2017年12月8日金曜日

トポロジー入門演習(第8回)

[場所1E202(月曜日4限)]

HPに行く

今日は、

  • 誘導される位相
  • 相対位相
  • 商位相、商写像
  • 商空間
に関して演習を行いました。これは、来週の試験の範囲なので、
ここで少し書いておきます。


誘導される位相

写像 $f:X\to Y$ があるとします。 $Y$ には位相 $\mathcal{O}_Y$ が入っているとします。

このとき、 $X$ 上に"誘導される位相” が構成できます。
つまり、$f$ によって、$Y$ の位相を引き戻したものを $X$ の位相として
迎え入れるのです。数式を使って書けば、
$$U\in \mathcal{O}_f\Leftrightarrow U=f^{-1}(V), V\in \mathcal{O}_Y$$

となります。
つまり、$\{f^{-1}(V)|V\in \mathcal{O}_Y\}$ を $\mathcal{O}_f$ であるといっても
同じことです。
このように、$X$ に位相を入れると、$f$ は定義から連続になります。

誘導される位相は位相になります。
この証明は省略します。

相対位相
相対位相は、位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の部分集合$A$に与えられる位相のことを言います。
$A$ は $X$ の部分集合であれば、どんなものでもよいです。

例えば、$X={\mathbb R}$ の場合、開区間や、閉区間、一点集合、有理数全体 ${\mathbb Q}$
でもよいです。

このとき、以下のような位相を $A$ に与えます。

$$\mathcal{O}|_A=\{A\cap U|U\in \mathcal{O}\}$$

そうすると、$(A,\mathcal{O}|_A)$ が位相であることが確かめられます。

(1) $U$ として $X$ の空集合 $\emptyset, X$ としてとることで、$A$ において、$\emptyset,A$ が $\mathcal{O}|_A$ に入ることが確かめられます。

(2) $\mathcal{O}|_A$ から有限個の元 $V_1,\cdots, V_n$ を選んだ時、定義から、
$V_i=A\cap U_i$ (ただし、$U_i\in \mathcal{O}$ とする)としてかけます。
よって、$\cap_{i=1}^nV_i=\cap_{i=1}^n(A\cap U_i)=A\cap(\cup_{i=1}^nU_i)$
であるが、$\cup_{i=1}^nU_i\in \mathcal{O}$ であるので、$\cap_{i=1}^nV_i\in \mathcal{O}|_A$ がいえます。

(3) $\mathcal{O}|_A$ から任意個の元 $\{V_\lambda\}\subset \mathcal{O}$ を選んだ時、定義から、
$V_\lambda=A\cap U_\lambda$ (ただし、$U_\lambda\in \mathcal{O}$ とする)としてかけます。
よって、$\cup_{\lambda\in\Lambda}V_\lambda=\cup_{\lambda\in\Lambda}(A\cap U_\lambda)=A\cap(\cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda)$ 
であるが、$\cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O}$ であるので、$\cup_{\lambda\in \Lambda}V_\lambda\in \mathcal{O}|_A$ がいえます。

よって、$(A,\mathcal{O}|_A)$ が位相であることが確かめられました。             $\Box$

$(A,\mathcal{O}|_A)$ の中の開集合は、$(X,\mathcal{O})$ での開集合とはならない
場合があるので注意が必要です。

例えば、$X={\mathbb R}$ に通常の距離位相をいれておいて、
$A=[0,3]$ と閉区間とします。
このとき、$A$ に与えられる開集合は、$A\cap U$ の形です。
ただし、$U$ は ${\mathbb R}$ の開集合です。
たとえば、$U=(1,2)$ とすれば、$A\cap U=(1,2)$ であり、
$U=(2,4)$ とすれば、$A\cap U=(2,3]$ となります。
$3$ の近くでなんだか閉集合のようになっていますが、これで良いのです。
空間 $A$ が $X$ で開集合である必要性はありません。
(上に、どんな部分集合でもよいといいました)
なので、共通集合 $A\cap U$ をとると、$X$ においては、開集合に
ならないかもしれません。
空間 $A$ においての 3 のような点は空間の中の端の点というだけです。
その部分集合に入った感覚で捉えることが大切です。

商写像

$(X,\mathcal{O}_X),(Y,\mathcal{O}_Y)$ を位相空間とします。
商写像 $f:X\to Y$ とは、$f$ が全射であり、
$X,Y$ の位相 $\mathcal{O}_X,\mathcal{O}_Y$ とすると、
$$U\in \mathcal{O}_Y\Leftrightarrow f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$$
であることとして定義されます。

商空間
商写像、$f:X\to Y$ があるとすると、$Y$ の位相は、$\{U|f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X\}$ 
として定まります。このような$Y$ の位相を $f:X\to Y$ における商位相と言います。
また、商位相をもつ空間を商空間といいます。

一般に、全射 $f:X\to Y$ があるとすると、$Y$ は、$f$ による商集合と
見なせます。つまり、$\forall x_1,x_2\in X$ に対して、
$$x_1\sim x_2\Leftrightarrow f(x_1)=f(x_2)$$
という同値関係を $X$ に入れることで、$Y$ は商集合 $X/\!\sim$ と対等(全単射)と
なるのです。


商空間とは、商集合に入る一番自然な位相です。
どういうことかというと、$Y$ 上の商位相は、$f:X\to Y$ が連続となるような、
一番大きい位相を入れているからです。

ちなみに、
連続な開写像は商写像となります。

また、同じように、
連続な閉写像は商写像となります。

(証明)
$f:X\to Y$ が連続、開写像としますと、
示せばよいのは、
$$U\in \mathcal{O}_Y\Leftrightarrow f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$$
の同値関係ですが、
右向きは、$f$ の連続性を言っています。
左向きは、$f^{-1}(U)\in\mathcal{O}_X$とすると、$f(f^{-1}(U))=U$ であるから、
$f$ が開写像であることから、$U\in\mathcal{O}_X$ が成り立ち、成り立ちます。

よって、$f$ が連続開写像であれば、$f$ は商写像であることがわかります。
後半の連続閉写像の命題は省略します。             $\Box$


また、ここで、下を示しておきます。

$g:X\to Y, h:Y\to Z$ 、かつ$f=h\circ g$ であるとすると、
$g$ が商写像、$f$ が連続なら、$h$ は連続である。

(証明)
$X,Y,Z$ の位相を $\mathcal{O}_X,\mathcal{O}_Y,\mathcal{O}_Z$ とします。
$\forall U\in \mathcal{O}_Z$ とします。このとき、$f$ が連続なので、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
が成り立ちます。$f^{-1}(U)=g^{-1}(h^{-1}(U))$ であり、$g$ が商写像であるから、
$h^{-1}(U)\in \mathcal{O}_Y$ を満たします。
よって、$h$ は連続となります。             $\Box$

0 件のコメント:

コメントを投稿