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2015年2月8日日曜日

線形代数II演習(第15回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

HPに行く.

今日は試験を行い、採点を行いました.
各問題における得点率は下のようになりました.

55点満点
受験者:30人
受験放棄者:2人
平均点:34点
最高得点:50点
40点以上:12人
問題ごとの得点率です.

問題1234
得点率(%)73.584.456.75.7

直交行列による対角化に関しては皆さんよく出来ていました.
しかし、連立方程式を解く問題は若干ですが出来が悪いような気がします.
連立方程式の解が {\Bbb C}^4 の中だとわざわざ言っているのにもかかわらず3次元で書いてみたり、基底をひと組の意味がわからず次元が2と書いているのにかかわらず一つのベクトルのみ書いている人がいました.

表現行列に関しては、抽象ベクトル空間としては、多項式とは言っても今まで余り扱わなかった2変数の多項式の空間を扱いました.しかしそのような空間を理解している人も多かったです.a,b,c に引きずられておかしいことを書いている人もいました.

最後の問題は良くできる人向けという感じでおまけの問題でしたが、惜しい解答はありましたが完答している人はいませんでした.

問題1
(1) 行列を基本変形すると
\begin{pmatrix}0&1&1&-1\\3&1&-2&-1\\2&1&-1&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\2&1&-1&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\0&1&1&-1\end{pmatrix}
\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\0&0&0&0\end{pmatrix}
ゆえに、\text{rank}(A)=2 なので、次元公式から \dim W=4-2=2
(2) (1) の簡約階段行列から、x_1=x_3,x_2=-x_3+x_4 がなりたつから、c=x_3,d=x_4 とおくと、
\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\\x_4\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}c\\-c+d\\c\\d\end{pmatrix}=d\begin{pmatrix}1\\-1\\1\\0\end{pmatrix}+d\begin{pmatrix}0\\1\\0\\1\end{pmatrix}=c{\bf v}_1+d{\bf v}_2 とおくと、明らかにW{\bf v}_1,{\bf v}_2 で生成され、一次独立である.
(一次独立である証明は略.2つは平行でないからすぐわかるが.)よって、{\bf v}_1,{\bf v}_2W の基底となる.
(3) {\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_4{\Bbb C}^4 の標準基底とする.
このとき、4\times 6 行列 ({\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3,{\bf e}_4) を簡約化して、
({\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3,{\bf e}_4)\to\cdots\to \begin{pmatrix}1&0&0&0&1&0\\0&1&0&0&0&1\\0&0&1&0&-1&0\\0&0&0&1&1&-1\end{pmatrix}
ゆえに、最初の4つで{\Bbb C}^4 上で一次独立な最大のベクトルを取っているので、
\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2\}{\Bbb C}^4 の基底を構成している.
よって、{\bf e}_1,{\bf e}_2W の補空間の基底となる.

問題2
(1) 固有多項式は \Phi(t)=(t-2)^2(t+1) となるので、固有値は 2,-1 となる.
(2) 固有値 2,-1 の固有空間をそれぞれ、W_2,W_{-1} とすると、
W_2=\{{\bf x}|\begin{pmatrix}1&1&1\\1&1&1\\1&1&1\end{pmatrix}{\bf x}={\bf 0}\}
W_{-1}=\{{\bf x}|\begin{pmatrix}-2&1&1\\1&-2&1\\1&1&-2\end{pmatrix}{\bf x}={\bf 0}\}
この連立方程式を解いて、
W_2=\langle\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}\rangle=\langle{\bf v}_1,{\bf v}_2\rangle
W_{-1}=\langle\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}\rangle=\langle{\bf v}_3\rangle
(3) この行列は実対称行列なので、W_2,W_{-1} は直交する.W_2 の中のベクトルを直交化すると、
{\bf w}_2={\bf v}_2-\frac{1}{2}{\bf v}_1=\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}-\frac1{2}\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-1\\-1\\2\end{pmatrix}
ゆえに、{\bf v}_1,{\bf w}_2,{\bf v}_3 はそれぞれの固有ベクトルであり、直交化された.
よって、これを正規化して、行列として並べることで、
P=\begin{pmatrix}\frac{-1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\\\frac{1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\\0&\frac{2}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\end{pmatrix}
となり、P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&2&0\\0&0&-1\end{pmatrix}
となる.

問題3
(1) V は複素ベクトル空間 \langle x^2,xy,y^2\rangle となり、基底は、x^2,xy,y^2 を使う.
F(x^2)=(x+y)^2=x^2+2xy+y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\2\\1\end{pmatrix}
F(xy)=(x+y)(x-y)=x^2-y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix}
F(y^2)=(x-y)^2=x^2-2xy+y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\-2\\1\end{pmatrix}
ゆえに、表現行列は
F(x^2,xy,y^2)=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1&1&1\\2&0&-2\\1&-1&1\end{pmatrix}
より、
A=\begin{pmatrix}1&1&1\\2&0&-2\\1&-1&1\end{pmatrix} が表現行列となる.
(2) F:V\to V が同型写像であることは F の表現行列が正則であることである.
\det(A)=-8\neq0 であるから、A は正則であり、F は同型写像となる.

問題4
 (\Rightarrow) を示す.条件から、
A には n 個の相異なる固有値 \lambda_i\ \ (i=1,\cdots,n) とそれに対するベクトル {\bf v}_i\ \ (i=1,\cdots,n) が存在する.

AB{\bf v}_i=BA{\bf v}_i=B\lambda_i{\bf v}_i=\lambda_iB{\bf v}_i であるから、この式の最初と最後を見比べてみると、B{\bf v}_iA の固有値\lambda_i の固有空間の元である.なので、{\bf v}_i を用いて、B{\bf v}_i=\eta_i{\bf v}_i と書ける.ゆえに、{\bf v}_i\neq 0 なので、{\bf v}_iBの固有ベクトルであり、\eta_i はその固有値である.
ゆえに、A の任意の固有ベクトルは B の固有ベクトルにもなっている.A,B の役割を入れ替えれば B の固有ベクトルは A の固有ベクトルにもなっているので、2つの行列の固有空間は一致する.

 (\Leftarrow) を示す.条件から、
A,B には共通の固有ベクトルで基底となるもの {\bf v}_i\ \ (i=1,\cdots,n) が存在する.つまり、ある行列 P によって、P^{-1}AP=D_1,\ P^{-1}BP=D_2 が成り立つ.ここで、D_1,D_2 は対角行列.
よって、A=PD_1P^{-1},B=PD_2P^{-1} であるから、
AB=PD_1P^{-1}PD_2P^{-1}=PD_1D_2P^{-1}=PD_2D_1P^{-1}=BA
がいえる.


この同値条件は、A,B が相異なる固有値をもつという条件より広く、対角化可能という状況で正しいのですが、ここは簡単のため相異なる固有値をそれぞれ持つということにしました.

微積分II演習(第15回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

HPに行く.

今日は試験を行い、採点を行いました.
各問題における得点率は下のようになりました.

75点満点
受験者:20人
平均点:33点
最高得点:65点
40点以上:9人
問題ごとの得点率です.

問題1234567
得点率(%)53.574.031.55.025.059.545.0

思ったより出来ていたようです.
「75分しかないのに、頑張って7問も作ってしまった」とうちの人に言ったら「バカじゃないの?」と言われました...しかし、直前で少々問題をやさしくしたり削ったりしましたが大体そのままにしました.
しかし、中には最高で6問解いてくれる人もいました.すごいですね.4問目を解いている人は一人だけでした.

以下解答です.

問題1
関数が連続であることを示す問題です.
原点以外では連続関数の合成や和、積、商なので連続です.原点での連続性の示し方は、原点に向かう任意の点列が収束すればよいです.任意の原点に収束する点列を (x_n,y_n)=(r_n\cos\theta_n,r_n\sin\theta_n)\ \ (r_n\to 0) とすると、
|f(x_n,y_n)|=|\frac{2r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n}{r_n\sqrt{1+\sin^2\theta_n}}|=2r_n\frac{|\cos\theta_n\sin\theta_n|}{\sqrt{1+\sin^2\theta_n}}\le 2r_n\to 0
ゆえに任意の原点に収束する点列において、f(x,y)0 に収束する.
よって、f(x,y) は原点において連続である.

問題2
この問題はほとんどの人が手をつけており、15点取った人も多かったです.
(1) 偏微分が計算できれば出来ていますが、何か?勘違いした人もいました.
f_x=y(1-4x-3y),f_y=x(1-2x-6y) であり、f_x=f_y=0 なる方程式を解くと、
(x,y)=(0,0),(0,1/3),(1/6,1/9),(1/2,0)
となります.
方程式を解くことが難しかった人もいたようですが、
x,yがどちらかが0 であるとき、それを方程式に入れて計算すれば、もう一つの変数が出ますし、どちらも 0 出ないときは f_x/y=0,f_y/x=0 を計算すれば、連立一次方程式なので
\begin{cases}4x+3y=1\\2x+6y=1\end{cases}
は線形代数で解けます.
(2) ヘッセ行列は H=\begin{pmatrix}f_{xx}&f_{xy}\\f_{yx}&f_{yy}\end{pmatrix} なる行列ですが、計算すると \begin{pmatrix}-4y&1-4x-6y\\1-4x-6y&-6x\end{pmatrix}
となり、ヘッシアンは |H|=-1 + 8 x - 16 x^2 + 12 y - 24 x y - 36 y^2 となります.
(3) (1) の点において |H| を計算をすれば、それぞれ、-1,-1,1/3,-1 となります.
|H|<0 であれば臨界点は鞍点ですので極値ではありません.|H|>0 であれば、臨界点は極値となります.|H|>0 であるときは、(x,y)=(1/6,1/9) であり、極値は f(1/6,1/9)=1/162 となる.

問題3
条件付きの臨界点を求める問題です.
(1) ラグランジュの未定乗数法を使います. H=x^2-xy-\lambda(x^2-xy-y^2+1) として、
条件の下での臨界点は H_x=0,H_y=0,H_\lambda=0 を満たす (x,y) です.
H_x=(\lambda-1)(2x-y)
H_y=2\lambda y+\lambda x-x
H_\lambda=-x^2+xy+y^2-1
\lambda=1 とすると y=0 かつ x^2+1=0 なので、満たす実数は存在しない.
よって、y=2x が成り立つ.\left(\frac{\pm1}{\sqrt{5}},\frac{\pm2}{\sqrt{5}}\right) (複合同順)
(2) g=x^2-xy-y^2+1 とするとき、y=\varphi(x) なる陰関数がその点の周りに存在するための条件は g_y\neq 0 ですので、
g_y=x-2y なので、上の2点において計算すると、g_y\neq0が言えますからこの2点の周りにおいて陰関数は存在します.

問題4
これについては 第14回のページをにもありますが、やっておきます.
この問題の難しいところは、微分する \alpha が被積分関数の中と積分区間に入っていることです.しかも被積分関数から \alpha を取りだすことはできなさそうです.
\Phi(X,Y)=\int_0^X\frac{\log(1+Y x)}{1+x^2}dx とおきます.
そうすると、\Phi_X(X,Y)=\frac{\log(1+Y X)}{1+X^2}かつ、\Phi_Y(X,Y)=\int_0^X\frac{x}{(1+Y x)(1+x^2)}dx となります.
Y-微分は微積分の交換で被積分関数の中に入る.
\int_0^\alpha\frac{\log(1+\alpha x)}{1+x^2}dx=\Phi(\alpha,\alpha) なので、合成関数の微分法から、
\frac{d}{d\alpha}\Phi(\alpha,\alpha)=\Phi_X(\alpha,\alpha)+\Phi_Y(\alpha,\alpha)=\frac{\log(1+\alpha^2)}{1+\alpha^2}+\int_0^\alpha\frac{x}{(1+\alpha x)(1+x^2)}dx
後半部分は \frac{1}{1+\alpha^2}\int_0^\alpha\left(\frac{x+\alpha}{1+x^2}-\frac{\alpha}{1+\alpha x}\right)dx=\frac{1}{1+\alpha^2}\left[\frac{1}{2}\log(1+x^2)+\alpha\text{Arctan}(\alpha)-\log(1+\alpha x)\right]_0^\alpha
=-\frac{\log(1+\alpha^2)}{2(1+\alpha^2)}+\frac{\alpha\text{Arctan}(\alpha)}{1+\alpha^2}
よって、上の式に戻して
=\frac{\log(1+\alpha^2)}{2(1+\alpha^2)}+\frac{\alpha\text{Arctan}(\alpha)}{1+\alpha^2}
となります.

この微分が思いつかなくても、収束半径内 \alpha x<1 で無理やり展開して\alphaを外にだしてやります.無限和や微積分の交換は収束半径内で広義一様収束するため可能です.
\sum_{n=1}^\infty\int_0^\alpha\left(-\frac{(-\alpha x)^n}{n}\frac{1}{1+x^2}\right)dx=-\sum_{n=1}^\infty\frac{(-\alpha)^{n}}{n}\int_0^\alpha\frac{x^n}{1+x^2}dx
なので、\alpha-微分は、
\sum_{n=1}^\infty (-\alpha)^{n-1}\int_0^\alpha\frac{x^n}{1+x^2}dx-\sum_{n=1}^\infty\frac{(-\alpha)^{n}}{n}\frac{\alpha^n}{1+\alpha^2}
=\int_0^\alpha\frac{x}{(1+\alpha x)(1+x^2)}+\frac{\log(1+\alpha^2)}{1+\alpha^2}
とすることもできます.

問題5
 簡単なところでは f_n(x)=x^n\ \ x\in[0,1] でよいです.このように答えた人もいました.
この関数列は次の f(x) に収束します.
f_n(x)\to f(x)= \begin{cases}0&x\in[0,1)\\1&x=1\end{cases} となります.
この関数列は連続であり、一様収束するとすると収束先は連続になるはずです.よってこの関数列は一様収束しません.

問題6
 グラフ f(x,y) から、積分計算 \int\int_D\sqrt{1+f_x^2+f_y^2}dxdy を計算すれば答えはでますが、ここでは授業でやったように極座標でやってみます.x=r\cos\theta,y=r\sin\theta\cos\varphi,z=r\sin\theta\sin\varphi とします.
0\le \theta\le \pi, 0\le \varphi\le 2\pi です.
S=S(\theta,\varphi)=(x,y,z) とすると、S_\theta,S_\varphi とする.
外積を計算すると、
S_\theta\times S_\varphi=(-r\sin\theta,r\cos\theta\cos\varphi,r\cos\theta\sin\varphi)\times(0,-r\sin\theta\sin\varphi,r\sin\theta\cos\varphi)=(r^2\cos\theta\sin\theta,r^2\sin^2\theta\cos\varphi,r^2\sin^2\theta\sin\varphi)
となります.なので、
||S_\theta\times S_\varphi||=r^2\sin\theta よって、面積は
\int_0^{2\pi}\int_0^{\pi}r^2\sin\theta d\theta d\varphi=2\pi r^2\int_0^{\pi}\sin\theta d\theta=2\pi r^2[-\cos\theta]_0^{\pi}=4\pi r^2
となります.

問題7
 この級数が絶対収束する領域を探します.
a_n=\frac{(2n)!}{(n!)^2}z^n とします.
|\frac{a_{n+1}}{a_n}|=|\frac{(2n+2)(2n+1)z}{(n+1)^2}|=2\left(2-\frac{1}{n+1}\right)|z|\to 4|z|
ダランベールの方法により、4|z|<1 であるとき、この級数は絶対収束し、4|z|>1 のとき、発散します.
ゆえに、収束半径は \frac{1}{4} となる.

2015年2月5日木曜日

線形代数II演習(第14回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

今日は、
  • 対角化可能について
  • e^{tA} の計算
  • 定数係数常微分方程式の解法

もし、授業中にやった常微分方程式の解き方が理解していない人は読んでください.
昨日の塩谷先生の試験の問題の2を解きなおす人はこのページが参考になると思います.


e^{tA} の計算から常微分方程式について

行列の指数関数 e^{tA} ですが、
\begin{eqnarray*}\frac{d}{dt}e^{tA}&=&\frac{d}{dt}(E+tA+\frac{(tA)^2}{2!}+\frac{(tA)^3}{3!}+\cdots)\\&=&A+\frac{tA^2}{1!}+\frac{t^2A^3}{2!}+\cdots\\ &=&A(E+(tA)+\frac{(tA)^2}{2!}+\cdots)=Ae^{tA}\end{eqnarray*}

となります.
これを利用してまずは、連立の一階線形常微分方程式を解くのです.
{\bf x}={}^t(x_1(t),x_2(t),\cdots,x_n(t)) とおいて、ある n\times n 行列を A として
{\bf x}'(t)=A{\bf x}(t)
となる微分方程式の解は、{\bf x}(t)=e^{tA}{\bf x}(0) となります.
この解の形を覚えましょう.
実際、この式に t=0 を入れれば、明らかに成り立ちますし、微分をしてやると、
{\bf x}'(t)=Ae^{tA}{\bf x}(0)=A{\bf x}
となるからです.そのためには At によらない定数係数である必要があります.
この場合、 e^{tA} が求まればこの手の微分方程式を解くことができます.

しかし、この解法は一階(微分が一回だけ)の微分方程式だけではなく、下のような任意回数の微分方程式を解くのに役立ちます.
x^{(n)}(t)+a_1x^{(n-1)}(t)+\cdots+a_{n-1}x'(t)+a_nx(t)=0
ここで、x^{(i)}(t)x(t)it-微分を表します.
この方程式を上の解法に帰着させるためには、
{\bf x}(t)=(x(t),x'(t),\cdots,x^{(n-1)}(t)) 置くことです.そうすると
{\bf x}'(t)=\begin{pmatrix}0&1&0&\cdots&0\\0&\ddots&1&0\cdots&0\\\cdots&\cdots&\ddots&\ddots&0\\0&\cdots&\cdots&0&1\\-a_n&-a_{n-1}&\cdots&\cdots&-a_1\end{pmatrix}{\bf x}
となりますので、上の連立の一階線形常微分方程式に帰着できることになります.

例(B-14-1(1))
x''+2x'-3x=0
なる線形常微分方程式を考えます.
微分方程式の特性方程式とは微分方程式の形からくるある代数方程式のことで、例えば今の場合 t^2+2t-3=0 のことです.
ここではこの方程式に重根がない場合として考えます.

{\bf x}(t)={}^t(x(t),x'(t)) としますと、
{\bf x}'(t)=\begin{pmatrix}0&1\\3&-2\end{pmatrix}{\bf x}
となります.この行列を A とすると、解は、{\bf x}(t)=e^{tA}{\bf x}(0) となります.
あとは、e^{tA} を求めればよいのですが、
A の固有値はこの微分方程式の特性方程式、\Phi_A(t)=\det\begin{pmatrix}t&-1\\-3&t+2\end{pmatrix}=t^2+2t-3=0 の解 1,-3 となります.
W_1=\left\{{\bf x}|\begin{pmatrix}1&-1\\-3&3\end{pmatrix}{\bf x}=0\right\}=\langle\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\rangle
W_{-3}=\left\{{\bf x}|\begin{pmatrix}-3&-1\\-3&-1\end{pmatrix}{\bf x}=0\right\}=\langle\begin{pmatrix}1\\-3\end{pmatrix}\rangle
特性方程式は上の行列の固有多項式と一致しますから、特性方程式の条件から行列は対角化可能となります.

つまり、P=\begin{pmatrix}1&1\\1&-3\end{pmatrix} とすると、P^{-1}AP=\begin{pmatrix}1&0\\0&-3\end{pmatrix}=D がいえます.
ここで、e^{tP^{-1}AP}=E+tP^{-1}AP+\frac{(tP^{-1}AP)^2}{2!}+\cdots=P^{-1}(E+tA+\frac{(tA)^2}{2!}+\cdots)Pなので、
e^{tP^{-1}AP}=P^{-1}e^{tA}P が成り立ち、左辺は
e^{tD}=\begin{pmatrix}e^t&0\\0&e^{-3t}\end{pmatrix} が言えます.
よって、求めたい行列の指数関数は
e^{tA}=P\begin{pmatrix}e^t&0\\0&e^{-3t}\end{pmatrix}P^{-1} となります.
これを計算すると、
\begin{eqnarray*}&&\begin{pmatrix}1&1\\1&-3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}e^t&0\\0&e^{-3t}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3&1\\1&-1\end{pmatrix}\frac{1}{4}\\&=&\begin{pmatrix}e^t&e^{-3t}\\e^t&-3e^{-3t}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3&1\\1&-1\end{pmatrix}\frac{1}{4}=\frac{1}{4}\begin{pmatrix}3e^t+e^{-3t}&e^t-e^{-3t}\\3e^t-3e^{-3t}&e^t+3e^{-3t}\end{pmatrix}\end{eqnarray*}
ゆえに、解 {\bf x}(t)=\frac{1}{4}((3e^t+e^{-3t})\alpha+(e^t-e^{-3t})\beta)=\frac{3\alpha+\beta}{4}e^t+\frac{\alpha-\beta}{4}e^{-3t} が求まります.
ここで、\alpha=x(0) かつ \beta=x'(0) です.
解は、特性方程式の根(行列 A の固有値)が \lambda_1,\lambda_2\cdots,\lambda_n であるとすると、
e^{\lambda_1t},e^{\lambda_2t},\cdots,e^{\lambda_nt} の一次結合で書けるということが分かります.
これは、固有値が相異なる n この場合ですが、そうではない場合もやり方はあるのですが、少し大変なので、またどこかで勉強して下さい.
ちなみに、私が去年教えた微分方程式の授業ではそれを扱いました.
その時のページはこちらです.
(ブログになっていないので少々読みにくいとは思いますがあしからず)


塩谷先生の問題2(8)はこのページでなんとかできるとして、
他の(1)-(7)は以前演習の授業でも出しているので分かった人も多いのでは?
こちらの授業の第14回にも同じような問題を載せましたね.
数列のシフト写像の表現行列も、その固有多項式を計算すると、数列の漸化式の特性方程式が出てきます.
例えば数列が a_{n+2}=a_{n+1}+a_n のときには x^2=x+1 が特性方程式です.

2015年2月4日水曜日

線形代数II演習13回レポートについて


第13回レポートについて

C-13-1
A の固有値が \lambda とするとき、e^{\lambda}e^A の固有値であることを示せという問題でしたが、
Av=\lambda v とする. v は固有値 \lambda の固有ベクトルとする.とき、e^{\lambda}e^A の固有値であることを示せばよかったのですが、
Av=\lambda v であることを使いましょう. まず、大事なのは、e^A の定義ですが、
e^Av=(E+A+\frac{A^2}{2!}+\cdots)v=Ev+Av+\frac{1}{2!}A^2v+\cdots=Ev+\lambda v+\frac{\lambda^2}{2!}v+\cdots
=(1+\lambda+\frac{\lambda^2}{2!}+\cdots)v=e^\lambda v
となります.A の固有ベクトルは e^A の固有ベクトルになるわけですね.
とにかく、e^\lambdae^A の固有値となることが示されればよいのです.
何かを示す時には定義に戻ることも重要です.
大体、教師が出そうとする問題としては、定義が少なくとも分かっているか?を問う問題が
多いです.
今回は固有値の定義に戻ったり、e^A の定義に戻ればよいです.
多くの人は対角化可能な行列に対して示したりしておりました.
そうではない場合を示そうとすると大変です.

(2) では、e^A\cdot e^B=e^B\cdot e^A が成り立つか?という問題でしたが、ほとんどの人はその問題に正しく答えていませんでした.成り立たないことは分かっても、そのような例を出すことをした人はほとんどいませんでした.

C-13-2
 直交行列の対角化はよく出来ていました.計算ミスなどは目立ちましたが.もし、レポートが○ではなかった人はもう一度復習しておきましょう.

C-13-3
 運動方程式はほとんど出来ていました.しかし、x_i は座標ではなく、自然長からの遷移を表しているということを忘れている人が多かったです.
\begin{cases}mx''_1(t)=k(x_2-x_1)\\mx''_2(t)=k(x_3-x_2)+k(x_1-x_2)\\mx''(t)=k(x_2-x_3)\end{cases}
が言えますので、行列で書けば、
{\bf x}''(t)=-\omega^2\begin{pmatrix}1&-1&0\\-1&2&-1\\0&-1&1\end{pmatrix}{\bf x}(t)
となります.{\bf x}(t)={}^t(x_1(t),x_2(t),x_3(t)) です.
あとは、これを対角化します.固有値は0,1,3 です.
P^{-1}AP=\begin{pmatrix}0&0&0\\0&1&0\\0&0&3\end{pmatrix}
です.ここで、P=\begin{pmatrix}1&-1&1\\1&0&-2\\1&1&1\end{pmatrix} です.
{\bf v}=P^{-1}{\bf x}={}^t(y_1(t),y_2(t),y_3(t)) としますと、
y_1''(t)=0,\ y_2''(t)=-\omega^2y_2(t),\ y_3''(t)=-3\omega^2y_3(t) となります.
後半2つは問題文の結論を使えばよいですが、 y_1''(t)=0 からは、y_1(t)=C_1+C_2t としましょう.
C_1,C_2 は積分定数です.
y_2(t)=C_3\cos\omega t+C_4\sin\omega t とし、
y_3(t)=C_5\cos\sqrt{3}\omega t+C_6\sin\sqrt{3}\omega t
とすることができます.
あとは、x_1(0)=x_2(0)=x_3(0)=0 また、x_1'(0)=x_3'(0)=0 x_2'(0)=v
を使うと、C_1,\cdots,C_6 を求めることができます.
それを代入して、x_1(t),x_2(t),x_3(t) を求めることができます.
例えば、x_1(t)=\frac{1}{3}vt-\frac{v}{3\sqrt{3}\omega}\sin\sqrt{3}\omega t
となります.

2015年2月3日火曜日

微積分II演習(第14回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

今日は積分の演習を行いました.
少々難しかったようで、一時間のうちで一問しかとけませんでした.

その前に、私が作った問題の解答をしました.

宿題12-1

\sum_{n=1}^\infty\frac{(\log n)-1}{(\log(n+1))^2}
の収束発散を問う問題でしたが、級数判定において非常によく使われるダランベールの判定やコーシーの判定など今回はあまり有効ではありません.大体どのような級数になりそうなのか最初に判断することも重要です.
部分和は大体 \sum_{n=1}^m\frac{1}{\log(n+1)} となることが見抜けるとやりやすいでしょう.
それを示すのに苦労した人もいたかもしれません.
授業では、以下のようにしました.ただし、m\ge 8 とします.
\sum_{n=1}^m\frac{\log n-1}{(\log(n+1))^2}>\sum_{n=1}^{7}\frac{\log n-1}{(\log(n+1))^2}+\sum_{n=3}^m\frac{\log n-\frac{1}{2}\log n}{(\log(n+1))^2}
>-2+\frac{1}{2}\sum_{n=8}^m\frac{\log n}{(\log(n^2))^2}>-2+\frac{1}{8}\sum_{n=8}^m\frac{1}{\log n}>-2+\frac{1}{8}\sum_{n=8}^m\frac{1}{n}\to \infty

としました.

ちなみに、\sum_{k=2}^n\frac{1}{\log k} は 漸近的に \int_2^n\frac{dx}{\log x} と同じです.
つまり、
\sum_{k=2}^n\frac{1}{\log k}\sim \int_2^n\frac{dx}{\log x}\sim \frac{n}{\log n}
この積分 \int_2^n\frac{dx}{\log x} は対数積分と呼ばれ、Li(x)=\int_2^x\frac{1}{\log x}dx と書きます.
n までの素数を数える関数を \pi(n):=\sum_{p:\text{素数},p\le n}1
とおきます.
\pi(n)\sim Li(n)
fが成り立っており、これを素数定理といいます.

宿題13-2

収束半径を求める問題は、多くの場合、ダランベールの方法やコーシーの方法などで解けます.
まず、級数展開をしておくと、
\frac{1}{1-z}=\sum_{n=0}^\infty \frac{1}{(1-a)^{n+1}}(z-a)^n
となります.この級数を a_n とすると、
|\frac{a_{n+1}}{a_{n}}|=\frac{|z-a|}{|1-a|}\to \frac{|z-a|}{|1-a|}
が成り立って、|z-a|<|1-a| ならば、この球数は絶対収束します.また
|z-a|>|1-a|=1-a であるとすると、発散します(ダランベールの方法)ので、収束半径は
1-a となります.


例題14-1(1)

今日は「古典的難問に学ぶ微分積分」という本に載っている問題なのでした.本屋で見て、題名に惹かれて授業で取り上げたくなって実施したのですが、本当に難問ぞろいでした.

ここで、書く必要がないほど、この本に説明がありますので、そちらを参照としたいところですが、
試験前でもありますので、今日やったところくらいはもう一度書いておきます.

\int_0^1\frac{\log(1+x)}{1+x^2}dx を2通りの計算方法により求めよ.
(1) x=\tan\theta と変換してから計算する.
(2) F(\alpha )=\int_0^\alpha \frac{\log(1+ax^2)}{1+x^2}dx の形を決定しておいてから \alpha=1 を代入する.

求めよ.定積分を計算するのに、 よくある積分に帰着できないときは、あるパラメータをおいて、そのパラメータにおいて微分しておくと、被積分関数がよくある積分の形になっていることがあるというものです.しかしこの手の問題は誘導なしには普通には思いつきませんよね.

この(1) はあの、有名な、解析の教科書、高木貞治による解析概論(p.112-113)にもやり方は載っています.
どうやってやるかというと、流れだけ説明すると、x=\tan \theta と変換してやると、\frac{dx}{1+x^2}=d\theta となるから、この積分は、
\int_0^{\frac{\pi}{4}}\log(1+\tan\theta)d\theta に帰着されます.
この被積分関数を \log \frac{\sqrt{2}\cos\left(\frac{\pi}{4}-\theta\right)}{\cos\theta}=\log\sqrt{2}+\log\cos\left(\frac{\pi}{4}-\theta\right)-\log\cos\theta
と変形できる.しかし、後半2つは積分をすると消しあいます.
よって、\int_0^{\frac{\pi}{4}}\log\sqrt{2}d\theta だけが残る.

同じように、
\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log\sin\theta d\theta もあるが、これはみなさんの練習問題として残しておこう.やり方はやはり、解析概論のほぼ同じページに載っています.この積分に関しては、一昔前に、私が受けたどこぞの大学の院入試にも出てきて、とても懐かしいものである.

(2) の方法に関しては、まず、F(\alpha) を微分して、その後で積分を実行するというものである.
これでなぜ上手くいくのか?よくわからない.それなりの理由があれば教えてもらいたい.

まず、微分してみると、(積分範囲にも \alpha があることに注意して)
F'(\alpha)=\frac{\log(1+\alpha^2)}{2(1+\alpha^2)}+\frac{\alpha}{1+\alpha^2}\text{Arctan}(\alpha)
となります.
これを積分すればよいのですが、この2つの項を見てみると、
微分: \frac12\log(1+\alpha^2)\to \frac{\alpha}{1+\alpha^2}
積分: \frac1{1+\alpha^2}\to \text{Arctan}(\alpha)
となりますから、どちらかを部分積分すれば、相殺して、F(\alpha)=\frac12\text{Arctan}(\alpha)\log(1+\alpha^2)
となるのです. F(0)=0 も使いました.
つまり、この関数に \alpha=1 を代入することで、F(1)=\frac{\pi\log 2}{8} が言えます.


x=\tan\frac{\theta}{2} となる変換
 上記では、x=\tan\theta という変換を施すことで、値を求めました.これは、1+x^2 という項ががあるので、それから、\tan\theta の公式を使うためです.
しかし、x=\tan\frac{\theta}{2} なる変換をすることもあります.
これは、F(x,y)x,y の有理関数として、積分が\int F(\cos\theta,\sin\theta)d\theta の場合に有効です.

例えば、そのような変換においては、\frac{2}{1+x^2}dx=d\theta が成り立ち、
\cos\theta=2\cos^2\frac{\theta}{2}-1=\frac{2}{1+x^2}-1=\frac{1-x^2}{1+x^2}\tan\theta=\frac{2x}{1-x^2}
ゆえに、\sin\theta=\cos\theta\tan\theta=\frac{2x}{1+x^2}
以下の積分ができます.そうすると、
\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{d\theta}{\cos\theta+\sin\theta}=\int_0^1\frac{2dx}{1+2x-x^2}
となる.
この積分は、有理関数の積分だから、部分分数等をすれば、計算することができて、
結果、\sqrt{2}\text{Arctanh}\frac{1}{\sqrt{2}} となる.


例題14-3
 この積分をやっているうちに終わってしまいました.
\int\int_D\frac{dxdy}{(1+x^2+y^2)^2}\ \ \ \ D=\{(x,y)|(x-1)^2+(y-1)^2\le 1\}
原点を中心とした円であれば簡単なのですが、中心が (1,1) とずれています.
この場合も(0,0) を中心として円として極座標表示しましょう.
そうすると、極座標において、積分範囲は
\begin{cases}0\le \theta\le \frac{\pi}{2}\\\cos\theta+\sin\theta-\sqrt{\sin\theta\cos\theta}\le r\le \cos\theta+\sin\theta+\sqrt{\sin\theta\cos\theta}\end{cases}
となります.
よって、うえの積分範囲を r_1\le r\le r_2 としておくと、
この2重積分は \int\int_D\frac{rdrd\theta}{(1+r^2)^2} となり、
計算により、
\int_0^{\frac{\pi}{2}}\left\{-\frac{1}{2}\frac{r_1^2-r^2_2}{(1+r^2_1)(1+r^2_2)}\right\}d\theta
が成り立つ.
この後半の積分は、上と同じように x=\tan\theta などと変換していけば、有理関数の積分二期逆されれていく.
ここでは詳しく書けないので、自身で確かめてほしい.
答えは \left(1-\frac{1}{\sqrt{2}}\right)\frac{\pi}{2} となる.




  1. 高瀬正仁, 古典的難問に学ぶ微積分、共立出版
  2. 高木貞治, 解析概論, 岩波書店