[場所1E202(月曜日4限)]
HPに行く
今回はハウスドルフ空間について書いておきます。
分離公理というのは、いくつかありますが、この授業ではハウスドルフ空間
を扱います。
ハウスドルフ空間
とは、$\forall p,q\in X$ に対して、ある開集合 $U,V$ が存在して、
$p\in U$, $q\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ を満たすときをいう。
$p,q\in X$ に対して、$p\in U$ かつ $q\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ であるような
$U,V$ が存在することを、$p,q$ が 開集合で分離するといいます。
ハウスドルフ空間の定義は、開基や近傍などの定義と比べてとても
わかりやすいものですね。
分離するの意味もよくわかります。
ハウスドルフ空間の例は距離位相空間です。
$(X,d)$ を距離空間とします。
距離位相空間 $(X,\mathcal{O}_d)$ がハウスドルフ空間であることを
示しましょう。
$x,y\in X$ を異なる2点とします。
このとき、$\delta=d(x,y)$ とすると、条件から$\delta>0$ が成り立ちます。
$B(x,\frac{\delta}{2})$, $B(y,\frac{\delta}{2})$ は
開集合で、$x,y$ を含みます。
また、
$B(x,\frac{\delta}{2})\cap B(y,\frac{\delta}{2})=\emptyset$
となります。
もし、$\neq \emptyset$ とすると、
$z\in B(x,\frac{\delta}{2})\cap B(y,\frac{\delta}{2})$
とする。三角不等式と$z\in B(x,\frac{\delta}{2})$, $z\in B(y,\frac{\delta}{2})$
このとき、$\delta>d(x,z)+d(z,y)\ge \delta $ となり、$\delta>\delta$ は満たされないので、
矛盾します。
よって、
$B(x,\frac{\delta}{2})\cap B(y,\frac{\delta}{2})=\emptyset$
となります。
よって、距離位相空間はハウスドルフ空間になります。
つまり、ハウスドルフ空間は距離位相空間よりは弱い条件です。
距離位相空間でなくてもハウスドルフ空間となるものがあります。
また、距離空間において1点は閉集合でしたが、ハウスドルフ空間
でも1点集合は閉集合です。
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ がハウスドルフ空間と同値な条件を挙げておきます。
・積空間 $X\times X$ の中の対角集合 $\Delta=\{(x,x)|x\in X\}$ は閉集合である。
・$\forall x\in X$ に対して $\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ を満たす。
ここで、$\mathcal{N}(x)$ を $x$ の近傍全体の集合(近傍系)とします。
1つ目の同値関係は簡単に証明できるので、2つ目を示しておきます。
$(X,\mathcal{O})$ がハウスドルフ空間とします。
このとき、$\forall x\in X$ に対して、$\forall y\in X\setminus \{x\}$ に
対して、ある開集合 $U,V$ が存在して、$x\in U$ かつ $y\in V$ かつ $U\cap V= \emptyset$
を満たします。$x\in U\subset V^c$ であり、$V^c$ は閉集合であるので、
$V^c$ は $x$ での閉近傍となります。
というのも、$x$ の近傍とは、$x$ を含む開集合がその
内部に包まれるものをいいますが、$x\in U$ が開集合として $V^c$ に包まれ
ているので、$V^c$ は $x$ の閉近傍ということになります。
$y\not\in V^c$ であるので、
$y\not\in \cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ となります。
$\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ には $x$ 以外の点は含まれないので
$\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$
を満たします。
逆に、$\forall x\in X$ に対して
$\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$
を満たすとします。
$y\in X\setminus\{x\}$ とします。
このとき、$y\not\in \cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ です。
よって、ある $\bar{V}$ が存在して、$y\not\in \bar{V}$ を満たします。
$\bar{V}$ は閉近傍である($x$ は$\bar{V}$ の内点である)ので、
ある開集合 $U$ が存在して、$x\in U\subset \bar{V}$ が存在します。
また、$(\bar{V})^c$ は開集合で、条件から、$y\in (\bar{V})^c$ を満たします。
よって、$U$ と $(\bar{V})^c$ は $x,y$ を分離する開集合なので、
$(X,\mathcal{O})$ はハウスドルフ空間となります。
以上より、閉近傍全体の共通集合が1点になるようにしなければならないかは
上の証明を見ればわかりますが、
$\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}V$ の条件ではどうか?
と思うかもしれません。
この条件はハウスドルフ空間とは同値にはなりません。
ハウスドルフ空間より弱い条件になります。
この条件は、1点が閉集合となる条件( $T_1$ 公理といいます。)と同値となります。
これは自分で証明してみてください。
ちなみに、ハウスドルフ空間は $T_2$ 公理を満たす空間のことです。
$T_1$ 公理は分離公理の一種ですが、以下のように書き直すことができます。
異なる2点 $p,q\in X$ があったときに、
$p\in U$ かつ $q\not\in U$ となる開集合 $U$ が存在し、
$p\not\in V$ かつ $q\in V$ となる開集合 $V$ が存在する。
ハウスドルフ空間とは違うのは、上の $U,V$ は、$U\cap V=\emptyset$ を満たすとは
限らないということです。
今回はハウスドルフ空間について書いておきます。
分離公理というのは、いくつかありますが、この授業ではハウスドルフ空間
を扱います。
ハウスドルフ空間
とは、$\forall p,q\in X$ に対して、ある開集合 $U,V$ が存在して、
$p\in U$, $q\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ を満たすときをいう。
$p,q\in X$ に対して、$p\in U$ かつ $q\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ であるような
$U,V$ が存在することを、$p,q$ が 開集合で分離するといいます。
ハウスドルフ空間の定義は、開基や近傍などの定義と比べてとても
わかりやすいものですね。
分離するの意味もよくわかります。
ハウスドルフ空間の例は距離位相空間です。
$(X,d)$ を距離空間とします。
距離位相空間 $(X,\mathcal{O}_d)$ がハウスドルフ空間であることを
示しましょう。
$x,y\in X$ を異なる2点とします。
このとき、$\delta=d(x,y)$ とすると、条件から$\delta>0$ が成り立ちます。
$B(x,\frac{\delta}{2})$, $B(y,\frac{\delta}{2})$ は
開集合で、$x,y$ を含みます。
また、
$B(x,\frac{\delta}{2})\cap B(y,\frac{\delta}{2})=\emptyset$
となります。
もし、$\neq \emptyset$ とすると、
$z\in B(x,\frac{\delta}{2})\cap B(y,\frac{\delta}{2})$
とする。三角不等式と$z\in B(x,\frac{\delta}{2})$, $z\in B(y,\frac{\delta}{2})$
このとき、$\delta>d(x,z)+d(z,y)\ge \delta $ となり、$\delta>\delta$ は満たされないので、
矛盾します。
よって、
$B(x,\frac{\delta}{2})\cap B(y,\frac{\delta}{2})=\emptyset$
となります。
よって、距離位相空間はハウスドルフ空間になります。
つまり、ハウスドルフ空間は距離位相空間よりは弱い条件です。
距離位相空間でなくてもハウスドルフ空間となるものがあります。
また、距離空間において1点は閉集合でしたが、ハウスドルフ空間
でも1点集合は閉集合です。
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ がハウスドルフ空間と同値な条件を挙げておきます。
・積空間 $X\times X$ の中の対角集合 $\Delta=\{(x,x)|x\in X\}$ は閉集合である。
・$\forall x\in X$ に対して $\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ を満たす。
ここで、$\mathcal{N}(x)$ を $x$ の近傍全体の集合(近傍系)とします。
1つ目の同値関係は簡単に証明できるので、2つ目を示しておきます。
$(X,\mathcal{O})$ がハウスドルフ空間とします。
このとき、$\forall x\in X$ に対して、$\forall y\in X\setminus \{x\}$ に
対して、ある開集合 $U,V$ が存在して、$x\in U$ かつ $y\in V$ かつ $U\cap V= \emptyset$
を満たします。$x\in U\subset V^c$ であり、$V^c$ は閉集合であるので、
$V^c$ は $x$ での閉近傍となります。
というのも、$x$ の近傍とは、$x$ を含む開集合がその
内部に包まれるものをいいますが、$x\in U$ が開集合として $V^c$ に包まれ
ているので、$V^c$ は $x$ の閉近傍ということになります。
$y\not\in V^c$ であるので、
$y\not\in \cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ となります。
$\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ には $x$ 以外の点は含まれないので
$\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$
を満たします。
逆に、$\forall x\in X$ に対して
$\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$
を満たすとします。
$y\in X\setminus\{x\}$ とします。
このとき、$y\not\in \cap_{V\in \mathcal{N}(x)}\bar{V}$ です。
よって、ある $\bar{V}$ が存在して、$y\not\in \bar{V}$ を満たします。
$\bar{V}$ は閉近傍である($x$ は$\bar{V}$ の内点である)ので、
ある開集合 $U$ が存在して、$x\in U\subset \bar{V}$ が存在します。
また、$(\bar{V})^c$ は開集合で、条件から、$y\in (\bar{V})^c$ を満たします。
よって、$U$ と $(\bar{V})^c$ は $x,y$ を分離する開集合なので、
$(X,\mathcal{O})$ はハウスドルフ空間となります。
以上より、閉近傍全体の共通集合が1点になるようにしなければならないかは
上の証明を見ればわかりますが、
$\{x\}=\cap_{V\in \mathcal{N}(x)}V$ の条件ではどうか?
と思うかもしれません。
この条件はハウスドルフ空間とは同値にはなりません。
ハウスドルフ空間より弱い条件になります。
この条件は、1点が閉集合となる条件( $T_1$ 公理といいます。)と同値となります。
これは自分で証明してみてください。
ちなみに、ハウスドルフ空間は $T_2$ 公理を満たす空間のことです。
異なる2点 $p,q\in X$ があったときに、
$p\in U$ かつ $q\not\in U$ となる開集合 $U$ が存在し、
$p\not\in V$ かつ $q\in V$ となる開集合 $V$ が存在する。
ハウスドルフ空間とは違うのは、上の $U,V$ は、$U\cap V=\emptyset$ を満たすとは
限らないということです。
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