[物理2 クラス対象(金曜日4限)]
HPに行く.
今日は試験を行い、採点を行いました.
各問題における得点率は下のようになりました.
55点満点
受験者:30人
受験放棄者:2人
平均点:34点
最高得点:50点
40点以上:12人
問題ごとの得点率です.
直交行列による対角化に関しては皆さんよく出来ていました.
しかし、連立方程式を解く問題は若干ですが出来が悪いような気がします.
連立方程式の解が ${\Bbb C}^4$ の中だとわざわざ言っているのにもかかわらず3次元で書いてみたり、基底をひと組の意味がわからず次元が2と書いているのにかかわらず一つのベクトルのみ書いている人がいました.
表現行列に関しては、抽象ベクトル空間としては、多項式とは言っても今まで余り扱わなかった2変数の多項式の空間を扱いました.しかしそのような空間を理解している人も多かったです.$a,b,c$ に引きずられておかしいことを書いている人もいました.
最後の問題は良くできる人向けという感じでおまけの問題でしたが、惜しい解答はありましたが完答している人はいませんでした.
問題1
(1) 行列を基本変形すると
$\begin{pmatrix}0&1&1&-1\\3&1&-2&-1\\2&1&-1&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\2&1&-1&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\0&1&1&-1\end{pmatrix}$
$\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\0&0&0&0\end{pmatrix}$
ゆえに、$\text{rank}(A)=2$ なので、次元公式から $\dim W=4-2=2$
(2) (1) の簡約階段行列から、$x_1=x_3,x_2=-x_3+x_4$ がなりたつから、$c=x_3,d=x_4$ とおくと、
$\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\\x_4\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}c\\-c+d\\c\\d\end{pmatrix}=d\begin{pmatrix}1\\-1\\1\\0\end{pmatrix}+d\begin{pmatrix}0\\1\\0\\1\end{pmatrix}=c{\bf v}_1+d{\bf v}_2$ とおくと、明らかに$W$ は ${\bf v}_1,{\bf v}_2$ で生成され、一次独立である.
(一次独立である証明は略.2つは平行でないからすぐわかるが.)よって、${\bf v}_1,{\bf v}_2$ が $W$ の基底となる.
(3) ${\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_4$ を ${\Bbb C}^4$ の標準基底とする.
このとき、$4\times 6$ 行列 $({\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3,{\bf e}_4)$ を簡約化して、
$({\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3,{\bf e}_4)\to\cdots\to \begin{pmatrix}1&0&0&0&1&0\\0&1&0&0&0&1\\0&0&1&0&-1&0\\0&0&0&1&1&-1\end{pmatrix}$
ゆえに、最初の4つで${\Bbb C}^4$ 上で一次独立な最大のベクトルを取っているので、
$\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2\}$で ${\Bbb C}^4$ の基底を構成している.
よって、${\bf e}_1,{\bf e}_2$ が $W$ の補空間の基底となる.
問題2
(1) 固有多項式は $\Phi(t)=(t-2)^2(t+1)$ となるので、固有値は $2,-1$ となる.
(2) 固有値 $2,-1$ の固有空間をそれぞれ、$W_2,W_{-1}$ とすると、
$W_2=\{{\bf x}|\begin{pmatrix}1&1&1\\1&1&1\\1&1&1\end{pmatrix}{\bf x}={\bf 0}\}$
$W_{-1}=\{{\bf x}|\begin{pmatrix}-2&1&1\\1&-2&1\\1&1&-2\end{pmatrix}{\bf x}={\bf 0}\}$
この連立方程式を解いて、
$W_2=\langle\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}\rangle=\langle{\bf v}_1,{\bf v}_2\rangle$
$W_{-1}=\langle\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}\rangle=\langle{\bf v}_3\rangle$
(3) この行列は実対称行列なので、$W_2,W_{-1}$ は直交する.$W_2$ の中のベクトルを直交化すると、
${\bf w}_2={\bf v}_2-\frac{1}{2}{\bf v}_1=\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}-\frac1{2}\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-1\\-1\\2\end{pmatrix}$
ゆえに、${\bf v}_1,{\bf w}_2,{\bf v}_3$ はそれぞれの固有ベクトルであり、直交化された.
よって、これを正規化して、行列として並べることで、
$$P=\begin{pmatrix}\frac{-1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\\\frac{1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\\0&\frac{2}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\end{pmatrix}$$
となり、$P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&2&0\\0&0&-1\end{pmatrix}$
となる.
問題3
(1) $V$ は複素ベクトル空間 $\langle x^2,xy,y^2\rangle$ となり、基底は、$x^2,xy,y^2$ を使う.
$F(x^2)=(x+y)^2=x^2+2xy+y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\2\\1\end{pmatrix}$
$F(xy)=(x+y)(x-y)=x^2-y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix}$
$F(y^2)=(x-y)^2=x^2-2xy+y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\-2\\1\end{pmatrix}$
ゆえに、表現行列は
$F(x^2,xy,y^2)=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1&1&1\\2&0&-2\\1&-1&1\end{pmatrix}$
より、
$A=\begin{pmatrix}1&1&1\\2&0&-2\\1&-1&1\end{pmatrix}$ が表現行列となる.
(2) $F:V\to V$ が同型写像であることは $F$ の表現行列が正則であることである.
$\det(A)=-8\neq0$ であるから、$A$ は正則であり、$F$ は同型写像となる.
問題4
$(\Rightarrow)$ を示す.条件から、
$A$ には $n$ 個の相異なる固有値 $\lambda_i\ \ (i=1,\cdots,n)$ とそれに対するベクトル ${\bf v}_i\ \ (i=1,\cdots,n)$ が存在する.
$AB{\bf v}_i=BA{\bf v}_i=B\lambda_i{\bf v}_i=\lambda_iB{\bf v}_i$ であるから、この式の最初と最後を見比べてみると、$B{\bf v}_i$ は $A$ の固有値$\lambda_i$ の固有空間の元である.なので、${\bf v}_i$ を用いて、$B{\bf v}_i=\eta_i{\bf v}_i$ と書ける.ゆえに、${\bf v}_i\neq 0$ なので、${\bf v}_i$ は $B$の固有ベクトルであり、$\eta_i$ はその固有値である.
ゆえに、$A$ の任意の固有ベクトルは $B$ の固有ベクトルにもなっている.$A,B$ の役割を入れ替えれば $B$ の固有ベクトルは $A$ の固有ベクトルにもなっているので、2つの行列の固有空間は一致する.
$(\Leftarrow)$ を示す.条件から、
$A,B$ には共通の固有ベクトルで基底となるもの ${\bf v}_i\ \ (i=1,\cdots,n)$ が存在する.つまり、ある行列 $P$ によって、$P^{-1}AP=D_1,\ P^{-1}BP=D_2$ が成り立つ.ここで、$D_1,D_2$ は対角行列.
よって、$A=PD_1P^{-1},B=PD_2P^{-1}$ であるから、
$AB=PD_1P^{-1}PD_2P^{-1}=PD_1D_2P^{-1}=PD_2D_1P^{-1}=BA$
がいえる.
この同値条件は、$A,B$ が相異なる固有値をもつという条件より広く、対角化可能という状況で正しいのですが、ここは簡単のため相異なる固有値をそれぞれ持つということにしました.
今日は試験を行い、採点を行いました.
各問題における得点率は下のようになりました.
55点満点
受験者:30人
受験放棄者:2人
平均点:34点
最高得点:50点
40点以上:12人
問題ごとの得点率です.
問題 | 1 | 2 | 3 | 4 |
得点率(%) | 73.5 | 84.4 | 56.7 | 5.7 |
直交行列による対角化に関しては皆さんよく出来ていました.
しかし、連立方程式を解く問題は若干ですが出来が悪いような気がします.
連立方程式の解が ${\Bbb C}^4$ の中だとわざわざ言っているのにもかかわらず3次元で書いてみたり、基底をひと組の意味がわからず次元が2と書いているのにかかわらず一つのベクトルのみ書いている人がいました.
表現行列に関しては、抽象ベクトル空間としては、多項式とは言っても今まで余り扱わなかった2変数の多項式の空間を扱いました.しかしそのような空間を理解している人も多かったです.$a,b,c$ に引きずられておかしいことを書いている人もいました.
最後の問題は良くできる人向けという感じでおまけの問題でしたが、惜しい解答はありましたが完答している人はいませんでした.
問題1
(1) 行列を基本変形すると
$\begin{pmatrix}0&1&1&-1\\3&1&-2&-1\\2&1&-1&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\2&1&-1&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\0&1&1&-1\end{pmatrix}$
$\to \begin{pmatrix}1&0&-1&0\\0&1&1&-1\\0&0&0&0\end{pmatrix}$
ゆえに、$\text{rank}(A)=2$ なので、次元公式から $\dim W=4-2=2$
(2) (1) の簡約階段行列から、$x_1=x_3,x_2=-x_3+x_4$ がなりたつから、$c=x_3,d=x_4$ とおくと、
$\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\\x_4\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}c\\-c+d\\c\\d\end{pmatrix}=d\begin{pmatrix}1\\-1\\1\\0\end{pmatrix}+d\begin{pmatrix}0\\1\\0\\1\end{pmatrix}=c{\bf v}_1+d{\bf v}_2$ とおくと、明らかに$W$ は ${\bf v}_1,{\bf v}_2$ で生成され、一次独立である.
(一次独立である証明は略.2つは平行でないからすぐわかるが.)よって、${\bf v}_1,{\bf v}_2$ が $W$ の基底となる.
(3) ${\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_4$ を ${\Bbb C}^4$ の標準基底とする.
このとき、$4\times 6$ 行列 $({\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3,{\bf e}_4)$ を簡約化して、
$({\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2,{\bf e}_3,{\bf e}_4)\to\cdots\to \begin{pmatrix}1&0&0&0&1&0\\0&1&0&0&0&1\\0&0&1&0&-1&0\\0&0&0&1&1&-1\end{pmatrix}$
ゆえに、最初の4つで${\Bbb C}^4$ 上で一次独立な最大のベクトルを取っているので、
$\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf e}_1,{\bf e}_2\}$で ${\Bbb C}^4$ の基底を構成している.
よって、${\bf e}_1,{\bf e}_2$ が $W$ の補空間の基底となる.
問題2
(1) 固有多項式は $\Phi(t)=(t-2)^2(t+1)$ となるので、固有値は $2,-1$ となる.
(2) 固有値 $2,-1$ の固有空間をそれぞれ、$W_2,W_{-1}$ とすると、
$W_2=\{{\bf x}|\begin{pmatrix}1&1&1\\1&1&1\\1&1&1\end{pmatrix}{\bf x}={\bf 0}\}$
$W_{-1}=\{{\bf x}|\begin{pmatrix}-2&1&1\\1&-2&1\\1&1&-2\end{pmatrix}{\bf x}={\bf 0}\}$
この連立方程式を解いて、
$W_2=\langle\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}\rangle=\langle{\bf v}_1,{\bf v}_2\rangle$
$W_{-1}=\langle\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}\rangle=\langle{\bf v}_3\rangle$
(3) この行列は実対称行列なので、$W_2,W_{-1}$ は直交する.$W_2$ の中のベクトルを直交化すると、
${\bf w}_2={\bf v}_2-\frac{1}{2}{\bf v}_1=\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}-\frac1{2}\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-1\\-1\\2\end{pmatrix}$
ゆえに、${\bf v}_1,{\bf w}_2,{\bf v}_3$ はそれぞれの固有ベクトルであり、直交化された.
よって、これを正規化して、行列として並べることで、
$$P=\begin{pmatrix}\frac{-1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\\\frac{1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\\0&\frac{2}{\sqrt{6}}&\frac{1}{\sqrt{3}}\end{pmatrix}$$
となり、$P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&2&0\\0&0&-1\end{pmatrix}$
となる.
問題3
(1) $V$ は複素ベクトル空間 $\langle x^2,xy,y^2\rangle$ となり、基底は、$x^2,xy,y^2$ を使う.
$F(x^2)=(x+y)^2=x^2+2xy+y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\2\\1\end{pmatrix}$
$F(xy)=(x+y)(x-y)=x^2-y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix}$
$F(y^2)=(x-y)^2=x^2-2xy+y^2=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1\\-2\\1\end{pmatrix}$
ゆえに、表現行列は
$F(x^2,xy,y^2)=(x^2,xy,y^2)\begin{pmatrix}1&1&1\\2&0&-2\\1&-1&1\end{pmatrix}$
より、
$A=\begin{pmatrix}1&1&1\\2&0&-2\\1&-1&1\end{pmatrix}$ が表現行列となる.
(2) $F:V\to V$ が同型写像であることは $F$ の表現行列が正則であることである.
$\det(A)=-8\neq0$ であるから、$A$ は正則であり、$F$ は同型写像となる.
問題4
$(\Rightarrow)$ を示す.条件から、
$A$ には $n$ 個の相異なる固有値 $\lambda_i\ \ (i=1,\cdots,n)$ とそれに対するベクトル ${\bf v}_i\ \ (i=1,\cdots,n)$ が存在する.
$AB{\bf v}_i=BA{\bf v}_i=B\lambda_i{\bf v}_i=\lambda_iB{\bf v}_i$ であるから、この式の最初と最後を見比べてみると、$B{\bf v}_i$ は $A$ の固有値$\lambda_i$ の固有空間の元である.なので、${\bf v}_i$ を用いて、$B{\bf v}_i=\eta_i{\bf v}_i$ と書ける.ゆえに、${\bf v}_i\neq 0$ なので、${\bf v}_i$ は $B$の固有ベクトルであり、$\eta_i$ はその固有値である.
ゆえに、$A$ の任意の固有ベクトルは $B$ の固有ベクトルにもなっている.$A,B$ の役割を入れ替えれば $B$ の固有ベクトルは $A$ の固有ベクトルにもなっているので、2つの行列の固有空間は一致する.
$(\Leftarrow)$ を示す.条件から、
$A,B$ には共通の固有ベクトルで基底となるもの ${\bf v}_i\ \ (i=1,\cdots,n)$ が存在する.つまり、ある行列 $P$ によって、$P^{-1}AP=D_1,\ P^{-1}BP=D_2$ が成り立つ.ここで、$D_1,D_2$ は対角行列.
よって、$A=PD_1P^{-1},B=PD_2P^{-1}$ であるから、
$AB=PD_1P^{-1}PD_2P^{-1}=PD_1D_2P^{-1}=PD_2D_1P^{-1}=BA$
がいえる.
この同値条件は、$A,B$ が相異なる固有値をもつという条件より広く、対角化可能という状況で正しいのですが、ここは簡単のため相異なる固有値をそれぞれ持つということにしました.