2017年12月19日火曜日

トポロジー入門演習(第10回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今日は、スライドによる解説はしませんでしたが、

  • 無限積位相空間
  • 分離公理

についてのプリントを配りました。
講義の方は、来週は休講なので、分離公理の講義は来年になるようですね。
ここで、開基、準開基などをおさらいして、無限積位相空間について書いておきます。
さらに、最後に、$T_2$-空間について定義と例をあげました。

開基
$\mathcal{B}$ が開基であるというのは、位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の位相 $\mathcal{O}$ の部分集合で、以下のように、位相を形作るものです。

もしこの辺りのことに自信がなければ、以下のことをじっくり考えてみてください。

定義
開基とは、任意の開集合 $U$ が $\mathcal{B}$ の元のいくつかの和集合として作ることが
できるものをいいます。つまり、

$\mathcal{B}$ とは、$\mathcal{B}\subset\mathcal{O}$ であり、
$\forall U\in \mathcal{O}$ に対して、$\mathcal{B}’\subset \mathcal{B}$ が存在して、
$U=\underset{A\in \mathcal{B}’}{\cup}A$
となるものをいいます。


つまり、開基の元を寄せ集めれば、すべての開集合を作ることができるような
ものであるので、開基とは、位相の基本的なパーツというわけです。

この開基の条件を言い換えると、以下のようになります。

(条件)
$\forall x\in U$ に対して、ある $A\in \mathcal{B}$ が存在して、
$x\in A\subset U$ となるものが存在すること。

です。

もし、この条件が満たされれば、$x\in U$ に対して、$A_x$ となる開基 $A_x\in \mathcal{B}$ が存在することになります。
よって、$U=\underset{x\in U}{\cup}A_x$ となるので、集合 $\mathcal{B}$ が開基であることが
わかります。

また、$\mathcal{B}$ が開基であるとすると、
$U=\underset{A\in \mathcal{B}’}\cup A$ があり、$\forall x\in U$ に対して、
$x\in A$ となる $A\in \mathcal{B}’\subset \mathcal{B}$ が存在することになります。

$(X,\mathcal{O}_d)$ を距離位相空間とします。
このとき、この距離位相空間の開基 $\mathcal{B}_d$ は、$\{B_d(x,\epsilon)|x\in X,\epsilon\in {\mathbb R}_{>0}\}$ としてえられます。 
${\mathbb R}_{>0}$ は、正の実数の集合を表します。


次に準開基を説明します。
開基が位相の部分集合で、その和集合ですべての開集合が作られたように、
準開基とは、すべての開基がそのいくつかの共通集合をとることで得られるもの
をいいます。

つまり、$\mathcal{B}$ を開基とすると、$\forall A\in \mathcal{B}$ に対して 
$C_1\cdots, C_n\in S$ が存在して、$A=C_1\cap C_2\cap\cdots \cap C_n$ とできるようなもの、
つまり、有限個 $S$ の元を取ってこれば、すべての開基の元を共通部分として
書くことができるような $S$ を準開基といいます。

この $n$ は、$A$ に依存したで、自然数もしくは $0$ です。
$n=0$ の場合は、一つも開集合を取らないのだから、空間全体 $X$ のことです。
しかし、空間全体 $X$ は開基の元として入れておく必要はないかもしれません。

通常、$\underset{A\in\mathcal{B}}\cup A=X$ であるなら、開集合 $X$ は他の開集合から
作れるので、開基に $X$ を入れておく必要はないからです。

でも、ある1点を含む開集合が、全体集合しかないというような場合には、
開基として、全体集合を入れておく必要があります。
ですので、上の $n$ は自然数もしくは、$0$ となります。


$X\times Y$ を積位相空間とします。
$X\times Y$ の位相空間の開基は、
$\mathcal{B}=\{U\times V|U\in \mathcal{O}_X,V\in\mathcal{O}_Y\}$ として得られます。

ここで、$S=\{U\times Y|U\in \mathcal{O}_X\}\cup \{X\times V|V\in\mathcal{O}_Y\}$ と定義すると、$S\subset \mathcal{B}$ であり、
$\mathcal{B}$ の任意の元 $U\times V$ は、この $S$ の中の元の開集合の共通集合として得られることがわかります。

この集合は、$p_X,p_Y$ を $X\times Y$ の $X,Y$ への射影とするとき、
$S=\{p^{-1}_X(U)|U\in \mathcal{O}_X\}\cup \{p^{-1}_Y(V)|V\in \mathcal{O}_Y\}$
と書き表すことができます。

このように位相をいれることで、積空間は、自然な射影 $p_X,p_Y$ が連続になる
最小の位相になります。

また、一般に、位相空間 $(X,\mathcal{O})$ が準開基 $S$ によってえられるとき、
この位相空間は、$S$ によって生成されるといいます。

無限積空間
無限積空間とは、添字づけられた集合族 $\{X_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ が与えられたとき、
積集合 $\underset{\lambda\in \Lambda}{\prod}X_\lambda$ に入る位相構造のことを言います。

準開基を定めることによって、無限積空間を定めます。
$X_\lambda$ の位相を $\mathcal{O}_\lambda$ とします。
積集合に準開基を定める方法は様々ありますが、もっとも使われるのは、
$\{p_\lambda^{-1}(U)|U\in \mathcal{O}_\lambda,\lambda\in \Lambda\}$ を準開基とする方法です。
これも積位相といいます。
$p_\lambda$ は射影 $p_\lambda:\underset{\lambda\in \Lambda}{\prod}X_\lambda\to X_\lambda$ のことであり、 積位相というのは、各 $p_\lambda$ が連続になるための最小の位相ということになります。
また、他に、$\{\underset{\lambda\in \Lambda}{\prod}U_\lambda|U_\lambda\in \mathcal{O}_\lambda,\lambda\in\Lambda\}$
を開基とするような位相も入れることができますが、一般に、この位相は積位相空間とは
異なる位相になります。この積位相は箱型積位相といいます。

積位相の開集合には、有限個の $\lambda\in \Lambda$ 以外は、自然な射影で、
$X_\lambda$ となります。
しかし、箱型積位相の場合には、無限個の $\lambda\in \Lambda$ において、射影の結果、$X_\lambda$ とならないものも存在します。

分離公理
分離公理は、位相空間の特徴において重要な性質の一つです。
いくつかのヴァリエーションがありますが、ここでは、ハウスドルフと言われる
$T_2$-空間について紹介して終わります。

$T_2$-空間(ハウスドルフ空間)
位相空間 $X$ が $T_2$-公理を満たすとは、任意の $p,q\in X$ において、
$p\neq q$ ならば、ある互いに素な開集合 $U,V$ が存在して、$p\in U$ かつ、$q\in V$
が成り立つ。

つまり、任意の相異なる2点は、開集合によって分離することができるということです。
互いに素とは、$U\cap V=\emptyset$ ということでした。

いつも出てくる例は距離空間のものばかりですが、ここでもそうです。
$(X,\mathcal{O}_d)$ を距離位相空間とすると、この位相空間は $T_2$-空間になる。
(証明) $p,q\in X$ とする。このとき、$\delta=d(p,q)/2$ とし、$U=B_d(p,\delta),V=B_d(q,\delta)$ とすると、$p\in U,q\in V$ かつ、$U\cap V=\emptyset$ となります。
最後の主張は、$x\in U\cap V$ とすると、$d(p,q)\le d(p,x)+d(q,x)<2\delta<d(p,q)$となり矛盾する。
ゆえに、$X$ は $T_2$-空間である。(終)

距離空間ならば、どんな2点も開集合によって分離することができました。

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