[物理2 クラス対象(金曜日4限)]
今日は、
- 対角化可能について
- e^{tA} の計算
- 定数係数常微分方程式の解法
もし、授業中にやった常微分方程式の解き方が理解していない人は読んでください.
昨日の塩谷先生の試験の問題の2を解きなおす人はこのページが参考になると思います.
行列の指数関数 e^{tA} ですが、
\begin{eqnarray*}\frac{d}{dt}e^{tA}&=&\frac{d}{dt}(E+tA+\frac{(tA)^2}{2!}+\frac{(tA)^3}{3!}+\cdots)\\&=&A+\frac{tA^2}{1!}+\frac{t^2A^3}{2!}+\cdots\\ &=&A(E+(tA)+\frac{(tA)^2}{2!}+\cdots)=Ae^{tA}\end{eqnarray*}
これを利用してまずは、連立の一階線形常微分方程式を解くのです.
{\bf x}={}^t(x_1(t),x_2(t),\cdots,x_n(t)) とおいて、ある n\times n 行列を A として
{\bf x}'(t)=A{\bf x}(t)
となる微分方程式の解は、{\bf x}(t)=e^{tA}{\bf x}(0) となります.
この解の形を覚えましょう.
実際、この式に t=0 を入れれば、明らかに成り立ちますし、微分をしてやると、
{\bf x}'(t)=Ae^{tA}{\bf x}(0)=A{\bf x}
となるからです.そのためには A は t によらない定数係数である必要があります.
この場合、 e^{tA} が求まればこの手の微分方程式を解くことができます.
しかし、この解法は一階(微分が一回だけ)の微分方程式だけではなく、下のような任意回数の微分方程式を解くのに役立ちます.
x^{(n)}(t)+a_1x^{(n-1)}(t)+\cdots+a_{n-1}x'(t)+a_nx(t)=0
ここで、x^{(i)}(t) は x(t) の i 回 t-微分を表します.
この方程式を上の解法に帰着させるためには、
{\bf x}(t)=(x(t),x'(t),\cdots,x^{(n-1)}(t)) 置くことです.そうすると
{\bf x}'(t)=\begin{pmatrix}0&1&0&\cdots&0\\0&\ddots&1&0\cdots&0\\\cdots&\cdots&\ddots&\ddots&0\\0&\cdots&\cdots&0&1\\-a_n&-a_{n-1}&\cdots&\cdots&-a_1\end{pmatrix}{\bf x}
となりますので、上の連立の一階線形常微分方程式に帰着できることになります.
例(B-14-1(1))
x''+2x'-3x=0
なる線形常微分方程式を考えます.
微分方程式の特性方程式とは微分方程式の形からくるある代数方程式のことで、例えば今の場合 t^2+2t-3=0 のことです.
ここではこの方程式に重根がない場合として考えます.
{\bf x}(t)={}^t(x(t),x'(t)) としますと、
{\bf x}'(t)=\begin{pmatrix}0&1\\3&-2\end{pmatrix}{\bf x}
あとは、e^{tA} を求めればよいのですが、
A の固有値はこの微分方程式の特性方程式、\Phi_A(t)=\det\begin{pmatrix}t&-1\\-3&t+2\end{pmatrix}=t^2+2t-3=0 の解 1,-3 となります.
W_1=\left\{{\bf x}|\begin{pmatrix}1&-1\\-3&3\end{pmatrix}{\bf x}=0\right\}=\langle\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\rangle
W_{-3}=\left\{{\bf x}|\begin{pmatrix}-3&-1\\-3&-1\end{pmatrix}{\bf x}=0\right\}=\langle\begin{pmatrix}1\\-3\end{pmatrix}\rangle
特性方程式は上の行列の固有多項式と一致しますから、特性方程式の条件から行列は対角化可能となります.
つまり、P=\begin{pmatrix}1&1\\1&-3\end{pmatrix} とすると、P^{-1}AP=\begin{pmatrix}1&0\\0&-3\end{pmatrix}=D がいえます.
ここで、e^{tP^{-1}AP}=E+tP^{-1}AP+\frac{(tP^{-1}AP)^2}{2!}+\cdots=P^{-1}(E+tA+\frac{(tA)^2}{2!}+\cdots)Pなので、
e^{tP^{-1}AP}=P^{-1}e^{tA}P が成り立ち、左辺は
e^{tD}=\begin{pmatrix}e^t&0\\0&e^{-3t}\end{pmatrix} が言えます.
よって、求めたい行列の指数関数は
e^{tA}=P\begin{pmatrix}e^t&0\\0&e^{-3t}\end{pmatrix}P^{-1} となります.
これを計算すると、
\begin{eqnarray*}&&\begin{pmatrix}1&1\\1&-3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}e^t&0\\0&e^{-3t}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3&1\\1&-1\end{pmatrix}\frac{1}{4}\\&=&\begin{pmatrix}e^t&e^{-3t}\\e^t&-3e^{-3t}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3&1\\1&-1\end{pmatrix}\frac{1}{4}=\frac{1}{4}\begin{pmatrix}3e^t+e^{-3t}&e^t-e^{-3t}\\3e^t-3e^{-3t}&e^t+3e^{-3t}\end{pmatrix}\end{eqnarray*}
ゆえに、解 {\bf x}(t)=\frac{1}{4}((3e^t+e^{-3t})\alpha+(e^t-e^{-3t})\beta)=\frac{3\alpha+\beta}{4}e^t+\frac{\alpha-\beta}{4}e^{-3t} が求まります.
ここで、\alpha=x(0) かつ \beta=x'(0) です.
解は、特性方程式の根(行列 A の固有値)が \lambda_1,\lambda_2\cdots,\lambda_n であるとすると、
e^{\lambda_1t},e^{\lambda_2t},\cdots,e^{\lambda_nt} の一次結合で書けるということが分かります.
これは、固有値が相異なる n この場合ですが、そうではない場合もやり方はあるのですが、少し大変なので、またどこかで勉強して下さい.
ちなみに、私が去年教えた微分方程式の授業ではそれを扱いました.
その時のページはこちらです.
(ブログになっていないので少々読みにくいとは思いますがあしからず)
塩谷先生の問題2(8)はこのページでなんとかできるとして、
他の(1)-(7)は以前演習の授業でも出しているので分かった人も多いのでは?
こちらの授業の第14回にも同じような問題を載せましたね.
数列のシフト写像の表現行列も、その固有多項式を計算すると、数列の漸化式の特性方程式が出てきます.
例えば数列が a_{n+2}=a_{n+1}+a_n のときには x^2=x+1 が特性方程式です.
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