[場所:オンライン(月曜日3限)]
今回は、点列の収束性と、直積位相についてやりました。
その前に、誘導位相について残っていた部分を片付けました
誘導位相・相対位相
定理9.1
位相空間$(X,\mathcal{O})$ の開基を
$\mathcal{B}$ とするとき、$A\subset X$ の相対位相
$(A,\mathcal{O}_A)$ の開基は、
$$\mathcal{B}_A=\{A\cap B|B\in \mathcal{B}\}$$
である。
$(A,\mathcal{O}_A)$ の開基は、
$$\mathcal{B}_A=\{A\cap B|B\in \mathcal{B}\}$$
である。
(証明) $\mathcal{O}_A$ の開集合 $A\cap U$ をとります。
$p\in A\cap U$ に対して、$p\in B\subset U$
となる $B\in \mathcal{B}$ が存在します。
よって
$$p\in A\cap B\subset A\cap U$$
となり、$A\cap B\in \mathcal{B}_A$ となるので
$\mathcal{B}_A$ は $\mathcal{O}_A$ の開基となります。$\Box$
先週は誘導位相ついてやったのですが その時は写像が1つだけの場合にやりました。
しかし今回は複数の写像について誘導位相を定義しました。
しかし今回は複数の写像について誘導位相を定義しました。
定義9.1(誘導される位相2)
$(Y_\lambda,\mathcal{O}_\lambda)$ 位相空間の族
写像 $f_\lambda:X\to Y_\lambda$ ($\lambda\in \Lambda)$
$\mathcal{F}=\{f_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ とする。
$\langle \mathcal{F}\rangle$ を $\{f_\lambda^{-1}(U_\lambda)|U_\lambda\in \mathcal{O}_\lambda,\lambda\in \Lambda\}$
を準開基とする開集合系。つまり、
$$\langle \mathcal{F}\rangle:=\langle \{f_\lambda^{-1}(U_\lambda)|U_\lambda\in\mathcal{O}_\lambda,\lambda\in \Lambda\}\rangle$$
とする。これを $\mathcal{F}$ によって誘導される位相(誘導位相)
という。
このとき、$\langle \mathcal{F}\rangle$ は、$\mathcal{F}$
の任意の写像を連続にするような $X$ 上の最小の位相ということになります。
点列の収束
について説明をしました。
そもそも点列というものは、$x_1,x_2,\cdots $ であって、それらは、
$(x_n)\in X^{\mathbb N}$ と考えられます。
点列が収束することについての定義をしておきます。
定義9.3
点列が収束するというのは、$x\in X$ が存在して、
点列が収束するというのは、$x\in X$ が存在して、
$$\forall U\in \mathcal{N}(x)\exists N>0\forall n>N(x_n\in U)$$
を満たすことをいう。
距離空間の場合には、
$$\forall U\in \mathcal{N}_d(x)\exists N>0\forall n>N(x_n\in U)$$
となりますが、これは、
$$\forall \epsilon>0\exists N>0\forall n>N(x_n\in B_d(x,\epsilon))$$
と同値になります。
というのも、
$\Rightarrow$ は、$\forall B_d(x,\epsilon)\in \mathcal{N}(x)$
に対して成り立つことから、直ちにわかり、
$\Leftarrow$ は、$\forall U\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
$\exists \epsilon >0(B_d(x,\epsilon )\subset U)$
が成り立つので、条件から、$\exists N>0\forall n>N$ に対して、
$x_n\in B_d(x,\epsilon )\subset U$ がなりたちます。
また、閉集合であることから、点列の性質として
つぎのようなことが言えます。
定理9.2
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とするとき、$F\subset X$
が閉集合なら、任意の $n$ に対して $x_n\in F$ を満たす点列 $(x_n)$ に対して、
ですので、$x\in X$ に収束するなら、$x\in F$
である。
つまり、閉集合 $F$ 上の任意の点列で、$X$ に収束するものがあれば、
その収束先も $F$ の中に入るということです。
このような性質を点列閉という言い方をします。
上の定理は、部分集合は閉ならば、点列閉となります。
逆に、点列閉ならば、閉であることは一般には成り立ちません。
(定理9.2の証明) 条件を満たす点列の収束先が $x\in F^c$ を満たすとします
このとき、$F^c$ は開集合だから、$\exists U\in \mathcal{N}(x)$
であって、$U\subset F^c$ を満たします。
また、収束点列であることから、$\exists N>0\forall n>N(x_n\in U)$
となりますがそのような $x_n\in F^c$ であり、$x_n\in F$ であることに
反します。よって、$x\in F$ となります。(証明終了)
直積位相
直積位相について定義しました。
位相空間 $(X_i,\mathcal{O}_i)$ $i=1,2,\cdots,n$ に対して、直積集合
$X_1\times X_2\times\cdots\times X_n$
の上に、直積位相を次のように定めます。
定義9.3
$U_i\in\mathcal{O}_i$ に対して、
$U_1\times U_2\times \cdots \times U_n$
を開基とする位相を
$X_1\times X_2\times \cdots\times X_n$
に入れたものを直積位相といい、
$$\mathcal{O}_1\times \mathcal{O}_2\times \cdots \times \mathcal{O}_n$$
とかく。これを直積位相(直積位相空間)という。
上の $\mathcal{O}_1\times \mathcal{O}_2\times \cdots \times \mathcal{O}_n$ の部分に使われている記号 $\times $ は集合の直積とは意味合いが異なるので注意を
してください。
もし、任意の $i$ に対して $\mathcal{O}_i=\mathcal{O}$ であるなら、この直積は $\mathcal{O}^n$
として書くことにします。
標準射影 $\text{pr}_i:X_1\times \cdots\times X_n\to X_i$
を $\text{pr}_i(x_1,x_2,\cdots, x_n)=x_i$
とします。この写像を標準射影と言います。
このとき、直積位相は、標準射影 $\text{pr}_i$ の全てが連続になるための
最弱な位相になります。
つまり、
$$\mathcal{O}_1\times \mathcal{O}_2\times \cdots\times \mathcal{O}_n=\langle \text{pr}_1,\text{pr}_2,\cdots,\text{pr}_n\rangle$$
となります。
左辺の開基は $U_1\times \cdots \times U_n$ の形ですが、これは、
右辺において、$\text{pr}_1^{-1}(U_1)\cap\cdots\cap \text{pr}_n^{-1}(U_n)$
と表されるので、同じ開基を用いていることから両者は同じ位相ということになります。
例9.8
$({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d_1}^2)$, $({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d_2})$ は同値である。
$\mathcal{O}_{d_1}^2=\mathcal{O}_{d_1}\times \mathcal{O}_{d_1}$ は2つのユークリッド距離位相の直積であり、
$\mathcal{O}_{d_2}$ は2次元のユークリッド位相です。
前者は、長方形からなる開集合を開基とする位相であって
後者は、円からなる開集合を開基とする位相です。
これらは、位相として同値になります。
これは、$x=(x_1,x_2)$ として、
$$B_{d_2}(x,\epsilon)\subset B_{d_1}(x_1,\epsilon)\times B_{d_1}(x_2,\epsilon)$$
であること、また、
$$B_{d_1}\left(x_1,\frac{\epsilon}{\sqrt{2}}\right)\times B_{d_1}\left(x_2,\frac{\epsilon}{\sqrt{2}}\right)\subset B_{d_2}(x,\epsilon)$$
が成り立つことから直ちに導かれます。
ここに証明を書くのは面倒なので、
詳しくは拙著「例題形式で探求する集合・位相」
の方を読んでください。
このことから、$\mathcal{O}_M$ を ${\mathbb R}^2$ 上のマンハッタン距離
による距離位相空間とすると、
$\mathcal{O}_{d_2}=\mathcal{O}_M=\mathcal{O}_{d_1}^2$
が成り立ちます。
また、よく使う定理としては、以下があります。
定理9.6
直積位相空間 $(X_1\times \cdots\times X_n,\mathcal{O}_1\times \cdots\times \mathcal{O}_n)$
と位相空間 $(Y,\mathcal{O})$ に対して、
$f:Y\to X_1\times \cdots\times X_n$ が連続であるための必要十分条件
は、任意の $i$ に対して、$\text{pr}_i\circ f$ が連続であることである。。
必要性は、$\text{pr}_i$ と $f$ が連続であることから、
その合成写像も連続であることから成り立ちます。
十分性は、直積位相空間の任意の開基 $U_1\times \cdots\times U_n$ に
対して、その逆像は、
$$f^{-1}(U_1\times \cdots \times U_n)=f^{-1}(\text{pr}_1^{-1}(U_1)\cap \cdots\cap \text{pr}_n^{-1}(U_n))$$
$$=f^{-1}(\text{pr}_1^{-1}(U_1))\cap \cdots\cap f^{-1}(\text{pr}_n^{-1}(U_n))$$
$$=(\text{pr}_1\circ f)^{-1}(U_1)\cap \cdots\cap (\text{pr}_n\circ f)^{-1}(U_n)$$
よって、この各成分は開集合であり、位相の条件(II)からこれらは、
$\mathcal{O}$ の開集合になります。
よって十分性が成り立ちます。 $\Box$
最後に無限直積の直積位相を導入しました。
$(X_\lambda,\mathcal{O}_\lambda)$ $\lambda\in\Lambda$
を位相空間の族とします。
$\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$ 上に
直積位相を誘導位相
$\langle \{\text{pr}_\lambda|\lambda\in \Lambda\}\rangle$
として定義します。
このとき、直積集合 $\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$
上に位相を導入することができました。
このような位相空間は開基として、
$\{\lambda_1,\cdots,\lambda_n\}\subset \Lambda$ に対して、
$\text{pr}_{\lambda_1}^{-1}(U_{\lambda_1})\cap \cdots\cap \text{pr}_{\lambda_n}^{-1}(U_{\lambda_n})$
となるものを集めたものになります。
ここで、$U_{\lambda_i}\in \mathcal{O}_{\lambda_i}$ が成り立つ任意の開集合になります。
つまり、直積位相の開集合において、$(x_\lambda)\in \prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$
の各成分 $x_\lambda\in X_\lambda$
は、有限個の$\lambda_{i}\in \Lambda$ 以外の $j$ は全て $X_j$
とるような開集合となります。
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