2020年4月29日水曜日

数学リテラシー1(第1回)

[場所:manaba上(火曜日12:00〜)]


集合の基礎

まずは数学は集合からやっていかなくちゃならんのですが、

そこで最初に躓くことは、この集合という抽象的な概念です。
しかし、集合はわかってしまえばなんてことはありません。
考え方をみにつけてしまえばたとえ小学生だって理解できます。

抽象的な概念をやわらかくするには、
頭の中によい例を思い描くことです。
理解のためには具体的なイメージを持つことが大切です。

まず、集合がどういうものか述べます。

集合とはものの集まりをいいます。
ものというのは、数字や論理式を用いて定義された対象を
集めたもののことをいいます。
集合に入っている要素をといいます。


集合というと、「集合!!整列!!前ならえ!!」
という体育の時間かと思いますがそうではないですね。
確かに筑波は体育学群もありスポーツは盛んですが、
数学だってやっています。ノーベル賞だって獲っています。
魔法使いもいます。

それはさておき、
集合とは、物があつまった状態、そのものたち
自身のことをいいます。

イメージするものは、
例えば、りんごがバスケットの中にいくつか入っているイメージでしょうか。
りんごが一つの場所に集まっています。ものが集まっていますから
この状態を集合といいます。
大事なことは、ものというのは、りんごのように一つ一つがちゃんと
区別されている必要があります。
おばけのように、考えているうちに消えてしまったりするようなものは
集合とはなりません。

なのでおばけの集合というものは考えることはできません。
このへんは考え方次第かもしれませんが....
少なくとも、みんながそれ!と確認ができるものでないといけません。


そのほか、ある幼稚園にいる園児だって一人一人を元とした集合をなします。
目まぐるしくうごきまわってなかなか判別することは難しいかもしれませんが、
カリスマ保育士がひとたび声をかけて、絵本を読みだせば、みんな静まり返って
その絵本の読み聞かせに耳を傾けます。
どちらにしても、そこに、一つ一つ区別できる対象が存在することが大事です。


数学でよく扱う例をみましょう。


よく数学で使われるのは次の集合たちです。
${\mathbb N}$ 自然数の集合
${\mathbb R}$ 実数の集合
${\mathbb Q}$ 有理数の集合
${\mathbb Z}$ 整数の集合

この集合たちにはこのさき同じ記号を使っていくことになります。

集合$X,Y$ に対して、$X$ の全ての元が $Y$ の元であるとき、

$X\subset Y$ と表します。
つまり、$X$ の全ての元が $Y$の元であるということです。
$X\subset Y$ のような関係を包含関係といいます。
$X$ のことを $Y$ の部分集合ということもあります。

上の例ですと、
$${\mathbb N}\subset {\mathbb Z}\subset {\mathbb Q}\subset {\mathbb R}$$
のような包含関係になります。

何も元を含まないものを空集合といいます。
空集合も集合の一つです。$\emptyset$ と書きます。
$\{x|x\not\in A\}$ のことを$A^c$ のように書いて、$A$ の補集合といいます。
c とは、補集合を表すcomplementの頭文字です。


集合の書き方

$A$ の集合で、命題 $P(x)$ を満たす集合を
$$\{x\in A|P(x)\}$$
のように書きます。
命題については、のちに解説されます。

例えば、1より大きい整数の集合は、

$$\{x\in {\mathbb Z}|x>1\}$$

となります。

集合の演算

集合同士の演算を以下のように定義します。
$A\cup B=\{x|x\in A\text{または}x\in B\}$ (和集合)
$A\cap B=\{x|x\in A\text{かつ}x\in B\}$ (共通集合)
$A\setminus B=\{x|x\in A\text{かつ}x\not\in B\}$ (差集合)

$A\setminus B=A\cap B^c$ と書くこともできることに注意しておきます。

ド・モルガンの法則

次が成り立ちます。
$$(A\cap B)^c=A^c\cup B^c$$
$$(A\cup B)^c=A^c\cap B^c$$

補集合と集合の演算の間の分配法則ですが、
$\cap$ と $\cup$ が互いに入れ替わることに注意をしてください。


問題
$$U=\{1,2,3,4,....20\}$$
とする。
$A=\{x\in U|x\text{は素数}\}$
$B=\{x\in U|x\text{は60の約数}\}$
$A\cup B$, $A\cap B$, $A\setminus B$ $(B\setminus A)^c$ はどうなるか?

とすると、以下の集合となります。
$$A\cup B=\{1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,15,17,19,20\}$$
$$A\cap B=\{8,9,14,16,18\}$$
$$A\setminus B=\{7,11,13,17,19\}$$
$$(B\setminus A)^c=(B\cap A^c)^c=B^c\cup A=\{2,3,5,7,8,9,11,13,14,16,17,18,19\}$$


問題
(1) 3つの元からなる集合 $\{a,b,c\}$ の部分集合を全て書け。
(2) また、元の数が $N$ 個の場合、その部分集合はいくつ作られるか?

(解答)
(1) $\emptyset$, $\{a\}$. $\{b\}$, $\{c\}$, $\{a,b\}$, $\{a,c\}$, $\{b,c\}$, $\{a,b,c\}$ (解答終了)

となります。ここで空集合も部分集合であることに注意しましょう。

(2) $N$ この元からなる集合の部分集合を数える。
$\{a_1,a_2,\cdots, a_N\}$ の部分集合は、それぞれの元についてそれが
含まれるか含まれないかの
2通りずつパターンがあるから、全部で、$2^N$ 通りあります。
つまり部分集合は全部で $2^N$ 個作れる。(解答終了)


命題
命題・・・真偽が判定できるもの。

$p,q$ をそれぞれ何かの命題とする。
例えば、$p=$「$a$ は $-1$ 以下である」などである。
この場合、$a$ に何か入れて成り立つので、
$p(a)$ ということもあります。

「$p$ かつ $q$」 を $p\land q$ とかきます。
「$p$ または $q$」 を $p\lor q$ とかきます。
「$p$ ならば $q$」 を $p\Rightarrow  q$ とかく
$p$ の否定命題を $\bar{p}$ とかく。

よって、$p\Rightarrow q$ の対偶は、$\bar{q}\Rightarrow \bar{p}$ とかける。


全体集合 $U$ を決めておきます。
このとき、
$P=\{x\in U|p(x)\}$ を命題 $p$ の真理集合という。
命題$q$ の真理集合を $Q$ と書くと、
$p\land q$ の真理集合は、$P\cap Q$ となり、
$p\lor q$ の真理集合は、$P\cup Q$ となり、
$\bar{p}$ の真理集合は、$P^c$ となります。
また、
$p\Rightarrow q$ であることは、
$P\subset Q$ とかけます。

ド・モルガンの法則は、命題を次のように書き換えることができます。
$\overline{p\land q}=\bar{p}\lor \bar{q}$
$\overline{p\lor q}=\bar{p}\land \bar{q}$
ここでのイコールは、命題の真偽がこの両辺においていつでも一致する
ことを表しています。

また、対偶が等しい命題であることは、
$p\Rightarrow q=\bar{q}\Rightarrow \bar{p}$
と書くことができます。

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