.5
f:X\to Y を連続写像とする。
このとき、\tilde{f}:X\to f(X) を \tilde{f}(x)=f(x)
とするとき、\tilde{f} も連続である。
この定理は、連続写像の終域を像に縮めた写像も連続であることを
主張しています。ここで、f(X) の位相は Y からくる相対位相と
考えます。証明は易しいのでここでは省略します。
例10.5
{\mathbb S}^1=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\} とおきます。
f:{\mathbb R}\to {\mathbb S}^1 をf(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta) とします。
{\mathbb S}^1\subset{\mathbb R}^2 の相対位相は、
{\mathbb R} 上の同値関係 \theta\sim \theta'\leftrightarrow \theta_1-\theta_2\in 2\pi{\mathbb Z}
によって得られる商位相空間と同相となります。
(証明)
\tilde{f}:{\mathbb R}\to {\mathbb R}^2 を\tilde{f}(\theta)=f(\theta)
として得られるものとします。
\tilde{f} は連続となります。\mathcal{O}_{d_2} は \mathcal{O}_{d_1}
の2つの直積位相になるので、
\tilde{f}:{\mathbb R}\to {\mathbb R}^2 が連続であるためには、
\text{pr}_1\circ \tilde{f}(\theta)=\cos\theta
\text{pr}_2\circ \tilde{f}(\theta)=\sin\theta
が連続であることが必要十分ですが、\cos\theta や \sin\theta は
連続関数なので \tilde{f} は連続写像であることが分かります。
上の定理10.5から f は連続となることがわかります。
U\in \mathcal{O}_{d_1} とすると、U=\cup_{\lambda\in \Lambda}(a_\lambda,b_\lambda)
のように開区間の和集合になります。
f(U)=\cup_{\lambda\in \Lambda}f((a_\lambda,b_\lambda))=\cup_{\lambda\in \Lambda}(f(a_{\lambda}),f(b_{\lambda}))
\{(\cos\theta,\sin\theta)|a<\theta<b\} が {\mathbb S}^1
の相対位相の開基となるので、f(U)\in \mathcal{O}_{d_2,{\mathbb S}^1} となります。
よって、f は全射連続開写像であるからf は商写像になります。
よって、f によって得られる同値関係は、
f(\theta)=f(\theta')\leftrightarrow (\cos\theta,\sin\theta)=(\cos\theta',\sin\theta')\leftrightarrow \theta_1-\theta_2\in 2\pi{\mathbb Z}
が成り立ちます。
ゆえに、{\mathbb R} に \theta_1\sim\theta_2\leftrightarrow \theta_1-\theta_2\in 2\pi{\mathbb Z} であるように
いれた同値関係による商位相空間 ({\mathbb R}/\sim,\mathcal{O}_p)
は相対位相空間 ({\mathbb S}^1,\mathcal{O}_{d_2,{\mathbb S}^1})
に\varphi を介して同相になります。
つまり、
\varphi:({\mathbb R}/\sim,\mathcal{O}_p)\to ({\mathbb S}^1,\mathcal{O}_{d_2,{\mathbb S}^1})
は同相になります。\Box
連結性
次に連結性に入りましたが、定義のみで終わりました。
定義10.3
位相空間 (X,\mathcal{O}) が空でも X でもない
開集合 U,V を用いて X= U\sqcup V と表せないとき
X は連結という。
X が連結ではないとき、X は非連結という。
ここで、\sqcup は交わりのない和集合を意味します。
連結性は、「表せないとき」ということを条件としており、
理解がしずらいです。
ですので少し次のように言い換えましょう。
定理10.6
X が連結であるとは、X の開かつ閉集合は X もしくは \emptyset
のみであることと同値である。
(証明) X が不連結であるとすると、空でも、X でもない 開集合
U,V\subset Xが存在して
X=U\cup V が成り立ちます。このとき、U^c=V は開集合であるから
U は開かつ閉集合となります。
よって、空でも X でもない開かつ閉集合が存在します。
空集合と X は開かつ閉集合であるから、
この否定は、空もしくは X ではない開かつ閉集合が存在しないとき連結性を
意味することになります。\Box
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