2017年10月27日金曜日

トポロジー入門演習(第4回)

[場所1E202(月曜日4限)]

HPに行く
必要な配付プリントはHPで取ってください。
HP上の課題3のプリントは壊れていたようですが、直しました。

今日は、
説明4と課題4のプリントを配りましたが、
だんだんと課題が宿題プリントと化しているので、授業時間内に、多くの人と
相談しながら、感覚をつかんでいくということをして欲しいです。

課題3と説明4のプリントを中心にやったようでした。

課題3-1
以下の問題を解け。
(1) 部分集合族$\mathcal{C}$を以下のように定める。
・ $\emptyset,X\in \mathcal{C}$
・ $F_1,\cdots, F_n\in \mathcal{C}\Rightarrow F_1\cup \cdots \cup F_n\in \mathcal{C}$
・ $\{F_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$とするとき、$\cap_{\lambda\in \Lambda}F_\lambda\in \mathcal{C}$である。

このとき、$\mathcal{O}=\{O\in \mathcal{P}|O^c\in \mathcal{C}\}$とすると、$\mathcal{O}$は$X$上の位相になることを示せ。

(2)  $(X,\mathcal{O})$を位相空間とする。以下の同値を示せ。
$A\in\mathcal{O}\Leftrightarrow \forall x\in A, \exists U\in \mathcal{O}\text{ s.t. }x\in U\subset A$

このような問題ですでに迷っている人が多いようです....
命題には、仮定があり、結論があります。

仮定を用いて、結論を導くのですが。問題は、結論が正しいことを示すことです。
そのとき、必要になれば、仮定を使いながら証明を進めることになります。

今回示して欲しいのは、$\mathcal{O}$ が位相であることをです。

そのためには、$\mathcal{O}$ が位相となるための3つの条件を一つ一つ示すことです。

(i) 空集合と全体集合が $\mathcal{O}$ に入ること。
(ii) 有限個の $\mathcal{O}$ の元に対して、その共通集合が再び $\mathcal{O}$ に入ること。
(iii) 任意個の $\mathcal{O}$ の元に対して、その和集合が再び $\mathcal{O}$ に入ること。

これらを問題の仮定を使って示してください。その際、集合論の最初の方で出てきた
ドモルガンの法則を使います。

課題3-2は1点集合の問題です。

課題3-2
以下の問題を解け。
(1)  $(X={\mathbb R}^2,\mathcal{O})$を通常の距離位相とすると、
任意の1点集合は閉集合であることを示せ。
(2) 上の問題1. を一般の距離空間から作られる位相空間の場合に示せ。
(3) $(X={\mathbb R}^2,\mathcal{O})$を通常の距離位相とすると、
任意の1点集合の内部、閉包、境界、外部が何か答えよ。
(4) $(X,\mathcal{O})$が一般の離散位相空間の場合、任意の1点集合の内部、閉包、境界、外部が何か答えよ。
(5) 1点集合が閉集合とならない位相空間があることを、例をもって示せ。


(1) ある部分集合が閉集合であることを示すには、補空間が開集合を示すことに
なります。これは閉集合の定義です。
距離位相における部分集合 $A$ が開集合であることを示す方法は、
$A$ の任意の一点 $x$ に対して、$x$ の $\epsilon$ 近傍で、$A$ に包まれるもの
が取れるときを言います。なので、平面 $X$ から1点 $p$ 除いた空間 $Y=X-\{p\}$
の任意の1点 $q$ に対して、$q$ の $\epsilon$-近傍で $Y$ の中に
$B_d(q,\epsilon)$ をおけるか?
という問題になります。つまり、
$B_d(q,\epsilon)\subset Y$ 
を示せばよいことになりますが、部分集合であることの必要充分条件はもうすでに
やっていますので、それを適用させることになります。

(2) は、(1) でやったことがわかっていれば、ほぼ、証明を真似すればできるはずです。
(3) 内部、閉包、境界、外部を思い出せ。
ちなみに、$A$ が開集合というのは、$A$ の内部と、$A$ が一致する集合
としても同値です。
同じように、$A$ が閉集合というのは、$S$ の閉包と、$A$ が一致する集合
としても同値です。

(4) 離散位相の場合、開集合、閉集合がどのような集合だったのか思い出してください。

(5) 授業中かなり頭をひねっていたようでしたが、もっと単純に考えればすぐに例が
思い出せるはずです。このような単純な質問は、トポロジー入門を終えるころには瞬時に
答えが出せるようになっているとよいですね。


課題3-3 は離散空間に関する問題でした。

課題3-3
有限集合の位相、また、離散位相について考えよう。
(1)  有限集合$S$に距離$d$が定義できるとする。
このとき、$(S,d)$から作られる位相空間$(S,\mathcal{O}_d)$は離散空間となることを示せ。
$S$を無限集合とすると、違う場合があるか?
(2) 位相空間$(X,\mathcal{O})$を考える。このとき、以下を示せ。
$\mathcal{O}$が離散位相空間であること$\Leftrightarrow\forall x\in X$に対して、
$\{x\}\in \mathcal{O}$が成り立つ。

もしかしたら(2) を問いてから(1)を解いたほうが順当だったかもしれません。
(2) 右向きの論理は定義からあきらかですね。左向きの論理は任意の部分集合が
開集合になることができるかどうかですが、各点が開集合なのだから、
位相の定義の3番目から簡単にいえますね。

(1) これも、任意の1点が開集合として含まれることをいえばよいわけですね。
空間として有限個なので $\epsilon$-近傍の $\epsilon$ を充分に小さくしていくと、
そのうち1点集合になりますね。
無限集合とすると違う場合があるのはほぼほぼ明らかですが、この場面でどのように
言うことができるか。

課題3-4は、この日の主題であった内部、閉包、境界点、の話題
です。

$X={\mathbb R}^2$とし、$d$をユークリッド距離とする。
(1) $D=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2<1\}$とする。
このとき、$D^\circ=D$であり、$\bar{D}=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2\le1\}$であることを示せ。
(2) $p=(\cos\theta,\sin\theta)$とする。
ただし、$0\le \theta<2\pi$とする。
このとき、$d(p,D)=0$であることを示せ。
(3) $p\not\in \bar{D}$であるとする。このとき、$d(p,D)>0$であることを示せ。

(1)  $D^\circ =D$ でることの必要充分条件は、$D$ が開集合でることなので、
$D$ の任意の点に対して、そのある $\epsilon$-近傍が $D$ に入ることを
示せばよい。示し方は上に書いたものと同じですね。
閉包も上と同じです。
(2) $d(p,D)$ の定義をもう一度思い出してもらいましょう。
$0$ が $\{d(x,y)|y\in D\}$ の下界であること、
また、$0$ が下界の中で最大であることを示せばよいことになります。
つまり、$0$ より真に大きい数 $t>0$ を持ってきたときに、$t$ より小さい、
$d(x,y)$ ($\exists y\in D$) が取れればよいことになります。
つまり、$(\cos\theta,\sin\theta)$ に収束する $D$ の元を構成することと同値です。

(3) これは、$x\in \bar{D}\Leftrightarrow d(x,D)=0$ を示すことの
左向きの命題です。右向きの命題の本質的な部分は、(2) でやったものです。
つまり、外部の点を取ると、必ず $D$ までの距離が正となるのです。
重要なことは、外部の点は、補集合の"内部"であることとです。
内部ということは、特に開集合です。なので、任意の点にその開集合に
包まれる $\epsilon$-近傍が存在することになります。
その $\epsilon$-近傍が距離を正とできる理由となります。
この部分を正確にまとめてください。


課題4-1,2,3,4についてはとりあえず、ノーヒントで頑張ってみてください。

2017年10月19日木曜日

トポロジー入門演習(第3回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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前回の復習からです。

課題2-1
対角線論法により、${\mathbb R}$と${\mathbb N}$が対等でないことがわかる。
同じようにして、${\mathbb N}$と$\mathcal{P}({\mathbb N})$は濃度が異なることを示せ。

まず、${\mathbb N}$と$\mathcal{P}({\mathbb N})$ の間に全単射が存在するということは、

$\mathcal{P}({\mathbb N})\to {\mathbb N}$
なる、ちょうど自然数と一対一な名前付け(ラベルづけ)ができるということを意味します。

多くのグループが両者が対等でないことを下のように導いていました。

対角線論法っぽくやるなら、

$A_1,A_2,\cdots $ を自然数の部分集合とし、この並びで
${\mathbb N}$ の部分集合を重複なく、もれなく並べられているとします。

このとき、新しい集合 $B$ を以下のように作る。
各自然数 $i$ に対して、
$i\not\in A_i$ であるなら、$i$ を $B$ の要素とする。
$i\in A_i$  であるなら、$i$ を $B$ の要素にしない。

このようにすると、自然数の部分集合 $B$ がつくられます。
つまり、$B\in \mathcal{P}({\mathbb N})$ です。
よって、$B$ のある $i$ があって、$A_i=B$ となるはずです。

このとき、以下のいずれかがただ一つだけ成り立つ。

  • $i\in B$ であり、$i\not\in A_i$
  • $i\not\in B$ であり、$i\in A_i$

これは $B$ の定義からわかります。
つまり、$B\not\subset A_i$ もしくは $A_i\not\subset B$ が成り立つことを言っています。
よって、どの $i$ に対しても、$B\neq A_i$ が成り立つことがわかります。

これは全て並べられたことに矛盾します。
この作り方だとすると、どの$A_i$ にも包まれないか、$A_i$ も包まないかものが
作れています。特に $B$ は空集合でも全体集合でもありません。

定理2-1を誤解している人がいるようなので、もう一度書いておきます。
選択公理を仮定します。
定理2-1
任意の2つの集合 $A,B$ は、対等でないなら、単射 $A\to B$ もしくは、単射 $B\to A$ が
存在する。また、そのうちただ一つが成り立つ。

要するに、集合を任意の2つもってきたら、濃度 $|\cdot |$ に対して、
$|A|<|B|$
$|A|=|B|$
$|A|>|B|$
のいずれかがなりたつということです。

課題2-2, 2-3
は比較的よくできていました。
授業中も言いましたが、位相を構築せよ。書かれていたら、少なくとも位相である事は
確かめてください。

問題は、課題2-4でした。
課題2-4
以下の問題に答えよ。ただし、
開区間とは、$(a,b)=\{x|a<x<b\}$ となる形の実数上の部分集合で、閉区間とは、$[a,b]=\{x|a\le x\le b\}$ の形の ${\mathbb R}$ 上の部分集合とする。

(1) $X={\mathbb R}^2$ とする。$\forall x\in X$ に対して、 $B_d(x,\epsilon)$ が
開集合であることを証明せよ。
(2) $X={\mathbb R}^2$ とし、
$$d((x_1,x_2),(y_1,y_2))=\sqrt{(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2}$$
$$d_M((x_1,x_2),(y_1,y_2))=|x_1-y_1|+|x_2-y_2|$$
によって得られる位相空間 $(X,\mathcal{O}_d)$ と $(X,\mathcal{O}_{d_M})$ は同値であることを示せ。
(3) 実数直線の部分集合の話として以下の問題を解き、一般に $\mathcal{O}$ の元を開集合と呼ぶ理由を考えよ。(位相の条件の2つ目と3つ目。)

  1. 1点を共有する無限個の開区間の和集合は再び開区間であることを示せ。
  2.  1点を共有する無限個の閉区間の共通集合は閉区間もしくは1点であることを示せ。
  3.  無限個の開区間の共通集合が閉区間となる場合があることを示せ。
  4.  無限個の閉区間の和集合が開区間となる場合があることを示せ。

(1)はできていても、(2)がよく分かっていないものもありました。

(2)の証明の方針としては、 $\mathcal{O}_d\subset \mathcal{O}_{d_M}$ かつ、
 $\mathcal{O}_d\supset \mathcal{O}_{d_M}$ が成り立つことを
示せばよく、

それぞれは、さらに、
$U\in \mathcal{O}_d$ ならば、$U\in \mathcal{O}_{d_M}$ であり、
$V\in \mathcal{O}_{d_M}$ ならば、$V\in \mathcal{O}_{d}$ であることを
示せばよいことになります。

この証明は、
$U\in \mathcal{O}_d$ であることはどういうことか、
$V\in \mathcal{O}_{d_m}$ であることはどういうことかを思い出してもらえばよいです。

例えば、$U\in \mathcal{O}_d$ に対して、各点 $x\in U$ に対して、$d$ の意味で
$\epsilon$-球を含むようにできますが、同時に、$d_M$ の意味で
各点 $x\in U$ に対してなんらかの $\epsilon'$-球を含むようにできている
ことを言うことになります。

きちんと書いてあるグループを丸にしました。

(3) はもう少し問題の意図が読みきれていないところがありました。
まず、区間ではなく、開集合を扱っているグループがあります。

${\mathbb R}$ を開区間もしくは閉区間というのか?についても
よく指定がされていないのも問題だったかもしれません。

できていなかったグループはもう一度課題をだしてもらいます。

今回は、以下の話のプリント配りました。
  • 位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の部分集合の内部、閉包、境界、外部
課題の方は、
  • 閉集合を用いた位相の定義
  • 1点集合の性質
  • 有限集合上の位相
  • 無限集合上の位相
  • 平面上の単位円盤の内部、閉包、境界、外部
について行いました。上の4つの用語の定義だけしておきます。

内部・・・$A$ の内部とは、$A$ に包まれる最大の開集合のこと
閉包・・・$A$ の閉包とは、$A$ を包む最小の閉集合のこと
境界・・・$A$ の境界とは、$A$ の閉包から $A$ の内部を除いた集合のこと
外部・・・$A$ の外部とは、$A$ の補空間の内部のこと


2017年10月12日木曜日

トポロジー入門演習(第2回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今回配布したプリントは

  • べき集合とその濃度
  • 位相の定義
  • 距離空間からくる位相
についてやりました。

べき集合と濃度

集合論については、先週のベルンシュタインの定理から続いていますが、
もう少し集合論を学んでいきましょう。

濃度
集合全体に、全単射 $A\to B$ が存在する(対等な集合)という同値関係をいれてできた
同値類を濃度といいます。集合 $A$ の濃度を $|A|$ と表すことにします。
同値類全体は集合にはならないので、この場合商集合という言葉は適切では
ありません。

べき集合
$X$ を集合とし、$X$ の部分集合全体の集合を $\mathcal{P}(X)$ と言います。
$\mathcal{P}(X)$ には必ず空集合と $X$ 自身が入っています。

授業の最後に述べましたが、空集合はどんな集合の部分集合になっていることに
気をつけてください。


自然数全体 ${\mathbb N}$ の部分集合全体 $\mathcal{P}({\mathbb N})$ の濃度を調べると、
$$\{0,1,2,3,\cdots \}\cup {\mathbb N}$$
が得られます。
$0$ は空集合からなる同値類、$n$ は $n$ 個の元からなる同値類、
${\mathbb N}$ は ${\mathbb N}$ 全体からなる同値類ということになります。


対角線論法
対角線論法とは、実数全体と自然数が対等ではない、
つまり $|{\mathbb N}|\neq |{\mathbb R}|$ であることを示す方法です。
実数は、開区間 $(0,1)$ と対等です。
というのも、実数が 自然数と対等であるとすると、

$a_1,a_2,\cdots$ のように実数を一列に並べられることになります。
$a_1=0.a_1^1a_1^2.....$
$a_2=0.a_2^1a_2^2.....$
$a_3=0.a_3^1a_3^2.....$
$\vdots$
このとき、$b=0.b^1b^2\cdots$ なる小数展開を $b^i\neq a^i_i$ かつ $b^i\neq 0,9$ であると
します。このとき、 $b$ は $a_i$ のどれとも違う(小数第 $i$ 位が異なるので。)
この数は上のどれにも並べられていないことになります。
(実際、小数展開は小数展開だけでは決まりませんが、それは、$0.3999....=0.400...$ など、
$0$ や $9$ が無限個続くような場合に相当します。しかし、$b^i$ の条件からそれらの数に
なっていないことは明らかです。)

さて、問題は、${\mathbb N}$ とべき集合 $\mathcal{P}({\mathbb N})$ の濃度がことなること
を対角線論法を応用してできますか?というものでした。

$\mathcal{P}({\mathbb N})$ の元を $a_1,a_2,...$ のように並べてみて工夫して
$b$ を作ってみてください。


位相の定義と距離位相

位相空間とは、集合 $X$ と、$X$ のべき集合の部分集合 $\mathcal{O}$ で以下を満たすものでした。

  • $\emptyset ,X\in \mathcal{O}$ である。
  • $U_i\in \mathcal{O}$ $(i=1,...,n)$ なら $\cap_{i=1}^nU_i\in \mathcal{O}$ である。
  • $U_\lambda(\lambda\in \Lambda)$ を任意の $\mathcal{O}$ の集まりとすると、$\cup_{\lambda\in\Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O}$ である。
この条件を満たす $(X,\mathcal{O})$ を位相空間という。

例として、距離空間 $(X,d)$ からくる距離位相 $(X,\mathcal{O}_d)$ があります。
距離位相の $\mathcal{O}_d\ni O$ は、
$\forall x\in O$ に対して $\epsilon>0$ が存在して、$B_d(x,\epsilon)\subset O$
を満たすものとして定義されます。つまり、どの点にもその周りのなんらかの
$\epsilon$ 近傍 $B_d(x,\epsilon)$ も含んでいるということです。

つまり、イメージでは、端っこの点を含んでいないようなものを開集合というのです。
確かに、閉区間 $[0,1]$ は端っこの点を含んでいるので、これは開集合とはならないのです。
(この端っこの点というのを次回ちゃんと定義します。一般の位相空間の場合にも
定義されます。)
確かに、$0\in [0,1]$ には、$[0,1]$ の中に含まれるように $\epsilon$ 近傍入れることは
できません。(通常のユークリッド距離を入れた時の話です。もちろん離散位相が入っていたら違います。)

なので、${\mathbb R}$ 上の距離位相からくる位相 $\mathcal{O}$ の中には
閉区間 $[0,1]$ は入ってないことになります。

今回は、有限個の元からなる集合上の位相と、
距離空間からくる位相空間について紹介をしました。

距離空間から距離位相という位相空間を定義しました。
しかし、違う距離空間なのに、同じ距離位相というものになってしまうものがあります。
つまり、距離空間から距離位相を作るのは単射ではないということです。

また、位相空間は距離空間を一般化した概念です。
実際、距離空間からこないような位相空間もあります。

この位相空間というのはなんのために考えるのでしょうか?
それは、空間の連続性というものを念頭に考えています。

違う距離空間なのに、同じ位相空間を与えるということは、
その2つの空間のある”連続性"が一致するということを意味します。

空間をどのように理解したら良いのか?
ここでは、おおまかな空間の”連続性”のみを空間の理解の尺度とする
というということを言っています。
つまり、空間の繋がり具合が同じなら同じ空間ということです。

次回以降、この概念について厳密に定義をしていきます。


配付プリントの訂正
課題の4つ目の下から2行目が間違っていたので訂正してあります。

2017年10月2日月曜日

トポロジー入門演習(第1回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今日は、トポロジー入門演習の第一回の授業を行いました。
今年からグループワークを取り入れることにしました。

この授業での講義用語です。
説明・・・相手にわかってもらうようにわかりやすく話して、理解させること。
     例えば、例を出したり、して感覚的に分かってもらうようにする。
     正確にわかりやすく説明することができればなおよい。

証明・・・正確に内容を把握し、論理的に正確に説明をつけること。
     わかりやすい証明をすることができればなおよい。
     
つまり、説明は、相手が納得すればそれでOKですが、
証明は論理的に正確に説明をつけることで、相手はもとより、完全に
正しい説明をすることを意味します。



内容は、

  • 集合論の復習
  • イプシロンデルタ論法
  • 距離空間の基礎

です。
どれも、このトポロジー入門の授業を理解する上で欠かせない部分です。
むしろ、この3つを少しだけ難しくした内容がトポロジー入門ということになります。
距離空間だけは、新しいかもしれませんが、
ピタゴラスの定理など既知ですから、ユークリッド空間の一般化という点で、
すでに学んでいるところです。

集合論の基礎

数学のほとんどが集合を基礎に進んでいきますから、この内容が分かっていないと
先に進めません。

おさらいしておきます。
しかし、集合の表記方法は既知とします。

$x$ が集合 $A$ に含まれることを、 $x\in A$ と書きます。
他に、$x$ は $A$ のであるとか、要素であるとか言っても同じことです。


集合 $A$ が集合 $B$ に包まれることを、$A\subset B$ と書きます。
他に、$A$ は $B$ の部分集合であると言っても同じことです。

この含まれることと、包まれることを正確に区別してください。
このような些細なことでも混同していくと、その先につまづきが生じることがあります。
(もしつまづいても、その時にもう一度復習することが理解が進むこともあります。)

2つの集合 $A,B$ が等しい($A=B$)とは、
$A\subset B$ かつ $B\subset A$ が満たされることをいいます。


集合の演算
和集合と共通集合を下に定義します。$\lor$ は「または」、$\land$ は「かつ」とよみます。
$A\cup B=\{a|a\in A\lor B\}$
$A\cap B=\{a|a\in A\land B\}$

$A\subset X$ を部分集合として、$A^c=\{a\in X|a\not\in A\}$ とかき、
$A$ の $X$ での補集合といいます。

$A,X$ を集合としたときに、差集合を $X\setminus A=\{a\in X|a\not\in X\}$ として定義します。
要するに補集合と同じと思うかもしれませんが、この場合、$A$ は $X$ に
包まれている必要はありません。

2つの集合が対等であるということ
集合 $A$ と $B$ が対等であるとは、
$A$ と $B$ の間に全単射が存在することを言います。
このとき、$A$ から $B$ に全単射があっても、$B$ から $A$ に全単射があっても
同じことです。(なぜなら全単射が存在するということは、その逆写像が存在して
それも全単射だからです。)


イプシロンデルタ論法
これは関数の連続性をいうためのテクニックですが、この授業において
一般の距離空間さらに、位相空間の場合に一般化されます。

関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で連続であるとは、
任意の $\epsilon>0$ においてある $\delta>0$ が存在して、
$|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-f(a)|<\epsilon$
この論法をうまく説明できるかどうか?
そして、説明できた後、具体的な関数に対して適用できるか?
つまり、$\epsilon$ に対して、$\delta$ をどのように選べば良いかがわかれば
証明ができるはずです。


距離空間の基礎

距離空間というのは新しく出たかもしれませんが、基本は、ユークリッド空間 ${\mathbb R}^n$ に定義されたピタゴラス距離のことと思えばよいでしょう。2点 $x=(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ と $y=(y_1,y_2,\cdots, y_n)$ の間の距離を
$\sqrt{(x_1-y_1)^2+\cdots +(x_n-y_n)^2}$
と考えれば、この空間上に距離が定義されました。この値を $d(x,y)$ と書くことにします。
ここで、問題があります。

問題
一般の集合 $X$ があったときに、どのようにして、距離というものを
入れて話をすることができるでしょうか?

この問題に答えを与えているのが、距離空間なのです。
元とは違う集合にも、同じような”もの"を導入したい!という動機は
数学でよく使われる一般化という思考方法です。

ユークリッド空間内の距離を少し一般化しておけば、2点間の距離はいつでもピタゴラスの定理を満たすようなものでなくてもよいといことです。
(一般の空間では座標のようなものが存在しないかもしれませんので。)

一般の距離空間を考えるには、付随して距離関数 $d$ というものを考える必要があります。
それがどのような性質を満たさなければならないか?
$X$ をある集合とします。距離関数 $d:X\times X\to {\mathbb R}$ が満たすべき性質は以下です。
  • $d(x,y)\ge 0$ が成り立つ。さらに、 $d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y$ である。
  • $d(x,y)=d(y,x)$ が成り立つ。
  • $d(x,y)+d(y,z)\ge d(x,z)$ が成り立つ。
今回の課題には、距離空間における部分集合 $A\subset X$ に対して、
$d(x,A)=\inf\{a|a\in A\}$ として部分集合と $x$ の距離を定義します。
そのとき、
$|d(x,A)-d(y,A)|\le d(x,y)$ 
が成り立つことを証明してもらいました。
それを用いると、(特に、$X={\mathbb R}$ としておいてもよい。)
$f:=d(x,A)$ として定義した関数 $X\to {\mathbb R}$ が連続であることがイプシロンデルタ
論法を使って得られます。