Processing math: 100%

2015年2月3日火曜日

微積分II演習(第14回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

今日は積分の演習を行いました.
少々難しかったようで、一時間のうちで一問しかとけませんでした.

その前に、私が作った問題の解答をしました.

宿題12-1

\sum_{n=1}^\infty\frac{(\log n)-1}{(\log(n+1))^2}
の収束発散を問う問題でしたが、級数判定において非常によく使われるダランベールの判定やコーシーの判定など今回はあまり有効ではありません.大体どのような級数になりそうなのか最初に判断することも重要です.
部分和は大体 \sum_{n=1}^m\frac{1}{\log(n+1)} となることが見抜けるとやりやすいでしょう.
それを示すのに苦労した人もいたかもしれません.
授業では、以下のようにしました.ただし、m\ge 8 とします.
\sum_{n=1}^m\frac{\log n-1}{(\log(n+1))^2}>\sum_{n=1}^{7}\frac{\log n-1}{(\log(n+1))^2}+\sum_{n=3}^m\frac{\log n-\frac{1}{2}\log n}{(\log(n+1))^2}
>-2+\frac{1}{2}\sum_{n=8}^m\frac{\log n}{(\log(n^2))^2}>-2+\frac{1}{8}\sum_{n=8}^m\frac{1}{\log n}>-2+\frac{1}{8}\sum_{n=8}^m\frac{1}{n}\to \infty

としました.

ちなみに、\sum_{k=2}^n\frac{1}{\log k} は 漸近的に \int_2^n\frac{dx}{\log x} と同じです.
つまり、
\sum_{k=2}^n\frac{1}{\log k}\sim \int_2^n\frac{dx}{\log x}\sim \frac{n}{\log n}
この積分 \int_2^n\frac{dx}{\log x} は対数積分と呼ばれ、Li(x)=\int_2^x\frac{1}{\log x}dx と書きます.
n までの素数を数える関数を \pi(n):=\sum_{p:\text{素数},p\le n}1
とおきます.
\pi(n)\sim Li(n)
fが成り立っており、これを素数定理といいます.

宿題13-2

収束半径を求める問題は、多くの場合、ダランベールの方法やコーシーの方法などで解けます.
まず、級数展開をしておくと、
\frac{1}{1-z}=\sum_{n=0}^\infty \frac{1}{(1-a)^{n+1}}(z-a)^n
となります.この級数を a_n とすると、
|\frac{a_{n+1}}{a_{n}}|=\frac{|z-a|}{|1-a|}\to \frac{|z-a|}{|1-a|}
が成り立って、|z-a|<|1-a| ならば、この球数は絶対収束します.また
|z-a|>|1-a|=1-a であるとすると、発散します(ダランベールの方法)ので、収束半径は
1-a となります.


例題14-1(1)

今日は「古典的難問に学ぶ微分積分」という本に載っている問題なのでした.本屋で見て、題名に惹かれて授業で取り上げたくなって実施したのですが、本当に難問ぞろいでした.

ここで、書く必要がないほど、この本に説明がありますので、そちらを参照としたいところですが、
試験前でもありますので、今日やったところくらいはもう一度書いておきます.

\int_0^1\frac{\log(1+x)}{1+x^2}dx を2通りの計算方法により求めよ.
(1) x=\tan\theta と変換してから計算する.
(2) F(\alpha )=\int_0^\alpha \frac{\log(1+ax^2)}{1+x^2}dx の形を決定しておいてから \alpha=1 を代入する.

求めよ.定積分を計算するのに、 よくある積分に帰着できないときは、あるパラメータをおいて、そのパラメータにおいて微分しておくと、被積分関数がよくある積分の形になっていることがあるというものです.しかしこの手の問題は誘導なしには普通には思いつきませんよね.

この(1) はあの、有名な、解析の教科書、高木貞治による解析概論(p.112-113)にもやり方は載っています.
どうやってやるかというと、流れだけ説明すると、x=\tan \theta と変換してやると、\frac{dx}{1+x^2}=d\theta となるから、この積分は、
\int_0^{\frac{\pi}{4}}\log(1+\tan\theta)d\theta に帰着されます.
この被積分関数を \log \frac{\sqrt{2}\cos\left(\frac{\pi}{4}-\theta\right)}{\cos\theta}=\log\sqrt{2}+\log\cos\left(\frac{\pi}{4}-\theta\right)-\log\cos\theta
と変形できる.しかし、後半2つは積分をすると消しあいます.
よって、\int_0^{\frac{\pi}{4}}\log\sqrt{2}d\theta だけが残る.

同じように、
\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log\sin\theta d\theta もあるが、これはみなさんの練習問題として残しておこう.やり方はやはり、解析概論のほぼ同じページに載っています.この積分に関しては、一昔前に、私が受けたどこぞの大学の院入試にも出てきて、とても懐かしいものである.

(2) の方法に関しては、まず、F(\alpha) を微分して、その後で積分を実行するというものである.
これでなぜ上手くいくのか?よくわからない.それなりの理由があれば教えてもらいたい.

まず、微分してみると、(積分範囲にも \alpha があることに注意して)
F'(\alpha)=\frac{\log(1+\alpha^2)}{2(1+\alpha^2)}+\frac{\alpha}{1+\alpha^2}\text{Arctan}(\alpha)
となります.
これを積分すればよいのですが、この2つの項を見てみると、
微分: \frac12\log(1+\alpha^2)\to \frac{\alpha}{1+\alpha^2}
積分: \frac1{1+\alpha^2}\to \text{Arctan}(\alpha)
となりますから、どちらかを部分積分すれば、相殺して、F(\alpha)=\frac12\text{Arctan}(\alpha)\log(1+\alpha^2)
となるのです. F(0)=0 も使いました.
つまり、この関数に \alpha=1 を代入することで、F(1)=\frac{\pi\log 2}{8} が言えます.


x=\tan\frac{\theta}{2} となる変換
 上記では、x=\tan\theta という変換を施すことで、値を求めました.これは、1+x^2 という項ががあるので、それから、\tan\theta の公式を使うためです.
しかし、x=\tan\frac{\theta}{2} なる変換をすることもあります.
これは、F(x,y)x,y の有理関数として、積分が\int F(\cos\theta,\sin\theta)d\theta の場合に有効です.

例えば、そのような変換においては、\frac{2}{1+x^2}dx=d\theta が成り立ち、
\cos\theta=2\cos^2\frac{\theta}{2}-1=\frac{2}{1+x^2}-1=\frac{1-x^2}{1+x^2}\tan\theta=\frac{2x}{1-x^2}
ゆえに、\sin\theta=\cos\theta\tan\theta=\frac{2x}{1+x^2}
以下の積分ができます.そうすると、
\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{d\theta}{\cos\theta+\sin\theta}=\int_0^1\frac{2dx}{1+2x-x^2}
となる.
この積分は、有理関数の積分だから、部分分数等をすれば、計算することができて、
結果、\sqrt{2}\text{Arctanh}\frac{1}{\sqrt{2}} となる.


例題14-3
 この積分をやっているうちに終わってしまいました.
\int\int_D\frac{dxdy}{(1+x^2+y^2)^2}\ \ \ \ D=\{(x,y)|(x-1)^2+(y-1)^2\le 1\}
原点を中心とした円であれば簡単なのですが、中心が (1,1) とずれています.
この場合も(0,0) を中心として円として極座標表示しましょう.
そうすると、極座標において、積分範囲は
\begin{cases}0\le \theta\le \frac{\pi}{2}\\\cos\theta+\sin\theta-\sqrt{\sin\theta\cos\theta}\le r\le \cos\theta+\sin\theta+\sqrt{\sin\theta\cos\theta}\end{cases}
となります.
よって、うえの積分範囲を r_1\le r\le r_2 としておくと、
この2重積分は \int\int_D\frac{rdrd\theta}{(1+r^2)^2} となり、
計算により、
\int_0^{\frac{\pi}{2}}\left\{-\frac{1}{2}\frac{r_1^2-r^2_2}{(1+r^2_1)(1+r^2_2)}\right\}d\theta
が成り立つ.
この後半の積分は、上と同じように x=\tan\theta などと変換していけば、有理関数の積分二期逆されれていく.
ここでは詳しく書けないので、自身で確かめてほしい.
答えは \left(1-\frac{1}{\sqrt{2}}\right)\frac{\pi}{2} となる.




  1. 高瀬正仁, 古典的難問に学ぶ微積分、共立出版
  2. 高木貞治, 解析概論, 岩波書店

0 件のコメント:

コメントを投稿