2021年12月24日金曜日

トポロジー入門(第10回)

[場所オンライン(月曜日3限)]


今回は商位相空間と連結性について解説しました。

商位相

まず、次の定義をします。

定義10.1
$(X,\mathcal{O}_X)$、$(Y,\mathcal{O}_Y)$ を位相空間とし、
$f:X\to Y$ を全射とする。
$$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X\Leftrightarrow U\in \mathcal{O}_X$$
が成り立つとき、$f$ は商写像という。

すぐわかることは、商写像なら連続ということです。
上の⇐が $f$ の連続性を意味するからです。
しかし、商写像は全射連続だけではありません。

その条件をまずは見ていきます。
商写像の例として、連続で開な全射があります。

定理10.1
$f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y)$ が連続な全射な開写像なら、$f$ は商写像。

(証明) 連続性は仮定されているから、写像であることの$\Rightarrow$ 
を示せばよいです。
$U\in \mathcal{P}(Y)$ に対して、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
なら、$f$ が開写像であることから $f(f^{-1}(U))=U\in\mathcal{O}_Y$
分かります。
よって、写像の条件の$\Rightarrow$ が分かります。
このことから $f$ は商写像であることがわかります。 $\Box$

商写像の特徴付けをここで与えます。

定理10.3
全射 $f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y)$
が商写像であることとは、
$\mathcal{O}_Y$ が $f$ を連続にする最大の位相であることの
必要十分条件である。


$\mathcal{O}_Y$ が $f$ を連続にする最大の位相であるとは、
$\mathcal{O}$ が $f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O})$ を連続とする
任意の位相なら $\mathcal{O}\subset\mathcal{O}_Y$ であることを意味します。


(定理10.3の証明) (十分性) $f$ が商写像であるとします。
このとき、$\mathcal{O}$ を $f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O})$ を連続にする任意の位相なら
$\forall U\in \mathcal{O}$ に対して、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
であることから、商写像の定義から $U\in\mathcal{O}_Y$ が分かります。
ゆえに、$\mathcal{O}\subset\mathcal{O}_Y$ となります。このことから
$\mathcal{O}_Y$ は $f$ を連続にする最大の位相であることが分かります。
(必要性) $\mathcal{O}_Y$ が $f$ を連続にする最大の位相とする。
まず $f$ が連続であることから、商写像の条件の$\Leftarrow$ が成り立つ。
商写像の条件の $\Rightarrow$ を示す。
任意の $f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$ に対して、
$\mathcal{O}=\{\emptyset,U,Y\}$ は $Y$ 上の位相であり、$f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O})$ は連続である。
ここで、$\mathcal{O}_Y$ は $f$ を連続にする最大の位相であったから $\mathcal{O}\subset \mathcal{O}_Y$ が分かる。
特に、$U\in\mathcal{O}_Y$ である。
よって、これは、$f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y)$ が商写像
であることを意味します。$\Box$


ここで、 次の定義をしましょう。
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ と全射 $f:X\to Y$ が存在したとき、
$Y$ 上の $f$ の最小にする位相を $\mathcal{O}_f$ と書くことにします。
このとき、直前の定理から $\mathcal{O}_f$ は 
$(X,\mathcal{O})\to (Y,\mathcal{O}_f)$ が
商写像となるような $Y$ 上の位相ということになります。
そのような位相の一意性もわかることになります。

このとき、$\mathcal{O}_f$は、
$$\{U\subset Y|f^{-1}(U)\in\mathcal{O}_X\}$$
としても定義されます。

このようにして、全射 $f:X\to Y$ を通して、$X$ 上の位相から
$f$ の連続性を通して $Y$ 上の位相を"標準的に"作る唯一の方法があることになります。

この方法を通して、商集合 $X/\sim$ を位相空間にすることができます。
商集合とは、集合 $X$ 上に導入された同値関係$\sim$ 
によって作られる同値類全体の集合のことです。
$\sim$ が同値関係であるとは、$\forall a,b,c\in X$ に対して、
(i) $a\sim a$
(ii) $a\sim b\rightarrow b\sim a$
(iii) $a\sim b$ かつ $b\sim c$ ならば $a\sim c$

を満たす2項関係のことです。
このとき、$C(a)=\{x\in X|a\sim x\}$ として同値類を表します。
この同値類全体の集合 $\{C(a)|a\in X\}$ を商集合といい、
$X/\sim$ と書くのでした。
写像 $p:X\to X/\sim$ を
$a\mapsto C(a)$ として定めたとき、
$p$ を自然な射影といいます。
記号の使い方として、$C(a)$ のことを $[a]$ とかぎかっこを
使って書くことがあります。

今、$X$ 上に位相 $\mathcal{O}$ が入っていたとき、
自然な射影 $p:X\to X/\sim$ を通して、$X/\sim$ に
位相を入れることができます。
この時できる $(X/\sim,\mathcal{O}_p)$ を
$X/\sim$ 上の商位相空間($\mathcal{O}_p$ を商位相)といいます。

つまり、$p$ が商写像となるような位相空間を $X/\sim$ 
上に導入したことになります。

例10.4
$({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d_2})$ 
に、同値関係として、$(x_1,y_1)\sim(x_2,y_2)\leftrightarrow x_1=x_2$
として導入する。自然な射影を $p$ とします。
$(x,y)$ を含む同値類を $[x,y]$ と表すことにします。
このとき、構成される商位相空間 $({\mathbb R}^2/\sim,\mathcal{O}_{d_2,p})$
は $({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})$ と同相になります。

実際、$\varphi([x,y])=f(x)$ として定義すると
$\varphi:{\mathbb R}^2/\sim\to {\mathbb R}$ は同相になります。
まず写像になることは、$[x,y]=[x',y']$ なら、$\varphi([x,y])=x=x'=\varphi([x',y'])$
であるからです。

単射性は、$\varphi([x,y])=\varphi([x',y'])$ なら、$x=x'$ が成り立ち、
同値関係の定義から $(x,y)\sim (x',y')$ が成り立つので、$[x,y]=[x',y']$
が成り立ちます。
全射性は、$\forall x\in {\mathbb R}$ に対して $z\in {\mathbb R}$ を
任意に選ぶと、$\varphi([x,z])=x$ が得られることからわかります。

同相であることは次の定理の証明に一般化して証明します。

定理10.4
$f:(X,\mathcal{O}_X)\to (Y,\mathcal{O}_Y)$ を商写像とする。
このとき、$f(x)=f(x')\leftrightarrow x\sim x'$ として 
$X$ に同値関係 $\sim$ を導入する。その自然な射影を $p$ とする。
このとき、商位相空間 $(X/\sim,\mathcal{O}_p)$ は 
$(Y,\mathcal{O}_Y)$ と同相である。

(証明) $\varphi:X/\sim\to Y$ を $\varphi([x])=f(x)$ として定義すると
$\varphi$ が写像であることや、全単射であることは上記の例10.4と
同様の証明をすることでわかります。
また、$\varphi([x])=\varphi(p(x))=\varphi\circ p(x)=f(x)$
であることから、$\varphi\circ p=f$ であることもわかります。

$\varphi$ が同相写像であることを示そう。
(連続性)  $U\in \mathcal{O}_Y$ とすると、$p^{-1}(\varphi^{-1}(U))=(\varphi\circ p)^{-1}(U)=f^{-1}(U)$
より、$f$ の連続性から $p^{-1}(\varphi^{-1}(U))\in \mathcal{O}_X$ であることが
わかり、$p$ が商写像であることから$\varphi^{-1}(U)\in \mathcal{O}_{X,p}$
であることが分かります。これは、$\varphi$ が連続であることを意味します。
(開写像性) $V\in \mathcal{O}_{X,p}$ に対して、
$p^{-1}(V)=p^{-1}(\varphi^{-1}(\varphi(V)))=(\varphi\circ p)^{-1}(\varphi(V))=f^{-1}(\varphi(V))$
であり、$p$ が連続であることと $f$ が商写像であることから、$\varphi(V)\in \mathcal{O}_{Y}$
であることがわかります。
これは$\varphi$ が開写像であることを意味します。

全単射な連続な開写像は同相写像であるから、$f$ は同相写像となります。$\Box$

これらのことから、例10.4の写像
$({\mathbb R}^2/\sim,\mathcal{O}_{d_2,p})\to ({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})$
は同相写像であることがわかります。

ここで次の定理を用意します。

定理10.5
$f:X\to Y$ を連続写像とする。
このとき、$\tilde{f}:X\to f(X)$ を $\tilde{f}(x)=f(x)$ 
とするとき、$\tilde{f}$ も連続である。

この定理は、連続写像の終域を像に縮めた写像も連続であることを
主張しています。ここで、$f(X)$ の位相は $Y$ からくる相対位相と
考えます。証明は易しいのでここでは省略します。

例10.5
${\mathbb S}^1=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\}$ とおきます。
$f:{\mathbb R}\to {\mathbb S}^1$ を$f(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta)$ とします。
${\mathbb S}^1\subset{\mathbb R}^2$ の相対位相は、
${\mathbb R}$ 上の同値関係 $\theta\sim \theta'\leftrightarrow \theta_1-\theta_2\in 2\pi{\mathbb Z}$
によって得られる商位相空間と同相となります。

(証明)
$\tilde{f}:{\mathbb R}\to {\mathbb R}^2$ を$\tilde{f}(\theta)=f(\theta)$
として得られるものとします。
$\tilde{f}$ は連続となります。$\mathcal{O}_{d_2}$ は $\mathcal{O}_{d_1}$
の2つの直積位相になるので、
$\tilde{f}:{\mathbb R}\to {\mathbb R}^2$ が連続であるためには、
$\text{pr}_1\circ \tilde{f}(\theta)=\cos\theta$
$\text{pr}_2\circ \tilde{f}(\theta)=\sin\theta$
が連続であることが必要十分ですが、$\cos\theta$ や $\sin\theta$ は
連続関数なので $\tilde{f}$ は連続写像であることが分かります。
上の定理10.5から $f$ は連続となることがわかります。
$U\in \mathcal{O}_{d_1}$ とすると、$U=\cup_{\lambda\in \Lambda}(a_\lambda,b_\lambda)$
のように開区間の和集合になります。
$f(U)=\cup_{\lambda\in \Lambda}f((a_\lambda,b_\lambda))=\cup_{\lambda\in \Lambda}(f(a_{\lambda}),f(b_{\lambda}))$
$\{(\cos\theta,\sin\theta)|a<\theta<b\}$ が ${\mathbb S}^1$
の相対位相の開基となるので、$f(U)\in \mathcal{O}_{d_2,{\mathbb S}^1}$ となります。
よって、$f$ は全射連続開写像であるから$f$ は商写像になります。
よって、$f$ によって得られる同値関係は、
$f(\theta)=f(\theta')\leftrightarrow (\cos\theta,\sin\theta)=(\cos\theta',\sin\theta')\leftrightarrow \theta_1-\theta_2\in 2\pi{\mathbb Z}$
が成り立ちます。
ゆえに、${\mathbb R}$ に $\theta_1\sim\theta_2\leftrightarrow \theta_1-\theta_2\in 2\pi{\mathbb Z}$ であるように
いれた同値関係による商位相空間 $({\mathbb R}/\sim,\mathcal{O}_p)$
は相対位相空間 $({\mathbb S}^1,\mathcal{O}_{d_2,{\mathbb S}^1})$ 
に$\varphi$ を介して同相になります。
つまり、
$$\varphi:({\mathbb R}/\sim,\mathcal{O}_p)\to ({\mathbb S}^1,\mathcal{O}_{d_2,{\mathbb S}^1})$$
は同相になります。$\Box$

連結性
次に連結性に入りましたが、定義のみで終わりました。

定義10.3
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ が空でも $X$ でもない
開集合 $U,V$ を用いて $X= U\sqcup V$ と表せないとき
$X$ は連結という。
$X$ が連結ではないとき、$X$ は非連結という。

ここで、$\sqcup$ は交わりのない和集合を意味します。
連結性は、「表せないとき」ということを条件としており、
理解がしずらいです。
ですので少し次のように言い換えましょう。

定理10.6
$X$ が連結であるとは、$X$ の開かつ閉集合は $X$ もしくは $\emptyset$ 
のみであることと同値である。

(証明) $X$ が不連結であるとすると、空でも、$X$ でもない 開集合
$U,V\subset X$が存在して
$X=U\cup V$ が成り立ちます。このとき、$U^c=V$ は開集合であるから
$U$ は開かつ閉集合となります。
よって、空でも $X$ でもない開かつ閉集合が存在します。
空集合と $X$ は開かつ閉集合であるから、
この否定は、空もしくは $X$ ではない開かつ閉集合が存在しないとき連結性を
意味することになります。$\Box$

2021年12月14日火曜日

トポロジー入門(第9回)

[場所:オンライン(月曜日3限)]


今回は、点列の収束性と、直積位相についてやりました。
その前に、誘導位相について残っていた部分を片付けました

誘導位相・相対位相
定理9.1
位相空間$(X,\mathcal{O})$ の開基を
$\mathcal{B}$ とするとき、$A\subset X$ の相対位相
$(A,\mathcal{O}_A)$ の開基は、
$$\mathcal{B}_A=\{A\cap B|B\in \mathcal{B}\}$$
である。

(証明) $\mathcal{O}_A$ の開集合 $A\cap U$ をとります。
$p\in A\cap U$ に対して、$p\in B\subset U$
となる $B\in \mathcal{B}$ が存在します。
よって
$$p\in A\cap B\subset A\cap U$$
となり、$A\cap B\in \mathcal{B}_A$ となるので
$\mathcal{B}_A$ は $\mathcal{O}_A$ の開基となります。$\Box$

先週は誘導位相ついてやったのですが その時は写像が1つだけの場合にやりました。
しかし今回は複数の写像について誘導位相を定義しました。

定義9.1(誘導される位相2)
$(Y_\lambda,\mathcal{O}_\lambda)$ 位相空間の族
写像 $f_\lambda:X\to Y_\lambda$ ($\lambda\in \Lambda)$
$\mathcal{F}=\{f_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ とする。
$\langle \mathcal{F}\rangle$ を $\{f_\lambda^{-1}(U_\lambda)|U_\lambda\in \mathcal{O}_\lambda,\lambda\in \Lambda\}$
を準開基とする開集合系。つまり、
$$\langle \mathcal{F}\rangle:=\langle \{f_\lambda^{-1}(U_\lambda)|U_\lambda\in\mathcal{O}_\lambda,\lambda\in \Lambda\}\rangle$$
とする。これを $\mathcal{F}$ によって誘導される位相(誘導位相)
という。

このとき、$\langle \mathcal{F}\rangle$ は、$\mathcal{F}$ 
の任意の写像を連続にするような $X$ 上の最小の位相ということになります。


点列の収束

について説明をしました。

そもそも点列というものは、$x_1,x_2,\cdots $ であって、それらは、
$(x_n)\in X^{\mathbb N}$ と考えられます。

点列が収束することについての定義をしておきます。

定義9.3
点列が収束するというのは、$x\in X$ が存在して、
$$\forall U\in \mathcal{N}(x)\exists N>0\forall n>N(x_n\in U)$$
を満たすことをいう。


距離空間の場合には、
$$\forall U\in \mathcal{N}_d(x)\exists N>0\forall n>N(x_n\in U)$$
となりますが、これは、
$$\forall \epsilon>0\exists N>0\forall n>N(x_n\in B_d(x,\epsilon))$$
と同値になります。

というのも、
$\Rightarrow$ は、$\forall B_d(x,\epsilon)\in \mathcal{N}(x)$ 
に対して成り立つことから、直ちにわかり、
$\Leftarrow$ は、$\forall U\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
$\exists \epsilon >0(B_d(x,\epsilon )\subset U)$
が成り立つので、条件から、$\exists N>0\forall n>N$ に対して、
$x_n\in B_d(x,\epsilon )\subset U$ がなりたちます。

また、閉集合であることから、点列の性質として
つぎのようなことが言えます。

定理9.2
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とするとき、$F\subset X$ 
が閉集合なら、任意の $n$ に対して $x_n\in F$ を満たす点列 $(x_n)$ に対して、
ですので、$x\in X$ に収束するなら、$x\in F$
である。

つまり、閉集合 $F$ 上の任意の点列で、$X$ に収束するものがあれば、
その収束先も $F$ の中に入るということです。
このような性質を点列閉という言い方をします。
上の定理は、部分集合は閉ならば、点列閉となります。
逆に、点列閉ならば、閉であることは一般には成り立ちません。

(定理9.2の証明) 条件を満たす点列の収束先が $x\in F^c$ を満たすとします
このとき、$F^c$ は開集合だから、$\exists U\in \mathcal{N}(x)$ 
であって、$U\subset F^c$ を満たします。
また、収束点列であることから、$\exists N>0\forall n>N(x_n\in U)$  
となりますがそのような $x_n\in F^c$  であり、$x_n\in F$  であることに
反します。よって、$x\in F$  となります。(証明終了)

直積位相
直積位相について定義しました。
位相空間 $(X_i,\mathcal{O}_i)$ $i=1,2,\cdots,n$ に対して、直積集合
$X_1\times X_2\times\cdots\times  X_n$
の上に、直積位相を次のように定めます。

定義9.3
$U_i\in\mathcal{O}_i$ に対して、
$U_1\times U_2\times \cdots \times U_n$ 
を開基とする位相を
$X_1\times X_2\times \cdots\times X_n$ 
に入れたものを直積位相といい、
$$\mathcal{O}_1\times \mathcal{O}_2\times \cdots \times \mathcal{O}_n$$
とかく。これを直積位相(直積位相空間)という。

上の $\mathcal{O}_1\times \mathcal{O}_2\times \cdots \times \mathcal{O}_n$ の部分に使われている記号 $\times $ は集合の直積とは意味合いが異なるので注意を
してください。
もし、任意の $i$  に対して $\mathcal{O}_i=\mathcal{O}$ であるなら、この直積は $\mathcal{O}^n$
として書くことにします。


標準射影 $\text{pr}_i:X_1\times \cdots\times X_n\to X_i$
を $\text{pr}_i(x_1,x_2,\cdots, x_n)=x_i$
とします。この写像を標準射影と言います。

このとき、直積位相は、標準射影 $\text{pr}_i$ の全てが連続になるための
最弱な位相になります。
つまり、
$$\mathcal{O}_1\times \mathcal{O}_2\times \cdots\times \mathcal{O}_n=\langle \text{pr}_1,\text{pr}_2,\cdots,\text{pr}_n\rangle$$
となります。
左辺の開基は $U_1\times \cdots \times U_n$ の形ですが、これは、
右辺において、$\text{pr}_1^{-1}(U_1)\cap\cdots\cap \text{pr}_n^{-1}(U_n)$ 
と表されるので、同じ開基を用いていることから両者は同じ位相ということになります。

例9.8
$({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d_1}^2)$, $({\mathbb R}^2,\mathcal{O}_{d_2})$ は同値である。
$\mathcal{O}_{d_1}^2=\mathcal{O}_{d_1}\times \mathcal{O}_{d_1}$ は2つのユークリッド距離位相の直積であり、
$\mathcal{O}_{d_2}$ は2次元のユークリッド位相です。

前者は、長方形からなる開集合を開基とする位相であって
後者は、円からなる開集合を開基とする位相です。
これらは、位相として同値になります。

これは、$x=(x_1,x_2)$ として、
$$B_{d_2}(x,\epsilon)\subset B_{d_1}(x_1,\epsilon)\times B_{d_1}(x_2,\epsilon)$$
であること、また、
$$B_{d_1}\left(x_1,\frac{\epsilon}{\sqrt{2}}\right)\times B_{d_1}\left(x_2,\frac{\epsilon}{\sqrt{2}}\right)\subset B_{d_2}(x,\epsilon)$$
が成り立つことから直ちに導かれます。
ここに証明を書くのは面倒なので、
詳しくは拙著「例題形式で探求する集合・位相」
の方を読んでください。

このことから、$\mathcal{O}_M$ を ${\mathbb R}^2$ 上のマンハッタン距離
による距離位相空間とすると、
$\mathcal{O}_{d_2}=\mathcal{O}_M=\mathcal{O}_{d_1}^2$
が成り立ちます。

また、よく使う定理としては、以下があります。

定理9.6
直積位相空間 $(X_1\times  \cdots\times X_n,\mathcal{O}_1\times \cdots\times \mathcal{O}_n)$
と位相空間 $(Y,\mathcal{O})$ に対して、
$f:Y\to X_1\times  \cdots\times X_n$ が連続であるための必要十分条件
は、任意の $i$ に対して、$\text{pr}_i\circ f$ が連続であることである。。

必要性は、$\text{pr}_i$ と $f$ が連続であることから、
その合成写像も連続であることから成り立ちます。

十分性は、直積位相空間の任意の開基 $U_1\times \cdots\times U_n$ に
対して、その逆像は、
$$f^{-1}(U_1\times \cdots \times U_n)=f^{-1}(\text{pr}_1^{-1}(U_1)\cap \cdots\cap \text{pr}_n^{-1}(U_n))$$
$$=f^{-1}(\text{pr}_1^{-1}(U_1))\cap \cdots\cap f^{-1}(\text{pr}_n^{-1}(U_n))$$
$$=(\text{pr}_1\circ f)^{-1}(U_1)\cap \cdots\cap (\text{pr}_n\circ f)^{-1}(U_n)$$
よって、この各成分は開集合であり、位相の条件(II)からこれらは、
$\mathcal{O}$ の開集合になります。
よって十分性が成り立ちます。    $\Box$

最後に無限直積の直積位相を導入しました。

$(X_\lambda,\mathcal{O}_\lambda)$ $\lambda\in\Lambda$
を位相空間の族とします。
$\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$ 上に
直積位相を誘導位相
$\langle \{\text{pr}_\lambda|\lambda\in \Lambda\}\rangle$
として定義します。
このとき、直積集合 $\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$
上に位相を導入することができました。
このような位相空間は開基として、
$\{\lambda_1,\cdots,\lambda_n\}\subset \Lambda$ に対して、
$\text{pr}_{\lambda_1}^{-1}(U_{\lambda_1})\cap \cdots\cap \text{pr}_{\lambda_n}^{-1}(U_{\lambda_n})$
となるものを集めたものになります。
ここで、$U_{\lambda_i}\in \mathcal{O}_{\lambda_i}$ が成り立つ任意の開集合になります。

つまり、直積位相の開集合において、$(x_\lambda)\in \prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$
の各成分 $x_\lambda\in X_\lambda$ 
は、有限個の$\lambda_{i}\in \Lambda$ 以外の $j$ は全て $X_j$ 
とるような開集合となります。 

2021年12月8日水曜日

トポロジー入門(第8回)

[場所:オンライン(月曜日3限)]


一昨年(2019年度)トポロジー入門の講義の内容をまとめていましたが、
7回目を残したまま更新しませんでした。
2021年度と去年は2019年度とほぼ同じ速度で進んでいます。

後半の8回以降のトポロジー入門のブログを再開します。
また、勝手な都合でまた休止するかもしれません。

今回は、開基についての解説の続きと
生成される位相と相対位相について説明をしました。

定理8.1
$(𝑋,\mathcal{O}_X),(Y,\mathcal{O}_Y)$ を位相空間とする。
$\mathcal{B}\subset O_Y$ を開基とする。
$f:X\to Y$ が連続であるためには、
$\forall V\in \mathcal{B}\to f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_X$ であること
が必要十分である。

(証明)
𝑓が連続であれば、
$U\in \mathcal{O}_Y$ であるの、
とくに $\mathcal{B}$ に対して正しい。
逆に、 $\forall 𝑉\in \mathcal{B}\to f^{-1}(V)\in \mathcal{O}_X$ が成り立 つとする。
$\forall \in  \mathcal{O}_Y$ に対して、 $\mathcal{B}'\subset \mathcal{B}$ が存在して、 $U=\cup_{B\in \mathcal{B}'}B$ と書ける。
$f^{-1}(U)=f^{-1}(\cup_{B\in \mathcal{B}'}B)=\cup_{B\in \mathcal{B}'}f^{-1}(B)$  よって $f$ が連続である。$\Box$

講義では言いませんでしたが、次の定理も示しておきます。
$\mathcal{B}\subset \mathcal{P}(X)$ がある
位相の開基となるためには以下の条件が必要です。

定理8.$1\frac{1}{2}$
$X$を集合とし、$\mathcal{B}\subset \mathcal{P}(X)$ とするとき、
$\mathcal{B}$ が $X$ 上のある位相の開基となるための条件は
以下の2つを満たすことであり、その位相は$\mathcal{O}_B=\{\cup \mathcal{B}'|\mathcal{B}'\subset \mathcal{B}\}$ となる。
(i) $\cup\mathcal{B}=X$
(ii) $\forall B_1\in B_2\in \mathcal{B}$ と $\forall p\in B_1\cap B_2$ に対して、
$\exists B\in \mathcal{B}(B\subset B_1\cap B_2)$ を満たす。

(証明)
$\mathcal{O}$が$\mathcal{B}$ を開基とする位相とします。
このとき、$\mathcal{O}$は$\mathcal{O}_\mathcal{B}=\{\cup\mathcal{B}'|\mathcal{B}'\subset \mathcal{B}\}$ となります。
(i),(ii)は、位相の条件(I)の$X\in \mathcal{O}$ から、
$\forall p\in X$ に対して、$V_p\in \mathcal{B}$ が存在して、$p\in V_p$
となります。
よって 、そのような$V_p$ に対して $X=\cup_{p\in X}V_p\subset \cup \mathcal{B}$
となります。
よって、(i)が成り立ちます。
つぎに、(ii)をみます。
$\forall B_1,B_2\in \mathcal{B}\subset\mathcal{O}$ に対して、
$B_1\cap B_2\in\mathcal{O}$ であるので、$p\in B\in \mathcal{B}$
が存在して、$B\subset B_1\cap B_2$ となります。よって(ii)が成り立ちます。

つぎに、(i)と(ii)が成り立つと仮定します。
このとき、$\mathcal{O}_\mathcal{B}=\{\cup\mathcal{B}'|\mathcal{B}'\subset \mathcal{B}\}$
が開集合系となることを示します。
開集合系の(I)が成り立つことを示します。
$\emptyset$は、$\mathcal{B}'=\emptyset$ とすればよく成り立ちます。
(i)は$X\in \mathcal{O}$を意味します。
(II)が成り立つことを示します。
$U,V\in \mathcal{O}_\mathcal{B}$ とすると、
$U=\cup\mathcal{B}_U$かつ $V=\cup\mathcal{B}_V$ となります。
ただし、$\mathcal{B}_U\subset\mathcal{B}$ かつ $\mathcal{B}_V\subset \mathcal{B}$
です。
このとき、$U\cap V=\cup_{B_U\in\mathcal{B}_U,B_V\in \mathcal{B}_V}B_U\cap B_V$
が成り立ちます。
よって、$\forall p\in B_U\cap B_V$に対して、$p\in B\in \mathcal{B}$
となる$B$が存在します。
よって、$\mathcal{B}_{U,V}\subset \mathcal{B}$に対して、
$\cup \mathcal{B}_{U,V}=B_U\cap B_V$ となります。
よって、$\cup \{\mathcal{B}_{U,V}|U\in \mathcal{B}_U,V\in \mathcal{B}_V\}\subset \mathcal{B}$
であり、この和集合は、 $U\cap V$ となります。
つまり、位相の条件の(II)が成り立つことになります。

(III)が成り立つことをしめします。
また、$\mathcal{U}=\{U_\lambda\in \mathcal{O}_{\mathcal{B}}|\lambda\in \Lambda\}$
とすると、$U_\lambda\in \mathcal{U}$ に対して、ある$\mathcal{B}_\lambda\subset \mathcal{B}$
が存在して、$U_\lambda=\cup \mathcal{B}_\lambda$となります。
$\cup\mathcal{U}=\cup_{\lambda\in \Lambda}(\cup \mathcal{B}_\lambda)$ですから、
$\mathcal{B}_\mathcal{U}=\cup \{\mathcal{B}_\lambda|\lambda\in\Lambda\}$とすると、
$\cup\mathcal{U}=\cup \mathcal{B}_\mathcal{U}$ が成り立つ。
よって、$\mathcal{O}_\mathcal{B}$ は開集合系であり、
構成から、$\mathcal{B}$ は $\mathcal{O}$  の開基となります。

また、以下の定理を示しました。

定理8.2.
$({\mathbb R},\mathcal{O}_l)$ は可分であるが、第2可算公理を満たさない。

(証明の概略)
可分であることは、下限位相においても ${\mathbb Q}$ 
が稠密部分集合であることから成り立ちます。
また、逆に、任意に開基 $\mathcal{B}$ を取った時に、
任意の半開区間 $[p,p+1)$ において、$p\in V_p\subset [p,p+1)$ 
となる $V_p\in \mathcal{B}$ が存在します。
ここで、$\{V_p|p\in {\mathbb R}\}\subset \mathcal{B}$
であり、この右辺は非可算集合であるので、第2可算公理を満たしません。$\Box$

このことから、下限位相は距離化可能でないことがわかります。
これは距離化可能であれば、可分であることと第2可算公理を満たすことが
同値となるからです。

生成される位相
を定義します。

定義8.1 
$X$ を集合とする。$\mathcal{S}\subset\mathcal{P}(X)$ とする、
$\mathcal{S}$ の全ての元を開集合として含む $X$ 上の最弱の位相を
 $\langle \mathcal{S}\rangle$ とかいて、$\mathcal{S}$ によって生成される位相という。

そのような位相はただ一つ存在し、
$\langle \mathcal{S}\rangle=\underset{\mathcal{S}\subset \mathcal{O}:\text{位相}}{\cap}\mathcal{O}$
となります。

生成される位相の例として、$\mathcal{O}$ を開集合系とすると、$\mathcal{O}=\langle \mathcal{O}\rangle$
となります。

例8.1 $\mathcal{S}=\{\{0,1\},\{1,2\}\}$ としたとき、
$\langle \mathcal{S}\rangle=\{\emptyset,\{1\},\{0,1\},\{1,2\},\{0,1,2\}\}$
となります。

また、次のように定義します。

定義8.2 位相空間 $(X,\mathcal{O})$ に対して $\langle \mathcal{S}\rangle=\mathcal{O}$
とするとき、$\mathcal{S}$ は $\mathcal{O}$ の準開基と言う。

ここで、次を示します。

定理8.3.
$\langle \mathcal{S}\rangle$ は、$\mathcal{B}=\{U_1\cap\cdots\cap U_n|n\in{\mathbb N}_0,0\le \forall i\le n(U_i\in S)\}$
としたとき、$\langle \mathcal{S}\rangle$ は $\mathcal{B}$ を開基とする位相になる。

ここで${\mathbb N}_0={\mathbb N}\cup \{0\}$ です。
これを証明をします。

(証明)まず、$\mathcal{B}$ が位相の開基となることを証明します。
つまり、定理8.$1\frac{1}{2}$ の(i),(ii)が成り立つことを示します。
(i) $X\in \mathcal{B}$ であるから、あきらかに $X=\cup\mathcal{B}$です。
(ii) $U_1,\cdots, U_n,V_1,\cdots ,V_m\in \mathcal{B}$ として、
$B_1=U_1\cap \cdots \cap U_n\in \mathcal{B}$ かつ $B_2=V_1\cap \cdots \cap V_m\in  \mathcal{B}$
$B_1\cap B_2=U_1\cap \cdots \cap U_n\cap V_1\cap \cdots \cap V_m\in \mathcal{B}$ ですから、
(ii) は明らかに成り立ちます。
よって、$\mathcal{B}$ は $X$ 上のある位相の開基となります。
その位相を$\mathcal{O}_{\mathcal{S}}$ とすると、生成される位相の定義から
$\mathcal{S}\subset \mathcal{O}_{\mathcal{S}}$ であり、その最小性から、$\langle \mathcal{S}\rangle \subset \mathcal{O}_{\mathcal{S}}$ となります。
また、任意に $U\in \mathcal{O}_{\mathcal{S}}$ をとると、
$\mathcal{B}'\subset \mathcal{B}$ が存在して、$U=\cup \mathcal{B}'$
となり、任意の $U_1\cap U_2\cap \cdots\cap U_n\in \mathcal{B}'$
に対して、開集合系の条件(II)から $U_1\cap U_2\cap \cdots\cap U_n\in \langle \mathcal{S}\rangle$
であり、開集合系の条件(III)から $\cup \mathcal{B}'\in  \langle \mathcal{S}\rangle$
が成り立ちます。
つまり $\mathcal{O}_{\mathcal{S}}\subset \langle \mathcal{S}\rangle$ であることから
$\langle \mathcal{S}\rangle =\mathcal{O}_{\mathcal{S}} $となります。$\Box$


例8.4
$\mathcal{O}_{d_1}$ の時、$\mathcal{S}=\{(-\infty,a)|a\in {\mathbb R}\}\cap\{(b,\infty)|b\in{\mathbb R}\}$
とすると、$\mathcal{S}$ は$\mathcal{O}_{d_1}$ の準開基となります。
というのも、$(-\infty,a),(b,\infty)$ が $\mathcal{S}$ に入るので、
そのような位相は、必ず $(b,a)$ も入るので、任意の開区間を含む位相ということになります。
$\mathcal{B}=\{(a,b)|a,b\in {\mathbb R}\}$ としておくと、このような位相は
$\mathcal{B}$ を開基とする位相空間ということになります。
そのような位相は、$\mathcal{O}_{d_1}$ ということになります。

$\mathcal{S}$ の有限共通部分をとると、
$n=0$ の場合には ${\mathbb R}$
が成り立ち、
$n=1$ の場合には、$\mathcal{S}$ となります。
また、$n=2$ の場合、
$\{(-\infty,a)|a\in {\mathbb R}\}$ と $\{(b,\infty)|b\in{\mathbb R}\}$
のそれぞれから選んで共通部分を取ると、有限開区間 $(a,b)$ もしくは空集合が作られます。
同じ側から選ぶと、$(-\infty,a)$ の形の開集合か、$(b,\infty)$ の形の開集合のどちらかです。結果的に $\mathcal{S}$ の形に戻ります。

3こ選んできたときも同様に考えると、$\mathcal{S}$ の形の開集合か、空集合か、
$(a,b)$ と $(-\infty,c)$ もしくは $(d,\infty)$ の共通部分となります。
それらは開区間か空集合なのでそれらを合わせても $\mathcal{B}\cup \{\emptyset\}$ から
外に出ることはありません。

定義8.3
$(Y,\mathcal{O})$ を位相空間とし、
$f:X\to Y$ を連続写像とします。
このとき、
$S=\{f^{-1}(U)|U\in \mathcal{O}\}$
$\langle S\rangle$ を $\langle f\rangle$と書き、$f$ によって
誘導された位相(誘導位相)ということにする。

命題
$f:X\to Y$を写像とする。
$\langle f\rangle =\{f^{-1}(U)|U\in \mathcal{O}_{Y}\}$
である。

(証明)
$\mathcal{B}=\{f^{-1}(U_1)\cap \cdots \cap f^{-1}(U_n)|U_i\in \mathcal{O}_Y\}$ とすると、
$\langle f\rangle$ は $\mathcal{B}$ を開基とする位相となります。

$f^{-1}(U_1)\cap \cdots \cap f^{-1}(U_n)=f^{-1}(U_1\cap \cdots\cap U_n)$
ですから、$\mathcal{B}=\{f^{-1}(U)|U\in \mathcal{O}_Y\}$ となります。
また、$\cup_{U\in \mathcal{B}'\subset\mathcal{B}}f^{-1}(U)=f^{-1}(\cup \mathcal{B}')$
が成り立つので、
$\langle f\rangle=\langle \{f^{-1}(U)|U\in \mathcal{O}_Y\}\rangle=\mathcal{O}_\mathcal{B}=\mathcal{B}$
がなりたちます。    $\Box$

誘導位相で重要な性質は以下です。

定理8.3
$Y$ を位相空間とする。
$f:X\to Y$ を写像とすると、誘導位相 $\langle f\rangle$ は
$f$ を連続にする $X$ の最小の位相である。

(証明略)

次に、相対位相の定義をします。

定義8.4
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とし、$A\subset X$ とする。
このとき、$\mathcal{O}_A=\{A\cap U|U\in \mathcal{O}\}$ として
定義すると、$(A,\mathcal{O}_A)$ は、$A$ の位相空間を与えており、
それを部分位相空間という。また、$\mathcal{O}_A$ を相対位相ともいう。

つまり、開集合を $A$ に制限して得られるような開集合全体を
$A$ の相対位相ということになります。

定理8.5
$A\subset X$ を部分集合とする。
$i:A\hookrightarrow X$ を包含写像とする。
このとき、$(A,\langle i\rangle)$ は相対位相 $(A,\mathcal{O}_A)$ と一致する。

(証明)$i^{-1}(U))=A\cap U$ であることを示されればよいです。
$\forall a\in i^{-1}(U)$ とすると、$i(a)=a\in U$ であるから、$a\in A\cap U$ であり、
$a\in A\cap U$ とすると、$i(a)=a\in U$ であるから、$a\in i^{-1}(U)$ 
ですから、$i^{-1}(U)=A\cap U$ が成り立ちます。$\Box$

例8.5
${\mathbb R}$ の通常の距離位相空間において、$A=(0,1)$ 
上の相対位相は ${\mathbb R}$ の開集合 $U$ を用いて
$(0,1)\cap U$ となる開集合ですが、
$(0,1)$ は ${\mathbb R}$ の開集合なので、$(0,1)\cap U$ 
も$A$での開集合となります。

例8.6
${\mathbb R}$ の通常の距離位相空間において、$A=[0,1]$ 
上の相対位相は ${\mathbb R}$ の開集合 $U$ を用いて
$[0,1]\cap U$ となる開集合ですが、
$[0,1]$ は ${\mathbb R}$ の開集合ではないので、$[0,1]\cap U$
は $A$ での開集合ですが、一般には ${\mathbb R}$ での開集合に
なりません。
例えば、$U=(-1/2,1/2)$ としたときには、
$A\cap U=[0,1/2)$ となって、これは ${\mathbb R}$ での開集合では
ありませんが、$A$ の開集合となります。

例8.7
$A={\mathbb Z}\subset {\mathbb R}$ を選んでやると、
$A$ 上で制限してできる開集合は、$A$ 上の離散位相空間になります。

例8.8
$A=\{1/n|n\in {\mathbb N}\}$ を選んでやると、
やはり$A$ 上の離散位相空間が得られますが、
$\overline{A}=A\cup\{0\}$ となり、
$\overline{A}$ 上の相対位相は、$\overline{A}$ 上の
離散位相とは異なる位相空間になります。
離散位相空間には、集積点は含まれませんが、$\overline{A}$
上の位相は集積点 $0$ が含まれます。