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2020年5月27日水曜日

数学リテラシー1(第7回)

[場所:manaba上(水曜日12:00〜)]


今回は固有値、固有ベクトル、行列の対角化、行列の n 乗についての内容でした。

固有値・固有ベクトル

固有値と固有ベクトルについてまとめておきます。

固有値と固有ベクトルというのは次のように定義されます。

{\bf v}固有ベクトルであるというのは、行列 A を左からかけたもの A{\bf v}
{\bf v} の定数倍になっているような
ゼロではないベクトルのことを言います。

つまり、ある数 \lambda を使って、
A{\bf v}=\lambda{\bf v} をみたす(ゼロではない)ベクトルのことです。
ここで、\lambda はある複素数になります。
行列 A が実数であっても、固有値が複素数になることはあります。

この \lambda のことを A固有値といいます。

また固有ベクトルはかならず零ベクトルではないということに注意をしてください。

もし零ベクトル を許すと、任意の複素数も固有値になってしまいます。
A{\bf 0}=\lambda{\bf 0} の関係式は任意の複素数\lambda が満たすからです。

このとき行列Aに対して固有ベクトルは以下の方程式を満たすことわかります。
A{\bf v}=\lambda{\bf v}\Leftrightarrow (\lambda E-A){\bf v}={\bf 0}

つまり \lambda E-A という行列は 逆行列を持たないということになります。

なぜならば もし逆行列を持てば、(\lambda E-A){\bf v}={\bf 0} という関係式に
\lambda E-A の逆行列を左からかけることで {\bf v}={\bf 0}という式が出てしまい、
{\bf v}\neq {\bf 0} であることに矛盾するからです。

よってわかったことは、\lambda E-A  という行列が逆行列をもたないこと、
同値なことに、

\lambda E-A の行列式が零であるということ です。

つまり、行列 Aの固有値\lambda は、\det(t E-A)=0 を満たす解ということになります。

この式 \det(t E-A)=0 は多項式です。この多項式のことを固有多項式といいます。
A が n 次正方行列であるなら、\det(t E-A) は、n 次固有多項式です。

A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}
のときに、固有多項式を求めてみると、
\det(tE-A)=\det\begin{pmatrix}t-a&-b\\-c&t-d\end{pmatrix}
=(t-a)(t-d)-bc=t^2-(a+d)t+ad-bc
=t^2-\text{tr}(A)t+\det(A)
となります。

この多項式の根を、\lambda_1,\lambda_2 とします。
a,b,c,d が実数、つまり A が実行列であるとすると、
  • 2つの異なる実数解の場合、
  • 2つの異なる複素解の場合、
  • 重解
の3パターンあります。

では次の行列
A=\begin{pmatrix}0&-1\\2&3\end{pmatrix}
の固有ベクトルを考えましょう

まずこの行列の固有値を求めましょう。
最初に固有ベクトルを求めようとしてはいけません。 

そのために固有多項式を求めます。
\text{tr}(A)=3, \text{det}(A)=2
ですから、t^2-3t+2 です。

固有値は 固有多項式の根のですから この二次方程式を解いて、
固有値は全部で、1,2 の2つあります。

まず、
固有値が 1 の場合の 固有ベクトル求めましょう。
このとき、tE-A=E-A\begin{pmatrix}1&1\\-2&-2\end{pmatrix} 

固有ベクトルは 次のような 連立方程式の解です。
\begin{pmatrix}1&1\\-2&-2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}={\bf 0}
この連立方程式は、x+y=0と同じですから、この方程式を

として、c を任意の実数として、
\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}
とします。 ここで、固有ベクトルは
{\bf v}_1=\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}
なります 。

ここで、固有ベクトルは ゼロでないベクトルであれば何でもいいです。

というのも、ある固有値 に対する固有ベクトルというのは定数倍をしても

その固有値の固有ベクトルですから、本来その方向しか決まりません。
ですので、固有ベクトルを与えるときは 連立方程式 を満たす。
適当なゼロではないベクトルを選ぶことになります

同様に固有値が 2 の場合の 固有ベクトル求めましょう。 
そのとき、固有ベクトルが満たす連立方程式は
(2E-A)\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}2&1\\-2&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}={\bf 0}
であるから、
ゼロではないベクトル求めると

{\bf v}_2=\begin{pmatrix}-1\\2\end{pmatrix}
となります。この場合も、連立方程式を満たすゼロではないベクトルを選びました。


行列の対角化
ここでは、行列の対角化について考えます。

行列の対角化というのは 行列 A に対して 行列 P とその逆行列 P^{-1}
を挟むことによって行列を対角行列にするということです。
つまり、P^{-1}AP を対角行列にするのです。

ここで先ほどの例を考えます。行列 P として
固有ベクトルを並べたものを考えましょう。
つまり、P=({\bf v}_1{\bf v}_2)=\begin{pmatrix}1&-1\\-1&2\end{pmatrix} です。

このとき、AP=A({\bf v}_1{\bf v}_2)=(A{\bf v}_1A{\bf v}_2)
となります。
最後の行列は、AP=({\bf v}_12{\bf v}_2)=\begin{pmatrix}1&0\\0&2\end{pmatrix}({\bf v}_1{\bf v}_2)=\begin{pmatrix}1&0\\0&2\end{pmatrix}P
となります。
よって、P の逆行列 P^{-1} を左からかけることで、
P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&0\\0&1\end{pmatrix}
となるので、このとき、AP によって対角行列にすることができたことになります。
つまり、P=\begin{pmatrix}1&-1\\-1&2\end{pmatrix} とするとき、
P^{-1}AP=\begin{pmatrix}1&0\\0&2\end{pmatrix} となります。
固有ベクトルの順番を入れ替えて、Q=\begin{pmatrix}-1&1\\2&-1\end{pmatrix}
としてやると、
Q^{-1}AQ=\begin{pmatrix}2&0\\0&1\end{pmatrix} が得られます。
また、固有ベクトルを定数倍してやってやっても、対角化する行列(Pのこと)
は違うものになるかもしれませんが、最終的な対角行列は同じものになります。
ここで、対角化したときの対角行列は、固有値を対角成分に並べた行列になります。

この計算は、この時だけうまくいったわけではなく、一般の行列 A に対しても
固有ベクトルを並べてできる行列 P とその逆行列 P^{-1} を持ってくると
対角成分に固有値を並べた対角行列を求めることがわかります。

ただし、対角化できるためには条件があって、
固有ベクトルを並べて正方行列を作らなければならないということです。
つまり、固有ベクトルが n 個、この場合は、2個存在しないといけません。

しかし、固有ベクトルは、定数倍をしても固有ベクトルですから、
正確に言えば、固有ベクトルとして、一次独立な n 個のベクトルを取る必要があります。
そして、一次独立な固有ベクトルが n 個(今は2個)とることができれば、
AP=PD となります。ここで、D は対角行列です。

今、P 一次独立な n 個のベクトル(今は2個のベクトル)から成っていたので、
行列式がゼロではない、つまり、P は逆行列を持つことになります。
よって、行列 A
P^{-1}AP=D のように対角化することができます。

行列のn

行列の対角化を利用して 行列の $n$ 乗を計算しましょう。

正方行列 A に対して、その n 乗を求めてみます。
A^nAn 回かけて得られる行列ですが、対角化を求めることができます。

A は行列 P=\begin{pmatrix}1&-1\\-1&2\end{pmatrix} とおくことで、
P^{-1}AP=\begin{pmatrix}1&0\\0&2\end{pmatrix} となります。
ここで、A^n をする代わりに、この行列の n 乗を考えます。

そうすると、P^{-1}APn 乗は、
(P^{-1}AP)^n=P^{-1}APP^{-1}AP\cdots P^{-1}AP=P^{-1}A^nP となり、
A^n が出現しました。
一方、対角行列の n乗は、\begin{pmatrix}1^n&0\\0&2^n\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0\\0&2^n\end{pmatrix}
となりますから、再び対角行列です。

よって、P^{-1}A^nP=\begin{pmatrix}1&0\\0&2^n\end{pmatrix}
となります、これはちょうど、A^nの対角化をしていることになります。

この式から、両側から PP^{-1} で挟むことで、
A^n=P\begin{pmatrix}1&0\\0&2^n\end{pmatrix}P^{-1}
=\begin{pmatrix}1&-1\\-1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&0\\0&2^n\end{pmatrix}\begin{pmatrix}2&1\\1&1\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}2-2^n&1-2^n\\-2+2^{n+1}&-1+2^n\end{pmatrix}

となります。これが、A^n の一般公式ということになります。

このように行列の n 乗を求めるのに、
まず、行列を対角化 P^{-1}AP=D をしておきます。
この対角行列 D には、その対角成分に固有値が並びます。
この行列の n 乗を求めることで、
P^{-1}A^nP=D^n
を得ることができます。D^n は再び対角行列になっています。

(このことから、すぐわかることは、A が対角化できるのなら、A^n も対角化を
することができます。対角化をいつすることができるのかについては、上の
行列の対角化の部分の最後を見てください。)

この式に PP^{-1} を両側からかけることによって、
A^n=PD^nP^{-1} を計算することができます。
この式行列 An 乗の公式ということになります。

このように、固有値は、行列の n 乗を計算するのに大変役に立っている
ということになります。

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