[場所:manaba上(水曜日12:00〜)]
数学リテラシー1のHP
前回は行列の一般論を行いました。
今回からを用いて、一次変換(線形変換)の扱い方を学びます。
$(2,2)$ 行列に一次変換の本質が詰まっています。
ですので、$(2,2)$ 行列をプロトタイプとし、その後一般のサイズの一次変換に出あった
ときにも同じように扱えるようにしたいと思います。
前回で重要だったことは、
線形写像 $f:{\mathbb R}^n\to {\mathbb R}^m$
(任意のベクトル${\bf x},{\bf y}$ と任意の実数 $\lambda$ に対して、
$f({\bf x}+{\bf y})=f({\bf x})+f({\bf y})$ かつ $f(\lambda {\bf x})=\lambda f({\bf x})$ が成り立つ写像のこと)
は、必ずある行列 $(m,n)$ 行列を用いて、
$f({\bf x})=A{\bf x}$ としてあらわされるということでした。
(2,2) 行列による一次変換
線形写像が $f:{\mathbb R}^2\to {\mathbb R}^2$ の場合には、ある $(2,2)$ 行列を用いて
$f({\bf x})=A\cdot {\bf x}$ としてあらわされることになります。
この行列 $A$ はどのようにして計算できるか考えてみましょう。
ベクトル ${\bf x}=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}$ は、
${\bf e}_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$,
${\bf e}_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$
を用いて、
${\bf x}=x_1{\bf e}_1+x_2{\bf e}_2$
のように書くことができます。
このとき、$f$ の線形性から、
$f({\bf x})=f(x_1{\bf e}_1+x_2{\bf e}_2)=x_1f({\bf e}_1)+x_2f({\bf e}_2)$
のようになり、$f({\bf e}_1)={\bf a}_1$ かつ $f({\bf e}_2)={\bf a}_2$
のように置きます。ここで、${\bf a}_1$ と ${\bf a}_2$ は
2次元のユークリッド空間のベクトルです。
そうすると、$f({\bf x})$ は、$x_1{\bf a}_1+x_2{\bf a}_2=({\bf a}_1{\bf a}_2)\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}$
となり、$A=({\bf a}_1{\bf a}_2)$ とすれば、
$$f({\bf x})=A{\bf x}$$
ということになります。つまり、線形写像 $f$ に対して求めようと思っていた
左からかける行列 $A$ は、$({\bf a}_1{\bf a}_2)$ と計算できることになります。
この行列 $A$ は、2つの縦ベクトル ${\bf a}_1$ と ${\bf a}_2$ を並べてできる
$(2,2)$ 行列です。
もともと、${\bf a}_1$ と ${\bf a}_2$ が何だったかというと、
${\bf e}_1$ と ${\bf e}_2$ の $f$ による行先でした。
$A$ を求めたければ、この2つの単位ベクトル
${\bf e}_1$ と ${\bf e}_2$ の像を並べてできる行列を求めればよいことになります。
ベクトル ${\bf e}_1, {\bf e}_2$ のことを、2次元の標準ベクトル(基底)といいます。
前回は行列の一般論を行いました。
今回からを用いて、一次変換(線形変換)の扱い方を学びます。
$(2,2)$ 行列に一次変換の本質が詰まっています。
ですので、$(2,2)$ 行列をプロトタイプとし、その後一般のサイズの一次変換に出あった
ときにも同じように扱えるようにしたいと思います。
前回で重要だったことは、
線形写像 $f:{\mathbb R}^n\to {\mathbb R}^m$
(任意のベクトル${\bf x},{\bf y}$ と任意の実数 $\lambda$ に対して、
$f({\bf x}+{\bf y})=f({\bf x})+f({\bf y})$ かつ $f(\lambda {\bf x})=\lambda f({\bf x})$ が成り立つ写像のこと)
は、必ずある行列 $(m,n)$ 行列を用いて、
$f({\bf x})=A{\bf x}$ としてあらわされるということでした。
(2,2) 行列による一次変換
線形写像が $f:{\mathbb R}^2\to {\mathbb R}^2$ の場合には、ある $(2,2)$ 行列を用いて
$f({\bf x})=A\cdot {\bf x}$ としてあらわされることになります。
この行列 $A$ はどのようにして計算できるか考えてみましょう。
ベクトル ${\bf x}=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}$ は、
${\bf e}_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$,
${\bf e}_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$
を用いて、
${\bf x}=x_1{\bf e}_1+x_2{\bf e}_2$
のように書くことができます。
このとき、$f$ の線形性から、
$f({\bf x})=f(x_1{\bf e}_1+x_2{\bf e}_2)=x_1f({\bf e}_1)+x_2f({\bf e}_2)$
のようになり、$f({\bf e}_1)={\bf a}_1$ かつ $f({\bf e}_2)={\bf a}_2$
のように置きます。ここで、${\bf a}_1$ と ${\bf a}_2$ は
2次元のユークリッド空間のベクトルです。
そうすると、$f({\bf x})$ は、$x_1{\bf a}_1+x_2{\bf a}_2=({\bf a}_1{\bf a}_2)\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}$
となり、$A=({\bf a}_1{\bf a}_2)$ とすれば、
$$f({\bf x})=A{\bf x}$$
ということになります。つまり、線形写像 $f$ に対して求めようと思っていた
左からかける行列 $A$ は、$({\bf a}_1{\bf a}_2)$ と計算できることになります。
この行列 $A$ は、2つの縦ベクトル ${\bf a}_1$ と ${\bf a}_2$ を並べてできる
$(2,2)$ 行列です。
もともと、${\bf a}_1$ と ${\bf a}_2$ が何だったかというと、
${\bf e}_1$ と ${\bf e}_2$ の $f$ による行先でした。
$A$ を求めたければ、この2つの単位ベクトル
${\bf e}_1$ と ${\bf e}_2$ の像を並べてできる行列を求めればよいことになります。
ベクトル ${\bf e}_1, {\bf e}_2$ のことを、2次元の標準ベクトル(基底)といいます。
$x$ 方向と $y$ 方向への変倍の定数倍、回転、鏡映
例3.2.1
平面上、 $x$ 方向に $\lambda_1$ 倍し、
$y$ 方向に $\lambda_2$ 倍するような線形写像は、
$$\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}\mapsto\begin{pmatrix}\lambda_1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}\mapsto \begin{pmatrix}0\\\lambda_2\end{pmatrix}$$
ですから、
$${\bf e}_1\mapsto \lambda_1{\bf e}_1$$ であり、
$${\bf e}_2\mapsto \lambda_2{\bf e}_2$$
ということですから、$A=({\bf a}_1{\bf a}_2)=\begin{pmatrix}\lambda_1&0\\0&\lambda_2\end{pmatrix}$
となります。
例3.2.2
次は、平面上の原点 $O$ を中心とした回転を考えましょう。
回転運動が一次変換であることは次のようにしてわかります。
$f_\theta$ を原点中心の $\theta$ 回転の写像とします。
このとき、$O$ と ${\bf x}$ と ${\bf y}$ と ${\bf x}+{\bf y}$
は、ある平行四辺形をなします。
このとき、この平行四辺形を原点 $O$ を中心として
一斉に $\theta$ 回転をしたとすると、
平行四辺形の各点は、
$O$ と $f_\theta({\bf x})$, $f_\theta({\bf y})$, $f_\theta({\bf x}+{\bf y})$
に移ります。
平行四辺形は、回転しても平行四辺形ですから、
$f_\theta({\bf x}+{\bf y})=f_\theta({\bf x})+f_{\theta}({\bf y})$ が成り立ちます。
また、${\bf x}$ と ${\bf y}$ が平行で、平行四辺形が作れない場合は、
つぶれた平行四辺形と考えれば同じことが言えます。
また、$\lambda$ を実数として、${\bf x}$ と $\lambda{\bf x}$ は、$\theta$ 回転しても
してもその関係は変わりません。
というのも、回転というのは、長さと角度を変えないからです。
よって、
$$f_\theta(\lambda {\bf x})=\lambda f_\theta({\bf x})$$
となります。
つまり、回転というのは、一次変換ということになります。
$f_\theta$ から定まる $(2,2)$ 行列 $R_\theta$ を求めていきます。
上で求めた方法をとります。
標準基底 ${\bf e}_1$ と ${\bf e}_2$ の像がどうなるかを調べれば
よいことになります。
${\bf e}_1$ の $f_\theta$ による行き先は、$\begin{pmatrix}\cos\theta\\\sin\theta\end{pmatrix}$であり、
${\bf e}_2$ の $f_\theta$ による行き先は、$\begin{pmatrix}-\sin\theta\\\cos\theta\end{pmatrix}$
となります。
${\bf a}_1=f_\theta({\bf e}_1)=\begin{pmatrix}\cos\theta\\\sin\theta\end{pmatrix}$
ですから、$R_\theta$ は、
$$R_\theta=\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}$$
となります。
つまり、$\theta$ 回転を表す行列は
$$f_\theta({\bf x})=\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}{\bf x}$$
となります。
一次変換の合成に対応する、行列は、行列の積となります。
前回やったように、$f_B\circ f_A=f_{BA}$ ですから、
$f_{R_{\theta_2}}\circ f_{R_{\theta_1}}=f_{R_{\theta_1}R_{\theta_2}}$
また、$\theta_1$ 回転をして、$\theta_2$ 回転をしてできる一次変換は
$\theta_1+\theta_2$ 回転した一次変換ですから、
$f_{R_{\theta_2}}\circ f_{R_{\theta_1}}=f_{\theta_1+\theta_2}=f_{R_{\theta_1+\theta_2}}$
となります。
よって、この2つから、
$$R_{\theta_1+\theta_2}=R_{\theta_2}R_{\theta_1}$$
が成り立ちます。
よって、
$$\begin{pmatrix}\cos\theta_2&-\sin\theta_2\\\sin\theta_2&\cos\theta_2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\cos\theta_1&-\sin\theta_1\\\sin\theta_1&\cos\theta_1
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}\cos(\theta_1+\theta_2)&-\sin(\theta_1+\theta_2)\\\sin(\theta_1+\theta_2)&\cos(\theta_1+\theta_2)
\end{pmatrix}
$$
が成り立ちますが、この式の各成分は、三角関数の加法定理を意味しています。
例3.2.3
直線 $y=(\tan\theta)x $ に沿った鏡映変換を考えましょう。
鏡映変換とは、ある直線による線対称変換を意味します。
この直線 $y=(\tan\theta)x$ による鏡映変換は、
(1) 原点での $-\theta$ 回転、
(2) $x$ 軸による線対称変換、
(3) 原点での $\theta$ 回転
のこの順番による合成になります。
これらは、上の例ですでに見たものばかりです。
$x$ 軸による線対称変換は、$x$ 方向は変わらず (1倍)、$y$ 方向に $-1$ 倍
をする一次変換です。
一次変換の合成も一次変換ですから、
鏡映もやはり一次変換です。
この3つの一次変換を合成することで得られる一次変換を $g_\theta$ とし、
そのときの行列を $S_\theta$ とすると、
$$S_\theta=R_\theta\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}R_{-\theta}$$
となります。
ここで、かける順番に気を付けましょう。
わからなくなったら、$f_B\circ f_A=f_{BA}$であることと、
一次変換は、左から行列をかけることであったことを思い出しましょう。
よって、$S_\theta$ を実際計算をすると、
$$S_\theta=\begin{pmatrix}\cos 2\theta&\sin2\theta\\\sin2\theta&-\cos2\theta\end{pmatrix}$$
となります。
鏡映変換は、線対称変換ですから、2回同じ変換を行うと
元に戻ります。
これは、
$$g_\theta\circ g_\theta=\text{id}_{{\mathbb R}^2}$$
であることを示せばよいですが、行列の言葉に直せば、
$$S_\theta^2=(R_{-\theta}\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}R_\theta)^2=R_{-\theta}\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}R_{\theta}R_{-\theta}\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}R_{\theta}$$
$$R_{-\theta}\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}R_{\theta}=R_{-\theta}R_\theta=E$$
よって、$g_\theta\circ g_\theta=\text{id}_{{\mathbb R}^2}$ が示せました。
これらの行列の可換性
これまで、定数倍($x$方向と$y$方向に変倍する)の変換、
回転、鏡映変換などを考えました。
これらの変換やその合成も一次変換です。
回転による変換同士は可換であることはわかります。
足し算の可換性が成り立つから、
$$R_{\theta_1}R_{\theta_2}=R_{\theta_1+\theta_2}=R_{\theta_2+\theta_1}=R_{\theta_2}R_{\theta_1}$$
となり可換です。
$x$ 方向に $\lambda_1$ 倍、 $y$ 方向に $\lambda_2$ 倍する一次変換を
する行列を $T_{\lambda_1,\lambda_2}$ としますと、
$$T_{\lambda_1,\lambda_2}R_{\theta}=\begin{pmatrix}\lambda_1\cos\theta&-\lambda_1\sin\theta\\\lambda_2\sin\theta&\lambda_2\cos\theta\end{pmatrix}$$
$$R_{\theta}T_{\lambda_1,\lambda_2} =\begin{pmatrix}\lambda_1\cos\theta&-\lambda_2\sin\theta\\\lambda_1\sin\theta&\lambda_2\cos\theta\end{pmatrix}$$
よって、$(2,1)$ 成分を比べることによって、
$T_{\lambda_1,\lambda_2}R_\theta=R_\theta T_{\lambda_1,\lambda_2}$
が成り立つためには、$\lambda_1=\lambda_2$ でなければなりません。
また、$\lambda_1=\lambda_2=\lambda$ であれば、 つまり、$T_{\lambda,\lambda}$ は原点 $O$ を中心とした、$\lambda$ 拡大を表します。
また、$T_{\lambda,\lambda}=\lambda E$ であり、
スカラー倍は $R_{\theta}$ などあらゆる一次変換と可換ですから、
$T_{\lambda,\lambda}$ と $R_{\theta}$ は可換となります。
直交変換
ここで、直交変換を定義し、対応する行列の性質を考察して終わります。
直交変換とは、長さを変えない一次変換ことを言います。
$f$ を直交変換とし、${\bf e}_1$ と ${\bf e}_2$ を上記の標準基底とします。
このとき、${\bf e}_1$ と ${\bf e}_2$ の長さは $1$ ですから、
$f({\bf e}_1)=\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}$
$f({\bf e}_2)=\begin{pmatrix}c\\d\end{pmatrix}$ としますと、
$a^2+b^2=1$ かつ $c^2+d^2=1$ が成り立ちます。
また、長さを変えないということは、角度(の絶対値)も変えないということです。
どうしてかというと、
三角形 $OAB$ を考えます。$O$ は原点、$A,B$ はそれ以外の点とします。
そうすると、直交変換は長さを変えないのだから、この三角形 $OAB$
は $OAB$ と合同な三角形 $OA'B'$ に移ります。
ここで、一次変換であることから、原点は原点に移ります。
(なぜなら $O$ の表すベクトルを ${\bf 0}$ とすると
$f({\bf 0})=f(2{\bf 0})=2f({\bf 0})$より、$f({\bf 0})={\bf 0}$ となるからです。)
よって、角 $AOB$ は $A'OB'$ に移ります。
ただし、三角形 $OAB$ が裏返るかもしれないので、角度の絶対値
は変わりません。
よって、$\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix}c\\d\end{pmatrix}$
は直交しなければなりません。
つまり、内積は0なので、$ac+bd=0$ となります。
ここで、$R=\begin{pmatrix}a&c\\b&d\end{pmatrix}$ とすると、
$$^tRR=\begin{pmatrix}a^2+b^2&ac+bd\\ac+bd&c^2+d^2\end{pmatrix}$$
が成り立ち、この右辺はちょうど単位行列 $E$ となります。
つまり、直交変換 $f$ の表す行列 $R$ は、$^tRR=E$ となります。
このような行列 $R$ のことを直交行列といいます。
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