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2020年6月9日火曜日

数学リテラシー1(第10回)

[場所:manaba上(水曜日12:00〜)]



今回の授業では、置換を用いて 行列式を定義しました。


符号
まず符号 
\text{sgn}:S_n\to \{1,-1\}
の定義をします。 

置換 \sigmam 個の互換 \tau_1\cdots, \tau_m の積で
\sigma=\tau_1\cdots \tau_m
と書けたとするとき、

\text{sgn}(\sigma)=(-1)^m

と定義します。
この数 1 or -1 を置換 \sigma符号といいます。

この定義は、ある置換の互換の積が偶数である場合は、1
または、奇数である場合は -1 ということと同じです。

符号をきちんと定義するためには置換を互換の積で書いた時に、それが偶数個の
互換の積であるか、奇数個の互換の積であるかはその表示の仕方によらないことを
示す必要があります。


例えば1から3までの数を並べ替える方法は6個になります そのうちで 以下の置換
e, (1,2,3), (1,3,2) は、必ず偶数個の互換の積に書くことができます。

置換をあみだくじ、もしくは、上のような数字を結ぶ線を描いたものと
考えることもできます。つまり、線には、1から3までの数が割り当てられている
ことになります。

これらの置換の交わった点の個数が互換の個数ということになります。
たとえば、恒等置換の場合を考えます。
1の線分を描きます。その上に2の線を描いたときに、必ず、偶数個で交わります。
というのも、1,2は、上と下とで順番同じなので、必ず、1に交わったら、もう1回まじわらないと、この順番にたどり着くことができません。
また、3の線をかいたときも同じで、3の線が1の線と交わったら、もう一回
交わらないと、この順番でたどり着きません。
3の線が2の線と交わったときも同様です。
よって、このとき、交わった点の数は、必ず偶数個になります。
(1,2,3)(1,3,2) の場合の置換も同じことを表します。
(実は、このようにあみだを使って説明をしてもしても置換の全ての
互換の積がいつでも偶数ということの証明にはならないのですが.....
というのも、このように、あみだによって書かれる互換の積の分解は、
隣り合った数の互換の積によってかけているだけです。)


おなじように、次の3つの 置換は 奇数個の互換の積によってかけます。


行列式の定義

では、符号を使って行列式を定義しましょう。
(n,n) 行列 A=(a_{ij}) の行列式を以下のように定義します

\det(A)=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}\cdots a_{n\sigma(n)}

ここで、Σの記号の下に\sigma\in S_n が書かれているのは、
S_n の元に従って足し合わせるということです。
ですので、特に、n! 個の和であるということになります。

 例えば(2,2) 行列の場合に行列式の定義に従って計算します。

S_2=\{e,(1,2)\}ですから、
以下のようになります。
\det(A)=a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}
ということになります。
A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix} の場合、\det(A)=ad-bc
と定義したわけですから確からこの定義と合っています。

次に、(3,3) 行列の行列式を計算をします。
A=\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}&a_{13}\\a_{21}&a_{22}&a_{23}\\a_{31}&a_{32}&a_{33}\end{pmatrix}
として、6個の和を書き下してみると、以下のようになります。
この項の順番は、上に登場した置換の順番に沿ってかきました。

\det(A)=a_{11}a_{22}a_{33}+a_{12}a_{23}a_{31}+a_{13}a_{21}a_{32}-a_{12}a_{21}a_{33}-a_{11}a_{23}a_{32}-a_{13}a_{22}a_{31}

この公式を覚えるのに役に立つのが、サラスの公式です。
(3,3) 行列に、下のような6本の線をかいてやります。
そのとき、その線にぶつかった成分をかけて符号をつけて足し上げることによって
行列式が計算できます。
ただし、黒いほうを正の符号とし、赤いほうを負の符号とするのです。


転置行列と行列式

転置行列の行列式は元の行列の行列式と同じになります。
\sigmaに対して、転置行列の行列式は、

\det(^tA)=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sgn}(\sigma)a_{\sigma(1)1}\cdots a_{\sigma(n)n}
ですが、\sigmaに対して、\sigma^{-1} はその符号を変えず、
これは、積の順番を入れ替えれば、
=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sng}(\sigma)a_{1\sigma^{-1}(1)}\cdots a_{n\sigma^{-1}(n)}
となりますが、\sigma\mapsto \sigma^{-1} は一対一ですから、
\sigma^{-1} を再び \sigma に置きなおすことで、
=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}\cdots a_{n\sigma(n)}
となるので、これは\det(A) となります。
よって、転置行列の行列式はもとの行列の行列式と同じになります。

行列式の交代性

2つの行を交換して得られる行列と、2つの列を交換して得られる行列の行列式は
ちょうど元の行列式の -1 倍になります。

例えば、i 列と j 列を入れ替えた行列をA' とする。i<j
であると仮定します。
\det(A')=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}\cdots a_{j\sigma(i)}\cdots a_{i\sigma(j)}\cdots a_{n\sigma(n)}
ここで、\tau=(i,j)とすると、
=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sgn}(\sigma\tau)\text{sgn}(\tau)a_{1\sigma\tau(1)}\cdots a_{i\sigma\tau(i)}\cdots a_{j\sigma\tau(j)}\cdots a_{n\sigma\tau(n)}
=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sng}(\tau)\text{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}\cdots a_{i\sigma(i)}\cdots a_{j\sigma(j)}\cdots a_{n\sigma(n)}
=-\sum_{\sigma\in S_n}\text{sng}(\sigma)a_{1\sigma(1)}\cdots a_{n\sigma(n)}=-\det(A)

2つの行を交換して得られる行列式が-1になることも、
上の転置をとることによって行列式が変わらないことから
従います。

この交代性から、
Aの第 i{\bf a}_i と第 j{\bf a}_j が、{\bf a}_i={\bf a}_j であるとするとき、その第 i 列と j を交換した行列を A' とすると、AA' は同じ行列であるから、
\det(A)=-\det(A) である。
よって、\det(A)=0 となります。



多重線形性
n 個の n 次元ユークリッド空間の元のペアから実数への写像
f:{\mathbb R}^n\times \cdots \times {\mathbb R}^n\to {\mathbb R}
が、任意のi 個目のベクトルに対して、
f({\bf v_1},\cdots,{\bf v}_i+{\bf v}_i',\cdots, {\bf v}_n)=f({\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_i,\cdots, {\bf v}_n)+f({\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_i',\cdots, {\bf v}_n)
かつ、実数 c に対して

f({\bf v}_1,\cdots, c{\bf v}_i,\cdots {\bf v}_n)=cf({\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_i,\cdots, {\bf v}_n)
を満たすとき、f多重線形性を満たすといいます。

\det は多重線形写像であることを示します。
A'' の第 i 列が \begin{pmatrix}a_{1i}+a_{1i}'\\a_{2i}+a_{2i}\\\vdots \\a_{ni}+a_{ni}'\end{pmatrix}
であり、他の第 (k,j) 成分は、a_{kj} であるとします。
また、A=(a_{ij})とし、A' の第i列は、
\begin{pmatrix}a_{1i}'\\a_{2i}'\\\vdots \\a_{ni}'\end{pmatrix}
であるとします。
このとき、

\det(A'')=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}\cdots (a_{i\sigma(i)}+a_{i\sigma(i)}')\cdots a_{n\sigma(n)}
=\sum_{\sigma\in S_n}\text{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}\cdots a_{i\sigma(i)}\cdots a_{n\sigma(n)}
+\sum_{\sigma\in S_n}\text{sng}(\sigma)a_{1\sigma(1)}\cdots a_{i\sigma(i)}'\cdots a_{n\sigma(n)}
=\det(A)+\det(A')
となり、実数倍の方も同様にやることにより、\det の多重線形性が満たされました。

A({\bf x}) を第 i 列が {\bf x} となる行列であるとすると、
A の第 k 列を {\bf a}_k であるとする。
このとき、多重線形性を用いると、
\det(A({\bf a}_i+c{\bf a}_j))=\det(A({\bf a}_i))+\det(A(c{\bf a}_j))
=\det(A({\bf a}_i)+c\det(A({\bf a}_j))=\det(A({\bf a}_i))=\det(A)

まとめ

行列式を写像 \det:{\mathbb R}^n\times \cdots \times {\mathbb R}^n\to {\mathbb R}と思うと、交代的な多重線形性を持つ写像。
行列 A の第 j 列を他の第 i 列に定数倍をして足してやったものは、
元の行列式を変えない。

また、単位行列 E に対して、
\det(E)=1
であることも定義から従います。


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